118 / 418
誘拐計画
デルデロッテの志
しおりを挟む
最後に、ロットバルトがエルデリオンと連れだって席を立ち、階段を降りると。
勝者2名、加えて敗者からエルデリオンが一人を選び、ロットバルトもがもう一人選んで、四名はそれぞれの順位にちなみ、金や銀、胴のブローチを授与された。
貴賓席ではラステルが、前列でただ一人座るレジィリアンスに、背後の席から囁く。
「最高騎士部隊の、新たな隊士を迎える歓迎パーティーが。
この後、東庭園で開かれますが、出席なさいます?
オーデ・フォールでも選りすぐりの騎士らがたくさん、拝めますよ?」
最後の一言で、エウロペはもうレジィが喰い付いたと感じ、軽くラステルを睨む。
レジィは案の定、頬を薔薇色に染めて叫んだ。
「ぜひ、出席したいです!」
エリューンとテリュスは、ラステルの向こうのエウロペが、レジィが振り向いた瞬間顔を下げるのを見て、顔を見合わせ合った。
その後、ラステルは名だたる騎士らの名前を出し、解説を始めるので、レジィは振り向いたまま、わくわくして頷きながら聞き入る。
エウロペの顔が、どんどん下がって行くのを見て、テリュスはとうとう、ため息を吐いた。
「…エルデリオンが14になった頃。
出歩く事も増え、危険も増えるので、腕の立つ王子の守り刀が必要となり、最高騎士部隊の一の若手騎士と呼ばれるアウターゼンが、その地位に就く事となりました。
けれど当時16のデルデロッテが、申し出たんです。
アウターゼンと戦い、勝てば…その地位を自分にくれと。
当時従者は五人いて…。
一番年上の従者長は、デルデロッテに頷き、彼はアウターゼンと戦って…」
「王子の守り刀の地位に就いた」
エウロペがその後の言葉を、顔を下げたままかっさらい、横のデルデロッテは腕組みして呟く。
「…ただでさえ、従者仲間に餓鬼と侮られ、雑用しか割り振られず、エルデリオンの顔はほんの僅かしか拝めないんじゃ、苦労して従者になった意味、ナイでしょう?」
皆、一斉にそう呟く、デルデロッテに振り向く。
レジィがデルデロッテの美しい横顔を見つめ、尋ねた。
「…そんなにしてまで…エルデリオンと一緒に、居たかったの?」
デルデロッテはため息を吐いて顔を下げ…その後上げると、レジィリアンスを見た。
「…初めて城の中で出会ったエルデリオンは、籠の鳥。
大人だらけの中、作法とお行儀良くを押しつけられて、窒息しかけてた。
私は彼に自由を教えた。
けれど…大人達は首を横に振る。
“大国の王子に、それは必要無い”と。
大人に平気で逆らう事の出来たのは、私ぐらい。
…それで…エルデリオンに縋るように見つめられたら…貴方なら、見捨てていけますか?」
レジィリアンスは首を横に振る。
「…私は…幾度も殺されかけたり身の自由を奪われかけたけど、いつもエウロペが護ってくれた。
貴方は、私にとってのエウロペなんだね」
デルデロッテは思わず横の、エウロペを見る。
「…そう思います?」
「レジィにとっては、そうなんだろう」
「貴方の意見は?」
エウロペは、顔を下げたまま呟く。
「…私は本来、王を護るために育てられた。
が、王は自分より王子を護ってくれと」
ラステルが口挟む。
「…つまりエウロペ殿は、降格。
デルデロッテ、貴方は昇格。
立場がそこから、違うようです」
エウロペは“降格”と言う言葉を、レジィが気にしないよう、顔を上げて言い放つ。
「…降格とは、思っていない。
つまり王は、それ程王子を心配し、愛してると言う事で…。
そのお気持ちに応えるため、私は全力を尽くすとお約束した」
