森と花の国の王子

あーす。

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ゾーデドーロ(東の最果て)

駆け出す一行

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 ラステルは喰い下がる。
「じゃ、じゃどうして!
王子らは飛んだんです?!」

ローフィスが俯いて口挟む。
「…多分…我々の探してるル・シャレファ金の蝶が…。
二人の王子のどちらかと繋がって…飛ばしたんだとは思う。
が、力の使い方が分かってないし、人間を二人も一気に飛ばす…なんて無茶な力の使い方をしたので、光の筋の先が、途切れたんだと思う」

オーガスタスが、頷く。
「ワーキュラスが言うには、金髪の王子がル・シャレファ金の蝶の容姿と似ていて。
親近感持って繋がって。
不安で寂しいので、呼び寄せたと…」

ラステルは、直ぐ顔を上げる。
「ワーキュラスって?!」

その時、ゼイブンが首振ってローフィスに怒鳴る。
「やってられない!
固定呪文使うから、手を貸してくれ!!!」

ローフィスはデルデロッテの前を素早くゼイブンの方へと駆け去りながら、怒鳴る。
「光は薄れるけど、六点鐘程は固定される!
辿れますか?!」

アッカマン侯爵は直ぐ様叫ぶ。
「…ギリギリ…?!」

ラステルも顔下げる。
「…公道をどれだけ急いで駆けても、一日はかかる距離です」

ローフィスはペンダントをかざしながら、怒鳴り返す。
「六点鐘後にまた、唱えます!」

ラステルとデルデロッテは、ローフィスに感謝の笑顔を向けた。
ローフィスは直ぐ、ゼイブンと共に呪文を唱え始める。

一瞬カッ!
と金に大きく光った後。
呪文を止めても、光の筋は残った。

オーガスタスが皆を見て告げる。
「直ぐ発った方がいいらしい。
ローフィス、来てくれ。
スフォルツァ、何があっても六点鐘後、ゼイブンに呪文を唱えさせろ!」

その後、アッカマン侯爵に
「ギュンターを…あ、金髪の、顔ダケはめちゃくちゃ綺麗な男の事だが。
厩に呼んでくれ。
スフォルツァ、面倒だがゼイブンが何か気づくことがあれば、アッカマン侯爵に直ぐ知らせ、こっちに伝えて貰ってくれ。
で、あんたらどっちが一緒に来る?」

オーガスタスに問われたラステルとデルデロッテは、直ぐ戸口に歩き出して言う。
「行きます!」
デルデロッテが叫ぶと
「侯爵、あと頼むから!」
ラステルも叫んだ。

オーガスタスも出て行き、嵐の後の静けさのような室内で、ゼイブンが
「まだ半分しか食べてない」
と呻くのを聞き、アッカマン侯爵が
「テーブルに食事が用意してあるので、頂きましょう。
食べる予定だった皆さん、全員出かけられたので」
と笑顔で提案する。

ゼイブンがその言葉に、満面の笑みを浮かべるのを見て、スフォルツァは呆れた。


皆が厩に着くと、ラステルは馬丁に叫ぶ。
「アースルーリンドの皆さんの馬の鞍に、常備用革袋を大至急!」

ローフィスが
「赤毛の大きな馬と…焦げ茶に白の斑点…それと、茶色の…それ」
と、指示を出してると、ギュンターが金の髪を乱して駆け込んで来る。

ラステルとデルデロッテは馬丁に手綱を手渡され、既に騎乗して待ってる中。
厩に駆け込む金髪の凄い美青年を見て、デルデロッテは目を見開く。

「…さすが美形の宝庫だけあって…。
あんな美青年、見た事無い」
と呟くので、ラステルは呆れた。
「君、鏡見たことある?
私はちょくちょく見てるよ」
とぼやく。

その時、引き出されたもう一頭の馬に、ロットバルトが乗り込みながら
「デルデロッテは自覚が無い。
最も綺麗な顔を見せられてるのは我々で、本人は鏡見ない限り、見られないから。
で、エウロペ殿らは?」
と尋ねる。
「とっくに出た」
そう、ラステルが言葉を返した。

が、言うなり厩から三頭が一気に駆け出し、ラステルらオーデ・フォール中央王国の従者らは、慌てて駆け出す三騎の後に続く。

ラステルは後ろから
「そこを左!」
と叫ぶ。
だがローフィスが振り向いて
「オーガスタスは、分かってる!」
と叫ぶので、ラステルは頷く。
必死に速度を上げてローフィスの横に付くと、その先の門に怒鳴る。

「ドナッティ!」

するとそこら中に笛の音が響き渡り、その先の内門は全て、開けられていた。

ローフィスが、併走するラステルに振り向く。
「…凄い統制ですね…」
ラステルは笑顔で言葉を返す。
「取り柄なので」

とうとう、城の東門に近づく。
アースルーリンドの三人は、大国の立派で豪華な巨門の凄さに目を見開いた。
が、一行が駆け来ると、巨大な門は開いて行く。

外に飛び出ると、先頭のオーガスタスは吠える。
「ワーキュラスの案内だ!
最短の、とんでもない道を通ることになる!
が、エウロペとかって言うヤツが、先に通ってるそうだ!」

デルデロッテとロットバルトは併走しながら、顔を見合わす。

ラステルが叫び返す。
「なら一応通れる道だ!
で!
ワーキュラスって、誰なんです?!」

ローフィスが叫ぶラステルを見、言いあぐねながらも言葉を紡ぎ出す。
「左将軍と繋がってる、『光の国』のめちゃめちゃデカい光竜の事で…。
『光の民』ですら、神と崇めてる凄い能力を持ってる、そうだ。
けれど人間の左将軍を通じてしか力が使えないから、万能じゃ無い。
オーガスタスは左将軍補佐をしてる内、左将軍と繋がってるワーキュラスと、心話出来るようになって…。
ややこしいんだけど。
ワーキュラスは左将軍を通じ、オーガスタスと繋がり…それで色々、知らせてくれてる」

「分かんないようですが、一応分かりました」

ローフィスはそう呟くラステルを
“ホントか?!”
と疑惑の眼差しで、見つめた。

先頭は相変わらずかっ飛ばしていたけど、オーガスタスが吠える。
「エウロペと二人の付添いって…凄い乗り手だな?!
簡単に、追いつけそうに無い!!!」

ロットバルトが、顔下げて呻く。
「…つまりもっと。
速度を上げる?」

デルデロッテが先頭に遅れ始め、拍車かけて返答した。
「…みたいだ!!!」

ロットバルトも拍車かけ、消えて行きそうな速さの先頭に追いすがった。

ラステルは先を走るオーガスタスと、斜め後ろに付ける金髪美貌のギュンターが
「アースルーリンドが美形の宝庫とかって言ってるけど。
あの焦げ茶の長髪、アイリスに似てないか?」
とかって会話してるのを聞き、呆れた。

ローフィスがチラ…とデルデロッテに視線を送り
「こっちのが、表情が引き締まってデレついてナイぞ?
多分祖先で、血が繋がってるかもな!」
と言っていて、オーガスタスまでもが
「彼の一族の誰かが、遠い昔、樹海の近くで行方知れずで。
アースルーリンドに迷い込んで定住したのかも!」
と言葉を返してるので、とうとうラステルは
「喋ってると舌噛む速度で!
よくノンキに喋れますね!」
と叫んだ。

が、先頭のオーガスタスに呆れたように振り向かれ、横のローフィスにも目を見開いて見つめられ。

凄い美貌の金髪のギュンターに振り向かれて
「そういうアンタも、喋ってる!」
と、言い返された。
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