2 / 185
2話、ケルンの町のかぼちゃスープ
しおりを挟む
今私は田舎町ケルンにやってきていた。
ここは私の家、つまり森の中にある魔法薬店から一番近い町だ。それでも歩いて一時間くらいはかかる。私が外食を面倒がった訳がこれだ。毎日一時間も歩いてごはんを食べに来るなんて考えられない。それも三食も。
ケルンは言い方は悪いが田舎なので、人も少なくて静かだ。これまで何度か来たことがあるので、馴染みのある町だ。
今日のお昼はここで食べることに決めた私は、ひとまずお昼時になるまで露店などを見て回ることにする。
ケルンの町は家から比較的近かったからいいけど、この町から最寄りの町に行こうとすると半日ほどかかるというのが普通だ。
つまり、旅をするならそれなりに食料を持っていかなければいけない。
旅をするならできれば三日分の保存食は常備しとけ。昔一番弟子にそんなことを言われた気がする。
ということで露店にやってきた私は、適当に保存食を見繕っていくことにした。
干し肉やら塩漬けの肉やら、乾燥パンにビスケットとか、保存食は普段私が食べるのとは違った趣だ。
なんというか、美味しいとかじゃなくて日持ちする食べ物で味は二の次といった印象を受ける。
まあ、旅をするなら保存食ご飯なんてのもたまには良いだろう。意外と普通のごはんよりおいしかったりするかもしれない。
色々目移りしながら適当に保存食を見繕い、購入していく。
すると、いつの間にやらお昼時を迎えていた。
あらかた購入するまでに時間がかかったのもあるが、食べ物を見ていたせいで私のお腹はすっかり空いていた。
「ケルンは主食がパンで、スープと一緒に食べるのが普通なんだよね」
私はケルンの食文化が好きだった。だって、実は私の好物はスープにひたしたパンだから。
記念すべき初外食が好物ということもあって、私の気分は舞い上がっていく。
ここは田舎町なので、中で食事できるお店は数えるほどしかなかった。私は記憶を頼りに以前食べたこともあるお店を探し、そこで食事する事にした。
お店に入って着席すると、まずパンの盛り合わせが出てくる。そしてメニューのほとんどがスープで、目の前のパンを美味しく食べるためにスープを注文しろと言わんばかりだ。
ちなみにこのパン、スープと一緒に食べるのが前提のパンなので、ちょっと硬めだったりする。
本来ならメニューを眺めてなにを注文するか迷うところだが、私はすでに注文を決めていた。
「かぼちゃのスープを一つ、お願いします」
コーンスープやじゃがいものポタージュなどなど、パンと合うスープはたくさんある。
その中でも私が一番好きなのが、かぼちゃのスープだった。
次からは食べたことがない色々な料理に挑戦するつもりだけど、今日は記念すべき旅の初食事だから、大好物のかぼちゃのスープを食べることにしたのだ。
注文してから数分でかぼちゃのスープはやってきた。
スープは綺麗な黄金色で、かぼちゃの甘い匂いが漂ってくる。
スプーンですくってまずは一口。
口に運ぶと、かぼちゃのほのかな甘みが広がっていく。
甘いだけじゃない。スープなのでちゃんと塩気もあって、それがかぼちゃの甘みを引き立てている。
そして濃厚ながらも口当たりが良い。これはきっと、生クリームを混ぜているからだろう。
美味しいかぼちゃのスープを味わった私はすっかりご機嫌になり、パンをちぎって軽くスープにひたした。
パンにじわりじわりとスープが染み込んでいき、びちゃびちゃにならない塩梅で口に運ぶ。
もともと固めのパンなので、スープにひたしてもちゃんと歯ごたえがあった。それに小麦の味も立っていて、濃厚なかぼちゃのスープに負けていない。
かぼちゃのスープが染みたパンは、文句なくおいしい。やっぱりパンはスープと一緒に食べるのが一番だ。
私はすっかり夢中になり、次々と食べ進めていく。
パンをひたして食べて、スープだけを口に運んで、スープの後味を残したままパンだけを食べて。
ただパンとスープを食べると言っても、口に運ぶ順番などで色々と味が変化する。それを楽しみながら食べていると、スープの皿はすっかり空になっていた。
大好物のかぼちゃのスープを食べ終えた私は、大満足していた。
旅立ってから初めての外食ということもあって、確実に美味しい料理を注文したが……それで正解だ。やっぱり最初は好きな物を食べてはずみをつけないと。
食後軽く水を飲んで口の中を洗い流した後、お会計を済ませてお店の外に出た。
お昼が少し過ぎた頃の日差しは少しきつく、眩しさに目を細める。
さて、次は最寄りのもうちょっと栄えている町を目指すとしよう。
美味しいご飯を食べて上機嫌になった私は、軽い足取りで次の町に向かって歩いていった。