デルデロッテが、その後の言葉を即座に引き継ぐ。
「そこは、同じだ。
私は王で無く、エルデリオンの要請だが。
一度餓鬼の頃、エルデリオンを城から連れ出し、盗賊に囲まれた時。
無事、逃げたが私は大怪我負って。
全ての大人に“自業自得だ”と責められて以来。
私はエルデリオンをどこにでも出歩けるようにするため、誰にも負けないよう剣の腕を磨くと、誓ったから」
「…責められたの…?」
皆が一斉に、その声に振り向く。
エルデリオンとロットバルトが戻って来ていて、エルデリオンは階段の上がり口でそう呟き、ロットバルトはエルデリオンの背後で、それ以上進めず困惑していた。
デルデロッテが頷くと、エルデリオンの眉が悲しげに寄った。
「…瀕死だったのに…?」
デルデロッテは肩を竦め…説明する。
「死にかけた晩から生還した、後日の事ですよ。
まだ、良くなるか悪くなるかの瀬戸際だったのに。
やって来たお偉いさんは事情を聞き、揃って首を横に振りまくり。
そして一番偉いヤツが、ぼそりと言った。
“なら怪我は、自業自得。
そんな程度の剣の腕で、王子を城外に連れ出すなんて、どれ程身の程知らずか。
この怪我で死んで、思い知るがいい”
…当然、それを聞いた私は…」
「一気に、治ったんだな?」
エウロペに顔を見られて頷かれ、デルデロッテは隣のエウロペを見つめる。
「…ホントに一気に。
怪我が治った」
テリュスとエリューン、それにレジィリアンスが、それを聞いた途端、目を見開いた。
「…君の性格が、よく分かる逸話だ」
エウロペの言葉に、デルデロッテが尋ねる。
「どんな性格だと思ったんです?」
「反骨精神の塊。
“無理だ”と言われると、猛烈に努力して、その言葉を覆させる」
とうとうラステルがくすくす笑い始めた。
「ええ、デルデロッテは我々が呆れる程、徹底してますね」
エルデリオンの背後の、ロットバルトまでもが肩を竦める。
「常人の、域を超えるほどムキになる。
表情にはまるで出さないで、優雅なフリをしてるから、誰も気づかない。
君が宮廷一の“寝業師”になったのも、どっかの美姫に馬鹿にされたからだろう?」
ラステルが後を継ぐ。
「ニョニッタ嬢でした?」
ロットバルトが、肩を竦める。
「カルロッタ夫人じゃなかったかな?
…確かデルデはまだ15で、私は
“若年の頃は、良く言われる言葉だ”と慰めた記憶がある」
デルデロッテは内情をバラす、年上の“タヌキ”二人を睨み据える。
エルデリオンは背後のロットバルトに振り向き、尋ねた。
「…そんな事が、あったの?」
ロットバルトは頷く。
「貴方は年頃になっていたし、迂闊に遊び好きな男にしないため、情事の話題は貴方の前で、徹底的に規制されていましたからな」
レジィリアンスはデルデロッテを、改めて見つめた。
「じゃ…剣の腕も…情事も。
馬鹿にされたから…国で一番になる程、頑張ったの?」
テリュスもエリューンも、呆れてデルデロッテを見る。
けれどデルデロッテは、軽く肩を竦めた。
「馬鹿にされたら…誰だってそれを覆そうと、自然に努力しませんか?」
「国で一番になる程には…普通、しませんよねぇ…」
テリュスに呆れたように呟かれ、デルデロッテは思わずテリュスを睨んだ。
勝者2名、加えて敗者からエルデリオンが一人を選び、ロットバルトもがもう一人選んで、四名はそれぞれの順位にちなみ、金や銀、胴のブローチを授与された。
貴賓席ではラステルが、前列でただ一人座るレジィリアンスに、背後の席から囁く。
「最高騎士部隊の、新たな隊士を迎える歓迎パーティーが。
この後、東庭園で開かれますが、出席なさいます?
