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第四章 悩める部活と猛練習

第105話 いつだって、その裏には誰かの支えがあって

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 翌日。
 樫田たちと駅前で待ち合わせをしていた。
 俺が待ち合わせ場所に向かうと、すでにみんなが揃っていた。

「お、杉野も来たか。時間通りだな」

「じゃ、さっさと行こうぜ」

「だねー」

 ショッピングモールに向かって歩いていく。

「樫田、今日は何買うんだ?」

「引退式で渡す色紙とかだな。そんなに多くはない」

「色紙ねー、僕ああいうの書くの苦手なんだよね」

「分かる。いざ言葉にしようとすると困るんだよな」

「前に書いた人がぎっしり書いているの見ると、書くの躊躇ったりするよな」

「そうだな。女子とかってあの時の文章量どこから来るんだろうな」

「「「分かる」」」

 他愛ない会話をして、俺達は買い物を進めていった。
 そして買い物をほとんど済ませたころ、フードコートで昼食をとることにした。
 四人それぞれ買ってきて、テーブルに座る。
 食べながら話していたが、山路が突然大槻に聞いた。

「そういえばさー、大槻はあの後夏村とどうなのー?」

『!』

 その質問に一瞬、俺と樫田が固まった。
 それってそんな簡単にしていい質問かよ。

「まぁ、特に何も。普通に挨拶したりはしているよ。部活の話ならしているし」

「え、そうなの?」

 思わず、そんな声が出る。
 知らんかった。てっきりもう全然話していないものかと。

「その、てっきりもう全然話していないものかと、みたいな表情止めろ…………まぁ、以前ほど俺が話しかけなくはなったけど……」

「それで言うと、一年生とのチーム分けのとき俺結構ハラハラしたんだぞ。大槻と夏村が同じチームだったら一年生可哀想だなって」

「あー、確かにー。あの時はちょっとそう思ったー」

 樫田の話に山路が同意する。
 言われてみればそうだな……。もしそうなったらどうなるんだろ。

「嘘こけ、そうなったらなったで樫田は対策考えていたんだろ」

「ふ、バレたか」

 何故か得意げ笑う樫田。
 さすがは演出家。対策を考えていたのか。

「部活の話ってというか、昨日の昼とかってそっちは何話していたんだ? 俺や杉野が話している間」

「昼食食っている時か? 別に他愛ないことだよ。中間テストのこととか春大会のこととか」

「そうか。でもお前らも池本の状態察して話していたんだろ。ありがとな」

 樫田がお礼を言った。
 確かに俺が椎名と話したり増倉ともめたりしていた間、一年生の面倒を見ていたのは大槻と山路、そして夏村だろう。

「よく知ってんな?」

「……夏村から聞いたんだよ。大槻と山路が場を和ませてくれたって」

「別に、そんなんじゃねーよ」

「そうだねー。ある意味当然のことだねー」

 樫田の感謝が照れ臭かったのか、二人とも謙遜した。
 それでも、樫田はしっかりと感謝を述べる。

「だとしても、だ。二人の力もあって池本のことは上手くいったと俺は思っている。そうだろ杉野?」

「ああ、そうだな。二人と、それに夏村も含めて俺たち二年生全員がいないとどうにもならなかっただろうな」

 俺も素直に樫田に同意した。
 すると、二人は少しだけ微笑んだ。

「まぁ、そこまで言うならその感謝受け取ってやるよ。なぁ?」

「そうだねー」

 どこか影のある笑いが少し気になりながらも、俺たちは会話を続けた。


 ――――――――――――――


 その後は、いろんな話をしながらショッピングモール内で遊んだ。
 そして気づけば夕方になっていた。
 駅に向かう途中、ふいに大槻が言った。

「なんか四人で遊ぶの久しぶりだったな」

「だな。一年になった頃はよく遊んだよな」

「そうだねー、二年になって初―?」

「確かに、言われてみればそうだな」

 俺が同意する。
 いつからか大槻と山路がサボりだし、一年の後半からはあんまり遊ばなくなったしな。
 久々の男子四人での遊びだった。
 そんな話をしていると、駅に着いた。

「じゃ、解散だな」

「今日はありがとな。急な誘いだったのに」

「全然いいよー、楽しかったしー」

「だな。良いリラックスになったし。来週にはオーディションだしな」

 俺がさらっとそう言うと、少しだけ空気が変わった。
 ? どこか張り詰めたような緊迫感が見え隠れする。
 そんな中、山路の視線を感じた。

「ねぇ、杉野」

「ん? どうした?」

「僕、負けないから」

 山路は俺を見ながらはっきりと言った。
 それはいつもの飄々とした態度ではなく、いつになく真剣で何か想いの詰まった様子だった。
 だから、俺は答える。

「ああ、お互い全力でな」

「うん」

 山路は満足げに笑った。
 この時、俺は気づいていなかったんだ。
 大槻と樫田がどんな心情で、俺達を見ていたのか。
 そして、山路の言葉の意味を。

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