森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

変調を訴えるレジィリアンス

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 起き出して来たレジィリアンスとエウロペが、居間のソファに座り、ワゴンから皿を取って食事を始める。
テリュスも皿を取ると、レジィリアンスの好物の肉団子を、自分の皿からレジィの皿へと乗せ、フォークを持ち上げる。

エリューンは呆けた。
「さっき食べたのに…まだ、食べるの?」
テリュスは顔を上げると
「お前、あれで足りた?」
と逆に尋ねた。

問われてエリューンも、ストン、とソファに腰掛ける。
エウロペとレジィは笑う。
「エリューンもお腹、減ったんだね?」
そう、レジィリアンスが言うと。
記憶の戻ったレジィに、エリューンは嬉しそうに微笑んで頷く。

エウロペも、エリューンも。
自分の取った皿に、レジィの好物が乗ってると。
スプーンですくって、レジィの皿に乗せる。

「…僕…これも食べていいの?」
エウロペもエリューンも、にこにこして頷く。

ノックと共に、ラステル配下の一人が顔を出す。
「おや!
お食事ですか?
…冷めてませんか?」

皆、顔を上げるものの。
口をもぐもぐさせ、誰も喋れないので、ラステル配下は肩を竦める。
「ラステル様に、お知らせしても?」

エウロペが水のグラスを取り上げ、少し飲んでやっと頷き、ラステル配下は苦笑して扉を閉めた。

間もなく、ラステルが顔を出す。

「…皆さん、凄い食欲ですね。
無理無いか」

テリュスもエリューンも、頬を食べ物で膨らませ、頷く。
が、レジィに
「どなた?」
と、小声で尋ねられ、答えられなくて慌てて口の中の食べ物を飲み込もうと、焦って喉を詰まらせそうになった。

ラステルが呆け、棒立ちになってると。
エウロペは口の中の食べ物を飲み込み、ナプキンで口を拭うと、立ち上がって戸口に立つラステルの元へ。

「…全部は、思い出してない?」
問われて、囁く。
「私達のことは、一眠りした後、思い出した。
が、エルデリオンがシュテフザイン森と花の王国へ侵攻した、戦いの前から昨夜までは、まだ…。
困った事に…」
エウロペが最後の言葉を、うんと小声で囁くので。
ラステルは、顔を寄せる。
エウロペはもっと声を落とし、後の言葉を囁いた。
「コルテラフォール侯爵の事は、覚えてる」

ラステルは屈んだまま、暫く固まった。
「………ええと…。
報告で聞いたけど、抱かれたから?」
言って、不適切かとエウロペの顔色を覗う。
エウロペは真顔で
「多分」
と答えた。

「部屋を、出て頂いても?」
ラステルの問いに、エウロペは頷く。

部屋を出て扉を閉めると、ラステルは尋ねる。
「…つまり、エルデリオンの事は…」
「覚えてない」
「部下の話だと、発見された時。
レジィ殿はコルテラフォール侯爵に、寄って行こうとして。
貴方が止めたそうだが」
「…誰の記憶も無く、侯爵だけが、見知った相手だったからだと思う」
「今は?」

問われて、エウロペは眉間を寄せた。
「なぜか、侯爵の事をさほど嫌がってない」
「貴方は侯爵が、大嫌いなんでしょう?」
エウロペは即座に頷いた。
「機会があれば、一物を二度と使えないほど、蹴りつけたい」

ラステルはその過激な意見に、顔を上げて真正面から、エウロペの顔を見る。
「…それ、冗談で無く本気なんですよね?」
「ここまでの会話の流れで、どうして冗談を言う?」
ラステルは、ため息交じりに頷いた。
「…ですね」

その時。
ガチャ!と音がして、扉が開いてエリューンが姿を見せる。
「…着替え、あります?」

エウロペとラステルが同時に、エリューンの胸元を見た。
生クリームの拭いた後が、白い筋で残ってた。
よく見ると髪にも少し、クリームが散らばって付いていた。

エリューンは、憮然と告げる。
「…レジィ、まるで子供に戻ったみたいに、はしゃいで。
テリュスと一緒に、クリームを私に投げるんです」

それを聞いて、エウロペは絶句した。
ラステルは苦笑する。
「皆さんの着替えを直ぐ、ご用意します。
侯爵の尋問に出かけますが、ご一緒されます?」

エウロペが頷くと、エリューンまでもが頷いた。

けどその時。
再び扉が開くと、テリュスが慌てた表情で叫ぶ。
「エウロペ!
レジィが…!!!」

エウロペが直ぐ扉に駆け寄ると、テリュスは即座に扉を開け様扉に張り付き、エウロペを通した。

レジィリアンスは長椅子に座っていて、前屈みに背を丸め、真っ赤に頬を染め、俯く顔を上げて呟く。
「…あの…僕…変……。
長い栗毛の…人…は?
コルテ…ラ…フォール…侯爵?」

エウロペが横に腰掛けると、レジィリアンスは必死に訴える。
「…あの…人…なら…。
僕が変…な理由、知ってるし、何とかしてくれる……」
「レジィ、手を放して」
レジィリアンスは股間を両手で押さえていたけれど…エウロペに言われ、首を横に振る。
エウロペは優しい声音で説得した。
「…恥ずかしくない。
年頃なら、誰でもこうなる」

テリュスも、駆け寄って頷く。
「俺でもだ!レジィ!」

エリューンとラステルも、開いた戸口から騒動を眺めた。

レジィは首を横に振る。
「だってテリュスは!
お尻に…刺して欲しいとかって、ならないよね?!!!!」

「だ…あ…え?
お…………尻………?」
テリュスは混乱し、エウロペはため息を吐く。

テリュスはやっと理解すると
「…お尻は…………ナイけど…」
と、項垂れて白状した。

エウロペに、顔を上げて真っ直ぐ見つめられた時。
ラステルも困惑し、顔を下げた。

「…テリュス。
横に居てくれる?」
エウロペは横に立つテリュスに、そう告げて立ち上がる。
テリュスは頷くと、エウロペと入れ替わってレジィの横に腰掛け、顔を覗き込んで告げる。
「…大丈夫だから」

レジィリアンスは恥ずかしそうに、微かに頷いて顔を下げた。

エウロペが廊下に出ると、ラステルが囁く。
「エルデリオンが、会いたがってる」

エウロペは、ため息を吐く。
「あのド変態侯爵よりは、遙かにマシだな」

ラステルは頷くと
「試す価値はある」
と告げ、廊下の少し先に立つ配下に、エルデリオンを連れてくるよう、頼んだ。
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