オーデ・フォールでも選りすぐりの騎士らがたくさん、拝めますよ?」
最後の一言で、エウロペはもうレジィが喰い付いたと感じ、軽くラステルを睨む。
レジィは案の定、頬を薔薇色に染めて叫んだ。
「ぜひ、出席したいです!」
エリューンとテリュスは、ラステルの向こうのエウロペが、レジィが振り向いた瞬間顔を下げるのを見て、顔を見合わせ合った。
その後、ラステルは名だたる騎士らの名前を出し、解説を始めるので、レジィは振り向いたまま、わくわくして頷きながら聞き入る。
エウロペの顔が、どんどん下がって行くのを見て、テリュスはとうとう、ため息を吐いた。
「…エルデリオンが14になった頃。
出歩く事も増え、危険も増えるので、腕の立つ王子の守り刀が必要となり、最高騎士部隊の一の若手騎士と呼ばれるアウターゼンが、その地位に就く事となりました。
けれど当時16のデルデロッテが、申し出たんです。
アウターゼンと戦い、勝てば…その地位を自分にくれと。
当時従者は五人いて…。
一番年上の従者長は、デルデロッテに頷き、彼はアウターゼンと戦って…」
「王子の守り刀の地位に就いた」
エウロペがその後の言葉を、顔を下げたままかっさらい、横のデルデロッテは腕組みして呟く。
「…ただでさえ、従者仲間に餓鬼と侮られ、雑用しか割り振られず、エルデリオンの顔はほんの僅かしか拝めないんじゃ、苦労して従者になった意味、ナイでしょう?」
皆、一斉にそう呟く、デルデロッテに振り向く。
レジィがデルデロッテの美しい横顔を見つめ、尋ねた。
「…そんなにしてまで…エルデリオンと一緒に、居たかったの?」
デルデロッテはため息を吐いて顔を下げ…その後上げると、レジィリアンスを見た。
「…初めて城の中で出会ったエルデリオンは、籠の鳥。
大人だらけの中、作法とお行儀良くを押しつけられて、窒息しかけてた。
私は彼に自由を教えた。
けれど…大人達は首を横に振る。
“大国の王子に、それは必要無い”と。
大人に平気で逆らう事の出来たのは、私ぐらい。
…それで…エルデリオンに縋るように見つめられたら…貴方なら、見捨てていけますか?」
レジィリアンスは首を横に振る。
「…私は…幾度も殺されかけたり身の自由を奪われかけたけど、いつもエウロペが護ってくれた。
貴方は、私にとってのエウロペなんだね」
デルデロッテは思わず横の、エウロペを見る。
「…そう思います?」
「レジィにとっては、そうなんだろう」
「貴方の意見は?」
エウロペは、顔を下げたまま呟く。
「…私は本来、王を護るために育てられた。
が、王は自分より王子を護ってくれと」
ラステルが口挟む。
「…つまりエウロペ殿は、降格。
デルデロッテ、貴方は昇格。
立場がそこから、違うようです」
エウロペは“降格”と言う言葉を、レジィが気にしないよう、顔を上げて言い放つ。
「…降格とは、思っていない。
つまり王は、それ程王子を心配し、愛してると言う事で…。
そのお気持ちに応えるため、私は全力を尽くすとお約束した」
デルデロッテが、その後の言葉を即座に引き継ぐ。
「そこは、同じだ。
私は王で無く、エルデリオンの要請だが。
一度餓鬼の頃、エルデリオンを城から連れ出し、盗賊に囲まれた時。
無事、逃げたが私は大怪我負って。
全ての大人に“自業自得だ”と責められて以来。
私はエルデリオンをどこにでも出歩けるようにするため、誰にも負けないよう剣の腕を磨くと、誓ったから」
「…責められたの…?」
皆が一斉に、その声に振り向く。
エルデリオンとロットバルトが戻って来ていて、エルデリオンは階段の上がり口でそう呟き、ロットバルトはエルデリオンの背後で、それ以上進めず困惑していた。
デルデロッテが頷くと、エルデリオンの眉が悲しげに寄った。
「…瀕死だったのに…?」
