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第11話 『侵入大作戦?』

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ギルドでNo.1の冒険者パーティに見習いとして加入することになった俺は、最強の冒険者として教育される。



著者:ピラフドリア



第11話
『侵入大作戦?』




 レジーヌがロープで拘束した俺とエイコイを連れて、山賊の拠点へ向かう。入り口の前では槍を持った山賊が見張りをしていた。



「おい、そこの新入り!」



 レジーヌが入り口に近づくと、見張りの一人が気づいて駆け寄ってくる。



「なんだそいつらは?」



 見張りに声をかけられ、俺達はビクッと肩を震わせた。レジーヌまで驚いてしまい、バレないか心配だっただ。



「近くの村で捕まえてきました」



「子供を……何か悪さをしたのか?」



「いえ、若い奴の方が美味しいかなと!!」



「食うの!?」



 レジーヌの発言に見張りはドン引きしている。
 本当にレジーヌに侵入役を任せて良かったのか……心配が増す。



「ま、まぁ、理由はどうあれ。捕らえてきたなら牢屋に入れておけ。チンヨウ様の実験に使えるだろ」



「はい!!」



 奇跡的に上手くいき、見張りが門を開けて中へ入れてくれた。中では山賊達がせっせと働いている。
 本当に山賊というよりも集落感が強い。それぞれの家もあるし、畑もあって生活感がある。



「牢屋はあっちだ。鍵をかけるのを忘れるなよ」



 見張りの人はレジーヌを新入りと勘違いしているのだろう。親切に場所まで教えてくれた。
 俺はエイコイにこっそりと話しかける。



「思ったんだが、レジーヌって山賊っぽいんだな。やっぱり悪人顔だもんな」



「それ僕も思ったよ。女王様気取りの山賊のボスみたいな!!」



 コソコソと喋っていると、レジーヌが俺とエイコイの頭にチョップを喰らわした。



「聞こえてるわよ」



 俺とエイコイをロープで引っ張り、教えてもらった牢屋へと案内する。牢屋があるのは入り口から左に曲がってすぐの木造の建物のようで、扉を開けると竹で作った檻が並んでいた。
 牢屋の中は誰もいない様子。実験台だなんだって話をしていたから、もっと捕まっている人がいるのかと思っていた。



 誰も近くにいないのを確認し、建物の扉を閉める。これで侵入は成功だ。



 俺とエイコイはホッとして座り込む。



「はぁ、どうにか侵入できた~」



「僕、ヒヤヒヤして手汗でベトベトだよ~」



 アジトの中へは侵入することができた。これで侵入するという計画は成功した。



「なぁ、レジーヌ早く解いてくれよ」



 俺はローブを解くようにレジーヌに伝える。
 俺は今、エイコイと背中をくっつけて離れられないようにロープで繋がれている状態。移動中はエイコイが正面を向いており、俺はずっと後ろ向きで歩いていて大変だった。



 侵入することが出来たのだから、さっさと解放してほしい。エイコイと長い間くっついているのは嫌だ。



 しかし、俺とエイコイが早く外してくれとレジーヌに頼み込むと、レジーヌは腕を組み俺達を見下ろす。
 そして頬をニヤリと上げた。



「これはこれで楽しそうね……」



「「おい、何考えてるんだ!!」」



 嫌な予感を感じ取った俺とエイコイは声を上げる。しかし、レジーヌはスッと体を回転させて背を向けた。



「私はチンヨウを捕まえに行ってくるわ。アンタ達、クズどもは自由にやりなさい」



「「自由にやるって、解放してから……!!」」



 レジーヌは足元の影に吸い込まれるように沈んでいき、俺達を無視して姿を消してしまった。
 取り残された俺とエイコイ。



「どうする、エイコイ……」



「そうだな、まずは脱出を……」



 俺とエイコイは立ち上がってどうにかロープを外せないか暴れてみる。自由に動かせるのは足だけ、両手はロープで拘束されており、動かすことはできない。
 ここは牢屋だし、ロープを切れそうなものも見つからない。



