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彼女のと私のはじまり

3、事件は突然に

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 教室のドアを開けると、もうほとんどの人が集まってきているようだった。ギリギリかと思ったが時間も少し余裕があり、どこに座ろうかと辺りを見渡す。
「後ろの方はもう埋まってしまってるから前に座りましょうか」
「そうだね。ドア付近が開いてるからそこにし……あっ!」
 教室を出た時は急いでいて確認してなかったが、よく見れば別のノートを持ってきてしまっていた。普段ならとりあえず授業を受けて後で正しいノートに写し直すが、今回は前回出された課題のプリントを提出しなければならず、忘れないようにとノートにわざわざ挟んでいたのだ。
 急に大声を出して慌て始めたからか、マリアだけではなく他の生徒達も驚きながらこちらをちらちらと見ている。
「ど、どうかなさったの?」
「ごめん。ノート忘れてきちゃったからすぐ取ってくる!」
「えっちょっ」
 言いながら動き出すリリーにマリアは手を伸ばすが、リリーの方が動きが早くすり抜けてしまう。
「間に合うかわからないからマリアはここで待っててー!」
 マリアが次の言葉を言う前に急いで教室を出てノートを取りに歩き出すと、教室の中でリリーの名前を読んでいる声が聞こえたがそのまま止まらず進んでいく。
 面倒見が良いマリアのことだからすぐに教室を出ないと、心配だからと一緒に取りに行ってくれそうだし、間に合わせるつもりだが万が一の時マリアまで遅刻させる訳にはいかない。
 特に次の授業のケイト先生は普段は優しい先生だが、提出物や時間に厳しく怒ると怖いと評判だ。
 走れば間に合う自信があるが、ここは紳士淑女の通う学校である。廊下を全力疾走したら最後これだから平民はと言われるのが目に見えている。
「あーなんで忘れちゃんたんだろう。」
 自分自身に文句を言いながら、咎められない程度の早歩きで向かうが目的の教室まではかなり遠い。
 咄嗟に教室を出てしまったが、これだったら取りに行かず理由を説明して謝った方が被害が少なかったのでは…と後悔しながら階段に向かったとたん、ドンッという衝撃の後身体が宙に浮いた。
「え──」
 急に足が地面から離れ身体が浮いたのと同時に今度は重力に引っ張られ下へ下へと落ちていく。階段から落ちているのだとリリーが理解したのは階段に身体を打ち付けた時だった。
「いっ、なんっ──」
 魔法で衝撃を和らげようとするが痛みと混乱のせいで上手く出せず、結局少しスピードが遅くなっただけで階段の踊り場まで落ちてしまう。
「だ、誰か……」
 落ちた衝撃と痛みで視界が霞む。そして意識が遠のいていく瞬間、階段の上でスカートがゆれたような気がした。
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