森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

不思議の国アースルーリンドと『光の国』の話を聞くテリュスとエリューン

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 赤毛と銀髪の神聖神殿隊騎士らは、次にワーキュラスからの指令で、気絶してるエドウィンを船に瞬間移動させる。

テリュスとエリューンは、倒れ込むレジィリアンスの少し後ろに突然、気絶した真っ直ぐの金髪美少年が目を閉じ横たわっているのを見、ぎょっ!とした。

エウロペはため息を吐くと、神聖神殿隊騎士らに告げる。
「…良かった。
あそこに置いたままだと、彼の貞操も危なかった」

銀髪の神聖神殿隊騎士はエドウィンに屈むと、頭の中で響く声で、ワーキュラスに告げる。
“さすがル・シャレファ金の蝶
回復し始めてる。
直、目を覚ましますよ”

テリュスはその声が聞こえた時、つい疑問を囁いた。
心の中で。
ル・シャレファ金の蝶とあんたらって、どう違うの?”

銀髪の神聖神殿隊騎士は、緑がかった青い瞳をテリュスに向けて囁く。
ル・シャレファ金の蝶は我々の始祖の血を受け継いでる。
『光の民』も昔は人間。
『光の国』に迷い込み、帰れなくなった者達。
中央は光竜らの住む、光溢れる場所だが、人間はそんな強い光の中では肉体を保てない。
それで辺境に暮らしていたけれど…土地は貧しく作物はあまり取れず、疫病も蔓延し…。
それは酷い状態でね…。
光竜がそんな人間の嘆きを聞き、気の毒に思い、金の鱗を一枚与えた。
その鱗に触れると病は治り、鱗ある場所の作物は良く育ち…。
人々は鱗とその不思議な光を求めた。
やがて他の光竜達も人の祈りに応え、光無い集落や村に鱗を与え始める。
鱗は神のように崇められた。
そのうち鱗から光を得、それを運べる者が産まれ始める。
鱗の無い貧しく小さな村へ、光を運ぶ者こそ、ル・シャレファ金の蝶
やがて『光の国』は光運ぶ者、ル・シャレファ金の蝶達のお陰で、殆どの場所が光で満ちた。
光竜からしたら、とても薄い光。
だが我々には十分な恵み。
幼い頃から周囲に光満ちた環境で育った者らは、成長が良く背が伸び…そして力を使えるようになった。
言葉を話さず心話で会話し、空間を精神の通路を使い移動し、手を使わず物を動かす。
そしてどんどん光が濃くなっても。
耐えられる者が出て来て…稲妻を飛ばしたり、物を凍らせたり。
使える能力も強く、大きくなった。
…けれど常に周囲に光が満ちていたから。
周囲の光を自分に取り込んで、力を使う。
能力は優れていたけれど、光の無い地では…自身に帯びた光を使い果たせば、力の源である光は尽きて、力が使えなくなる。
逆に古代種のル・シャレファ金の蝶は。
背も低く能力も低いが、自身が光と繋がっているから。
光無い地でも、光を呼んで常に光を帯びていられるんだ」

テリュスはそう説明してくれる、とても長身で端正な顔立ちの、銀髪の神聖神殿隊騎士を見つめた。

エリューンも聞く。
「ついでに質問して、いいですか?
神聖騎士と神聖神殿隊騎士の違いって?」

今度はまだ船のへりに立ち、船が速く進むよう操作してる赤毛の神聖神殿隊騎士が答える。
「神聖騎士とは、アースルーリンド各地にある『影の民』を異次元に封じた結界を保つ為、『光の国』より降り立つ『光の王』と、人間の王家の王女との子供で、人間との混血。
我々神聖神殿隊騎士は、『光の王』の護衛の従者らが人間と交わった末裔。
『光の王』は『光の国』で最も優れた能力者が鍛錬を積み、光の結界を張り直す凄まじい能力を持ち、正統で崇高な者。
従者らは能力こそ高いが…まあ荒っぽくて、大してお行儀は良くない。
『光の王』も従者らも。
『光の国』では最高位に近い能力者ばかりだから、人間の血が混じった混血だとしても、『光の民』に劣らぬ能力を持ってる」

