森と花の国の王子

あーす。

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記憶を無くしたレジィリアンス

突入

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 コルテラフォール侯爵の自宅となってるナゼータ屋敷は、かなり広い敷地で、塔のある立派な屋敷だった。

エルデリオンは門から次々に突入するラステル配下を見送り、じりじりしていた。
ロットバルトもデルデロッテもが、エルデリオンの護衛として門の横に待たされ、皆馬から降りて、ラステルからの合図を待っていた。

ラステル配下はあっという間に、屋敷の敷地に散って行く。
庭園をウロつく者らの仕事は、門から覗い見えたが。
茂みから東屋。
噴水の周辺。
小屋に至るまで、全て見て回っていた。

ロットバルトは感心して、首を縦に振る。
「なるほど。
騎士なら、どこかの隅に隠されていても。
探し出せない」

エルデリオンは心が体から離れ、飛んで行きそうだった。

レジィリアンスの泣き濡れた顔が浮かぶと。
浮き足だってどうにかなりそう。
この状況への怒りと、そして悲しみが一気に押し寄せ、呼吸が苦しいほどだった。

ふ…と、デルデロッテがさり気なく背後に立ち、腕に腕を触れさせる。
ほんのりとデルデの温もりを感じると、突然心が凪いでくる。

大嵐のようだった心が落ち着き、エルデリオンは心の中で、デルデに感謝した。

が、突如馬が猛烈な勢いで門の中へ駆け込んだかと思うと、開け放たれた玄関前に居るラステルに、使者は馬から飛び降り様駆け寄る。

間もなく、ラステルは騎乗し、門に向かって矢のように馬を駆けさせ、門の手前で待つエルデリオンらの横で手綱たづなを引くと、前足蹴立て、いななく馬上で告げた。

「別邸に居るらしいと報告が!
私はちますが、どうします?!」

エルデリオンより先に、ロットバルトが叫んだ。
「コルテラフォール侯爵は、ここに居ないのか?!」

ラステルはさり気なく告げる。
「姿が見えないし、執事は帰ってないと言うので。
そこら中を探していたところ。
が、別の情報で、サガン地域のコテージに向かったのでは無いかと。
エウロペ殿らは、既に向かっているそうです」

エルデリオンは歯ぎしりした。
「…ここで待てば、連れ去った男もレジィリアンス殿にも!
再会出来ると思ったのに!!!」

ラステルは蹴立てた両前足を下ろす馬の背で、とぼけたように言う。
「それ、お叱りですか?」

エルデリオンは歯を剥いた。
「違う!!!
ただ…期待が裏切られ、居ても立ってもいられない!!!」

ラステルはため息交じりに、頷く。
「ほんっと、しぶといですよね…。
けどアルトバルデの魂胆は、分かります…。
我々が紅蜥蜴ラ・ベッタとは関わりが無いと判断し、マークしてないコルテラフォール侯爵なら。
探索から逃れるのではと、渡したんでしょう…」

ラステルは手綱を波打たせると
「なんにしても、こちらにエウロペ殿が居るのが、最大の利点。
まずはコルテラフォール侯爵を押さえないと」
そう言って、拍車かける。

エルデリオンが歯ぎしりしてると。
ロットバルトとデルデロッテはさっさと騎乗し、ロットバルトはもうラステルの後を追い始める。

馬上から、デルデロッテがエルデリオンを見下ろす。
「何してるんです?
置いてきますよ?」

エルデリオンは慌てて横の馬に飛び乗り、手綱を握った。

間もなく、疾風のように駆けるラステルの後を。
遅れまいと馬を急かす、ロットバルトとデルデロッテ、そしてエルデリオンが続いた。


アルトバルデは質素な馬車に乗るよう勧められ、地味ながらもいざとなれば力尽くで連行する気、満々のラステル配下らに促され、しぶしぶ馬車に乗った。

案の定、その後は城の中の、宮中護衛官邸に連れ込まれ、一応小ぎれいだが、窓に鉄柵の付いた、牢獄のような部屋に閉じ込められる。

一応、ソファもあり、水差しとグラスもあるが、まるで罪人のような扱いに、腹を立てまくった。

紅蜥蜴ラ・ベッタはこれからも、自分を利用したいだろうから。
もし、レガートが自分の名など、口にしようものなら。
暗殺者を差し向けるはず。

レガートも命が惜しいので。
自分の名前は、拷問されても告げぬはず。

幾度も扉の外の見張りに
「責任者を呼んで来い!!!」
と、怒鳴っても。
誰も来ない事に、不安を覚えた。

「(…まさか…屋敷を探索してる?!)」

…が。
レジィリアンスの他、紅蜥蜴ラ・ベッタから買った、各国の変態大物らを満足させる、美少年や美少女らは。
簡単には見つけられない部屋に、閉じ込めてある…。

「(…あの場所は、分かるはずが無い。
幾ら、ラステルだろうが)」

しかし心に暗雲が立ちこめ、アルトバルデはイライラと、室内を歩き回った。

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