 どうしようかと俺達が悩んでいると、牢屋の入り口から消えが聞こえてきた。



「おい、牢屋から声がしたって本当かよ?」



「本当だって、今は誰もいないはずなのに……」



「あー、そういえば、さっき新入りっぽい奴が何か連れてたような……」



「新入り? そんな話は……」



 声は徐々に近づいてきて、ついには扉を開いた。そして牢屋の廊下でロープで拘束された俺とエイコイと目が合う。



 俺達が今いるのは牢屋の建物と言っても、牢屋は左右にある柵だ。そして俺達は牢屋の外にいる。当然、この山賊から見たら脱走したように見える。



「は、はろ~」



「本当に人を捕まえてたのか!? てか、脱走してる!?」



 山賊は俺達を発見すると腰につけていた剣を手に取る。



「「やばいぃぃぃっ!?」」



 せっかく侵入したのに見つかってしまった。しかも今はエイコイと繋がれた状態だ。こんな状態ではあっさりと捕まって、本当に牢屋行きだ。



「脱走したのか!! どうやって出たのかは知らないがその状態で逃げられると思うなよ」



 山賊の二人は剣を片手にジリジリと近づいてくる。俺達は子供で、しかもロープで拘束されているというのにかなり警戒している。
 この二人の山賊はかなりのビビリなのだろうか。



 しかし、発見した山賊は腰が引けていて、これならどうにかなるかもしれない。俺は小さな声でエイコイに提案する。



「エイコイ、この二人を倒すぞ」



「え!? 本気か!?」



「ああ、相手は慣れてないみたいだ。……どうにかなるかもしれない」



 戦闘に慣れていないとはこちらも同じ。しかし、向こうはこちらが拘束されているため、油断はしているはずだ。
 そこに勢いよく突っ込めば、動揺させて隙を作れるかもしれない。



「…………わっ、分かったよ!! どうせやるしかないんだ。やってやる!!」



 エイコイも覚悟を決め、やる気になった。となれば、あとはやるだけだ。



「セーっので行くぞ」



「ああ」



「せーっの!!」



 俺とエイコイは横向きになる。お互いが正面を向くことはせず、横を正面にする。
 そして二人してカニ歩きになって、二人の山賊に向かって走り出した。



「「うおおおぉっぁぁぁっ!?」」



「「む、向かってきたァァァ!?」」



 山賊の二人は反撃されると想定していなかったようで、俺達の行動し動揺を現す。
 そして剣で対応しようとするが、反応が遅れて俺達のタックルで押し倒された。



 左右に倒れた山賊達。二人は俺とエイコイの正面に倒れる。剣を落として、焦っている二人を俺達は蹴って蹴りまくった。
 タックルされてビビり散らかしていた山賊の二人は、顔や喉を何度も蹴られる。拘束されて力が入りにくい状態とはいえ、急所に当たったのか、二人の山賊は泡を吹いて気絶した。



「倒せた……」



「まぁ、奇跡みたいなものなんだけど」



 エイコイは倒せたことに驚いている様子。確かにエイコイの言う通り、ほぼ奇跡だ。
 この山賊達が予想以上に弱かったために奇跡的に気絶させることが出来た。



「エイコイ、山賊が持ってた剣でどうにかロープを切れないか?」



 俺は山賊が落とした剣でロープを切れないか試してみる。しかし、自由なのは足だけだ。
 剣を持ち上げることすらできない。



「どうしよう……」



 この状態ではロープすら切れず、何もできない。ロープを切ることに苦戦していると、先ほど山賊を倒した時の物音が聞こえたのか、外が騒がしくなる。
 ゾロゾロと牢屋の入り口に山賊が集まり始めた。



「マズイよ、ユウ!! 山賊が集まってきてる!!」



 エイコイが外の様子に焦り始め、その緊張からか汗をかき始めた。俺も汗をかいてはいるが、それ以上に汗だくになっており、滝のように流れる汗は接触している俺にも流れてきて気持ち悪い。



 しかし、このままでは俺もエイコイも山賊に見つかり、捕まってしまう。てか、ほぼ捕まっているような状況だが、本気で捕まったらどうなるかわからない。
 どうにか脱出しなければ……。



