森と花の国の王子

あーす。

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接近

王妃付き侍女らのお茶会 5

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 けれどレジィリアンスが、エウロペととても楽しそうに話しているのを見て、フランセは横のエルデリオンに囁く。
「…もしかして、恋敵でいらっしゃるの?」

やっぱり言葉を返せないエルデリオンを見、デルデロッテがさり気なく、フォローを入れる。
森と花の王国《シュテフザイン》のお国の方は、そういう風習はないので。
邪推は禁物ですよ」

フランセは再び、扇で口を覆って、デルデロッテへの返答に代えた。

「…では、二領土と王城に…たくさんの贈り物が届くの?」
レジィリアンスの疑問に、エウロペは笑顔で頷く。
「王か王妃様に今度お会いしたら、お礼を言って差し上げて」

エリューンは顔を動かす度、隣のアレキサンドラの胸が視界に入ってしまうらしく、目のやり場に真剣、困り。
テリュスはアルデリッテとシャルロッテの二人に、しきりと
「お髭を剃れば…」
「そうよね。
とてもチャーミングで、お美しい顔立ちなのに」
「もったいないですわ。
どうして隠していらっしゃるの?」
としきりに、髭についてイジられ続け、とうとうエリューンと目を合わせ、お互い頷き合うと、突然同時に椅子を立ち上がり、場所を交換した。

エリューンは今度、アルデリッテとシャルロッテに交互に
「女の子達にいつも、囲まれていらっしゃらない?」
「凄く、素敵なお方ですもの、当然ですわよね?」
と頬染めて言われ、また困り始め。

テリュスもエリューン同様、アレキサンドラの胸が、どうしても視界に入り、目のやり場に困り。
アレキサンドラに
「…どうして、見たいなら思いっきりご覧にならないの?」
と言い返されて、また明るい栗色巻き毛を振って、エリューン側に顔を背けてた。

デルデロッテはくすくす笑うと
森と花の王国《シュテフザイン》のお方は、紳士的ですから」
と告げ、アレキサンドラに
「そうですわね。
堂々と、視線を胸から外さない、貴方と違って」
と言い返された。

デルデロッテは笑うと
「こんな素晴らしい胸を、布も少なく折角見せて頂いてるんですから。
オーデ・フォール中央王国では、見ないと失礼に当たります」
と告げ、テリュスに
「本当か?!」
と叫ばれた。

テリュスの引き吊った叫び声に、また場の美女らは、一斉に声立てて笑う。

結局、アレキサンドラに
「デルデロッテ様の、れ言ですわ!
彼くらい堂々と、私の胸に視線を向ける男性は、オーデ・フォール中央王国ですら、珍しいわ!」
と言われ、テリュスをほっとさせた。

けれどデルデロッテはテリュスを見ると、品良く男らしく告げる。
「覚えておくといい。
もし目前に、胸を突き出されたら、誘われてる。
反対に、扇で隠されたら。
脈無しです」

けれどアレキサンドラは、呆れたように言った。
「あら!
貴方の前で扇で隠す女性なんて、誰一人居ないのでは無くて?」

デルデロッテは隣の、エルデリオンにじっ。と見つめられ、向かいのレジィリアンスにまで見られ、少し、考え込む。

「…アリタ嬢?」

きゃははははは…!!!
女性達は一斉に、笑い転げた。
エーメだけが眉を寄せ、半分笑い顔で囁く。
「あの堅物の令嬢が、胸を露わにするドレスなんて、着る訳ございませんわ?」

デルデロッテは肩を竦めた。
「一度、着ていらっしゃった。
その舞踏会で、気を引きたい男性が、出席していたらしく」
すかさずアレキサンドラが、はすにデルデロッテを見る。
「扇で隠されたのなら、気を引きたい男性は、貴方じゃ無いんですのね?」
デルデロッテは肩を竦める。
「…残念ながら」

ここでまた、美女らは一斉に笑った。

ちっとも分からない、森と花の王国《シュテフザイン》の一同は、アルデリッテに小声で説明された。
「ガリガリでそばかすだらけの、とても頑固な変人の少女ですの。
頭は、とてもいいお方ですけれど…」
シャルロッテも頷く。
「女性らしさがまるで無くって…舞踏会でも、誰にも誘われなくっても平気で。
いつも…緑と赤の変なドレスを着ていて…」
アルデリッテが、頷く。
「ホントに変なデザインですわ。
髪も三つ編み。
花も飾らないで…」

森と花の王国《シュテフザイン》の一同は、レジィリアンスまでもが想像出来て、納得して頷いた。
けれどデルデロッテは言い返す。

「ああいう少女が、いざ年頃になって、魅力的な女性の装いをすれば、別人のように化けますけれどね」

フランセは、意地悪くくすくす笑う。
「もっと…化け物じみた方に?」

美女らは笑ったけれど。
デルデロッテは肩を竦めた。
「…いえ、貴方がたがライバル視するような、魅力的な女性に」

美女らは、デルデロッテの軽口と。
一斉に声を蹴立てて笑い転げた。

デルデロッテだけは。
「…本気なのに」
と肩を竦め、美女らにもっと、笑われた。

そんなさ中、エルデリオンはチラ…と、笑顔を見せるレジィリアンスを見ていた。
エウロペが隣に居ると、とても寛いで…愛らくって、そして美しさは、輝くばかりに見えた。

唇や所作。
どこか…艶をまとって見え、エルデリオンはもっと…彼を欲しい。
く気持ちに捕らわれた。

が、美女らと言葉で応対してるデルデロッテに、肘で軽く腕を小突かれ、はっ!と気づいて、顔を下げ自重した。

けれど圧迫を感じ、顔を上げると。
エウロペの明るい緑の、射抜くような瞳が。
探るように自分を見つめていて、内心注意してくれたデルデロッテに、感謝した。
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