銀髪の神聖神殿隊騎士も笑う。
「住んでる場所が違う。
神聖騎士らとその一族は、西の聖地。
我ら神聖神殿隊騎士は東の聖地。
帯びている光の量も、神聖騎士は強く、我々は彼らからしたら薄い。
それぞれ利点がある。
我々は神聖騎士ほど能力が高くない分、使う光の量は少なくて済む。
ので、小回りが利く。
が、相手が大物だと…神聖騎士じゃないと、太刀打ちできない」

「…大物?」

テリュスの質問に、オーガスタスがため息吐いた。
「『影の民』の事だろう?
封印張った別次元に居るのに、封印の緩んだ隙間を狙って“障気”飛ばし、人に取り憑いて人々を苦しめる。
本体は異次元から出てこられないが、影として現れるし、多くの人に取り憑き力を得れば…影だからと言って馬鹿に出来ない。
力を持った大物の影に迂闊に出会うと、人間はひとたまりも無い。
が、神聖神殿隊騎士でも苦戦する。
神聖騎士くらい能力が高くないと、払えない」

テリュスとエリューンは会話の最中、脳裏にイメージが次々と浮かび、西の聖地が谷間で東の聖地が平原と丘だと分かったけど。

『影の民』とか影の辺りで、黒く禍々しく不気味なイメージが見えて、ぞっと肝を冷やした。

「…やっぱりアースルーリンドには、行きたくない」
テリュスが本音で、素直に感想述べると。
エリューンも同意して頷いた。
「…どうしてもと言われない限り、私も無理です」

けれど行ったことのあるエウロペだけは、明るく話しかけた。
「神聖騎士や神聖神殿隊騎士。
人間でも影を退治出来る知識のある、神聖神殿隊付き連隊騎士とかが知り合いなら。
いざと言う時助けて貰える。
それ以外は美形がやたら多いぐらいで、こちらと大して変わらないぞ?」

ずっと心話を端で聞いてた髭もじゃ丸眼鏡が、感心して尋ねた。
「そんな、美形だらけなんですか?」

エウロペは頷く。
「長身のオーガスタスや二人の神聖神殿隊騎士を見て、そう思わないか?」
「だってこの三人は特別なんでしょ?」
「住民全体がほぼ皆整った顔立ちで、顔面偏差値がとても高い」

オーガスタスはため息吐いた。
「外をぐるりと高く険しい崖で囲まれて、出るのも入るのも苦労するから。
外と接触が殆ど無く、中だけで繁殖してるから、偏るんだな」

銀髪の神聖神殿隊騎士は囁く。
「それにアースルーリンドの住民の殆どは、遠い過去に『光の民』の血を引いている者が多い」

髭もじゃ丸眼鏡は、感心したように尋ねた。
「つまり『光の民』が。
美形だらけ?」

銀髪の神聖神殿隊騎士が、頷いて告げる。

「…能力者だらけだから。
顔の形なんて簡単に変えられる。
わざわざ崩れた顔に、変える者はいない」

赤毛の神聖神殿隊騎士も頷く。
「大昔、顔の形を変えられる能力者が産まれた時、変えるのが一時流行って。
美形だらけで定着し、それ以降は誰も、特に顔を変えなくなった」

髭もじゃ丸眼鏡は、感心して頷いた。
「もう変える必要、無くなったんでしょうねぇ…。
で、私の顔も変えたり出来ます?」

赤毛の神聖神殿隊騎士が、素っ気無く言った。
「繊細な能力だし、今は誰もやらなくて、扱い損ねて失敗例も多数あるから。
現在は認定された者以外、顔を変えるのは禁止になってる」

銀髪の神聖神殿隊騎士も頷く。
「止めといた方が無難だ」

オーガスタスも、エウロペもテリュスもエリューンも。

心からがっかりした、髭もじゃ丸眼鏡の大きなため息を、揃って耳にした。
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