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宿屋での取り決め
止まる馬車
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馬車が、止まった。
エルデリオンが気づき、馬車を降りる。
“…そう言えばラステルが、馬車の後に続くロットバルトの元へ行き、戻る様子を窓から見た気がした”
レジィリアンスとの濃密な時を過ごした感激と疲労で…しどけない姿のレジィリアンスを抱き寄せたまま、幸福感に浸っていたから、上の空だった。
「…休憩か?」
馬から降りてる最中のラステルに、エルデリオンは声をかける。
ラステルは地に足をつけ様、振り向き頷く。
「レジィリアンス殿には、休憩が必要かと」
ラステルの慇懃無礼な物言いに、いつもなら引っかかるエルデリオンだったが。
あまりの幸福感に包まれていたから、気にもならない。
直ぐ、馬車に取って返す。
中ではレジィリアンスが慌てて、ぐったりと力の入らない手で必死に、衣服を直そうともがいてた。
エルデリオンはその可愛らしい様子に、笑みを漏らす。
乗り込むとレジィリアンスは恥ずかしげに、上体を屈めて自らの曝された股間を隠した。
「…少し、休むそうです」
言って、エルデリオンは正直、このままレジィリアンスを抱き上げ、寝室まで運びたかった。
が、こんなしどけなく初々しい色香をまとった彼を。
自分以外の者の目に、触れさせたく無い。
「…私がしたのですから。
お手伝いさせて下さい」
そう囁きながら近寄ると、レジィリアンスは恥ずかしげに顔を俯け、背を向ける。
「…お一人で…上着があげられますか?」
けれどレジィリアンスは首を横に振り…片手でもう片方の袖を引き、脱ごうとしていた。
「…一人で、出来ます…。
あの…直ぐ降りなくては…ダメですか?」
レジィリアンスのか細い声に、エルデリオンは戸惑いながら囁く。
「いえ…。
皆に貴方を待たせますから、大丈夫です」
レジィリアンスは頷くと、片袖脱いで腕の自由を取り戻し、一生懸命ズボンを引き上げ始めた。
けれどもう片袖は腕を通ったまま。
気づいて腕から滑り下ろすと、両手でズボンを引き上げた。
エルデリオンはため息を吐く。
けれど見られまいと背を向け、顔を俯けて胸のはだけたシャツを直すレジィリアンスに、声がかけられず、待った。
ボタンをはめ、脱いだ白の上着を着け直し…ようやく、振り向く。
エルデリオンは先にステップを降り、戸口にやって来るレジィリアンスに、手を差し伸べた。
レジィリアンスは一瞬、躊躇って歩を止める。
体が勝手に、がたがたと震え始め、何とか止めようとしても無理…。
体の奥が、じんじんと熱をもって熱い。
今だエルデリオンの…それが、蕾の奥に入っている感触がし、ついさっき起こった事をレジィリアンスに、まざまざと痛感させた。
唇や…乳首や股間に、エルデリオンの舌や唇の生々しい感触が蘇り、レジィリアンスはそれを思い出すまいと渾身の努力で、意識から切り離そうと試みる。
なかなか降りようとしないレジィリアンスに、エルデリオンは視線を向けた。
そしてステップを一段上がり、手をレジィリアンスの目前に差し伸べる。
レジィリアンスは、差し出された目前の手を見た。
…自分を弄び…抱きしめて放さなかったその手を。
けれどエルデリオンの手は、それでも白く、上品で綺麗に見えた。
でもどうしても…一歩が踏み出せない。
その理由を自分の中で探った時。
ぼんやりと霞む頭の中、気づく。
きっともう、馬車の中で何が起こったか。
エウロペ達は、知っているはず…。
あんな……あんな恥ずかしい事をされて…。
恥ずかしい、声を聞かれ…。
その事を知られている人々の前に、姿を現さなければならない…!
