森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの幸福な始まり

皆を言いくるめるデルデロッテ

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 デルデは素早く役立ち直ると、エルデリオンにぼそり…と囁く。
「私もずっとここに居られないので、レジィが困った時、今はエリューン殿がお相手されている」

エルデリオンは頭をハンマーで殴られたみたいな表情になった。

「つつつつつつつ…」

言葉にならず、デルデロッテにテーブルに乗せてる腕を握られ、落ち着きを取り戻し、唾を飲み込んで、やっと平静を取り戻して言う。
「…つまりレジィ殿は…エリューン殿とも…その………」

レジィはそれを聞くなり、頬染めてエウロペの向こうのエリューンをチラと見て言い切った。
「今朝も…して貰った。
デルデと違って迫力は無いけど、凄く…優しくって」

レジィが喋り始めると、エリューンはエウロペの視線を感じ、恥じ入って頬を染める。

「なんか凄く、素敵だった」

エリューンはその言葉を聞いて、エウロペが微笑んでる気がし、隣を見る。

エウロペはとても暖かく微笑んでいて、エリューンはほっとした。

テリュスはロットバルトが見るので、思わず見返す。
何か言いたげだったけど。
言葉を控えていた。

ラステルとデルデロッテは、エルデリオンががっくり、首を落とすのを見た。
「エリューンにまで先んじられ…ますます自分のしたことの酷さを思い知ってます?
じゃこの後私に、うんと罰せられても文句、無い?」
デルデの言葉に、エルデリオンは即反撃した。
「君のは!
限度知らずにやらしいから!
迂闊に同意したら、どんな事されるか!」

エルデリオンの叫び声に、全員が全員。
レジィ相手に大人しくしてたデルデロッテが、エルデリオン相手には実力フルスロットルでやりたい放題してる。
と分かり、顔下げた。

ラステルだけが
「デルデロッテってそんな恥知らずなこと、うんと貴方にしてるんですか?」
と、とても爽やかな口調で尋ねる。

エルデリオンは俯くと
「…私は…組み敷いたことはあっても…組み敷かれるのは初心者なのに。
情事に慣れてるだろう…って、手加減してくれない」
とぼやいた。

ロットバルトは顔を下げきり、テリュスは腕組みして
“やっぱり”
と言うように首を縦に振りまくり、エウロペはチラ…と上目使いにすました美貌のデルデを見、エリューンは大きな、ため息を吐いた。

エルデリオンはレジィの視線を感じ、はっ!と気づいて顔を上げる。
「…すみません…。
取り乱してしまって。
彼…と居ると、どうしても…」

エルデリオンは“彼”の部分で、横のデルデロッテにチラと視線を送った。

デルデロッテはラステルが、寝室で自分がエルデリオンをどう扱ってるか。
具体的に知りたいんだな。
と感じ、ラステルに顔を向ける。
「…知ってると思うけど、君らにも隠し通し、彼を自分だけのものにする思いを断念したものだから。
我慢し続けてた欲望が、火を噴いても無理無いと。
君だって思うだろう?
更にエルデリオンってば、男に身をみずから差し出したというのに。
その相手が、私じゃ無い」

“男に身を自ら差し出した”
の言葉に、全員が顔を下げきる中。
ラステルは苦笑いし、頷きながら告げる。
「…デルデ。
君、いつも情事については容赦無く暴き立てるけど。
繊細な内容の場合、この場を外し、別の場所に私を呼び出し耳打ちしてくれて、全然構わないんだけど」

デルデロッテはその返答に、横の恥じ入って真っ赤な頬のエルデリオンを見、ぼやく。
「ああ失礼。
君の質問相手って、エルデリオンだっけ」

少しもめげないデルデの返答に、ロットバルトは顔を下げきり、テリュスは逃げたそうに腰を浮かしかけ、エリューンもため息を吐いた。

そんな最中でも、デルデロッテは口を慎む様子が無い。
「…つまりそれで。
レジィがまだ、少年を扱う経験の少ないエリューン殿では満足出来なかった時のため、私に打診した訳だけど。
私は君と…。
今、とても親密だから。
君をハバにする訳にはいかないと、四人でしてみたら?と聞いたところ、レジィはその提案が、気に入ってたみたいだ」
と、言い切った。

エルデリオンはふ…と顔を上げ、真正面の長い金の巻き毛の、大きな青い瞳の愛らしい美少年、レジィリアンスに尋ねる。
「あの…もし…本当に四人でする事になったとしても…同意するんですか?」

レジィは目を見開く。
「エルデリオン様は、恥ずかしいですか?」
と聞き返され、エルデリオンは驚いて尋ね返す。
「貴方は…恥ずかしく…無い?」

とうとうロットバルトが顔下げたまま、呟く。
「…だからレジィ殿はずっとデルデロッテに
“恥ずかしい事じゃ無く自然なこと”
と刷り込まれ続けて…」

エルデリオンは愕然とする。

ロットバルトはとうとう顔上げ、エルデリオンを見つめて言った。
「レジィ殿はまだ、お若い。
が、貴方はもう分別の付く年頃。
幾ら自然なことだろうが。
欲求のまま、獣のようにいつでもどこでも…なんて…常識が拒否するだろう?」

デルデロッテは憮然。と言い返す。
「つまり私がケダモノだと?」

エウロペが即、口挟んだ。
「君は分別があるから、マズい場面では抑え、解放して良い場面で欲求を満たす。
が、レジィはその区分けが、まるで分かってないし」
言われてレジィがエウロペを見るので、エウロペはレジィに微笑みかけた。
「…この場では今の所何とか、大丈夫です」

ロットバルトはテリュスがもぞ…と身を捩り
“大丈夫じゃ無い”と異論唱えたいのを、我慢してる様を見た。

エウロペはデルデロッテを見つめ、言い残しを言い放つ。
「エルデリオンもまだ若く、欲望にさらわれやすい。
勿論、君らの宮廷で君は、エルデリオンを守るためには紳士的な態度を貫くと予想出来る。
が。
この場なんでもさらせば良い…ってのは、違ってないか?」

「つまり君は聞きたくない?」
「じゃ…無くて」

エウロペは視線を、テリュスやロットバルトに向ける。

デルデは納得したように
「ああ…」
と頷いた。

「逆に私とラステルは。
事態を正確に把握するため、知っときたいが」

エウロペの言葉に、皆がなぜこんな会話になってるのか。
納得出来て頷いた。

エウロペは更にデルデに忠告する。
「それにエルデリオンは。
あれ程痛ましかったレジィが、今や情事に羞恥心が無いことも。
更にエリューンともしてる事に、理解が付いていって無いから。
四人で…なんて到底先の話。
その辺の所、理解出来てる?」

デルデは頷く。
「けど単にエルデリオンは。
自分が男役したレジィ殿に、私に女のように手込めされてるとこ、見られるのが恥ずかしいんだと思う」

エルデリオンは、真っ赤になって怒鳴った。
「普通!
恥ずかしいだろう?!!!!」

エウロペはとうとう呆れてデルデロッテを見た。
「…君、レジィだけで無くエルデリオンまで。
羞恥心無くさせて欲望に忠実にさせようとか、してる?」

デルデは腕組みして顔下げた。
「…羞恥心は…私とする時、虐めるのに楽しいから無くして欲しくないけど」

このセリフに、エウロペとレジィを除く全員が顔下げる中。
デルデはまだ、言った。

「先に言ったように、貴方の国に攻め込んだのも。
いいコし過ぎて王子たらんと自制しすぎて。
窒息しそうで苦しくてそれを解消するため、突っ走った結果だ。
エルデリオンが突如、周囲が不条理としか思えない事柄に突っ走る、発作が起こるのも…。
欲求が満たされていたら、無くなると思うし、ロットバルトやラステルの苦労も減る」

ロットバルトが呻いた。
「そこに持って行かれると…」
デルデロッテの真心に、気持ちを持って行かれそうなロットバルトに。
ラステルが肩を竦めて釘を刺す。
「忘れないで下さい。
デルデは私でも感心する程の、詐欺師ですから」

けれどロットバルトは呟いた。
「が。
人を気遣う気持ちあっての、詐欺師だ」

テリュスも頷く。
「そこが…憎めないんだよな」

エリューンも頷いて言う。
「傲慢とも取られかねない絶妙なラインで。
自分の欲求解消と人への気遣いが、同時に出来るタイプですよね」

皆がエリューンを見るので
「間違ってます?」
とエリューンは聞き直し、ラステルは苦笑して言った。

「彼は私より辛辣しんらつだ」

エリューンはエウロペを見る。
エウロペは苦笑していて
エリューンは天然。
貴方ラステルは意図して武器を使うけど」
と言っていて、エリューンは思わず
「どの辺が天然です?」
と尋ね、デルデロッテに
「そこが。
意識して言ってないところが、天然」
と言われ、首捻った。
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