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大国オーデ・フォール
北の離宮
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日が傾き始めた頃、草原に流れる小川を渡った先に見えて来た、城へと辿り着く。
王城よりは小さな城だけど、それでもかなり大きな城で、青錆の門には金色の王家の紋章が飾られていた。
ラステルが背後に振り向き
「王家の北の離宮です」
と叫ぶ。
エウロペは頷き、離宮だと言うのに青い尖った屋根と灰色の壁の、大きな城に目を見張るレジィリアンスを促した。
馬から降りると、直ぐ馬丁らが現れ、手綱を渡すよう手を差し出す。
レジィリアンスはエウロペを見習って手綱を渡し、エウロペの横に付いて城の玄関階段を上がり、中へと入った。
高い天井から、洒落た大きなシャンデリアの下がった広い踊り場には、左右に大きな二階へと続く階段があった。
ラステルが左側の階段を、エウロペに指し示す。
「二階へお上がり下さい。
召使いが控えておりますので、ご案内と…お世話を致します」
エウロペは頷くと、レジィリアンスに振り向いた。
が、レジィリアンスは右側の階段をデルデロッテと並んで上がり始める、エルデリオンを呆けた様子で覗ってる。
それでそっとレジィリアンスの背に手を当て、左側の階段へと導いた。
階段の先の廊下も広く、靴音が響く。
召使いに扉を開けられ、部屋に入る。
やはり豪華なシャンデリアの下がった、広く洒落た居間で、暖炉が炊かれ、その周囲に美しい金刺繍の施された赤いソファが並んでいた。
横の部屋から、召使いが姿を現し
「お食事の用意が出来ておりますが、先に湯に浸かられますか?」
と尋ねる。
けれどレジィリアンスはお腹が空いていたので
「先に食事しても、いい?」
とエウロペに尋ね、頷くエウロペらと共に、素晴らしいご馳走を堪能した。
食後、直ぐ眠くなってうとうとすると、エウロペに抱き上げられて、天蓋付きの寝台に横たえられる。
「いいから、お眠りなさい」
エウロペの…頼もしい声が子守歌に聞こえ、レジィリアンスは目を閉じ眠りに落ちた。
右の階段上の豪華な部屋で、エルデリオンは食卓を囲みフォークを使い、頬張ってるデルデロッテに視線を送る。
食後、食堂の横の、暖炉があって寛げる小部屋のソファで、デルデロッテと食後酒を嗜みながら、小声で尋ねた。
「君、男性とも経験ってあったの?」
デルデロッテは考え込むように上を見つめ、その後横の、一人掛けソファに座るエルデリオンに視線を向け、微笑んだ。
「それは、抱いた、と言う事ですか?」
そう聞かれて…宮廷一の美少年で、数多の貴公子に愛を乞われるサンドリオン伯爵子息、エドアルドに熱烈に惚れられ、宮廷で会うたび迫られ続けてる。
と噂を耳にしたのを思い返し
「…いや、もういい」
と告げた。
デルデロッテはグラスを口に持って行き、尋ねる。
「…つまりどう、レジィリアンス殿を寝技に持って行くか。
私に尋ねたい?」
エルデリオンは図星を指され、頬染めて顔を下げる。
「…けど君、今迫ると彼に嫌われると…」
「…でも、抱きたい?」
エルデリオンはもっと顔を下げ、頷く。
「…本心は」
丁度その時、ロットバルトが部屋に入って来て…その会話を耳にした途端、回れ右して部屋を出て行った。
デルデロッテは不服そうに、年上の事実上従者頭であるロットバルトの、その態度に眉をひそめた。
「…恋愛関係は、私に押しつける気だ」
けれどエルデリオンは、下げた顔を上げて、旧知の友、デルデロッテを見つめる。
「だって君は。
誰より経験豊富だろう?
宮廷舞踏会で、君が名だたる美女に囲まれてるのを見て、ロットバルトが耳打ちしたんだ。
『取り巻く全部の女性と、既に関係を持ってる』
ロットバルトを見たら、首を横に振りまくっていたから…。
『貴方には、考えられない事態ですか?』
と聞いたら
『当然でしょう?
普通恋とは。
好きな相手に好きになって貰えたら、それが幸福。
多数の女性と同時に付き合うなんて…どれだけの面倒事か』
と呆れてたから」
デルデロッテはそれを聞き、もっと眉をひそめた。
「…ならこの場合、ロットバルトの方が適切な相談相手のはず…」
エルデリオンは呆れて告げた。
「…君、言い寄られたエドアルドとも関係を持ったんだろう?
