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彼女のと私のはじまり

7、違和感

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 静かになった保健室でリリーは目を閉じながら考える。
(殿下もマリアも何を隠しているんだろう……)
 2人が言う話というのが今回の件に絡んでいる事はもう明白だが、それがどう殿下の行動の変化に繋がるのかリリーにはわからなかった。
(2人の様子もいつもと違ってた。私が階段から落ちるまでは殿下も普通だったのに)
 まるで階段から落ちたことが変化のきっかけと言わんばかりに、クラウスの態度が急変した事にリリーは違和感を感じた。
(フローレス様に対する態度も変だったな。前まではフローレス様にもっと情があるように感じたけれど……)
 入学して間もない頃2人が一緒に歩いているのを見かけたことがあるが、クラウスがジュリアを見る目は友情とも愛情ともいえるような優しい目で、はたから見ていても仲睦まじい様子だったと思う。ジュリアのキラキラと輝くような金髪の髪と、同じ金髪でもお日様のように温かみがあるクラウスの姿は、まるで絵本の中の王子様とお姫様のようで、そんな2人に憧れのようなものを感じていた。
 その後クラウスと知り合ったことでジュリアに嫌われてしまった事は悲しかったが、理由も理解できるし2人の事はリリーも応援していたため指摘を受けて自分の行動を反省したものだ。嫌がらせもジュリアが主犯と知り、改めて怒らせてしまったことを実感したものだが……。
(あれ?なんで私フローレス様が犯人だと思ったんだっけ?)
 あれは確か、そう、他のご令嬢に呼び出しを受けて責められていた所をクラウスに助けられた時だったか……。彼女達が言っていたのだ。嫌がらせは全部ジュリアに命じられてやっていた、と。その時はクラウスも信じていなかったし、リリーも違和感を感じたはず……だった。
 何故なら、ジュリアには彼女達から発せられるような悪意を感じなかったのだ。確かに刺々しくはあったが内容は当たり前の事であったし、注意や指摘はされるものの他の人達からされるような嫌がらせや悪口もジュリアからは全くなかった。
(そうだ。あの時は違うと思ったはずなのに、いつの間にか彼女が犯人だと思っていた)
 いつからそう思ったのか、何故そう思ったのか思い出そうとすると頭に靄がかかったように曖昧になる。ただ、覚えているのは何故かジュリアが犯人だと思ったという事実だけだった。
(何かがおかしい──)
 改めて考えてみると今回の件も色々とわかる気がする。むしろ、ここまで揃っているのに何故今まで気づかなかったのかと思うくらいだ。
(殿下の様子やマリアの話から考えると、まさかフローレス様が──)
『 ──もういい』
「えっ?」
(どこからが声が……でも誰もいないはずなのに)
『お前の思考は必要としていない。何も考えず生きていればいい』
「それって──」
 どういうことなのかという問は声に出ることはなく、リリーはそのまま意識を失った。
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