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恋は結局下心 (中)

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 ぽた、とオリヴィエ様の顎を伝って、シェイラの肌にオリヴィエ様の汗が落ちる。
 汗ばんだシェイラの肌の上に落ちたオリヴィエ様の汗はきっと、シェイラの汗と混ざるのだろう。
 そんなことを、ぼんやりと考えた。

 それから、こんなにぐちゃぐちゃのどろどろになる行為が、気持ちのいいことで、愛を確認する行為だなんて、よくわからない。
「あー…、すっごい…気持ちいいよ、シェイラ」

 ゆっくりと、オリヴィエ様は動く。
 それを、まるで堪能するようだと、シェイラは思う。

 気持ちがよさそうな表情でもあり、そうさせているのがシェイラだと思うと嬉しい。
 けれど、オリヴィエ様には余裕があるように見えて、シェイラばかり余裕がなくなっているようで、それが不満ではある。

 ついさっきまで、気持ちいいかどうかわからない、と思っていたのに、シェイラの身体が反応し始めた。
 このまま、気持ちよくなってしまうのが、怖い。

 一度、気持ちいいと認識してしまえば、それがずっと気持ちのいいことになってしまうのを、シェイラはよく知っている。


「ぁ、オリヴィエ様、だめ」


 シェイラは、オリヴィエ様のお腹を押して突っぱねようとするけれど、身体に上手に力が入れられない。
 なのに、オリヴィエ様を感じる場所は、オリヴィエ様を締め付けて気持ちよくなろうとしているのだから、どうしようもない。

 それを、オリヴィエ様も感じたのだろう。
 ぶるり、とオリヴィエ様が身震いした。

「あ…出そ…」
「ぇっ…だめっ…」
 目を瞑り、恍惚とした表情で喘ぐようにオリヴィエ様が言った。
 だから、シェイラも、声を上げたに過ぎない。

 決して他意はなかったのだけれど、声を上げた拍子に、別の場所にも力がこもってしまったらしい。
 つまりは、オリヴィエ様を受け容れている場所に。

「っ…そんな、締めたらっ…ぁ、つぅ」
 オリヴィエ様が、ぐっと腰を押し出して、一度動きを止めた。

 びく、びく、と動いている感じがするのは、腰を揺らされているのだろうか。
 シェイラの中が、オリヴィエ様をぎゅうぎゅうと締め付けているのはわかるけれど、気持ちいいかどうかの結論が出なかったのは幸いだと思った。

 オリヴィエ様の動きが止まったので、すぐにシェイラの中から出ていくのかと思えば、オリヴィエ様はそのままでそっとシェイラのお腹を撫でる。
「…だめだよ、シェイラ。 そんなに締めたら…。 それとも、口ではだめと言いながら、本当は中に欲しかった?」
 シェイラは、者も言えずにただただ高速で首を左右にふるふるふるふると振った。

 中に欲しかった? なんて、中に出した後で訊く台詞ではない、と思って次の瞬間には気づいてしまう。
 あれは、質問ではなく、確認だ。
 正確には、そんなに中に欲しかったんだね、と言っているのだろう。
 とんでもない方だ。

 シェイラは首を横に振ることと無言の抵抗で否定の意を示したのだが、オリヴィエ様の表情はますますうっとりとする。
「可愛いね、シェイラ。 いいこ。 すごく可愛い」

 もうこいつ、「可愛い」と「いいこ」しか言葉を知らないんじゃないだろうか。
 そんな疑念すら芽生えそうになったとき、オリヴィエ様はそっと手を伸ばして、シェイラの左手を手に取った。


「シェイラ、結婚しようね」


 言われている意味がわからなくて、ぽかんとしてしまったし、反応が遅れた。
「へっ…?」

 なんとか発した声は裏返ってしまう。
 繰り返しになるが、意味がわからない。
 上品な話でなくて恐縮ではあるが、挿入したままで持ちかけられる話でもないと思うのだ。
 だが、オリヴィエ様は何も、ちっともおかしいと思わないのか、じっとシェイラの返答を待っている。
 これは、シェイラが何か答えないといけないらしい。


「ま…、お待ちください、オリヴィエ様。 婚約したからといって結婚するとは限らないと仰っていませんでした?」


 ちょっと囓ってぽいするつもりだったのでは? とは言わないが、それくらいの気持ちは込めさせていただいた。
 けれど、オリヴィエ様はシェイラの込めた思いには気づかなかったのか見ないふりをしたのか、ただただ微笑む。

「よく覚えていたね。 その通りだ」

 まるで、シェイラが覚えていないとでも思っていたような言い方だ。
 シェイラの知能指数を低く見積もりすぎではないだろうか。

 オリヴィエ様は続けて、笑顔でゲスいことを口にする。
 それも、憚りながらではない。 さらりと流れるように口にした。


「でも、ああでも言わないと、男嫌いの君は、私に抱かれてはくれないでしょう?」


 はい???
 もう、シェイラの頭には疑問符しか浮かばない。
 頭の中は疑問符でいっぱいだ。
 オリヴィエ様が何を言いたいのかわからないし、ついでに言えばやっぱり、挿入されたままでする話だとは思えない。

「あの、この状態でする話ですか?」
 シェイラが、意を決してそう問えば、オリヴィエ様は今気づいたような顔をする。
「失礼。 君の中が、あまりに気持ちよくて」
 オリヴィエ様は、上機嫌でシェイラの瞼にキスをすると、腰を引く。

 そういう誉め言葉もいらないのですが、と言ってやろうかと思ったが、シェイラは唇を引き結んで言葉を飲み込んだ。
 オリヴィエ様が出ていく感覚に、声が漏れそうになったからだ。

 生理のことを、花が落ちるというのだが、花が落ちたときのように、どろりと何かがつたっていく感覚に、ぞわりとする。
 オリヴィエ様は、ぐいとシェイラの脚の付け根を引き寄せるようにしてお尻をわずか上げさせた。
 そして、シェイラの脚の間を見て目を細め、そのまま視線をシェイラに流した。

「すっごい濃い。 中で出してしまったし、王族の子を孕んでいるかもしれないから、私と結婚してもらうしかないでしょう?」

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