ロットバルトは
『どうして女性とあれだけ付き合って、少年にまで手を出せるのか。
理解出来ない』
と言ってたし…ロットバルトは少年は苦手の様子だったから…」
デルデロッテはそれを聞いて、大きなため息を吐いた。
「…彼ぐらい、マトモな恋愛感を持ってる重臣も珍しい。
大抵の宮廷貴族は、妻が居ても愛人を三人以上抱えるのが当たり前。
時折つまみ食いで少年にも手を出し、道徳観念はずいぶん爛れてるから」
エルデリオンにじっ…と見つめられ、デルデロッテは気づいて囁く。
「…ああ。
レジィリアンス殿を寝台に連れ込む技ですか?」
エルデリオンは聞くなり真っ赤に成りながら、しっかり頷く。
「…君たちは強姦と言い、レジィリアンスには嫌がられてたみたいだったけど…。
凄く…最高だったから、諦めきれない」
デルデロッテは頬杖ついて、ため息交じりに告げる。
「さぞかし初々しく、愛らしかったんでしょうね」
エルデリオンは即答した。
「そりゃあ、もう…」
そう、思い返してはため息を吐く。
デルデロッテは眉間を寄せると
「あんまり思い出すと、悶々としてまた眠れなくなり、私にヌかれないと眠りにつけなくなりますよ」
と釘刺した。
エルデリオンは今度はデルデロッテの濃厚な舌使いを股間に感じ、もじって俯く。
「…君にされたら…どんな相手でも君にぞっこんになるだろうな…」
デルデロッテはため息交じりに囁く。
「まあ、王宮に着くまでは我慢なさい。
そしてもし、今度レジィリアンス殿を押し倒せたら。
私のやり方を思い出し、ひたすら尽くしなさい。
それを数度続ければ、今度はあっちの方から『して』と、ねだって来る。
そうなれば機会を見つけ、その先に進めば良い」
エルデリオンは感心して、デルデロッテを見た。
「…つまり君のやり方って…相手が君を求めるように持って行くやり方なんだな?」
デルデロッテはにっこり微笑んだ。
「そうなればロットバルトの言う所の、面倒事はほぼ、起きない。
次も私と寝ようと思ったら。
私がその女性を避けるような事態を決して作らないよう、相手の女性の方が、気を使ってくれますから」
エルデリオンはそれを聞いて、頷き倒した。
「レジィリアンス殿が私を欲してくれれば。
エウロペ殿もあんなきつい瞳で、もう私を睨まないだろうね…」
デルデロッテは同意の頷きをし、エルデリオンの空のグラスに酒を注ぎ
「今夜は酔い潰れて、お眠りなさい」
と囁いた。
王城よりは小さな城だけど、それでもかなり大きな城で、青錆の門には金色の王家の紋章が飾られていた。
ラステルが背後に振り向き
「王家の北の離宮です」
と叫ぶ。
エウロペは頷き、離宮だと言うのに青い尖った屋根と灰色の壁の、大きな城に目を見張るレジィリアンスを促した。
馬から降りると、直ぐ馬丁らが現れ、手綱を渡すよう手を差し出す。
レジィリアンスはエウロペを見習って手綱を渡し、エウロペの横に付いて城の玄関階段を上がり、中へと入った。
高い天井から、洒落た大きなシャンデリアの下がった広い踊り場には、左右に大きな二階へと続く階段があった。
ラステルが左側の階段を、エウロペに指し示す。
「二階へお上がり下さい。
召使いが控えておりますので、ご案内と…お世話を致します」
エウロペは頷くと、レジィリアンスに振り向いた。
が、レジィリアンスは右側の階段をデルデロッテと並んで上がり始める、エルデリオンを呆けた様子で覗ってる。
それでそっとレジィリアンスの背に手を当て、左側の階段へと導いた。
階段の先の廊下も広く、靴音が響く。
召使いに扉を開けられ、部屋に入る。
やはり豪華なシャンデリアの下がった、広く洒落た居間で、暖炉が炊かれ、その周囲に美しい金刺繍の施された赤いソファが並んでいた。
横の部屋から、召使いが姿を現し
「お食事の用意が出来ておりますが、先に湯に浸かられますか?」
と尋ねる。
けれどレジィリアンスはお腹が空いていたので
「先に食事しても、いい?」
とエウロペに尋ね、頷くエウロペらと共に、素晴らしいご馳走を堪能した。
食後、直ぐ眠くなってうとうとすると、エウロペに抱き上げられて、天蓋付きの寝台に横たえられる。
「いいから、お眠りなさい」
エウロペの…頼もしい声が子守歌に聞こえ、レジィリアンスは目を閉じ眠りに落ちた。
右の階段上の豪華な部屋で、エルデリオンは食卓を囲みフォークを使い、頬張ってるデルデロッテに視線を送る。
食後、食堂の横の、暖炉があって寛げる小部屋のソファで、デルデロッテと食後酒を嗜みながら、小声で尋ねた。
「君、男性とも経験ってあったの?」
デルデロッテは考え込むように上を見つめ、その後横の、一人掛けソファに座るエルデリオンに視線を向け、微笑んだ。
「それは、抱いた、と言う事ですか?」
そう聞かれて…宮廷一の美少年で、数多の貴公子に愛を乞われるサンドリオン伯爵子息、エドアルドに熱烈に惚れられ、宮廷で会うたび迫られ続けてる。
と噂を耳にしたのを思い返し
「…いや、もういい」
と告げた。
デルデロッテはグラスを口に持って行き、尋ねる。
「…つまりどう、レジィリアンス殿を寝技に持って行くか。
私に尋ねたい?」
エルデリオンは図星を指され、頬染めて顔を下げる。
「…けど君、今迫ると彼に嫌われると…」
「…でも、抱きたい?」
エルデリオンはもっと顔を下げ、頷く。
「…本心は」
丁度その時、ロットバルトが部屋に入って来て…その会話を耳にした途端、回れ右して部屋を出て行った。
デルデロッテは不服そうに、年上の事実上従者頭であるロットバルトの、その態度に眉をひそめた。
「…恋愛関係は、私に押しつける気だ」
けれどエルデリオンは、下げた顔を上げて、旧知の友、デルデロッテを見つめる。
「だって君は。
誰より経験豊富だろう?