デルデロッテは肩を竦め…説明する。
「死にかけた晩から生還した、後日の事ですよ。
まだ、良くなるか悪くなるかの瀬戸際だったのに。
やって来たお偉いさんは事情を聞き、揃って首を横に振りまくり。
そして一番偉いヤツが、ぼそりと言った。
“なら怪我は、自業自得。
そんな程度の剣の腕で、王子を城外に連れ出すなんて、どれ程身の程知らずか。
この怪我で死んで、思い知るがいい”
…当然、それを聞いた私は…」
「一気に、治ったんだな?」
エウロペに顔を見られて頷かれ、デルデロッテは隣のエウロペを見つめる。
「…ホントに一気に。
怪我が治った」
テリュスとエリューン、それにレジィリアンスが、それを聞いた途端、目を見開いた。
「…君の性格が、よく分かる逸話だ」
エウロペの言葉に、デルデロッテが尋ねる。
「どんな性格だと思ったんです?」
「反骨精神の塊。
“無理だ”と言われると、猛烈に努力して、その言葉を覆させる」
とうとうラステルがくすくす笑い始めた。
「ええ、デルデロッテは我々が呆れる程、徹底してますね」
エルデリオンの背後の、ロットバルトまでもが肩を竦める。
「常人の、域を超えるほどムキになる。
表情にはまるで出さないで、優雅なフリをしてるから、誰も気づかない。
君が宮廷一の“寝業師”になったのも、どっかの美姫に馬鹿にされたからだろう?」
ラステルが後を継ぐ。
「ニョニッタ嬢でした?」
ロットバルトが、肩を竦める。
「カルロッタ夫人じゃなかったかな?
…確かデルデはまだ15で、私は
“若年の頃は、良く言われる言葉だ”と慰めた記憶がある」
デルデロッテは内情をバラす、年上の“タヌキ”二人を睨み据える。
エルデリオンは背後のロットバルトに振り向き、尋ねた。
「…そんな事が、あったの?」
ロットバルトは頷く。
「貴方は年頃になっていたし、迂闊に遊び好きな男にしないため、情事の話題は貴方の前で、徹底的に規制されていましたからな」
レジィリアンスはデルデロッテを、改めて見つめた。
「じゃ…剣の腕も…情事も。
馬鹿にされたから…国で一番になる程、頑張ったの?」
テリュスもエリューンも、呆れてデルデロッテを見る。
けれどデルデロッテは、軽く肩を竦めた。
「馬鹿にされたら…誰だってそれを覆そうと、自然に努力しませんか?」
「国で一番になる程には…普通、しませんよねぇ…」
テリュスに呆れたように呟かれ、デルデロッテは思わずテリュスを睨んだ。
0
お気に入りに追加
286
あなたにおすすめの小説
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
奴隷騎士のセックス修業
彩月野生
BL
魔族と手を組んだ闇の軍団に敗北した大国の騎士団。
その大国の騎士団長であるシュテオは、仲間の命を守る為、性奴隷になる事を受け入れる。
軍団の主力人物カールマーと、オークの戦士ドアルと共になぶられるシュテオ。
セックスが下手くそだと叱責され、仲間である副団長コンラウスにセックス指南を受けるようになるが、快楽に溺れていく。
主人公
シュテオ 大国の騎士団長、仲間と国を守るため性奴隷となる。
銀髪に青目。
敵勢力
カールマー 傭兵上がりの騎士。漆黒の髪に黒目、黒の鎧の男。
電撃系の攻撃魔術が使える。強欲で狡猾。
ドアル 横柄なオークの戦士。
シュテオの仲間
副団長コンラウス 金髪碧眼の騎士。女との噂が絶えない。
シュテオにセックスの指南をする。
(誤字脱字報告不要。時間が取れる際に定期的に見直してます。ご報告頂いても基本的に返答致しませんのでご理解ご了承下さいます様お願い致します。申し訳ありません)
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる