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記憶を無くしたレジィリアンス
駆けつけるエルデリオン
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エウロペはレジィリアンスを湯船に浸からせ、自分は浴槽の外から、レジィの髪を洗う。
湯をかけ濡らすと、香りの良い石けん粉を塗り、髪を梳き上げ馴染ませ…そして頭皮を揉みほぐす。
レジィは浴槽の縁に頭をもたせかけ、気持ち良さそうに目を閉じた。
ふ…と香りと…シャボンが思い浮かぶ。
脳裏に、鮮明に見え始めた幼い自分は、笑ってた。
虹色のシャボンが空に浮かぶのが、楽しくて。
手で触れると割れて。
はしゃいで。
誰か…。
そう…多分、髪を洗ってくれるこの人…が、生成りのシャツの袖をまくり、慌てて動き回る幼い自分に
「動かないで!」
と忠告し、僕…そう、僕は…シャボンを追って湯船の中をあちこち移動し、首を思い切り振って、石けんが目に入り
「言わんこっちゃない!」
って…エウ…ロペに言われて…。
指で目を擦ったら、もっと痛くなって。
エウロペに湯で濡らした布で、目を拭かれたっけ…。
「じっとして!」
その声が、脳裏に響く。
テリュスが慌てて、むずがる僕…の横に来て、一生懸命…髭の無い、まだ少年っぽいチャーミングな顔で
「動いちゃダメだ」
そう言って、手を掴むけど…。
じっと出来なくて首を振って。
とうとうエリューンが…。
あんまりお喋りしない、とても利口そうで綺麗な、一番年の近い少年…が。
もう片手を掴み、一生懸命じっとさせようとするけど…。
掴み方が優しくって、結局僕…に引っ張られ、シャボンだらけの大きなタライのような湯船の中に落ちて。
顔も髪も、シャボンだらけにして…。
僕…とテリュスに笑われ、エウロペに布を渡されていて…。
いつも大人しいエリューンが、僕とテリュスがあんまり笑うものだから。
とうとう怒って、僕とテリュスにシャボンだらけのお湯をかけ…。
僕とテリュスは反撃し、とうとうエウロペまで、シャボンだらけになって…。
そう。
僕…とテリュスはいっつも…はしゃいで馬鹿な事して。
エウロペと、エリューンを困らせてた…。
「エウロペ、僕…」
けれど頭皮を揉まれて、気持ち良くって…。
「?なに?」
エウロペに聞かれたけど、もうどうにも眠くって…瞼が閉じた。
エウロペは、眠るレジィに微笑む。
きっととても…疲れたんだろう。
レジィが眠ってから、ようやく。
エウロペはレジィリアンスの…体に手を触れ、洗い始める。
ぷっくり膨らんだ、赤い乳首や。
体のあちこちに、乱暴に扱われた痣や擦り傷を見つけると。
泣きそうなため息を吐きながら、そっとタオルを滑らせた。
テリュスとエリューンが満腹になって、眠気に襲われ始めた頃。
ラステル配下は
「私はラステル様をお迎えしますので」
と部屋を出て行く。
テリュスとエリューンは、エウロペとレジィがちっとも来ないので。
寝室の、扉を開ける。
大きな、天蓋付き寝台の上で。
レジィリアンスの横にエウロペが。
目を閉じて、眠っていて。
レジィはエウロペの胸に顔を寄せ、安らかな顔で眠っていた。
テリュスとエリューンは二人の眠る姿を、微笑んで見つめた。
ラステル配下の一人が、ラステルが直到着するとの報告を受け、様子を見に入室する。
居間のテーブルの上には、食べ散らかした皿。
ワゴンには、まだたっぷり手の付けられてない食べ物が乗っていた。
けれどソファは誰も居ず、それで寝室をノックした後、そっと開けて覗くと。
大きな寝台の端に、エウロペがレジィリアンスを、抱くように眠り、レジィリアンスはエウロペに、身を寄せて眠っていて。
レジィリアンスの横に、背を向けたテリュスが、背をレジィリアンスの体に触れさせ、眠っていて。
エリューンはテリュスと向かい合わせに、目を閉じ少し微笑を浮かべ、眠っていた。
皆、疲れ切って熟睡してるように見え、配下はくすっと笑い、皆が起きないよう。
扉を、静かに閉めた。
ラステルの馬を先頭に。
ロットバルトがその次。
エルデリオン、そしてデルデロッテの順に、四騎は怒濤の如く駆け込んで来る。
配下は、ラステルの馬の横で叫ぶ。
「レジィリアンス殿はエウロペ殿と、現在奥の間に!」
「ご苦労!」
ラステルは一声返すと、玄関前まで猛スピードで駆け込み、一気に手綱引いて馬の歩を止めると、前足蹴立てる馬の背から飛び降りる。
配下らは玄関扉を開け、一行を中に入れる。
玄関広間に控えてたラステル配下らは、奥の間へと歩くラステルの横に張り付き、それぞれが口々、報告を叫ぶ。
「コルテラフォール侯爵は、地下室で捕縛してあります!」
「アルトバルデ公、レガートは現在、城の護衛管理塔の牢に投獄してあります!」
「レガートは高熱で、事情聴取はいまだ叶いません」
「レジィリアンス様は薬害で、現在記憶を無くしておられ…」
その報告を聞いた途端。
ラステルはピタリ、と歩を止めるので、直ぐ後ろを歩いてたロットバルトは、ラステルの背に突っ込みそうになり。
その後ろを歩いてたエルデリオンは、気づいたデルデロッテに腕を引かれ、すんでの所でロットバルトの背にぶつかって、鼻を打つのを免れた。
「…記憶が無い?
…何一つ、覚えてないのか?」
ラステルに問われ、三人の配下は頷く。
「かろうじて、エウロペ殿の顔と名前は覚えていたようですが。
誰なのかは分からないと。
ですが、テリュス殿やエリューン殿ですら、覚えておられなかったものの、親近感は持っておられ…」
「エウロペ殿は、薬の併用が原因では無いかと」
「ただ、辛い記憶を思い出したくないという、意識が働いていると。
記憶を戻すのに、時間を要するだろうと」
次々に告げられる部下らの報告を聞き、ラステルは俯く。
エルデリオンは目前の、ロットバルトの背を押し退け、ラステルに掴みかかる勢いで、腕を掴んで叫ぶ。
「記憶喪失?!
そう言ったのか?」
ラステルは腕を掴まれ振り向かされ、エルデリオンの必死な表情を見つめる。
「…多分、移動時。
暴れないよう、使われた薬が良くなかった。
希にある事ですが…。
大抵は、記憶が混濁したり、部分的に忘れてしまう程度。
ただ…辛い体験をした場合。
それを思い出したくないと、意識が思い出す事を拒否し…。
他の事まで忘れる場合があり、それが記憶障害となって…覚えてないと言う事態に」
「つまり、私と会っても分からない?!」
「多分」
エルデリオンは、愕然となった。
「私は…私は、直ぐお会いしたい!」
部下がラステルの横から、小声で口挟む。
「…現在、夜通し探索続けたエウロペ殿と。
レジィリアンス様、テリュス様、エリューン様もが。
疲れ切って一つの寝台で、眠っていらっしゃるので…」
それを聞いた途端、エルデリオンは声を潜めて囁く。
「こっそり、覗くだけでもダメか?
起こさないようにするから」
ラステルは笑い、囁き返す。
「それなら、大丈夫でしょう」
エルデリオンはほっとしたように、表情をほころばせた。
湯をかけ濡らすと、香りの良い石けん粉を塗り、髪を梳き上げ馴染ませ…そして頭皮を揉みほぐす。
レジィは浴槽の縁に頭をもたせかけ、気持ち良さそうに目を閉じた。
ふ…と香りと…シャボンが思い浮かぶ。
脳裏に、鮮明に見え始めた幼い自分は、笑ってた。
虹色のシャボンが空に浮かぶのが、楽しくて。
手で触れると割れて。
はしゃいで。
誰か…。
そう…多分、髪を洗ってくれるこの人…が、生成りのシャツの袖をまくり、慌てて動き回る幼い自分に
「動かないで!」
と忠告し、僕…そう、僕は…シャボンを追って湯船の中をあちこち移動し、首を思い切り振って、石けんが目に入り
「言わんこっちゃない!」
って…エウ…ロペに言われて…。
指で目を擦ったら、もっと痛くなって。
エウロペに湯で濡らした布で、目を拭かれたっけ…。
「じっとして!」
その声が、脳裏に響く。
テリュスが慌てて、むずがる僕…の横に来て、一生懸命…髭の無い、まだ少年っぽいチャーミングな顔で
「動いちゃダメだ」
そう言って、手を掴むけど…。
じっと出来なくて首を振って。
とうとうエリューンが…。
あんまりお喋りしない、とても利口そうで綺麗な、一番年の近い少年…が。
もう片手を掴み、一生懸命じっとさせようとするけど…。
掴み方が優しくって、結局僕…に引っ張られ、シャボンだらけの大きなタライのような湯船の中に落ちて。
顔も髪も、シャボンだらけにして…。
僕…とテリュスに笑われ、エウロペに布を渡されていて…。
いつも大人しいエリューンが、僕とテリュスがあんまり笑うものだから。
とうとう怒って、僕とテリュスにシャボンだらけのお湯をかけ…。
僕とテリュスは反撃し、とうとうエウロペまで、シャボンだらけになって…。
そう。
僕…とテリュスはいっつも…はしゃいで馬鹿な事して。
エウロペと、エリューンを困らせてた…。
「エウロペ、僕…」
けれど頭皮を揉まれて、気持ち良くって…。
「?なに?」
エウロペに聞かれたけど、もうどうにも眠くって…瞼が閉じた。
エウロペは、眠るレジィに微笑む。
きっととても…疲れたんだろう。
レジィが眠ってから、ようやく。
エウロペはレジィリアンスの…体に手を触れ、洗い始める。
ぷっくり膨らんだ、赤い乳首や。
体のあちこちに、乱暴に扱われた痣や擦り傷を見つけると。
泣きそうなため息を吐きながら、そっとタオルを滑らせた。
テリュスとエリューンが満腹になって、眠気に襲われ始めた頃。
ラステル配下は