宮廷舞踏会で、君が名だたる美女に囲まれてるのを見て、ロットバルトが耳打ちしたんだ。
『取り巻く全部の女性と、既に関係を持ってる』
ロットバルトを見たら、首を横に振りまくっていたから…。
『貴方には、考えられない事態ですか?』
と聞いたら
『当然でしょう?
普通恋とは。
好きな相手に好きになって貰えたら、それが幸福。
多数の女性と同時に付き合うなんて…どれだけの面倒事か』
と呆れてたから」
デルデロッテはそれを聞き、もっと眉をひそめた。
「…ならこの場合、ロットバルトの方が適切な相談相手のはず…」
エルデリオンは呆れて告げた。
「…君、言い寄られたエドアルドとも関係を持ったんだろう?
ロットバルトは
『どうして女性とあれだけ付き合って、少年にまで手を出せるのか。
理解出来ない』
と言ってたし…ロットバルトは少年は苦手の様子だったから…」
デルデロッテはそれを聞いて、大きなため息を吐いた。
「…彼ぐらい、マトモな恋愛感を持ってる重臣も珍しい。
大抵の宮廷貴族は、妻が居ても愛人を三人以上抱えるのが当たり前。
時折つまみ食いで少年にも手を出し、道徳観念はずいぶん爛れてるから」
エルデリオンにじっ…と見つめられ、デルデロッテは気づいて囁く。
「…ああ。
レジィリアンス殿を寝台に連れ込む技ですか?」
エルデリオンは聞くなり真っ赤に成りながら、しっかり頷く。
「…君たちは強姦と言い、レジィリアンスには嫌がられてたみたいだったけど…。
凄く…最高だったから、諦めきれない」
デルデロッテは頬杖ついて、ため息交じりに告げる。
「さぞかし初々しく、愛らしかったんでしょうね」
エルデリオンは即答した。
「そりゃあ、もう…」
そう、思い返してはため息を吐く。
デルデロッテは眉間を寄せると
「あんまり思い出すと、悶々としてまた眠れなくなり、私にヌかれないと眠りにつけなくなりますよ」
と釘刺した。
エルデリオンは今度はデルデロッテの濃厚な舌使いを股間に感じ、もじって俯く。
「…君にされたら…どんな相手でも君にぞっこんになるだろうな…」
デルデロッテはため息交じりに囁く。
「まあ、王宮に着くまでは我慢なさい。
そしてもし、今度レジィリアンス殿を押し倒せたら。
私のやり方を思い出し、ひたすら尽くしなさい。
それを数度続ければ、今度はあっちの方から『して』と、ねだって来る。
そうなれば機会を見つけ、その先に進めば良い」
エルデリオンは感心して、デルデロッテを見た。
「…つまり君のやり方って…相手が君を求めるように持って行くやり方なんだな?」
デルデロッテはにっこり微笑んだ。
「そうなればロットバルトの言う所の、面倒事はほぼ、起きない。
次も私と寝ようと思ったら。
私がその女性を避けるような事態を決して作らないよう、相手の女性の方が、気を使ってくれますから」
エルデリオンはそれを聞いて、頷き倒した。
「レジィリアンス殿が私を欲してくれれば。
エウロペ殿もあんなきつい瞳で、もう私を睨まないだろうね…」
デルデロッテは同意の頷きをし、エルデリオンの空のグラスに酒を注ぎ
「今夜は酔い潰れて、お眠りなさい」
と囁いた。
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