森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

一番遅れたグループが追いつく方法

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 一行はラステルの後ろに乗っていたエドウィンが、光に包まれ突然消えた後。
一斉にローフィスを見る。

併走してるギュンターが気づき、ローフィスに唸る。
「見られてるぞ?」
ローフィスは頷く。

ので背後の、ラステル、ロットバルト、デルデロッテは彼の背中を注視した。

が、ローフィスは振り向いて告げる。
「なんで俺に聞く?」
言って、自分の後ろに座ってるラフィーレに首を振る。

ラフィーレはローフィスに心話で皆への説明を促され、振り向くものの…。
ローフィスに顔を戻すと、心話で囁いた。

ローフィスは振り向くと、皆に説明する。
「ラフィーレが言うには、シャーレの肉体が見つかった。
が、瀕死なので即刻光の結界内に連れて行かないと、直ぐ死ぬ緊急事態で。
けれど一番近くに居るエウロペは人間。
神聖騎士が飛ぶのに、人間の精神回路ではとても通路を維持出来ない。
だから飛ぶ通路を確保するため、エドウィンが急遽呼ばれて飛ばされたんだ!!!」

デルデロッテは思わず、斜め前を走るギュンターに尋ねる。
「意味、分かった?」

ギュンターは煌めき渡るような美貌で振り向くと、歯を剥いた。
「分かる訳無いだろう?!」

ロットバルトとラステルは、アースルーリンドの住民の、その返答に揃って顔を下げた。

ラフィーレがローフィスに言葉で囁く。
「ね?
分かって貰えないでしょう?」
ローフィスは憮然と言い返した。
「俺が言っても同じ結果だった」

シュアンがそれを聞いた途端、ケラケラと笑い出す。
皆に振り向いて見つめられ、シュアンは言った。

「みんなには見えないけど。
突然消えたり出たりする訳じゃ無いんだ。
ちゃんと光の道があって、そこを通って行ったり来たりするの。
でも光の道は馬で走れない代わり、中を通るとすんごーーーく早く動ける。
それに光の道は、心で作る。
エウロペって人は力が無いから道が作れないけど。
エドウィンは作れるから…それで大急ぎで、呼び寄せられたんだよ」

ラステルがロットバルトの後ろに座る、シュアンに尋ねる。
「だってエドウィンは飛ばせられたのに。
なんで“神聖騎士”はダメ?」

シュアンは暫く呆け、上を向いて考えた後、言った。
「えっと、エドウィンはあんまり光が強くないの。
けど神聖騎士は、僕らと違って能力が高い分、光の量が凄いの。
木陰だと眩しくないけど、太陽をちゃんと見ると目が痛いのと、おんなじ」

ラステルは直ぐ聞き返す。
「けど光で満ちてた方が、軽いんだよね?」

ラフィーレが言葉を足した。
「けどあんまり強いと。
神経がやられます。
例えばワーキュラス殿ですが…彼が光の通路の中で送る光は凄い量で。
能力の低い者は、ヘタをすると肉体が消滅するほどの光なんです」

デルデロッテが、やっと分かったみたいに呟いた。
「つまりそれだけ力のある凄い光だと。
通路を作ってる人間の器が耐えられないと…おかしくなるか、死ぬ?」

ローフィスが振り向くと、ラフィーレもシュアンも揃ってその問いに頷いてた。

ラステルはローフィスに尋ねた。
「そういうの、君は分かってる?」
ローフィスは頷く。
「細かいことは不明だが。
一度マトモにワーキュラスが能力使ってる様子見たことあるからな。
『光の国』の神と呼ばれるだけあって、凄い光の洪水。
山なんて、簡単に砕いちまうほど凄い。
マトモに見ると、神聖騎士らですら神経が焼き切れるそうだ。
が、『光の民』は防御法を知ってる。
俺らは無理。
けどワーキュラスら光竜は、あまりにもデカいから。
小さな俺らに能力使うと、人間は光の強さに耐えきれず、直ぐ細胞が分裂して魂だけになっちまう。
それで…人間に力を貸す時、よりどころで人間の、左将軍が必要なんだ。
左将軍の目や感覚を通して、ワーキュラスは俺達人間を助ける時は…力を加減する」