「私はラステル様をお迎えしますので」
と部屋を出て行く。
テリュスとエリューンは、エウロペとレジィがちっとも来ないので。
寝室の、扉を開ける。
大きな、天蓋付き寝台の上で。
レジィリアンスの横にエウロペが。
目を閉じて、眠っていて。
レジィはエウロペの胸に顔を寄せ、安らかな顔で眠っていた。
テリュスとエリューンは二人の眠る姿を、微笑んで見つめた。
ラステル配下の一人が、ラステルが直到着するとの報告を受け、様子を見に入室する。
居間のテーブルの上には、食べ散らかした皿。
ワゴンには、まだたっぷり手の付けられてない食べ物が乗っていた。
けれどソファは誰も居ず、それで寝室をノックした後、そっと開けて覗くと。
大きな寝台の端に、エウロペがレジィリアンスを、抱くように眠り、レジィリアンスはエウロペに、身を寄せて眠っていて。
レジィリアンスの横に、背を向けたテリュスが、背をレジィリアンスの体に触れさせ、眠っていて。
エリューンはテリュスと向かい合わせに、目を閉じ少し微笑を浮かべ、眠っていた。
皆、疲れ切って熟睡してるように見え、配下はくすっと笑い、皆が起きないよう。
扉を、静かに閉めた。
ラステルの馬を先頭に。
ロットバルトがその次。
エルデリオン、そしてデルデロッテの順に、四騎は怒濤の如く駆け込んで来る。
配下は、ラステルの馬の横で叫ぶ。
「レジィリアンス殿はエウロペ殿と、現在奥の間に!」
「ご苦労!」
ラステルは一声返すと、玄関前まで猛スピードで駆け込み、一気に手綱引いて馬の歩を止めると、前足蹴立てる馬の背から飛び降りる。
配下らは玄関扉を開け、一行を中に入れる。
玄関広間に控えてたラステル配下らは、奥の間へと歩くラステルの横に張り付き、それぞれが口々、報告を叫ぶ。
「コルテラフォール侯爵は、地下室で捕縛してあります!」
「アルトバルデ公、レガートは現在、城の護衛管理塔の牢に投獄してあります!」
「レガートは高熱で、事情聴取はいまだ叶いません」
「レジィリアンス様は薬害で、現在記憶を無くしておられ…」
その報告を聞いた途端。
ラステルはピタリ、と歩を止めるので、直ぐ後ろを歩いてたロットバルトは、ラステルの背に突っ込みそうになり。
その後ろを歩いてたエルデリオンは、気づいたデルデロッテに腕を引かれ、すんでの所でロットバルトの背にぶつかって、鼻を打つのを免れた。
「…記憶が無い?
…何一つ、覚えてないのか?」
ラステルに問われ、三人の配下は頷く。
「かろうじて、エウロペ殿の顔と名前は覚えていたようですが。
誰なのかは分からないと。
ですが、テリュス殿やエリューン殿ですら、覚えておられなかったものの、親近感は持っておられ…」
「エウロペ殿は、薬の併用が原因では無いかと」
「ただ、辛い記憶を思い出したくないという、意識が働いていると。
記憶を戻すのに、時間を要するだろうと」
次々に告げられる部下らの報告を聞き、ラステルは俯く。
エルデリオンは目前の、ロットバルトの背を押し退け、ラステルに掴みかかる勢いで、腕を掴んで叫ぶ。
「記憶喪失?!
そう言ったのか?」
ラステルは腕を掴まれ振り向かされ、エルデリオンの必死な表情を見つめる。
「…多分、移動時。
暴れないよう、使われた薬が良くなかった。
希にある事ですが…。
大抵は、記憶が混濁したり、部分的に忘れてしまう程度。
ただ…辛い体験をした場合。
それを思い出したくないと、意識が思い出す事を拒否し…。
他の事まで忘れる場合があり、それが記憶障害となって…覚えてないと言う事態に」
「つまり、私と会っても分からない?!」
「多分」
エルデリオンは、愕然となった。
「私は…私は、直ぐお会いしたい!」
部下がラステルの横から、小声で口挟む。
「…現在、夜通し探索続けたエウロペ殿と。
レジィリアンス様、テリュス様、エリューン様もが。
疲れ切って一つの寝台で、眠っていらっしゃるので…」
それを聞いた途端、エルデリオンは声を潜めて囁く。
「こっそり、覗くだけでもダメか?
起こさないようにするから」
ラステルは笑い、囁き返す。
「それなら、大丈夫でしょう」
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