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接近
庭園 その1
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レジィリアンスはエルデリオンと共に、庭園に続く、石の階段を降りる。
チラ…と振り向くと、かなり離れたバルコニーの暗がりに、エウロペらしき姿が見え、距離を置いてこちらに向かって、歩いて来るのを見て、安心した。
それでレジィリアンスは、庭園を案内するエルデリオンを見上げながら、躊躇った後、切り出した。
「…あの…馬車での事ですけれど…」
エルデリオンは不安そうに、俯くレジィリアンスを覗き込む。
「…ええ」
レジィリアンスは躊躇っては顔を上げ、横のエルデリオンを見上げ…。
また顔を下げては、言いにくそうに口ごもる。
とうとうエルデリオンは見かねて
「あの…お話はちゃんと伺います。
そちらの…東屋に、腰掛けませんか?」
と誘った。
裸婦の持つ壺から、水が流れ落ちる彫刻と、小薔薇のアーチの向こうに。
白い円形の屋根と柱のある、屋外の休憩場所。
頷くレジィリアンスを見、エルデリオンはそっと誘った。
階段を二段上がると、周囲は小薔薇のついたてで目隠しされ、籐椅子に薄紫色のクッションの敷き詰められた、四人ほどが座れそうな、大きくお洒落な椅子があった。
レジィリアンスは勧められるまま、腰掛ける。
奥まっていて、とても落ち着く場所だった。
庭園のあちこちにランプが吊されていたから、暗い中に明かりが灯り、幻想的に見える。
咲き乱れる花々の、どこかの陰に。
きっとエウロペはちゃんと居て…叫べば、駆けつけてくれると確信していた。
それで…レジィリアンスはようやく、話を切り出せた。
「あの…普通、男の人同士では…あんな…つまりその…お尻…を、使うんですか?」
「不快でしたか?」
不安げに眉をひそめたエルデリオンに、即問われ、レジィリアンスは真っ赤になったけど。
エルデリオンが心底、心配そうに覗き込むので、また顔を下げて囁く。
「あの…初めてで、良く…わからなかったんですけれど…。
あの…時、僕…凄く、変になって…」
「変?」
「…あの………。
おかしくなって…。
その…ああいうの…って…普通…なんですか?
僕…だけじゃなくって…他の人も…同じになる?」
エルデリオンはレジィリアンスに見上げられ、どう返答して良いか、思いつかず固まった。
レジィリアンスはまた、俯くと、小声で囁く。
「…あの…こんな…こと、テリュスやエリューンは当然ですけれど、エウロペにも…恥ずかしくって、聞けなくて…」
エルデリオンはようやく意味が分かりかけて、顔を下げ、呟く。
「お国には風習が無いのですから…。
当然、知識もございませんよね…。
あの…私は貴方を…」
エルデリオンは言い淀み、けれどレジィリアンスに振り向くと、思い切って言った。
「…少女だと…思っていました。
ずっと私も、女性ばかり相手していましたので、少年と知れば、諦められると思ったのですが…」
レジィリアンスは、“…が”の所で、エルデリオンを見上げる。
エルデリオンは視線を自分の膝の上の手に向け、囁く。
「…森でお会いした貴方が…あんまりお美しくて、愛らしくて…。
結局忘れる事が、出来ませんでした」
エルデリオンは何とか…レジィリアンスの問いに答えようと、思い巡らしながら、言葉を選ぶ。
「…ですから、私もさ程、少年については、詳しく存じません。
ただ…」
「…ただ?」
エルデリオンは戸惑った後、レジィリアンスを見つめ、言葉を返す。
「…女性もそうなんですけれど…その、刺激を受けて…ああいう反応を示されると大抵は…その、感じていらっしゃって。
慣れない内は、分からないかも知れませんけれど、その刺激が…心地よくなり、求めるものだと…。
思っていたので、まさかそれ程、嫌がられていたと、気づかずに………」
レジィリアンスは真っ赤に頬を染め、小声で囁く。
「…あの…ああいうのを“感じてる”…って、言うんですか?
僕…女性ともした事無くて…。
ただ自分が…偶然覗き見した、女の人が男の人と…してる時の…。
その、女の人みたいじゃないか…って。
凄く、恥ずかしくって。
だって普通男の人は…女性みたいには、ならないでしょう?
その…情事の時でも」
レジィリアンスは真っ赤に成りつつ、言い切って俯く。
けれどエルデリオンは、苦笑した。
「あの…失礼ですが、女性に…男の印を口に入れてもらった事は?
ございませんか?」
レジィリアンスは一瞬思い浮かばず…エルデリオンに口に含まれた事を思い出し、真っ赤に成ると、顔を下げた。
その様子が、あんまり可愛らしくて…エルデリオンは思わず微笑む。
「…いえ…一度も、ございません」
エルデリオンはその返答に頷くと、そっ…と安心させるようにレジィリアンスの、椅子の上に置かれた手に手を添え、囁く。
「…その…。
私はよく女性に…してもらいますが、そんな時だと…。
男性も、女性ほどでは無いでしょうが…感じて、受け身っぽくなりますね」
レジィリアンスはエルデリオンの手が触れた時、一瞬ピクン!と反応したけれど、強引で無かったので、跳ね退けなかった。
そして手に、エルデリオンの温もりを感じたまま、恥ずかしそうに俯き、言葉を返した。
「…そう…なんですか…」
チラ…と振り向くと、かなり離れたバルコニーの暗がりに、エウロペらしき姿が見え、距離を置いてこちらに向かって、歩いて来るのを見て、安心した。
それでレジィリアンスは、庭園を案内するエルデリオンを見上げながら、躊躇った後、切り出した。
「…あの…馬車での事ですけれど…」
エルデリオンは不安そうに、俯くレジィリアンスを覗き込む。
「…ええ」
レジィリアンスは躊躇っては顔を上げ、横のエルデリオンを見上げ…。
また顔を下げては、言いにくそうに口ごもる。
とうとうエルデリオンは見かねて
「あの…お話はちゃんと伺います。
そちらの…東屋に、腰掛けませんか?」
と誘った。
裸婦の持つ壺から、水が流れ落ちる彫刻と、小薔薇のアーチの向こうに。
白い円形の屋根と柱のある、屋外の休憩場所。
頷くレジィリアンスを見、エルデリオンはそっと誘った。
階段を二段上がると、周囲は小薔薇のついたてで目隠しされ、籐椅子に薄紫色のクッションの敷き詰められた、四人ほどが座れそうな、大きくお洒落な椅子があった。
レジィリアンスは勧められるまま、腰掛ける。
奥まっていて、とても落ち着く場所だった。
庭園のあちこちにランプが吊されていたから、暗い中に明かりが灯り、幻想的に見える。
咲き乱れる花々の、どこかの陰に。
きっとエウロペはちゃんと居て…叫べば、駆けつけてくれると確信していた。
それで…レジィリアンスはようやく、話を切り出せた。
「あの…普通、男の人同士では…あんな…つまりその…お尻…を、使うんですか?」
「不快でしたか?」
不安げに眉をひそめたエルデリオンに、即問われ、レジィリアンスは真っ赤になったけど。
エルデリオンが心底、心配そうに覗き込むので、また顔を下げて囁く。
「あの…初めてで、良く…わからなかったんですけれど…。
あの…時、僕…凄く、変になって…」
「変?」
「…あの………。
おかしくなって…。
その…ああいうの…って…普通…なんですか?
僕…だけじゃなくって…他の人も…同じになる?」
エルデリオンはレジィリアンスに見上げられ、どう返答して良いか、思いつかず固まった。
レジィリアンスはまた、俯くと、小声で囁く。
「…あの…こんな…こと、テリュスやエリューンは当然ですけれど、エウロペにも…恥ずかしくって、聞けなくて…」
エルデリオンはようやく意味が分かりかけて、顔を下げ、呟く。
「お国には風習が無いのですから…。
当然、知識もございませんよね…。
あの…私は貴方を…」
エルデリオンは言い淀み、けれどレジィリアンスに振り向くと、思い切って言った。
「…少女だと…思っていました。
ずっと私も、女性ばかり相手していましたので、少年と知れば、諦められると思ったのですが…」
レジィリアンスは、“…が”の所で、エルデリオンを見上げる。
エルデリオンは視線を自分の膝の上の手に向け、囁く。
「…森でお会いした貴方が…あんまりお美しくて、愛らしくて…。
結局忘れる事が、出来ませんでした」
エルデリオンは何とか…レジィリアンスの問いに答えようと、思い巡らしながら、言葉を選ぶ。
「…ですから、私もさ程、少年については、詳しく存じません。
ただ…」
「…ただ?」
エルデリオンは戸惑った後、レジィリアンスを見つめ、言葉を返す。
「…女性もそうなんですけれど…その、刺激を受けて…ああいう反応を示されると大抵は…その、感じていらっしゃって。
慣れない内は、分からないかも知れませんけれど、その刺激が…心地よくなり、求めるものだと…。
思っていたので、まさかそれ程、嫌がられていたと、気づかずに………」
レジィリアンスは真っ赤に頬を染め、小声で囁く。
「…あの…ああいうのを“感じてる”…って、言うんですか?
僕…女性ともした事無くて…。
ただ自分が…偶然覗き見した、女の人が男の人と…してる時の…。
その、女の人みたいじゃないか…って。
凄く、恥ずかしくって。
だって普通男の人は…女性みたいには、ならないでしょう?
その…情事の時でも」
レジィリアンスは真っ赤に成りつつ、言い切って俯く。
けれどエルデリオンは、苦笑した。
「あの…失礼ですが、女性に…男の印を口に入れてもらった事は?
ございませんか?」
レジィリアンスは一瞬思い浮かばず…エルデリオンに口に含まれた事を思い出し、真っ赤に成ると、顔を下げた。
その様子が、あんまり可愛らしくて…エルデリオンは思わず微笑む。
「…いえ…一度も、ございません」
エルデリオンはその返答に頷くと、そっ…と安心させるようにレジィリアンスの、椅子の上に置かれた手に手を添え、囁く。
「…その…。
私はよく女性に…してもらいますが、そんな時だと…。
男性も、女性ほどでは無いでしょうが…感じて、受け身っぽくなりますね」
レジィリアンスはエルデリオンの手が触れた時、一瞬ピクン!と反応したけれど、強引で無かったので、跳ね退けなかった。
そして手に、エルデリオンの温もりを感じたまま、恥ずかしそうに俯き、言葉を返した。
「…そう…なんですか…」
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