森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの過去の夢

解けた誤解

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「…ひっ…ひ…ひっ…」

気まずい沈黙の中、響き渡るテリュスのしゃっくり。
とうとう横のロットバルトが、無造作に横のテリュスの背を、バン!と叩き、テリュスはまたびっくりして突然しゃっくりが止まり、横のロットバルトに、感謝の代わりに幾度も頷く。

ロットバルトは無言でテリュスの頷きに頷きで応え、その後エルデリオンに怒鳴った。
「略奪者の貴方に逆らったら!
頼りである第一従者のエウロペ殿と引き離されると、レジィリアンス殿は心配され…あまりの心細さに、貴方の行為への嫌悪感よりもエウロペ殿を失うまいと…健気にも耐えたのです!」

エルデリオンは慣れ親しんだロットバルトの説明に、途端表情をほぐし、囁く。
「あの…私をそんな…暴君だと…?
お思いになったのですか?」
横でデルデロッテが、すました顔で囁く。
「彼を手に入れる為、国を攻め父王を負傷させれば普通、気性の荒い暴君だと思われても当たり前なのでは?」

エルデリオンは一気に、顔を下げた。
ラステルが、ちょっと皮肉交じりに囁く。
「我々は貴方の気性が、分かっています。
普段は大変穏やかで、気遣いの出来る優しいお方だと。
けれど…」

「…分かった…。
私の行動が、レジィリアンス殿の誤解を生んでいるんだな?」

やっとそう言い、エルデリオンは顔を上げてレジィリアンスを見る。
あれ程…愛らしく微笑んでいた彼が。
今や怯えきった可愛らしいウサギのように見え、気の毒に感じた。

「…エウロペ殿を貴方から…引き剥がそうとするなんて…考えてもいません。
…確かに…邪魔をされれば腹立ちも致します。
が、ちゃんと話をし…行動に理解出来れば…処分はまず、致しません」

その時、エルデリオンは三人の頼りになる従者らですら…レジィリアンスに恋してからの自分を、自我を押し通す暴君と…思い始めてると気づく。

エルデリオンは目前の…レジィリアンスを見る。
愛しい…長い金の、波打つ髪に覆われた、愛らしい人。
ただ彼と…楽しい恋が、したかっただけ。
彼の側にずっと居て…その愛らしい姿を眺め、ずっと寄り添っていきたいと…渇望した、だけなのに…。

ロットバルトが、静かに。
労るように告げる。

「貴方もまだ16。
年若い。
けれど貴方が8才の時。
レジィリアンス殿のように突然国に攻め入られ…父王を負傷させられ、馬車に乗せられ…強引に奪われたとしたら…」

エルデリオンが顔を上げ、ロットバルトにすっとんきょうな声で尋ねる。
「…8才…?」

ロットバルトが眉を寄せ、デルデロッテに視線を向けて囁く。
「…確か…自慰を初めてしたのが、9才だと。
君は言ってなかったか?」

エルデリオンは頬を真っ赤にすると、横のデルデロッテを見る。
デルデロッテは少しも狼狽えず、肩を竦めた。
「だって君。
自慰は凄く恥ずかしい事のように、言ってたし。
そんな事するのは罪深いとか、途方も無く馬鹿げた事を言い出すものだから…」

そして周囲を見回し、皆が見てる事を確認すると、こっそり小声で尋ねる。
「その後の…別になんでもない事だと教えるため、私がした事も…話して良いのか?」
と聞いた。

ラステルが目を丸くして、平静な声で尋ねる。
「…まさか…君が、手助けしたのか?」

デルデロッテは肩すくめる。
「私だって、11かそこら。
女中と侍従がいつも…致してる所へ忍んで行って
“大人になれば、ああする。
けれど勃たない事には、男はナニも出来ないから。
大人になるには、必要な事だ”
と、実地で見せて、教えたんだ」

が、頬を染めて顔を下げてるエルデリオンに
「…私の許可無く、暴露してるじゃ無いか…」
とぼやかれ、デルデロッテは肩すくめた。
「だって、私の誤解を解かないと」

とうとうエリューンにこっそり、くすくす笑われ…。
テリュスも声を殺して笑い始めた。

レジィリアンスは笑うエリューンとテリュスを交互に見つめ、目を見開く。
エルデリオンは気まずそうに顔を下げると
「ええと…」
と言い、とうとうレジィリアンスもつられてくすくす、笑い出した。

エルデリオンは笑われてちょっとがっかりしたけど。
でも打ちひしがれたようなレジィリアンスの様子が、打ち解けたように微笑むのを見、心からほっとした。

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