「どうしよう!? どうしようぅぅっ!?」



 エイコイが顔を振って、汗を撒き散らしながら混乱する中、俺は何か手段がないか考える。そしてある手を思いついた。



「エイコイ、俺に提案があるんだ……。上手くいくかは分からないが、やるか?」










 山賊は牢屋の入り口の前に集まり始める。



「さっきゲリゾーとハマピーが牢屋に入ってから、変な音したが大丈夫か?」



「捕まえてきたやつをいじめようとして反撃にでもあったんじゃないか?」



 牢屋の様子を見に行ってから戻ってこない二人を心配する山賊達。一人の山賊が扉の前に立ち、扉を開けようとした時。



「「うぉぉぉっりゃぁぁぁっ!!!!」」



 扉が勢いよく開き、開けようとしていた山賊は扉にぶつかり転がる。



「痛いなぁ、何するんだ……よ……………!?」



 仲間が勢いよく開けたのかと思った山賊だが、いざ牢屋から出てきた二人組を見ると、それは見慣れた顔じゃなかった。
 まだ毛も生えていないような男の子が二人。しかもロープで繋がれて背中合わせになっている状態で牢屋から出てきた。
 牢屋の奥に目をやると、中では仲間の山賊の二人が倒れている。



「このガキども!! 仲間を!!」



 子供の登場に驚いた山賊達は一瞬反応が遅れたが、牢屋の中で気絶している仲間を見てやっと状況を理解した。
 そして武器を取り出して構える。









「ねぇ、本当にやるの!? できるの!? 本気なの!?」



「やるしかないだろ!!」



 心配そうなエイコイを説得し、俺は背中をくっつけているエイコイを持ち上げる。エイコイは俺の背中に乗っかり、背中合わせの状態で足を上げた。そしてその足で山賊が落とした剣を拾い上げる。



「俺が足になる。だからお前が武器になれ!!」



「うぉぉっ!? もうこうなったらやけだ!! やるよ!! やってやるぅ!!」



 俺の背中に乗っかった状態のエイコイは、剣を両足で挟んで武器を構えた山賊に剣を向けた。
 俺とエイコイの姿に山賊達は頭にハテナを浮かべる。



「なんだこのガキどもは……」



「そんな状態で俺達に刃向かう気かァ?」



 俺はエイコイを正面にするため背中を向けているためよく見えない。



「ユウ、進めぇ!!」



「おう!!」



 そのため俺はバックで進んで山賊に突撃した。奇妙な状態の俺達に山賊は油断していたのか、突撃すると動揺を見せる。
 エイコイは足をバタバタさせて剣を振っているだけなのだが、上手くいきまずは正面にいた山賊を数名倒すことができた。



「うぉっ!? コイツら意外と強いぞ!?」



「マジかよ!?」



 仲間がやられ、焦り出す山賊。そんな山賊とは違い、エイコイは倒したことで、



「これは行けるかもしれない!! ユウ、……いや、相棒、これは行ける、行けるぞ!!」



 調子に乗り始めた。



 俺のことを相棒呼びにし、調子に乗って剣をブンブン振り回す。調子に乗れば痛い目に遭いそうなところだが、意外と上手くいき、次々と山賊を倒していく。
 そうして山賊を倒していくうちに、俺もなんだか自信がついてきて、



「よっしゃぁ!! 行けるぜ、エイコイ……いや、相棒!! このまま山賊を全滅させるぞ!!」



「だな!! そうと決まれば、倒して倒して倒しまくれ!!」



 俺もエイコイのことを相棒と呼ぶ。どんどん強気になり、もう怖いものがなくなってきた。
 そんな俺達とは違い、山賊は勢いがなくなり、俺達にビビり始める。



 本来なら俺達に負けることはないだろうが、このふざけた格好ということがプレッシャーになっているのか、山賊は俺達に蹴散らされる。



 山賊の一部が怖気付いて撤退を始めた頃。



「大変だ!! チンヨウさんが、チンヨウさんがァ!!!!」



 アジトの奥にいた山賊の一人が焦った様子で駆け寄ってくる。



「チンヨウさんが怒ってる!!!!」










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