その事に思い当たると、泣き崩れてしまいそうで、必死で自分を叱咤する。
仮にも、王位継承者…。
“どんな事があろうと、しゃんとしていなければ、国民が不安に陥ります”
エウロペの声が脳裏に蘇る。
けど…!
エウロペやエリューン、テリュスに。
どんな顔をすればいい?
…恥ずかしくて顔が、上げられない。
けれどレジィリアンスはその時、エルデリオンの端正な顔が自分を見つめているのに気づく。
途端、レジィリアンスは目を伏せた。
今や自分は王位継承者では無く…“花嫁”という名の、人質。
エルデリオンは略奪者で、彼に逆らう事は出来ない……。
その事を思い出すと、レジィリアンスは泣き伏してしまいたかった。
けれど…!
自分がそんな様子で…きっと、エウロペにうんと心配をかけてしまう…。
レジィリアンスは美しく優雅な貴人エルデリオンの、差し出された手に、震える手を乗せる。
そしてゆっくり、ステップへと足を着き、馬車から降りた。
うんと顔を下げ、長い豪奢な波打つ金髪で顔を隠す。
エルデリオンは導くように、手を握ったまま先へと促した。
けどエルデリオンの手のぬくもり、それこそが…!
レジィリアンスを絶望に、突き落とす。
“この先きっと、さっきのような事を幾度も…。
エルデリオンの欲しい時、欲しいまま…否応なくされる…”
それに気づいた時、レジィリアンスは身が震うのを止められなかった。
傾き始めた陽光。木々の香りと葉ずれの音。
そして…馬車と二人を取り囲む、護衛達の気配。
エウロペはどう、思ってるだろう…?
彼はまた、笑いかけてくれるだろうか。
こんな恥ずかしい事をされた自分に…。
レジィリアンスは悲しくてたまらなかった。
顔を伏せたまま、エルデリオンに付き添われ、宿屋の入り口を潜る。
入ってすぐの左手の階段に導かれ、顔を深く俯けたまま、一緒に階段を上がった。
エルデリオンが気づき、馬車を降りる。
“…そう言えばラステルが、馬車の後に続くロットバルトの元へ行き、戻る様子を窓から見た気がした”
レジィリアンスとの濃密な時を過ごした感激と疲労で…しどけない姿のレジィリアンスを抱き寄せたまま、幸福感に浸っていたから、上の空だった。
「…休憩か?」
馬から降りてる最中のラステルに、エルデリオンは声をかける。
ラステルは地に足をつけ様、振り向き頷く。
「レジィリアンス殿には、休憩が必要かと」
ラステルの慇懃無礼な物言いに、いつもなら引っかかるエルデリオンだったが。
あまりの幸福感に包まれていたから、気にもならない。
直ぐ、馬車に取って返す。
中ではレジィリアンスが慌てて、ぐったりと力の入らない手で必死に、衣服を直そうともがいてた。
エルデリオンはその可愛らしい様子に、笑みを漏らす。
乗り込むとレジィリアンスは恥ずかしげに、上体を屈めて自らの曝された股間を隠した。
「…少し、休むそうです」
言って、エルデリオンは正直、このままレジィリアンスを抱き上げ、寝室まで運びたかった。
が、こんなしどけなく初々しい色香をまとった彼を。
自分以外の者の目に、触れさせたく無い。
「…私がしたのですから。
お手伝いさせて下さい」
そう囁きながら近寄ると、レジィリアンスは恥ずかしげに顔を俯け、背を向ける。
「…お一人で…上着があげられますか?」
けれどレジィリアンスは首を横に振り…片手でもう片方の袖を引き、脱ごうとしていた。
「…一人で、出来ます…。
あの…直ぐ降りなくては…ダメですか?」
レジィリアンスのか細い声に、エルデリオンは戸惑いながら囁く。
「いえ…。
皆に貴方を待たせますから、大丈夫です」
レジィリアンスは頷くと、片袖脱いで腕の自由を取り戻し、一生懸命ズボンを引き上げ始めた。
