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第二章 始まる部活と新入部員歓迎会

第47話 状況は憶測でしかなく

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「つまり、大槻が佐恵に告白してフラれてどっか行ったと」

「そして佐恵は泣いて、何かあったと察した樫田が走ったと」

 俺の説明を椎名と増倉は簡潔にまとめた。
 いや、まぁ、状況証拠としてはそうかもだけど、もっと人情的な部分とか。

「正直、なぜこのタイミングでってのはあるわね」

「というか、成功する算段はあったのかな」

「ないでしょうね。そんなものがあるならこのタイミングは選ばないわ」

「そうだね。遅かれ早かれってところはあったけど今かねー」

「ええ、そうね。タイミングが最悪なところも大槻らしいわね」

 あれ? これっていわゆる女子の悪口ってやつか? なんか怖いんだけど。
 てか、大槻の片想いってみんな知ってたん?

「杉野も大変だったね。その状況なら仕方ないって感じだけど」

「そうね。結果的に歓迎会も無事だったし、良かったのではないかしら」

「ああ、ありがとう」

「? なんか元気ないね」

「まぁ、こんなことの後で疲れているわよね」

 二人から見ると俺は元気がないようだ。
 確かに今日の疲れもあるだろう。けどそれだけではない。

「なんつーか、二人が思ったより普通にしているから、驚いて」

「…………」

「…………」

 ん? なんか変なこと言ったか?
 二人が黙ったんだが。

「お待たせ―、樫田と連絡取れた…………どうしたの?」

 山路が電話を終え近づくと、何この空気? みたいな顔で聞いてきた。
 俺が聞きたい。

「何でもないよー。労って損したかな」

「そうね。こういうところは変わらないのよね」

「杉野―」

 なぜか、二人は呆れた様子だった。
 山路はそれを聞いて俺のせいだと思ったのだろう。
 分かっていない俺を見るに見かねてか、椎名が言い放った。

「杉野。私たちも驚いているし混乱しているわ。でもそれで騒いでも何も変わらないわ。それに轟先輩が言っていたでしょ、ゴールデンウィーク後にみんなで部活に来るようにって」

「あ」

「先輩たちはきっと分かっていて、私たちに一任したのよ」

 俺は自分の考えの至らなさを恥じた。
 そうだよな。驚いて立ち止まっている暇はないよな。
 みんな必死に現状の改善を考えている。

「そうだな。すまん」

「いいのよ。杉野が後悔する理由も分かるわ」

「そうそう、後輩からの相談だったら断れないよね」

 二人とも笑顔でそう言った。
 少し疲れが取れたような感じを覚えた。

「でも、問題はこれからの動きよね」

「佐恵が心配ね」

「それだねー。たぶん、そろそろ…………あ、来たみたいだねー」

 山路が見ていた公園の入り口の方に目をやる。
 そこには樫田がいた。
 近づいてくる彼は少し疲れているようにも見えた。

「……お疲れ様、かな? 悪いな肝心な時に勝手な行動して」

「お疲れ様。いや、あれがなかったら俺はもっと酷い行動してたよ」

「そうだねー。異変があったことすぐに分かったよ」

 樫田はまず謝ったが、俺と山路は感謝を言った。
 俺はあのとき冷静さを取り戻せたし、みんなも樫田のおかげで異変に気付いたのだ。謝ることはない。

「佐恵は帰したのかしら?」

「大丈夫だった?」

 椎名と増倉は、夏村について樫田に聞いた。
 友として心配なのだろう。

「ああ、一人で帰れるってことだったから…………俺の見立てだけど良くない状態だ。大槻と何があったか全部は聞いてないけど、精神的に参った様子だった」

 場の雰囲気が重くなる。
 大槻と夏村、それぞれの心情を推し測ることしかできない。

 なぜ大槻はどこかへ行ったのか。
 なぜ夏村は泣いてしまったのか。
 少なくとも、俺は知らない。

「これからどうしよっかねー」

「そうね、大槻の方は誰か連絡したの?」

「一応、メッセージは残したんだけどな」

「返信はない、と。かなりまずい状況ね」

 みんなが今後について話し始めた。
 俺はひとまず、黙ってそれを聞いた。 
 現実を少し遠くに感じながら、気分が沈んでいく。

 俺はまだ、この想いの正体を知らなかった。 
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