上 下
1 / 113
序章  それは舞台じゃないどこかで

男は少し青春を知り、期待を信頼へと変える

しおりを挟む
 ――俺の想いは、考えは伝わったのだろうか。

 きっとあいつら以外の奴が訊いても分からないだろう。
 よもやあいつら自身も気づかずに分からなかっただろうか。
 
 それでも、どこまでも抽象的でなければいけない。
 どこかに具体性を持たせたら、その考えは俺一人のモノになってしまうだろうから。

 俺たちは、みんなで一つの結論を出さなければならない。
 誰かの意見に同調するのでなく、自分の意見を押し付けるのでもなく。
 みんなが同時に、同じ答えを言い合えるように。

 いや、多少は違っていいのかもしれない。

 けれど、各々が各々の結論を出し意思を持たないとダメだ。
 そうしないと俺たちは退廃していくだろう。

 ああ、今更になって湯水の様に言葉があふれ出す。

 俺は勝ちたいよ。みんなとの部活で。
 俺は楽しいんだ。みんなとの部活が。

 辛い時も、上手くいかない時も、不真面目な時も、真剣に練習する時も、お互いの意見がぶつかり合った時も、部活帰りの他愛もない会話の時も、土日に遊んでも最後には部活の話をし出す時も、大会の時も、色んな時が幸せだった。

 これは俺の我儘だろうか。

 あいつらに同じような気持ちを求めるのは、ただの強欲だろうか。
 あいつらに自分自身で結論を出してほしいと思うのは傲慢だろうか。
 俺はもう答えを出したと考えるのは、どうしようもない怠慢だろうか。

 思い出を言語化するほど、俺の中で疑念の影が濃さを増す。

 されど、もう行動は示した。

 さあ、相も変わらず演じるとしようか。
 既に場は整えられ、光を照らされることも、音を加えられることも、きっかけ一つだ。
 ここから先、物語になりうるかは役者たち次第だ。

 そしてなにより

 物語を楽しむか
 情緒を味わうか
 世界を感じるか
 人物を慰めるか


 それは手に取る、観客次第だ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

処理中です...