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第1章 光るバッハ
第4話 次の獲物は……
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ねぇねぇ、聞いた?
夕べのことだろ?
警備員が見たって噂だぜ?
次の日、
3-Aの教室は幽霊の話題で持ち切りだった。
そうはいっても被害を受けたのは1人だけ。
いくら黒板の爪痕を見せても、
誰もまともに相手をしなかったらしい。
「その謎さ、俺たちで解き明かしてみないか?」
そんな命知らずな、
おっと、間違い。
好奇心に満ちた発言をしたのは彼だった。
名前は金井。
お調子者のムードメーカーである。
「面白そうだな。俺は乗ったぜ、その話」
「お前たちはすぐそうやって……仕方ない、付き合ってやるよ」
それに加わったのは2人。
赤坂と青崎だ。
赤坂はスポーツ万能、
青崎は成績優秀な男子学生だった。
「ふーん、次の獲物はあいつらね」
そんな教室の様子を満足気に眺めていたユーコは、
これ以上ない程に口角を吊り上げていた。
「た、楽しくて仕方ないって様子ですね?」
死神が軽く引く程の表情だった。
「当り前でしょ? 生前は堅苦しくて大変だったんだから」
「そ……そうですか」
ユーコの実家は裕福で、
たくさんの習い事に勉強を強いられていたらしい。
らしい、というのは、死神なりに調べた結果だ。
なぜ調べたのか。
それは、何か材料を見付けて、
早々に転生して貰うためだった。
結果、全て空振り。
家庭環境から迫れるようなものは皆無だった。
「ねぇ、少しベタなのをやってみたいの。お使い頼むわ」
「あのー……これでも死神なんですが?」
「そうね、だから?」
むしろ調べたのは悪手だったらしい。
死神は、ユーコが裕福な家庭の出だと知った。
お金があることを把握してしまった。
それからだ。
こうして金を取って来るところから、
お使いまで押し付けられるようになったのは。
「別にタダとは言わないわ。何でも好きなおやつ、買って来ていいわよ?」
「子どもじゃないんですが?」
「じゃあ、うめぇ棒は無しね」
「すぐに行ってきます!」
ここに縛られる間の唯一の楽しみ。
うめぇ棒。
1本10円の駄菓子だが、それだけが死神のオアシスだった。
夕べのことだろ?
警備員が見たって噂だぜ?
次の日、
3-Aの教室は幽霊の話題で持ち切りだった。
そうはいっても被害を受けたのは1人だけ。
いくら黒板の爪痕を見せても、
誰もまともに相手をしなかったらしい。
「その謎さ、俺たちで解き明かしてみないか?」
そんな命知らずな、
おっと、間違い。
好奇心に満ちた発言をしたのは彼だった。
名前は金井。
お調子者のムードメーカーである。
「面白そうだな。俺は乗ったぜ、その話」
「お前たちはすぐそうやって……仕方ない、付き合ってやるよ」
それに加わったのは2人。
赤坂と青崎だ。
赤坂はスポーツ万能、
青崎は成績優秀な男子学生だった。
「ふーん、次の獲物はあいつらね」
そんな教室の様子を満足気に眺めていたユーコは、
これ以上ない程に口角を吊り上げていた。
「た、楽しくて仕方ないって様子ですね?」
死神が軽く引く程の表情だった。
「当り前でしょ? 生前は堅苦しくて大変だったんだから」
「そ……そうですか」
ユーコの実家は裕福で、
たくさんの習い事に勉強を強いられていたらしい。
らしい、というのは、死神なりに調べた結果だ。
なぜ調べたのか。
それは、何か材料を見付けて、
早々に転生して貰うためだった。
結果、全て空振り。
家庭環境から迫れるようなものは皆無だった。
「ねぇ、少しベタなのをやってみたいの。お使い頼むわ」
「あのー……これでも死神なんですが?」
「そうね、だから?」
むしろ調べたのは悪手だったらしい。
死神は、ユーコが裕福な家庭の出だと知った。
お金があることを把握してしまった。
それからだ。
こうして金を取って来るところから、
お使いまで押し付けられるようになったのは。
「別にタダとは言わないわ。何でも好きなおやつ、買って来ていいわよ?」
「子どもじゃないんですが?」
「じゃあ、うめぇ棒は無しね」
「すぐに行ってきます!」
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うめぇ棒。
1本10円の駄菓子だが、それだけが死神のオアシスだった。
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