けれどもう片袖は腕を通ったまま。
気づいて腕から滑り下ろすと、両手でズボンを引き上げた。
エルデリオンはため息を吐く。
けれど見られまいと背を向け、顔を俯けて胸のはだけたシャツを直すレジィリアンスに、声がかけられず、待った。
ボタンをはめ、脱いだ白の上着を着け直し…ようやく、振り向く。
エルデリオンは先にステップを降り、戸口にやって来るレジィリアンスに、手を差し伸べた。
レジィリアンスは一瞬、躊躇って歩を止める。
体が勝手に、がたがたと震え始め、何とか止めようとしても無理…。
体の奥が、じんじんと熱をもって熱い。
今だエルデリオンの…それが、蕾の奥に入っている感触がし、ついさっき起こった事をレジィリアンスに、まざまざと痛感させた。
唇や…乳首や股間に、エルデリオンの舌や唇の生々しい感触が蘇り、レジィリアンスはそれを思い出すまいと渾身の努力で、意識から切り離そうと試みる。
なかなか降りようとしないレジィリアンスに、エルデリオンは視線を向けた。
そしてステップを一段上がり、手をレジィリアンスの目前に差し伸べる。
レジィリアンスは、差し出された目前の手を見た。
…自分を弄び…抱きしめて放さなかったその手を。
けれどエルデリオンの手は、それでも白く、上品で綺麗に見えた。
でもどうしても…一歩が踏み出せない。
その理由を自分の中で探った時。
ぼんやりと霞む頭の中、気づく。
きっともう、馬車の中で何が起こったか。
エウロペ達は、知っているはず…。
あんな……あんな恥ずかしい事をされて…。
恥ずかしい、声を聞かれ…。
その事を知られている人々の前に、姿を現さなければならない…!
その事に思い当たると、泣き崩れてしまいそうで、必死で自分を叱咤する。
仮にも、王位継承者…。
“どんな事があろうと、しゃんとしていなければ、国民が不安に陥ります”
エウロペの声が脳裏に蘇る。
けど…!
エウロペやエリューン、テリュスに。
どんな顔をすればいい?
…恥ずかしくて顔が、上げられない。
けれどレジィリアンスはその時、エルデリオンの端正な顔が自分を見つめているのに気づく。
途端、レジィリアンスは目を伏せた。
今や自分は王位継承者では無く…“花嫁”という名の、人質。
エルデリオンは略奪者で、彼に逆らう事は出来ない……。
その事を思い出すと、レジィリアンスは泣き伏してしまいたかった。
けれど…!
自分がそんな様子で…きっと、エウロペにうんと心配をかけてしまう…。
レジィリアンスは美しく優雅な貴人エルデリオンの、差し出された手に、震える手を乗せる。
そしてゆっくり、ステップへと足を着き、馬車から降りた。
うんと顔を下げ、長い豪奢な波打つ金髪で顔を隠す。
エルデリオンは導くように、手を握ったまま先へと促した。
けどエルデリオンの手のぬくもり、それこそが…!
レジィリアンスを絶望に、突き落とす。
“この先きっと、さっきのような事を幾度も…。
エルデリオンの欲しい時、欲しいまま…否応なくされる…”
それに気づいた時、レジィリアンスは身が震うのを止められなかった。
傾き始めた陽光。木々の香りと葉ずれの音。
そして…馬車と二人を取り囲む、護衛達の気配。
エウロペはどう、思ってるだろう…?
彼はまた、笑いかけてくれるだろうか。
こんな恥ずかしい事をされた自分に…。
レジィリアンスは悲しくてたまらなかった。
顔を伏せたまま、エルデリオンに付き添われ、宿屋の入り口を潜る。
入ってすぐの左手の階段に導かれ、顔を深く俯けたまま、一緒に階段を上がった。
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