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最終話

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前回迄のあらすじ

風谷さんと五条さんが新たに俺の家に暮らし始めた。
大体の察しはついていたけど、こうもハチャメチャになると流石に俺も疲れてしまう。
何やら勝手に話が進んでいたみたいで夜、俺のベッドの隣で誰が寝るだの、ことちゃんの記憶を取り戻す手段として俺の家に暮らす様雫さんから話が出てしまった為に・・・
学校へ登校した後、俺宛ての手紙を渡される。
何やら殺意溢れる文面の様に受け取れる気もしないでは無かったその手紙の宛名は、俺、中城浩輔ではなく、櫻木名義だった。
俺が櫻木を名乗っていたのは結構前だった。
その名前を知っていると言う事は・・・
ことちゃんの記憶と関連しているのだろうか?
過去のことちゃんや俺を狙った事件の関係者か?
実際にその手紙に書かれていた神社へ放課後俺は向かった。
するとそこに待ち受けていた人物は・・・
秋澤 彩華(あきざわ いろは)
いや、本当の名前は白鳥澤(しらとりざわ) 彩華
櫻木家を襲おうとしていた犯人の娘だった。
俺の力を見たいと言った彩華は俺に勝負を挑んで来た。
神社にはいつもの3人の女子がいたり、相手が女の子と言う事に抵抗があった俺は
実力を出さない方向で進めようとしていたが、ことちゃんの首に短刀を当てた。
流石の俺もしらを切る事が出来ずに勝負を受けた。
だが、直ぐに勝負はついてしまう。
白鳥澤家は既に俺の両親が消滅させた・・・
あの忌々しい事件として・・・
だが、彩華は元より俺に敵意は無く、昔事件の現場にいた彩華が俺がことちゃんを助け出す姿をしっかりと見ていて、それで俺に惚れ込んでしまっていた様だった。
こうして改めて過去の事件は幕を閉じた事を確信し、平穏な日常が戻ったかの様に思われたのだが・・・
新たに転入して来た1人の女子生徒がいた。
そう・・・白鳥澤、いや、秋澤彩華である。
どうやら雫さんも彩華の遡上を理解し、受け入れたみたいだ。
そこまでは良かったのだが、俺たちが帰宅した時だった・・・

家の中から出て来たのは紛れも無く秋澤彩華だった。
どうやら雫さんから自宅の鍵を渡されていたみたいだ。
こうして無理矢理3人から4人の美少女たちが俺の自宅へまたしても、またしても!?
入居者が増えてしまったのだ・・・

ことちゃん、早く記憶を取り戻そう!
そして本当に俺の平穏である日常を取り戻そう!!










♪チュンチュン・・・チュンチュン



「ん・・・んん・・・く、苦しい・・・」

「zzz・・・zzz」



目覚めの悪さに、唸りながら俺が無理矢理目を開ける。



「・・・・・・・・・・・」

「zzz・・・zzz」



目を開けると俺は締め付けられた状態である事を悟った。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「zzz・・・zzz・・・」



さて、この後俺はどうしたでしょう?



ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!



正解は、大声で叫んだ・・・



「デジャヴ?」

「ん・・・何だ?もう朝か?」

「いやいやいやいやいや!!おかしいって完全に!?何なのこれ?毎日毎日同じ状態?」

「ふぁぁぁぁぁ~♪今日も清々しい朝だな!よし、今日も一日頑張るとするか?」

「ふぁぁぁぁぁ~♪今日も清々しい朝だな!よし、今日も一日頑張るとするか?・・・じゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!!!!!!!!!!!!こっちは毎日毎日同じツッコミ入れるのが鬱陶しい!!」



思わず本音を叫んでしまった!
こうも毎日欠かさず同じ様な状況になっているのは大方察しが付いているが・・・



「折角、あんたの家に超絶美少女が勢揃いなんだからあんたにとっては悦びこそあったとしても怒る理由なんてないじゃない!!それともあんたってそっちの系がある訳?」



意味不明な所でいつものツンケンしたことちゃんが妥当なツッコミを入れて来た。
正論なだけに言い返せない俺がいるのだが・・・



「なぁに?ホントは嬉しかったんじゃない?学校で有名な美少女が自分の家で自分に好意を持っている子ばかりで鼻の下デレデレ伸ばしてんじゃないわよ!?」

「うっ、五月蠅いな!!こんな事されたら俺だってな!1人の男なんだよ!俺だってな、ずっと理性保とうと必死なんだよ!!」



しまった!遂本心で語ってしまった・・・ぞ?