ここは私の家、つまり森の中にある魔法薬店から一番近い町だ。それでも歩いて一時間くらいはかかる。私が外食を面倒がった訳がこれだ。毎日一時間も歩いてごはんを食べに来るなんて考えられない。それも三食も。
ケルンは言い方は悪いが田舎なので、人も少なくて静かだ。これまで何度か来たことがあるので、馴染みのある町だ。
今日のお昼はここで食べることに決めた私は、ひとまずお昼時になるまで露店などを見て回ることにする。
ケルンの町は家から比較的近かったからいいけど、この町から最寄りの町に行こうとすると半日ほどかかるというのが普通だ。
つまり、旅をするならそれなりに食料を持っていかなければいけない。
旅をするならできれば三日分の保存食は常備しとけ。昔一番弟子にそんなことを言われた気がする。
ということで露店にやってきた私は、適当に保存食を見繕っていくことにした。
干し肉やら塩漬けの肉やら、乾燥パンにビスケットとか、保存食は普段私が食べるのとは違った趣だ。
なんというか、美味しいとかじゃなくて日持ちする食べ物で味は二の次といった印象を受ける。
まあ、旅をするなら保存食ご飯なんてのもたまには良いだろう。意外と普通のごはんよりおいしかったりするかもしれない。
色々目移りしながら適当に保存食を見繕い、購入していく。
すると、いつの間にやらお昼時を迎えていた。
あらかた購入するまでに時間がかかったのもあるが、食べ物を見ていたせいで私のお腹はすっかり空いていた。
「ケルンは主食がパンで、スープと一緒に食べるのが普通なんだよね」
私はケルンの食文化が好きだった。だって、実は私の好物はスープにひたしたパンだから。
記念すべき初外食が好物ということもあって、私の気分は舞い上がっていく。
ここは田舎町なので、中で食事できるお店は数えるほどしかなかった。私は記憶を頼りに以前食べたこともあるお店を探し、そこで食事する事にした。
お店に入って着席すると、まずパンの盛り合わせが出てくる。そしてメニューのほとんどがスープで、目の前のパンを美味しく食べるためにスープを注文しろと言わんばかりだ。
ちなみにこのパン、スープと一緒に食べるのが前提のパンなので、ちょっと硬めだったりする。
本来ならメニューを眺めてなにを注文するか迷うところだが、私はすでに注文を決めていた。
「かぼちゃのスープを一つ、お願いします」
コーンスープやじゃがいものポタージュなどなど、パンと合うスープはたくさんある。
その中でも私が一番好きなのが、かぼちゃのスープだった。
次からは食べたことがない色々な料理に挑戦するつもりだけど、今日は記念すべき旅の初食事だから、大好物のかぼちゃのスープを食べることにしたのだ。
注文してから数分でかぼちゃのスープはやってきた。
スープは綺麗な黄金色で、かぼちゃの甘い匂いが漂ってくる。
スプーンですくってまずは一口。
口に運ぶと、かぼちゃのほのかな甘みが広がっていく。
甘いだけじゃない。スープなのでちゃんと塩気もあって、それがかぼちゃの甘みを引き立てている。
そして濃厚ながらも口当たりが良い。これはきっと、生クリームを混ぜているからだろう。
美味しいかぼちゃのスープを味わった私はすっかりご機嫌になり、パンをちぎって軽くスープにひたした。
パンにじわりじわりとスープが染み込んでいき、びちゃびちゃにならない塩梅で口に運ぶ。
もともと固めのパンなので、スープにひたしてもちゃんと歯ごたえがあった。それに小麦の味も立っていて、濃厚なかぼちゃのスープに負けていない。
かぼちゃのスープが染みたパンは、文句なくおいしい。やっぱりパンはスープと一緒に食べるのが一番だ。
私はすっかり夢中になり、次々と食べ進めていく。
パンをひたして食べて、スープだけを口に運んで、スープの後味を残したままパンだけを食べて。
ただパンとスープを食べると言っても、口に運ぶ順番などで色々と味が変化する。それを楽しみながら食べていると、スープの皿はすっかり空になっていた。
大好物のかぼちゃのスープを食べ終えた私は、大満足していた。
旅立ってから初めての外食ということもあって、確実に美味しい料理を注文したが……それで正解だ。やっぱり最初は好きな物を食べてはずみをつけないと。
食後軽く水を飲んで口の中を洗い流した後、お会計を済ませてお店の外に出た。
お昼が少し過ぎた頃の日差しは少しきつく、眩しさに目を細める。
さて、次は最寄りのもうちょっと栄えている町を目指すとしよう。
美味しいご飯を食べて上機嫌になった私は、軽い足取りで次の町に向かって歩いていった。
0
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる