【R18】石に花咲く

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石に花咲く

23.**

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「シィーファの肌って、すべすべでいい匂い」
 素肌の腹に頬擦りされて、シィーファは身をよじりそうになる。
 柔らかい髪が、肌を掠める感じもくすぐったいし、時折肌に口づけされるのも落ち着かない。
 そんなことに意識を持って行かれていたシィーファは、腰に回されていたラディスの手が、ごそごそとしているのに、気づくのが遅れた。

 ラディスはどうやら、シィーファのお腹の少し下――腰骨のあたりに集まっているワンピース風の寝間着を、お尻から抜き去ろうとしているらしい。
 ちゅ、ちゅ、と臍の周りに降る口づけがお腹の奥へと響いて、脚の間へと伝わるようだ。

 脚はワンピースの長い裾に覆われているので、太腿を擦り合わせていることには気づかれていないだろう。けれど、シィーファはシィーファで、纏わりつく裾が邪魔に思えてきていた。
 だから、そっと腰を浮かせて、問う。
「…脱がせる?」
「うん、ありがとう」
 ラディスは微笑んで、するりとシィーファのお尻からワンピースを引き下げ、足のつま先から衣服を取り去った。


 ラディスは、何も身に着けていないシィーファの身体を見下ろして、そっと目を細める。
「…昨夜も、思ったんだけど…。 シィーファには、下着を身に着ける習慣がないの…?」
 問われて、シィーファはそっと首を揺らした。
「わたしが、というより、わたしの一族が、でしょうか…」


 シィーファの一族は、ラディスたちの文化圏とは違い、下着らしい下着を実につける習慣はない。
 以前一度だけ、ラディスたちの文化圏の下着――コルセットといったか――を身に着けたことがあったが、シィーファにとっては苦行に他ならなかった。
 大げさではなく、死ぬのではないかと思うくらいに苦しかったのだ。
 西洋文化圏の御婦人方には、被虐趣味でもあるのではないかと、シィーファは未だに疑っている。


 上半身につける下着だけではなく、下肢には履く下着――ドロワーズだったと思う――もあるようだが、ごわごわして落ち着かなかった覚えがある。
 それだけでなく、西洋文化圏の衣装は、造りがしっかりしているのか、凝っているのか、重くて動きにくいことを、シィーファは知っている。
 だからシィーファは、ラディスに身請けされるときに衣装を数点持ってきて、普段はそれを身につけるようにしていた。


 西洋文化圏の人間にしてみれば、シィーファたち一族の衣装は、頼りなくて不安、という言葉で語られるのかもしれない、とは思う。
 シィーファとしては、薄っぺらくて動きやすい衣服の方が楽なので、むしろ西洋文化圏の寝間着は好きだ。
 本当は身に着けなければならないのかもしれない、用意されたドロワーズは、違和感が強すぎるので身に着けてはいない。
 折角用意してもらったのに、不躾だっただろうか、と思いながら、シィーファは尋ねた。
「…変、ですか…?」
「変、というのは、違うかな。 心配なんだと思う。 …でも、そうだね。 私の前だけでなら、大歓迎」
 目を細めて微笑みながら、ラディスは寝間着の前の釦を外して、寝間着の上を脱ぐ。

 ランプのオレンジの灯りを受けたラディスの肉体が、妙に艶めかしく見える。
 健康的でハリのある肌が、ランプの灯りを反射する様が、そう見せるのだろうか。
 それとも、オレンジの灯りが、筋肉の凹凸に影を作るためなのだろうか。

「…きれい」
 自分の声が耳に届いて、シィーファは驚く。
 ラディスは、何度か目を瞬かせたが、嬉しそうに、少しだけ照れくさそうに微笑んだ。
「きれいなのは、シィーファだよ。 …でも、私のことも気に入ってくれたなら、嬉しい」


 ラディスの手が、そっと、シィーファの膝に触れるから、シィーファはラディスが力を入れる方向に、膝を折り、脚を広げる。
 ぎし…、と小さく寝台が軋んで、ラディスの身体が、シィーファの脚の間へと移動した。
 ラディスの熱い視線が、シィーファの脚の間へと注がれて、居ても立ってもいられないような気分になる。

 ラディスの細められた目は、ジッとシィーファの脚の間に注がれたままだ。
「…濡れているの、すぐわかるね。 ランプの灯りで、きらきらして…。 きれい」


 濡れている、と言われて、シィーファは身体が一瞬で熱くなったような錯覚に陥る。
 ラディスはきれいだと表現したが、そんな場所、本当にきれいなのだろうか。

 シィーファが混乱していると、ラディスはシィーファの右膝の内側に唇を押し当てた。
「ん…」


 ラディスは、ちろりと覗かせた舌で、シィーファの膝の内側から、脚の付け根へと線を引くように滑らせていく。
 時折、ちゅっと肌を吸われるのも気持ちが良くて、その度にシィーファは小さく震える。
 脚の付け根にも、ちゅっちゅっと口づけをされて、じゅん…と脚の間が潤むのを感じていると、そこで空気が揺れた。
「…いい匂い、する」
「ん」
 ラディスの指が、つ、とシィーファの脚の間の潤んだ部分を、優しく撫で始めた。


 ちゅく、ちゅ…と小さい音を立てるラディスの指に、自分が濡れていることを意識して、また体温が上がる。
 身体の異変に戸惑いつつも、気持ちいいことを求めて、腰が小さく揺れてしまうのだから、世話がない。

 何となく、落ち着かないから、とにかく顔を上げてほしい、と思ってラディスを見れば、ラディスもちらとシィーファへ視線を向けたところだった。
 もちろん、シィーファの太腿の内側に、頬擦りしたままである。
「…ここ、昨日から気になっていたんだけれど…。 舐めて、いい?」
 シィーファは、思わず目を丸くしてしまった。


 ラディスが、【昨日から気になっていた】と言った【ここ】は、恐らく、ラディスがちらちらと気にしている、シィーファの脚の間のことだろう。
 そこを、舐めて、いい? と訊かれたのか?


 そういえば、ラディスは、先に、【いい匂い】とも言っていた気がする。
 シィーファは、信じられない思いで、ラディスを見た。
 どこを舐めたいと言っているのか、わかっているのだろうか、この王子様は。


「…でも、そこは、舐めるようなところでは…」
「舐めてみたい」
 ちゅ、と脚の付け根ぎりぎりのところを吸ったラディスに、これ以上何と説明したものかと、シィーファは思案する。
「汚い、から」
 一番、お貴族様たちに効果のありそうなことを口にした、と思ったのだが、ラディスは微笑む。
「でも、シィーファはお風呂を使ったでしょう? 汚くないよ。 シィーファのそこが汚いのなら、私だって、汚い」
 もっともな理論を口にされて、シィーファは言葉に詰まった。
 すると、ラディスはここが攻め時だと思ったのか、シィーファの方に身を乗り出してきて、シィーファの間近で、瞳を覗き込んでくる。


「!」
 ラディスが、しれっと股間をシィーファの脚の間に擦りつけてきて、シィーファはまた、困った。
 ラディスのものが、ずっしりと熱く、硬くなっているのは、布越しにもわかる。
 そのことをシィーファに意識させようというなら、ずるい。


 そう思っていたのだが、どうやら意識しているのはシィーファだけではなかったようだ。
 ラディスは、前面を押しつけるように腰を揺らしながら、シィーファの瞼に唇を押し当ててくる。
「シィーファが濡れてるの、布越しにもわかるね…。 すごい…。 しっとりしてきた…」


 シィーファはハッとした。
 シィーファがラディスの熱や重みを感じるということは当然、ラディスにもシィーファのそこがどうなっているか伝わっているのだ。
 ラディスの下穿きは、何も身に着けていないシィーファの秘部に押し当てられているのだから、シィーファの零す体液がついてしまう。
「汚してしまう、から、脱いで」
「だから、汚くないよ」
 ラディスは、シィーファに言い聞かせるようにしながら、シィーファの唇を軽く吸う。


 ラディスは、何度もシィーファに「汚くない」と言ってくれるが、シィーファはなかなか決心ができない。
 だって、そんなところ、今まで誰にも舐められたことなどないのだから!

 困ってふいと顔を背けたシィーファの耳に、ラディスが口づけた。
 ラディスの唇は、シィーファの耳に掠めるように触れながら、甘く囁く。
「しっかり洗ったけれど、私は、汚い? シィーファが汚いと思うようなところを、私はシィーファの身体の中に入れたくはないよ」
「汚い、なんて」
 反射的に、シィーファは口にしていた。
「ありがとう、嬉しい」
 ラディスはシィーファの頬に口づけ、シィーファの顎の輪郭に手を滑らせる。
 決して強引ではない力で、ラディスの方へとシィーファの顔を向けさせようとするから、抗えずに従う。


「私も、貴女の全てが愛しいから、汚いなんて思わないよ。 だから、舐めてもいいよね」
 微笑んだラディスは、問いではなく、確認を、シィーファにした。
 これ以上、シィーファに拒絶、または否定させないためなのかもしれない。


 ずるいなぁ、とは思うけれど、いつだって優しく丁寧にシィーファに触れてくれるこの男に、情が芽生え始めているのもまた、確かなのだ。
 シィーファは、小さく頷きつつも、できるだけ素っ気なく、口にする。
「後悔しても、知りませんから」
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