「何よ!?やっぱり悦んでいたんじゃない!」

「さっきから喜ぶの文字間違えてるよ?悦ぶじゃなくて喜ぶだからな?琴音さん?」

「五月蠅いわよ!変態!!ド変態!ドスケベ浩輔!!!」



君にだけは言われたくないよ・・・そう心の底から言い返したかった・・・



「夫婦喧嘩は犬も食わぬ・・・よく出来た言葉だな!」



自分で言ってて自分で深く頷く新人彩華・・・



「ちょっ、いつの間に夫婦に・・・!?私が嫁候補者よ!?」

「あら、それを言うなら私だって浩輔君の候補者の1人ですわよ?」



話がややこしくなる展開だ・・・そろそろキツイひと言でこの場を鎮める事にしたい所だ・・・



「あの・・・お取込み中悪いのですが・・・そろそろ朝食済ませないと学校・・・遅れちゃいますよ?」



これだ!この学校へ行く事を急かすセリフが一番堪える!だって皆学生だから!
遅刻は評価も下がる、きっと皆はエリート校へ進学するつもりだろう。
俺のとっておきのひと言だ!



「↑何を格好付けてんのよ!?キツ~イひ♡と♡こ♡とじゃなかったの!?とんだヘタレねあんたって!?」



いつものキレの良さが、いや、いつも家ではこっちの琴音さんは現さないはずなのにどうして今日に限って?



学校にて・・・



「えぇっと、君たちはいつもあの様な感じだったのか?」

「あの様なって?」



休憩時間に入りことちゃんは教室から出て行った。
すると隣に座っていた彩華が声を掛けて来た。



「琴音との関係性だよ。あんなにツンケンされているのかと聞いている」



どうやらことちゃんが俺に対して冷たい態度で接して来た事が気に掛かっているらしい。
それを聞いて来る時点で今の俺たちの関係が把握しきれていないと言う事だろう。
それもそうだ、遂最近接触して来た訳だから俺たちの遡上なんて知る由もない訳だが・・・



「あぁ、そうだよ。ことちゃんはあんな感じだ」

「そうだったのか・・・」



俺が彩華の言葉を肯定すると心なしか笑みを浮かべた気がした。
ことちゃんがあの様な行動に出る時は必ず深い考えがあっての事だろう。
知られたくない・・・そう言う感じなのかも知れない。だとすればことちゃんに合わせるまでだ。



「はぁ、そうなのですか?ではその通りに・・・浩輔君の仰る通りに合わせますわ」

「私もそうするよ。何か理由があるんでしょ?あの子が演技する時って大体深い理由が絡んでいる事が多いみたいだし」



こう言う所は2人共協力的で助かる。
それに俺よりことちゃんの事については分かって来ているみたいだし。



「ちょっと、何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いから離れなさいよ!」



と思ったのも束の間、いつもの通り俺に突っかかって来ることちゃん。
今日もキレッキレだな・・・もうクラス中の生徒たちは俺たちの間柄の事だって知っているはず・・・あれ?何でだ?だったら今更隠した所で無意味だし、彩華にもバレるのは時間の問題のはず・・・



「はい、午後の授業始めるわよ?今日は私が担当だから宜しくね?えぇっと、教科書の69ページを開いて?」



午後の授業は保健だ。どうやら今日は普段担当の先生が休みで急遽雫さんが担当になった。



ふんっ♪ふんっ♪



あれ?何だか凄い音が・・・鼻息か?・・・一体何だろう?っておぃおぃおぃ琴音さん?何興奮してるの!?



「ほ、保健で69ページ!!ふんっ♪ふんっ♪」



どうやら69ページに何か強い思いでもあるのだろうか?
大方察しは付いているけどそこはスルーで・・・



「ほら、69ページだってさ?・・・69で思い浮かぶ事と言えば?」

「そ、それは・・・勿論!!」



おぃおぃおぃ、彩華まで参加し始めたぞ?今授業中だから余計な事しないでもらいたいものだが・・・



「はい、櫻木さんと秋澤さん、授業中だから私語は慎みなさい?」



ナイス雫先生!



