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第1章 偽りの騎士
第18話 解答 6
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さっさとルーチェを助けに行ってやりたい。いや、待てよ。さっさと助けるのなら、どうして話を聞いてからと思ってしまったのか。話なら後でもいいじゃないか。もしくは、ウロボロスかカルマに行って貰えればそれで解決なんじゃないのか。
「ちょっと待ってくれ、ルシファー」
「騎士様を助けるのは、話を聞き終えた後にしてください。そうでなくては、きっと本当の意味で助けることはできないでしょう」
本当の意味で助けるだと。何を言っている。悲しいことだが、アデルの危険性はもう明らかだ。そんな奴を相手に、ルーチェが1人で立ち向かうのを見守れというのか。馬鹿な。ロアたちの二の舞になってしまうだろう、話なんて悠長にしていたら。
「ご安心ください。そもそもの話、どうして騎士様はここまでたどり着けたのか考えてください」
「……まさか」
どういう原理かはわからないものの、確かにルーチェはここまで単身で乗り込んでいる。どうして道中で果てなかったのだろう。わからない。わからないが、あの現象の影響を受けない人間なのは確実だろう。ならば、ルシファーの言う通り直ちに危険は無いのだろうか。いや、そうと断定するのはまだ早い。
「いやいや、あの現象以外にも何らかの危険はあるだろう。それを考えれば、やっぱりここは急行すべきじゃないのか?」
「繰り返しますが、本当の意味で助けることができなくなってしまいます。ご安心ください。それまでの間ならば、騎士様でも大丈夫でしょう」
本当の意味で助ける。この部分だけを教えて欲しいんだが、どうやら順番に聞いて欲しいらしい。くそ、信じるしかないのか。ルーチェを。いや、やっぱり駄目だ。せめて近くにいるファントム・シーカーを向かわせて、命の危険が無いかどうかだけでもチェックさせて貰うぞ。
「相変わらず用心深い御方ですね」
なぜか動かした瞬間にバレちゃったらしい。でも、どうしても気になるんだ。話に身が入らなくなってしまう恐れがあるのだから、これくらいはルシファーも認めてくれるだろう。ただ、うーん、そういえば主って俺の方だよな。まるで俺が従っているような感じがするのは気のせいか。
「とにかく、話の続きを聞かせてくれ」
「では、あの液体について少々お話しましょうか。あれは人だったものです。人には少なからず魔力が宿っているようでして、それをかき集めて力として運用するための最適な形のようですね」
そういえばアデルは言っていたな。父親は兵器の開発をしていたと。しかも特殊な訓練を受けずとも、誰でも使うことができたと。兵器って、あの液体のことを言っていたのか。具体的にどう使うのかは全く想像できないが、アデルやウロボロスの形を作れたことから、武器くらい何でも生み出せたのではないだろうか。
「装備者は好きな武器を自在に生成して使いこなせたという訳か?」
「いいえ、そう上手くいく話でもありません。人間は魔法もスキルも不得手としております。まぁ、中には見所のある者もいますが、多くの者は一切使えません。そんな彼らが、あの液体を突然渡されて使いこなせると思いますか?」
想像してみよう。元の世界の俺なら、突然あんな液体をポイっと渡されたらどうするのか。うん、とりあえず避けるよね。触りたくないもん。でも上司とか取引先のお偉いさんの命令なら、ビニール袋か何かに入れて、犬の糞でも処理する気持ちで持ち上げることはできなくもない。でもそこまでな気がする。だってさ、取扱説明書も無ければ、そもそも持ち手がどこなのかすらわからないんだ。使えるか、って切れて終わりだろう。
「うーん、無理なんじゃないか? あの液体のままならさ」
「流石はユウ様です。そう、あのままならば不可能。つまり武器や人間へ加工しているのです。その技術……一体誰が持っていると思いますか?」
余り認めたくはない話だが候補は1人しかいない。アデル。俺がこの世界に来て初めて力になりたいと思った、とても心優しく強い人だと信じていた、あいつ。他に挙がる奴はいない。いない。いや、ひとつだけ気になる点がある。もしもそれが俺の想像通りなら、犯人はアデルであって、アデルではない可能性も出てくる。
「……アデルだろう?」
「はい、犯人はアデルです。ただしアデルではありますが、正確にはアデルではありません。なぜなら彼女は被害者であり、ある意味で黒幕でもありますから」
――もう私を信じないで
そんな耳を疑う発言をした後、アデルはまるで別人のようになった。目付きも、口調も、話す言葉も変わってしまった。あれが答えだったのだ。アデルの中には別の誰かがいる。そんな常識では考えられないことが起こっていたのだ。なんて、俺たちの存在自体が既にあり得ないことなのだから、二重人格くらい普通のこともしれないか。
「アデルの中に別の誰かがいて、そっちが犯人なのか?」
「ご明察で御座います。アデルも言っていたではありませんか。もう私を信じないで、と。ただし、あれは多重人格の類ではありません」
多重人格ではないだと。俺はそっち方面に詳しくないが、他にも何かあるのだろうか。自分の中に自分以外の何者かが隠れ潜むような精神疾患的な何かが。いや、待て。ルシファーは今、その類と言ったな。つまり全く別の何かがいるということになるのか。何があり得るだろう。と、考え出してすぐに、俺はひとつの可能性を見付けてしまった。
「確かあの時は……アデルの父親が開発した武器のことから始まって……」