ラステルとロットバルトは呆けた。
が、ラステルは呟くように尋ねる。
「…そんな凄い破壊力なんですか?」

ロットバルトも聞く。
「…つまり…体が消し飛ぶ訳か?」

ギュンターが、振り向く。
「その件だけは、俺も聞いた事ある。
確かに体は消し飛ぶんだけど、ワーキュラスの光はめちゃくちゃ気持ち良くって。
それで魂が満たされ、体の必要性を感じなくなって、体を作ってる小さな粒の結合が解かれ、肉体は霧散するそうだ」

ラステル、ロットバルト、デルデロッテは言葉を失い、顔を下げた。

ロットバルトが、ぼそりと呟く。
「一度アースルーリンドに行く機会があったけど…行かなくて正解だった」
ラステルも頷く。
「私もです」

ギュンターはふと、顔を上げて気づく。
ラステル配下の二人が導く道が、でこぼこして足場の悪い方に。
悪い方にと進むのを見、チラ…と自分らの走ってる丘のかなり下。
街路樹が両側に立ち並ぶ、広く平らな道を伺いながら、ため息吐く。

「エウロペってヤツ、ホントにここを通ったのか?!」
ローフィスがため息交じりに、併走する金髪美貌のギュンターを見、頷く。
「彼らを疑うな」

先頭を走るラステル配下二人は、振り向いて笑顔でローフィスに会釈する。
一人が、陽気に叫んだ。
「仲間がデュダー博士の元に、エウロペ殿らを案内してます!
『光の民』のようには行きませんが…我々なりに、飛ぶ方法はあるので!」

ラステルは顔を上げて先頭の配下に叫ぶ。
「じゃ、完成した?
長距離のテスト飛行では、目的地に降りられないって聞いたけど!」

配下の一人が振り向く。
「狙った場所に、完全には無理ですけれど。
近くには、降りられるようになりました!」

ラステルは満面の笑顔で振り向く。
「彼らは飛行船乗り場に案内してくれている!
我々も…一瞬で移動は無理ですけれど。
空を飛んで移動出来るので、かなり時間の節約が出来ますよ!」

けれどそれを聞いた一同は、思いっきり顔を下げ、不安視し。

シュアンだけが、にこにこ笑って無邪気に叫んだ。
「みんな、とっても怖くって、命が惜しいって!」

それを聞いたラステルは、自分よりも体格良く剛の者の筈の、ギュンター、デルデロッテ、ロットバルトを見回した。

ローフィスに、ラステルはにこにこ笑って尋ねる。
「貴方は、頭柔らかいですよね?
画期的だと、御理解頂けるでしょう?」

ローフィスは振り向きもせず、ぼそりと囁いた。
「俺だって、人間だ」

ラステルが、即座に尋ね返す。
「それ、どういう意味です?!」

先頭を走るラステル配下の一人が、振り向いて説明する。
「つまり普通の人間の神経では、理解出来かねると言うことだと思います!」

ラステルはそれを聞くなり、ぷんぷん怒った。
「神聖騎士だの光竜だの。
異世界の能力者は理解出来て、どうして私の発想が理解出来ないんです?!」

ローフィスは振り向く。
「俺だって、連中を理解したいと積極的に思ってる訳じゃない。
けれど彼らは区分だと『光の民』で、別人種だからしょうがないと、諦められる」

ラステルは呆けた。
「…つまり同じ人間の私だと。
理解を超えた発想で容認出来ず、思い切り引く…って事ですか?!」

ラステルは、もっと文句を付けたかったけど。
言った途端、ローフィスだけで無く、ギュンターもデルデロッテも。
ロットバルトまでもが頷くので。

言いたい言葉を飲み込んだ。
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