こうして午後の授業も過ぎて行き・・・



「はぁ~・・・・終わったぜ!浩輔?きょうは行けるよな?ゲーセン行こうぜ?」

「そうだな・・・ここの所色々とあったから久しぶりに発散でもするか!」



こうして俺たちは久しぶりに寄り道して帰る事にした。



「琴音、ちょっと私たちも寄り道して帰ろうか?2人で」

「え?私たち2人で?・・・」



私たちは4人で先に家に帰ろうとしていた時だった。
先に彩華さんが私に声を掛けて来た。



「と言う訳で悪いけれど君たちは先に帰っていてくれないか?色々と募る話があるから・・・」



彩華さんはその様に言って風谷さんと五条さんに声を掛けて先に帰らせた。



帰り道の公園にて・・・



「君は記憶が断片的に途切れてしまっていると言っていたね?」

「え?・・・そうだけれど・・・」



ベンチに座り彩華さんは私の記憶の断片的な部分が欠けている事を確認して来た。



「君は私と会った事がある・・・と言っても覚えていないだろうか?」

「・・・・・・えぇっと・・・ごめんなさい。記憶の中には・・・」



一つ一つ確認しながら慎重に尋ねて来る。



「謝らなければいけない事があるんだ」

「え?・・・私に?・・・どう言う事?」



そう言って少し間が空いた直後だった。彩華さんが私に対して謝らなければいけない事があるのだと告げて来た。私の今ある記憶の全てを辿っても彩華さんと会ったのは今回が初めてで謝られる様な事も覚えていなかった。
すると彼女の口から驚くべき言葉が出て来た。



「君が変態性癖を持ってしまったのは私の責任なんだ」



どう言う事?私のこの性癖は彩華さんのせい?



「君が断片的な記憶を失ってしまった状態である原因についても推測だけれど察しが付く」

「それは・・・本当なの?」

「あぁ、あの日・・・いや、今は止めておこう。君の記憶が抜けているとすれば下手に衝撃を与えてしまう訳にはいかないから・・・」

「どう言う事?・・・何か私が思い出したら悪影響を及ぼしてしまう様な事なの?」



怖くなって来た。この抜けてしまっている記憶がもしも良い思い出じゃなく悪い思い出だったとすれば、それを思い出した時に私は・・・どうなってしまうのだろうか?
その様に不安が一気に溢れて来てしまった。



「ただ、全ては解決している事だから大丈夫。もう、二度と同じ様な事は起こらないから・・・今はこれが私から言える精一杯だ!」



保健の時間に話掛けて来たのは私の現状を把握しようとしたからなんだろうな・・・
ふと隣に座っている彩華さんを見ると夕日が差して彩華さんの髪の毛を黄昏色に染め上げる。それを見た私は少しだけうっとりとしてしまった。



帰宅後・・・



「えぇっと・・・お風呂に入るので離れてくれませんか?」



俺がお風呂に入ろうと準備をしていざバスルームへ入る所だった。
ことちゃんが突然腕を掴んで来た。



「♪~」



ことちゃんはご機嫌だった。
少し様子がおかしい・・・朝のツンケンした態度と言い、帰ってからは言葉こそほとんど交わさなかったもののウキウキとした様子で俺を見て来る。



「先に入る?俺後でも構わないし・・・」

「♪~・・・ううん、一緒に入ろうかなって♪」

「いや、おかしいでしょ?年頃の男女が一緒に入浴なんて?」

「そうかな?ラブラブカップルだったら普通の事だよ?」

「いや、他の子の目もあるし、色々と俺もさ・・・」

「・・・・・・嫌?私と一緒じゃ嫌?」



やっぱりいつもと様子がおかしい・・・
いや、いつもおかしいっちゃおかしいんだけど、きょうは特に変だ!
取りあえず説得した俺は無事に入浴を済ませた。



就寝時刻



「やだぁ!!私こう君と寝るぅ~!!」

「だから、俺は1人で寝るって言ってるでしょ!?お願いだから同じ事何回も言わせないでくれないかな?」



まるで駄々っ子の様に言って来ることちゃん・・・



「琴音さん?もう諦めて眠りましょう?浩輔君も疲れているみたいだから・・・」

「そうだよ。今日の櫻木さん少し様子が違うけど、何かあったの?」

「わぁぁぁぁ~ん!こう君と寝るの~!!!」

「よしよし、じゃぁ、私が添い寝してやろう。ほら、私の部屋へおいで?」

「うぅ~・・・分かった・・・」



彩華がことちゃんを諭す。するとことちゃんは少し不満気ではあるものの彩華と一緒に部屋へ入って行った。



次の日の朝



「・・・・・・・・・・」

「ことちゃん?何だかご機嫌斜めの様な・・・」

「・・・・・・・・・・」



朝起きて皆と顔を合わせるとことちゃんは黙ったまま仏頂面で俺を見る。



「何かな?」



緊迫したムードである。
どう考えてもこれまでの様なことちゃんでは無く、少し思い当たる節があるとすれば・・・



「ほら、皆も早く食べないと学校に遅刻してしまうぞ?」

「あっ、本当ですわ!早く召し上がって下さい?」

「何だか朝もバタバタする様になって時間忘れちゃうわね!」



ふむ・・・彩華が来てからと言う事だろうか・・・
演技とはかけ離れた感じのことちゃんの様子だが・・・
少しカマを掛けてみるか!



学校にて・・・



「真木谷?少し話いいかな?」

「おっ!何だ?別に構わないが!」



昼休み、俺は真木谷を屋上へ呼んだ。
ことちゃんのここの所の様子や彩華が来てからの状況について話をしてみた。



「そう言う事だったのか。それにしてもお前も本当に色々と大変だよな?」

「そうだな・・・だけど今回の件に関しては少し嫌な予感がするんだ・・・」

「・・・・・・・浩輔?もしもだぞ?もしも・・・」



言葉に詰まりながらも真木谷は名前こそ出さないが思い当たる節がある様な物言いをして来た。



「お前それって・・・」

「あくまでも俺の推測でしか無い・・・でも、どう考えてもおかしいだろう?」



まさか真木谷の口からこんな事が告げられるなんて思いもしなかったし、俺ですらその疑念から外してしまっていた。



旧校舎女子トイレにて・・・



「琴音?貴女はもっともっと昔へとさかのぼって行くの・・・それがとてもとても心地良い・・・」

「はぁぁぁぁぁ~・・・・・もっと・・・もっと・・・昔へ・・・さかのぼる・・・」

「いい子ね・・・そして、男の子は変態な女の子が大好きなんだ・・・だからもっともっとエッチな事を覚えて行くんだ・・・」

「うん!わたし・・・もっともっとエッチな事覚える!・・・こう君の為に♪」

「じゃぁ、そろそろ浩輔が勘繰って来る頃だろうからいつもの琴音に戻ろうね?今日お勉強した事は心の奥底にしまっておいて、今から貴女はいつもの、現役JKの琴音に戻るの・・・さぁ、私の目を見なさい?貴女は元に戻る・・・戻る・・・私が手を叩くと元に戻る・・・はいっ!」



♪パンッ!!



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「えぇっと・・・櫻木さんが?・・・でしょうか?」

「あぁ、そうなんだ。確信が持てないから下手に行動出来ないけど・・・」

「もしも、浩輔君の言っている通りだったとすればとんでも無い事じゃない!でもどうやって確認すれば・・・?」



放課後、俺は彩華に買い物を頼み、ことちゃんは先に帰ってもらう様に伝え、それ以外のメンバーと話をした。
あまり時間が取れない為、要点だけを伝え、今後の動きを考えようとしていた。



夜・・・



「そろそろだな・・・」



夜、寝静まった頃に色々と詳細を話す約束をしていた。
家の中だと彩華に気付かれてしまう恐れがある為、家のすぐ近くにあるコンビニの前に集まって話し合いをする事にした。
風谷さん、五条さん、そして俺だ・・・



「ですが・・・本当にあの方が?」

「私も信じられないよ・・・でも・・・」

「今から話をする事は他言厳禁だ。それから真木谷は俺より先に感じ取っていてくれていた」

「真木谷君が・・・ですか!?」



こうして、深夜と言う事やコンビニの前にいる手前、あまり大きな声では話が出来ないが、2人には詳細を告げた。
ここの所ことちゃんは常に彩華と行動を共にする事が増えた。
きょうはいつものことちゃんに戻った様子だが・・・
俺には確信があった。
今回の一連のターゲットは俺だと言う事。
ことちゃんが様子が変わってしまった事には色々な理由があると思われる。
ことちゃんがターゲットにされていたとすれば既に大きな事件になっているだろう。
だが、そうでは無かった。
櫻木家を狙った犯人たちは俺の両親が焼死させている。
両親もその場に居合わせた為既にこの世を去った。
その後、俺は櫻木家と縁が強かった中城の家に引き取られた。
数年程前の事だ。
だが、俺は記憶をほとんど失っていて、中城の子として生まれて来たと思い込んでいた。
櫻木家は大きく家系図も大きなものである。
特にうちは他者から良い目で見られない事が多く、両親が悪かった訳では無かったのだが結果的に両親たちも恨まれる存在となってしまっていた。
両親は、特に質の悪かった「白鳥澤家」を崩壊させたかったのだろう。
俺がもっとしっかりとしていればあんな事にはならなかった。
そして、紅家・・・いや、紅家なんて元より無い。
白鳥澤 雫・・・記憶が全て戻った時に思い出した。
彼女も白鳥澤家の家系であるのだと・・・
だとすればまだ櫻木家、いや、今となっては俺1人だ。
その俺を狙っているのは白鳥澤家の家系である、彩華、そして・・・雫さんと言う事になる!



翌朝・・・



「こう君おはよ♪」

「おはよう!ってどうしたの?目の下にクマが出来てるけど?」



元気に挨拶をして来たことちゃんの目の下にはクマが出来ていた。
ことちゃんは明るく・・・



「あ、ちょっと眠れなくて・・・でも大丈夫だよ♪」



きょうはいつものことちゃんと変わらない。と言うよりは何年も前のことちゃんと被る気がする。最近は少し大人びた印象を受けていたけど・・・



「どうしたんだ?皆表情が暗い様だけれど?」

「えっ!?い、いいえ、そんな事はありませんわ!私たちいつも元気ですわよね?」

「うっ!うん!元気だよ!全く問題無し♪」



昨夜、俺以外には危害は加えないから安心して欲しいと告げたけど、現にことちゃんに何かしているとすれば、この2人も長く居座らせる訳にはいかない。
だが、事実を伝えておく必要はあったと思っている。



「ちょっと皆に言いたい事がある!」



俺は意を決した。



「ど、どうかされたのですか?浩輔君?」

「え?・・・何?どうしたの?」

「・・・・・・・・・」

「疲れた・・・俺も色々と考えてたんだけど・・・一つ屋根の下で超絶美少女が4人なんて生活、幸せだのハーレムだのって周りの男子たちなら言うんだろうな・・・でも、ホント無理・・・ごめん!」

「そ、それは・・・私とも一緒じゃ嫌って言う事かな?・・・」



一番最初に反応を見せたのはことちゃんだった。



昨夜、俺は風谷さんと五条さんにこの様にも告げていた。



「ごめん、今までこうして色々と協力してくれていたんだけど、俺も色々と動き辛くなってしまうから、君たちは実家に戻って欲しんだ」



と・・・その後、到底反対していた2人も俺の真意を汲み取ってくれた様で納得してくれた。



「あぁ・・・ことちゃん、悪いけど俺、1人でしばらく暮らしたい。ホントに疲れたんだ・・・だから、少しの間休ませて欲しいんだ・・・」



これで俺は1人だ。俺に恨みを持つ2人は容易に行動が出来る様になるだろう。



「分かった・・・私、帰る・・・」



悲しい面持ちで部屋へ戻ったことちゃん・・・
ごめん、これは君が嫌だと言う理由では決してないんだ。
俺はずっとことちゃんの事を・・・
だからこその決断なんだ。



休日と言う事もあり、皆、あっさりと持ち物を整理し出て行く準備が完了した。



「私は、まだ数日間しか滞在出来なかったのだが・・・?」

「ごめん・・・突然の思い付きだったから・・・」



重苦しい空気の中それぞれがそれぞれの家に帰って行った。
その中には勿論、彩華もいた。



これからは俺だけの戦いだ。
真木谷、お前には色々と世話になったが、今回は特に助かった。
このままこの状況が続いていれば俺も気が付くのが遅くなってしまっていた事だろう。
一番お前が愛していた相手が、まさか・・・な・・・



数日が経過・・・



学校ではいつも通りの空気でお互い接している。
風谷さんも五条さんも彩華も・・・そしてことちゃん、真木谷も・・・
だが、それぞれの心の中では複雑な気持ちが交差している事だろう。
だが、これ以上関係の無い人たちを巻き込む訳にはいかない。
来るなら来い!俺は今1人だ!



「さぁ、授業を始めるわよ?席に着いて!」



こうして俺たちは演技を続けた。
俺は様子を伺いながら相手が動くのを待った。



3週間程が経過・・・



「浩輔?放課後少し話をしないか?」

「あぁ、いいよ!」



アクションを起こして来たみたいだ。
彩華が放課後俺と話をしようと持ち掛けて来た。
恐らくあの人も来るだろう・・・



放課後・・・



「すまない。ちょっと話がしたくなってね・・・」

「特に予定も無いから良いけど・・・話って何?」

「まぁ、気付いているだろうが・・・いいですよ?雫姉さん?」

「えぇ、この日をどれ程待ちわびた事か・・・」



案の定だった。
背後から声が聴こえたが雫さんの声だとすぐに確信が出来た。



「きょうはどうして私がここへ呼んだのか分かるよね?」

「あぁ・・・狙いは俺なんだろ?」

「流石、櫻木家次期頭首とまで呼ばれた子ね・・・ちょっと味見しちゃいたいわ?」

「えぇ、姉さん同様私もムラムラしているわ♪」

「そう言う事だったのか・・・」



ことちゃんはこいつらの変態性癖を植え付けられていた。
それを恐らく断片的に記憶を途切れさせる所まで仕向けていたのだろう。



「ことちゃんは関係無いだろ?戻してくれないか?」

「そうね・・・戻してあげても良いわ?ただし・・・貴方が死んでからね?」

「えぇ♪そうよ。貴方は私たちが殺してあ・げ・る」

「1つだけ教えて欲しい・・・櫻木・・・いいや、俺を狙う奴はお前ら以外にはもういないのか?」



俺は時間稼ぎをしている。どうでも良い話をわざと長延ばししている。
理由は・・・



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「真木谷・・・辛いだろうが頼みがある・・・これが恐らく最後の俺からの頼みになると思う・・・聞いて欲しい」

「何だ?「最後の」とか水臭い事言うなよ!」

「俺がここに1時間戻って来なければ、警察に連絡を入れて欲しい。そして帰宅途中にあるひと気のない公園のしげみの奥の方にいるはずだと伝えてくれないか?」



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「時間稼ぎでしょ?お見通しよ?」

「何ですか?そんな事しようとしていたんだ?意外と陰湿ね?」

「アンタらに言われたくないけどな?・・・はぁ~・・・久々本性表したくなって来た」



俺は本性を曝け出した。



「ワイルドよね?こんなに可愛い顔をした男の子なのに?」

「姉さんこう言う男子が好みなんだよね?昔っから・・・まぁ、私もそうだけどさ?」



本性と言えば、彩華に対しても言える事だろう。
凛々しい様に思わせておいてこんな中身だ。



「さぁ、2人の「女の子」相手に出来るかしら?」



多分、この間の彩華の攻撃はかなり手を抜いているはずだ。だとすれば、俺と互角かそれ以上・・・雫の腕は相当だろう・・・
流石の俺もこんな状況に太刀打ち出来る自信はない。
いや、それ以前に凶器を持っていたら一瞬で終わる。
2人ともポケットに手を入れた・・・とすれば後者か!?



「当たり~♪一瞬でトドメ差してやるからな!櫻木浩輔君?」

「えぇ~♪勿論痛いとか思わない様に2人同時に刺してあげるわ?」



狂ってるな。武道を嗜んでいる奴らとは思えない狂気に満ち溢れたオーラだ。



♪シュンッシュシュシュッ!!ビュンッ!!
♪ビュビュッ!!シュッシュシュシュシュッ!!



「ほらほら、避けてるだけだと直ぐに終わっちゃうよ?抵抗しなきゃ?」

「そうそう♪姉さんと私に殺されて本望じゃないの?結構マゾっ気ありそうだし?」

「お生憎様だな?アンタらは俺のタイプでも何でも無いからな?いくら美人、美少女だからって言っても世の全ての男が好きになるなんてあり得ねぇっての!おっ・・・中々すばしっこいけどそんなので俺を殺そうだなんて浅はかさにも程があるよな?」



ダメだ、余裕を装っているものの早さが半端無い!こんなすばしっこいのが2人同時になんて俺も流石に何分持つだろうか?



♪ビュビュビュッ・・・ザシュッ!!!



「っつ・・・」

「あっ♪かすったかすった♪あはははは♪私意外と出来るタイプかな?」



♪シュシュシュシュッ!!ビュッ!!!



「って・・・・」

「私もいるって事忘れてない?」



ダメだ・・・一瞬かすっただけで動きに隙が出てしまった様だ。2か所切られてしまった・・・
流石に間に合わないか・・・今、ようやく1時間と言った所だ。だとすれば今から警察を呼んだとしても10分程時間を稼がないと・・・



「あ~あ・・・残念だったね?警察でも呼んでもらったのでしょうけど間に合わない感じ?」

「そうね・・・結構余裕コイてるけど必死みたいだったし・・・このまま仕留めてあげても良さそうね?」

「じゃぁ、一斉に行きましょ?姉さん?」

「えぇ、そうね!じゃぁ・・・」



ザシュッ!!!!!!!!!!!!!!!!



バタンッ!!!