――まだ大災厄は終わっていないのに
あの感情の高ぶりは普通ではなかった。まぁ、大災厄と呼ばれる程の悲劇を目の当りにしたのなら誰だってあぁなるだろう。そう漠然と思っていた。
「ちょっと待ってくれ、ルシファー」
「騎士様を助けるのは、話を聞き終えた後にしてください。そうでなくては、きっと本当の意味で助けることはできないでしょう」
本当の意味で助けるだと。何を言っている。悲しいことだが、アデルの危険性はもう明らかだ。そんな奴を相手に、ルーチェが1人で立ち向かうのを見守れというのか。馬鹿な。ロアたちの二の舞になってしまうだろう、話なんて悠長にしていたら。
「ご安心ください。そもそもの話、どうして騎士様はここまでたどり着けたのか考えてください」
「……まさか」
どういう原理かはわからないものの、確かにルーチェはここまで単身で乗り込んでいる。どうして道中で果てなかったのだろう。わからない。わからないが、あの現象の影響を受けない人間なのは確実だろう。ならば、ルシファーの言う通り直ちに危険は無いのだろうか。いや、そうと断定するのはまだ早い。
「いやいや、あの現象以外にも何らかの危険はあるだろう。それを考えれば、やっぱりここは急行すべきじゃないのか?」
「繰り返しますが、本当の意味で助けることができなくなってしまいます。ご安心ください。それまでの間ならば、騎士様でも大丈夫でしょう」
本当の意味で助ける。この部分だけを教えて欲しいんだが、どうやら順番に聞いて欲しいらしい。くそ、信じるしかないのか。ルーチェを。いや、やっぱり駄目だ。せめて近くにいるファントム・シーカーを向かわせて、命の危険が無いかどうかだけでもチェックさせて貰うぞ。
「相変わらず用心深い御方ですね」
なぜか動かした瞬間にバレちゃったらしい。でも、どうしても気になるんだ。話に身が入らなくなってしまう恐れがあるのだから、これくらいはルシファーも認めてくれるだろう。ただ、うーん、そういえば主って俺の方だよな。まるで俺が従っているような感じがするのは気のせいか。
「とにかく、話の続きを聞かせてくれ」
「では、あの液体について少々お話しましょうか。あれは人だったものです。人には少なからず魔力が宿っているようでして、それをかき集めて力として運用するための最適な形のようですね」
そういえばアデルは言っていたな。父親は兵器の開発をしていたと。しかも特殊な訓練を受けずとも、誰でも使うことができたと。兵器って、あの液体のことを言っていたのか。具体的にどう使うのかは全く想像できないが、アデルやウロボロスの形を作れたことから、武器くらい何でも生み出せたのではないだろうか。
「装備者は好きな武器を自在に生成して使いこなせたという訳か?」
「いいえ、そう上手くいく話でもありません。人間は魔法もスキルも不得手としております。まぁ、中には見所のある者もいますが、多くの者は一切使えません。そんな彼らが、あの液体を突然渡されて使いこなせると思いますか?」
想像してみよう。元の世界の俺なら、突然あんな液体をポイっと渡されたらどうするのか。うん、とりあえず避けるよね。触りたくないもん。でも上司とか取引先のお偉いさんの命令なら、ビニール袋か何かに入れて、犬の糞でも処理する気持ちで持ち上げることはできなくもない。でもそこまでな気がする。だってさ、取扱説明書も無ければ、そもそも持ち手がどこなのかすらわからないんだ。使えるか、って切れて終わりだろう。
「うーん、無理なんじゃないか? あの液体のままならさ」
「流石はユウ様です。そう、あのままならば不可能。つまり武器や人間へ加工しているのです。その技術……一体誰が持っていると思いますか?」
余り認めたくはない話だが候補は1人しかいない。アデル。俺がこの世界に来て初めて力になりたいと思った、とても心優しく強い人だと信じていた、あいつ。他に挙がる奴はいない。いない。いや、ひとつだけ気になる点がある。もしもそれが俺の想像通りなら、犯人はアデルであって、アデルではない可能性も出てくる。
「……アデルだろう?」
「はい、犯人はアデルです。ただしアデルではありますが、正確にはアデルではありません。なぜなら彼女は被害者であり、ある意味で黒幕でもありますから」
――もう私を信じないで
そんな耳を疑う発言をした後、アデルはまるで別人のようになった。目付きも、口調も、話す言葉も変わってしまった。あれが答えだったのだ。アデルの中には別の誰かがいる。そんな常識では考えられないことが起こっていたのだ。なんて、俺たちの存在自体が既にあり得ないことなのだから、二重人格くらい普通のこともしれないか。
「アデルの中に別の誰かがいて、そっちが犯人なのか?」
「ご明察で御座います。アデルも言っていたではありませんか。もう私を信じないで、と。ただし、あれは多重人格の類ではありません」
多重人格ではないだと。俺はそっち方面に詳しくないが、他にも何かあるのだろうか。自分の中に自分以外の何者かが隠れ潜むような精神疾患的な何かが。いや、待て。ルシファーは今、その類と言ったな。つまり全く別の何かがいるということになるのか。何があり得るだろう。と、考え出してすぐに、俺はひとつの可能性を見付けてしまった。
「確かあの時は……アデルの父親が開発した武器のことから始まって……」
――まだ大災厄は終わっていないのに
あの感情の高ぶりは普通ではなかった。まぁ、大災厄と呼ばれる程の悲劇を目の当りにしたのなら誰だってあぁなるだろう。そう漠然と思っていた。
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