上 下
20 / 27

第20話 『空中は危険だらけ』

しおりを挟む
ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。



著者:ピラフドリア



第20話
『空中は危険だらけ』




 俺達はキラービーという蜂に囲まれていた。人のような体型をしており、サイズも人と変わらない。



「か、囲まれたよ!?」



 俺はジンベイザメの上で剣と盾を構える。



「足場が悪いわ! こっちは不利よ!」



 レジーヌも新しい片手剣を持ち、低い姿勢になる。



「って言ってもこの子のスピードじゃ逃げられないよォォォォォ!!!!」



 エイコイは涙目になりながらも、両腰につけた短剣を抜いて、二刀流で構えた。



 キラービーは全部で九匹だ。それが円状にジンベイザメを囲んでいる。
 数も足場もこっちが不利だ。だが、それでもやるしかない。



「来るよ!!」



 レジーヌが叫ぶと同時にキラービー達が一斉に向かってきた。お尻についた針を突き刺そうと俺達を狙う。
 俺は盾で一匹のキラービーから身を守る。



「ちょ、まっ!?」



 だが、一匹から攻撃を守れても相手は複数だ。もう一匹のキラービーが盾をすり抜けて俺を狙ってきた。



「うぉぉぁぁぁぁあっちょ!?」



 俺は盾を前に突き出し、盾に塞がれていたキラービーを一匹突き飛ばして距離を取る。そして向かってきたキラービーには剣を振り回して対抗した。



 俺が適当に振り回した剣だが、運良くキラービーの針を切り落とす。そしてさらにキラービーの胴体も切り裂くことに成功し、一匹のキラービーを撃退した。



 単に運が良く上手くいっただけだったが、これで自信が出てくる。
 そんな俺の元に盾で突き飛ばしていたキラービーが体制を立て直して向かってきた。



 一匹のキラービーを倒したことで自身を手に入れた。そのおかげでキラービーが針を突き刺そうとしてきても、冷静でいられることができた。



 俺は剣と盾を構え直す。そしてドミニクの授業で教わったことを思い出す。
 実践訓練ばかりであったが、その中でも学びはあった。



 キラービーの進行方向を予想し、盾で攻撃を防ぐ。そして攻撃が防がれて動きが止まったところに、剣を振り下ろしてキラービーを撃退した。



「ふぅ、やった、やったぞ!!」



 俺は向かってきたキラービーのうち、二匹を撃退した。そして残るキラービーを倒そうと振り返ると。



「はぁはぁ、ど、どうにかなった~」



「私にかかればこんなもんよ」



 エイコイは二匹。レジーヌは三匹を倒して終えていた。



「相棒も終わったのか……」



 エイコイはヘトヘトになりながらも、剣をしまい汗をハンカチで拭く。
 二匹のキラービーを倒すのにエイコイはかなり苦労した様子。
 それに比べて、



「アンタ達、そんな程度でへばってるの? なっさけないわね~」



 レジーヌは三匹倒し、俺達よりも一匹多いことで自慢げにしている。



 レジーヌの自慢げな顔にイライラしながらも、キラービーを倒せたことにホッとする。



「どうにかなって良かったよ」



 俺は剣をしまい、盾を下ろす。エイコイも武器をしまうと、ジンベイザメの頭を撫でて背中で戦闘していたことを謝る。



 ジンベイザメに謝り終えたエイコイは



「この辺りはキラービーが縄張りにしてるみたいだね。バルーンオクトパスはここにはいないみたいだ、少し移動してみるか」



「そうね、そうしましょうか」







 エイコイの判断でジンベイザメに移動してもらい、渓谷を進む。そうしてしばらく空中を進んでいると、



「見つけたぞ!!」



 ジンベイザメの先頭で前方を見ていたエイコイが声を上げた。
 俺とレジーヌはエイコイの後ろから前方に目をやる。すると、前にある渓谷の壁、そこに穴が空いておりそこから赤い触手が飛び出していた。



「あれがバルーンオクトパスの腕だ。風船のように空気を含んでいて、触手もパンパンに膨れてる」



 エイコイに言われて俺はじーっと触手を見てみると、確かに触手はパンパンに膨れていた。



「あれがバルーンオクトパスならさっさと討伐しようぜ。そうすれば、スカイパールだって手に入るんだろ?」



 俺がそう言うが、



「待て」



 っとエイコイが止めた。エイコイは身体の向きを後ろに変えて、俺達と向き合う。



「バルーンオクトパスはそこまで戦闘力の高い動物じゃない。だからこそ、ウィンクさんはバルーンオクトパスを倒して取れるスカイパールを今回の修行にしたんだ」



「うん。なら、早く倒せば……」



「だが、よく考えてくれ。ここは空中なんだ、さっきのキラービーは上手く倒せたが、バルーンオクトパスは空を飛ぶ動物だ。こっちが不利だ」



 言われてみれば、そうだ。さっきは運が良かったため、皆無事だったが、次も上手くいくとは限らない。


 エイコイは人差し指を立てる。



「だから、バルーンオクトパスを地上に誘き寄せる。そうすることが今回の議題だ」



「地上に誘き寄せるか……。でも方法があるのか?」



 俺が聞くと、エイコイは困った様子で目を逸らした。



 どうするかは考えていないようだ。



 俺も腕を組んで作戦を考える。



「前のドラゴンの時みたいに怒らせて呼び寄せるか?」



「そうだなぁ、どうやって怒らせるのかが問題だよ。ドラゴンの時と違って近づくと攻撃してくるだろうし、距離を取らないと」



「そうか~」



 俺はいくつか案を出すが、エイコイにダメ出しされて却下になる。そうやって話し合って考えていると、話し合いに参加していなかったレジーヌが、バルーンオクトパスの方を見ながら、



「ね、ねぇ……怒らせた後はどうするの?」



 突然そんなことを聞いてきた。
 エイコイはレジーヌの方を向かずに適当に答える。



「そりゃ~、地上まで全力で逃げるんだよ」



 エイコイが答える中。嫌な予感がした俺は、レジーヌの先にいるバルーンオクトパスの方を見てみる。
 すると、さっきまで触手しか出ていなかったはずが、バルーンオクトパスは顔を出してこちらのことを睨んでいた。



「なぁ、レジーヌ……何やったんだ?」



 俺は渋々尋ねると、レジーヌはハハハと乾いた声で笑った後、



「魔法で小石生成して投げてみたの……そしたら…………怒っちゃった」



「………………」



 俺の表情と怒っちゃったと言う単語に、エイコイは顔を青くしながら振り向く。振り向いた先で真っ赤な顔で起こり、今にも飛びかかってきそうなバルーンオクトパスを見たエイコイは、



「なんてことしてんだァァァァァ!! 逃げろォォォォォ!!!!」



「「だよねぁぁ!!」」



 エイコイが叫び、ジンベイザメに移動をお願いする。俺とレジーヌは武器を手にして臨戦体制になった。



「レジーヌ。お前がやらかしたんだ、何かあったらしっかりやれよ!!」



 俺がレジーヌに怒鳴ると、レジーヌは剣を構えながら怒鳴り返す。



「なによ!! クッズに言われなくても分かってるわよ!!」



 エイコイの指示でジンベイザメが動き出す。目指すのは渓谷の頂上である陸地だ。
 エイコイはジンベイザメの先頭でジンベイザメに指示を出す。その間、俺とレジーヌはジンベイザメの後ろで戦闘できる体制になる。
 もしもバルーンオクトパスが追ってくれば、エイコイを守りながらバルーンオクトパスと戦うことになる。



 予想通り、バルーンオクトパスは巣穴から飛び出し宙を浮くと、俺達を追い始める。
 空を飛ぶ速度はジンベイザメとさほど変わらないが、少しバルーンオクトパスの方が早いようだ。



 ゆっくりと確実に距離を詰められている。



「どーすんよ!! どーすんだよォォォォォ!!!!」



 俺は追ってくるバルーンオクトパスを見ながら叫ぶ。
 30メートル以上ある巨体をうねらせて、バルーンオクトパスは中を浮く。触手で空中に捕まり、蜘蛛の巣を這う蜘蛛のように空を移動していた。



「このままじゃ追いつかれるわよ!!」



 レジーヌは剣を構えながら、後ろでジンベイザメを操っているエイコイに叫びかける。



「分かってるよ!! これが全力だ!! もし追いつかれてもどうにか引き離してくれよ!!」



 そんな無茶な……。



 そうやって空を移動して、後少しで地上に出れるというところだったが、



「イヤァァァァァァ!! 追いつかれたァァァァァ!!」



 バルーンオクトパスの触手がジンベイザメのお尻に触れた。
 俺が涙目になる中、レジーヌは剣でバルーンオクトパスの触手を切り落とす。



「なに泣いてるのよ、さっさと対処しなさい。そうしないとひっくり返されて落とされるよ!!」



「わ、分かってるよ!!」










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...