「え?・・・どうして?・・・どうしてここに?」

「そんな・・・完璧に掛かっていたはずなのに・・・何で?」

「ことちゃん?・・・何でここに?」



2人が俺にトドメを刺そうとしたその時だった。
俺の目の前にことちゃんが現れた。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ごめんね?遅くなっちゃったね・・・場所が・・・分からなくて・・・はぁはぁ・・・いつか言ったよね?・・・はぁ・・・今度は・・・私が守ってあげるから・・・って・・・はぁはぁ・・・」

「ことちゃん!!もう話をしないでくれ、今警察が来てくれるから・・・だから、だから俺の事は大丈夫だ!それより・・・」

「あぁ~あ・・・余計な邪魔が入っちゃったじゃない!私の長年の計画が水の泡じゃない!!」

「ったく・・・掛かった振りって事?私の実力が水の泡じゃない!!」

「おぃ・・・テメェら!!言いたい事はそれだけか?」

「ふんっ!ったく使えないわね?貴女の催眠は完璧じゃないの?」

「姉さんだって認めてくれたじゃない・・・」

「ぶっ殺す・・・テメェら察が来る前に半殺しにしてやるよ・・・」



そう言ったものの2人にはしばらくの間眠っててもらった。
頸椎に少し衝撃を与え気絶させた訳だが・・・
その後5分程度が経過し警察が到着した。
2人を倒した直後俺は直ぐに救急車を呼びことちゃんを病院に運んでもらった。
俺も一緒に向かった。
2人は警察にお縄になった。



「おぃ、浩輔!大丈夫だったのか?櫻木さんが刺されたって聞いて慌てて来たけど・・・」

「あぁ・・・すまなかった。真木谷ありがとう。おかげで何とかなった。ことちゃんは安静にさせて今夜が峠になるだろうって言ってた。結構深い傷だったみたいだ」

「そうか・・・でもこれで何とか・・・」

「そうだな。本当にお前には迷惑ばかり掛けたな・・・」

「いや・・・俺も何か力になってやりたいと思っていたからな・・・」



雫の件については何も言えなかった。
何より本人が一番ショックを受けているだろうから。
ことちゃんも今夜を過ぎれば・・・



「櫻木さんが刺されたって・・・大丈夫なの?」

「私も連絡を受けて来ましたけれど・・・」

「すまない。今夜を過ぎなければ何とも言えない。でも、俺のせいだ・・・」

「そんな事・・・無いでしょう?」

「軽くだったけど真木谷君にも話を聞いたわ!それってあの2人が悪いのだから・・・貴方には罪は無い事でしょ?」



皆、俺の事を気遣ってくれている。でもこれは明らかに俺に非がある様に思えていた。
ことちゃんが何かされたと言う事実は事実であったが、それすら演技でごまかしていたと言う点を見抜けずことちゃんを遠ざけていたから今回の状態に陥ってしまった訳である。



翌朝・・・



俺は集中治療室に入っていたことちゃんを寝ずに待っていた。



パァァァァァァァァァァァァ



扉が開き先生が出て来た。



「関係者の方ですね?」

「はい!ことちゃんは・・・櫻木琴音は?」

「安心して下さい。峠は無事に越えました。彼女は強い意志を持っていたのかも知れません。少し夜中不安定な状態に陥りましたが、何とか乗り越えてくれました。本当は結構シビアな状態でした。ひょっとすると・・・そう言う覚悟も必要だと考えていたのですが、非常に強い方です」

「あ、ありがとう御座いました!!」



ことちゃんの命は救われた。
後は、回復するのを待つだけだ。
それから数日後・・・



一般病棟



「ことちゃん・・・病室移ったって聞いたから来たぞ?」

「こう君・・・待ってた♡」

「ことちゃん・・・ことちゃん!!!!!!!」



病室で傷口は完全に塞がっていないにも関わらず俺は強く彼女を抱き締めてしまった。



「っつ!!」

「あっ、ごめん!まだ傷が・・・ホントごめん!」

「ううん・・・良かった。こう君が無事で・・・私・・・」

「それは俺のセリフだ!あんな無茶して・・・でもあの時言っていたセリフって・・・」

「うん・・・記憶・・・全部取り戻せたよ?」

「そうか・・・良かった・・・これで本当に・・・」



ことちゃんは断片的に喪失状態にさせられていた記憶を無事に取り戻せた様だ。
俺の記憶喪失は事件で受けた衝撃などからだがことちゃんは違う。
あの2人の手によって無理矢理に・・・



「じゃ、あの性癖は・・・?」

「え?・・・あっ・・・///」



急に沈黙になりことちゃんは顔を染め上げた。
うん、これで間違い無く元に戻った訳だ。



「これでようやく俺たちの時間が進み始めたね」

「うん♪・・・良かった・・・本当に・・・良かった」



そう言ってことちゃんは涙を浮かべた。



更に数週間が経過し、ことちゃんは無事に退院した。
そして学校にて・・・



「皆、久しぶりだったな!元気だったか?俺だ!俺、俺!」

「先生、俺俺詐欺っすか?ちゃんと名前言ってくれないと誰だか分からないですよ?」

「おぃ、酷い事言うんじゃない!愛する生徒たちの為に担任の井塚 恭介 (いづか きょうすけ)ここに復活だ!」



♪パチパチパチパチパチパチ



井塚先生は元々俺たちのクラスの担任だったが病気で長い間入院生活を余儀なくされ、無事に復職する事になったのだ。
そして・・・



「それでだがな、この俺と同時に復帰した可愛い生徒1名も戻って来てくれたぞ?」

「皆、ごめんなさい。しばらくお休みしていましたが、また今日から皆と一緒に勉強する櫻木琴音です。宜しくお願いします♪」



♪パチパチパチパチパチパチパチパチ



「良かったです!櫻木さんがご無事で・・・本当に・・・」

「うん!ホントだよ。琴音さん頑張ったもんね?本当に私たち待ってたんだよ?」



風谷さんと五条さんも本気でことちゃんが戻って来た事に喜びを表してくれた。



「櫻木、あんま無理すんなよ?何かあったら浩輔か俺に言ってくれれば良いからな?」



真木谷も色々と面倒看が良いのは性分でもあるがやはり色々と気を遣ってくれているみたいだ。



また、こうして俺たちはいつもの日常へと戻って行く。
今度は心の底から笑い合い、楽しんで、共に生きて行ける清々しい道を歩いて行く。



自宅にて・・・



「う~ん・・・こう君?このHな本はなぁに?」

「あっ!それ真木谷に返すやつだから!この間、先生に見付かりそうになった後俺のカバンに隠して来たんだよ」

「本当に?・・・でもこの本って、私と似てる子多いよね?どうしてかな~?(ニヘラ)」

「そっ、それは真木谷に・・・聞いてくれないか?・・・」

「へぇ~♪こんなプレイとかしてみたいんだ?真木谷ってマニアックだね?」

「え?・・・そ、そうなのか?俺見てないから知らないけどさ?」

「これ、して欲しい?」

「(ゴキュッ)・・・い、いや・・・それは・・・その・・・」

「もう嘘付くの止めようよ?何もHな本見るのは年頃の男の子だからそんなに強く言わないけど、嘘付くのはみっともないよ?」

「うん!それ俺の・・・表紙に出ている子がことちゃんに似てたからつい・・・だからその中のプレイも・・・希望・・・」

「うん♪いい子だね?じゃぁ、もう少し大人になったら色々と試してみようね?」



そうだ・・・俺も年頃の男子高校生である。
こう言う事だってあっても良いよな?・・・
そしてそれを許容してくれることちゃんはもっと魅力的な女の子なんだとこの時強く思う俺であった。



「もしかしてホントは私よりもこう君の方が変態さんなのかもね?」

「それは・・・いや・・・俺は至ってノーマル・・・」

「じゃぁ、私女優と言うよりセクシー女優さんになろうかな?」

「そっ!それはダメだ!」

「ぷっ♪こう君必死過ぎ~♪可愛い~♪・・・冗談だよ?でも女優にはなるからね?頑張るよ!」

「あぁ、そうだったな。あの頃約束したもんな?女優になってこう君のお嫁さんになるって言ってくれたもんな?」



そうだ。俺が幼少期に観た映画で女優さんが迫真の演技で男性に告白し、それを凄いと感動した俺をことちゃんが覚えていてくれて、私が女優になっていつかこう君のお嫁さんになるんだと・・・そうしてずっとその事を、その夢を叶える為にことちゃんは頑張ってくれていたんだと俺は改めて今、目の前にいる超絶美少女を心の底から愛していると告げて抱き締めたい気持ちだ。
この後、俺は男優になる為に訓練を行った。
ことちゃんは女優になった。
そして共演する機会があり、2人は恋人同士で結婚すると言う役柄だった。
その作品の仕事の時に俺たちはプライベートでも結婚を挙げたのだ。
晴れて俺たちは「櫻木」になり、俺は形では元の名字になった。
櫻木琴音は俺の従兄妹である。
中城浩輔は櫻木琴音の従兄妹である。
長い人生の道のりを俺たちはこれから共に歩んでいく。
俺たちを受け入れてくれた皆に心から感謝をしながら・・・

ことちゃん、俺は一生君を愛する事を誓う。
君を守り続ける事を誓う。

こう君は私の王子様。
いつも私の事を助けてくれた。
だからいつか私がこう君を助けたい・・・
ずっとそう思って過ごして来た。
だから、こうして人生と言う長い道を一緒に歩いて行ける幸せを
これからもずっと感じていたい。
これからもずっと一緒だよ?
私は一生貴方を愛します。
私は貴方を一生支え続けます。

お互いを受け入れ合い、一緒に生きて行くのだから・・・













最終話 2人の誓い・・・2人の永遠 Finish
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