森と花の国の王子

あーす。

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エルデリオンの過去の夢

夢から覚めたエルデリオン

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「森と花の王国〔シュテフザイン〕の皆は…」
「食事を終え、森の中を散歩していらっしゃる。
レジィリアンス殿が落ち着くとの事で」

エルデリオンはラステルの報告に、食事の手を止め尋ねる。
「…少数で出歩いて、大丈夫か…?
今やレジィリアンス殿は中央王国〔オーデ・フォール〕の花嫁候補と…既に知れ渡ってる」

ラステルは苦笑する。
「エウロペ殿がご一緒なら。
心配には及びません。
あのお方を、どう思っていらっしゃるんです?」

エルデリオンはその皮肉がこもる口調に、少し眉を寄せて尋ねた。
「…君の見立ては?」

ラステルは肩を竦めた。
「私なら、絶対あのお方を、敵に回したくありませんね。
一旦敵となれば。
死闘を覚悟せねば」

エルデリオンはびっくりした。
けれどロットバルトは食べながら頷き、デルデロッテはグラスを回す。
「…デルデ…君も…?
同意見か?」

デルデロッテは目線を上げると宙を見て、独り言のように呟く。
「…まあ…死なずに倒せれば、良く出来た方です」

エルデリオンは目利きの彼らの意見に、押し黙った。

食事を終え、立ち上がろうとした時。
突然股間が熱くなって、エルデリオンは慌てて腰を下ろす。

「…っ!」

ロットバルトがその様子に目を見開き、横で同様立ち上がる、デルデロッテに視線を送る。

ラステルにも視線を向けられ、デルデロッテは肩を竦めた。
「君たちは、出発の準備にかかってくれて良い。
こちらが落ち着き次第、王子を私が連れて降りるから」

言いながら、ソファにかけるエルデリオンの側へと歩き出す。

ロットバルトとラステルは軽く頭を振って一礼し、扉を開けて出て行く。

エルデリオンは夢で見たばかりだったから。
デルデロッテを意識し、頬を赤く染めて俯く。
「…自分で出来る…」
「…それはそうでしょうが…。
幾ら年頃とはいえ、溜まりすぎでしょう?」

エルデリオンはぎょっ!として、顔を上げる。
デルデロッテは横に腰掛け、股間を覗き込んでいた。
「き…き…聞きたかったんだ!
昨夜のアレは…!」

デルデロッテは艶やかな男の色香漂う雰囲気全開で、横の焦るエルデリオンを見る。

「…だって、ああでもしないと。
レジィリアンス殿に振られた今、貴方眠れないでしょう?
睡眠不足でぼーっとして。
また、レジィリアンス殿に襲いかかって強姦したら。
私達はエウロペ殿を敵に回し、死闘ですからね」

そしてまだぱんぱんの、エルデリオンの股間を見る。
「…昨夜のあの様子では。
レジィリアンス殿に襲いかかっても、無理ない。
そちらの事情はあまり聞きませんでしたが…。
戦の準備中、宮廷で。
相手をしてくれる女性らと、過ごさなかったんですか?」

エルデリオンは俯く。
「…手ほどきの…少年達と、数回…。
それ以外は…思っているレジィリアンス殿を、裏切るようで…」

デルデロッテはびっくりして、顔を上げた。
「浮気してる気がして、節制して…本人相手に強姦ですか?
…レジィリアンス殿にしてみれば…例え浮気だろうが、宮廷の女性らとせいぜいヌいて。
襲って欲しくなかったでしょうね…」

エルデリオンはとうとう、頬を真っ赤に染めて、怒鳴った。
「強姦、してない!」
「それは貴方がそう思ってるだけで。
レジィリアンス殿にしてみれば、強姦ですよ」

エルデリオンは恥ずかしげに、頬染めて俯く。
「…けど…ちゃんと、ほぐしたし…」
「どこで、止まらなくなったんです?
まあ…こんなご様子じゃ、ちょっと彼と触れただけで。
おっ勃って、引っ込みが付かなかったんでしょう?」

エルデリオンは自分の股間を見つめて目を伏せてる、デルデロッテの長いまつげを見つめた。
「…こんな風に話すのは…ここ数年無かったな…」

デルデロッテは顔を上げる。
「…そりゃ昔は従者頭で堅物の、ラザフォードが居ましたからね。
彼は貴方が勃たせる度、私を睨み付け
“絶対煽ったり、直接的な発言をするな!”
と言い含めましたから」

エルデリオンは呆れてデルデロッテを見た。
「…だって…君は上から物を言われても、大人しく従う性格じゃ無い…」

デルデロッテは、ため息吐いた。
「あんまり聞かないと、貴方の側に居る職務から、外されて雑用ばかりになる…。
けれど私があんまり顔を出さないと、貴方に尋ねられるから。
一瞬顔を出すだけで。
後は貴方から遠く離れた、雑務をやらされた」

デルデロッテは思い直し、にっこりと微笑む。
「けれど裏工作した甲斐あって、大臣職にあの堅物を推薦し、無事昇進させて追い出せましたから。
今こんな話題で会話しても、誰にも咎められない。
で、ご自分で出来るとおっしゃった?
やはり顔を背けてた方が、しやすいですか?」

突然尋ねられ、エルデリオンは頷く。
「部屋を出てくれれば…」

デルデロッテは鮮やかに笑いながら、立ち上がる。
「扉の、外に居ます」

デルデロッテの濃い栗毛が翻り、扉が閉まると。
昨夜の濃厚な…デルデロッテの手と口でもたらされた快感が蘇り、腰が震えて来る…。

切なくなって、やっぱりデルデロッテに…手でしたもらえば良かったかな。
と後悔し…股間をはだけると自身を手で握る。

昨日味わった、レジィリアンスの中を想像しようとした。
けれど思い浮かぶのは、デルデロッテの濃厚な舌使い…。

エルデリオンはパチ…と閉じかけた目を開ける。

そして改めて“中央王国〔オーデ・フォール〕宮廷、一の床上手”
と呼ばれたデルデロッテの、実力を思い知った。
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