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ダークエルフの隠れ里④

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 「うそ!」

 「なんだこれは‼どうなっているんだ⁉」

 見ごとに蛇口から水がドバドバ流れている。僕は助かるのか。女神様―。
 心の中で希望と不安がごちゃ混ぜになった感情が押し寄せてきた。

 するとリロが蛇口から出る水に恐る恐る近づき水を口にした。

 こっちのほうが怖いよ、いったい僕どうなっちゃうの?ダイダロス様の腹の中に納まるのだけは勘弁願いたい。

 「うっ」

 「どうしたのリロ⁉」

 うへぇ、なんかダメだったかな、僕の飲んだ水は大丈夫だったけど。め・が・み・さまー!お助けー‼

 「うまい!」

 うまいのかよ、紛らわしいリアクションとるなよ!寿命が三年くらい縮んだよ。冗談じゃないよマジで‼

 リリムさんも蛇口から流れてくる水を手ですくって飲んでいる。その姿はとてもきれいでどこかの町の銅像として飾られていてもおかしくないと思ってしまうほどだった。

 「本当においしい!この水があれば里のみんなが救われる‼里長に知らせてくるわ!」

 リリムさんが急いで出口のほうに走っていくのが見える。僕は助かるのか?誰かこたえてくれー‼
 そんな表情でリロを見るとリロが少し涙目になっている。

 「どうしました!おなかでも下しましたか‼」

 僕は命がかかっているので真剣にリロのことを心配した。生水でおなかを下されてやっぱりお前は生贄だって言われてしまったらたまったものではない。

 「違う、違うんだ。これで誰も死ななくて済む。俺の家の家族もみんな飢えに苦しんでいるんだ。俺の家だけじゃない。この里のみんながこれで助かる。本当にすまなかった。どれだけ感謝してもしきれない。本当にありがとう。」

 ここまで感謝されたのは生まれて初めてかもしれない。さっちゃん家の犬の散歩を任された時もこんなに感謝はされなかったな。

 僕は蛇口を地面から引き抜くと、一番重要なことをリロに尋ねた。

 「僕はどうなるんでしょうか?助けてもらえるのですか?それともダイダロス様の腹の中?」

 「今、リリムが里長のところに向かった。里長がこのことを知ればお前に、いや、あなたに危害を加えることはないだろう。俺からも里のみんなに話すつもりだ。」

 しばらくすると若いダークエルフが数人と、それに守られて里の長らしき人物が現れた。しかし、里の長はどう見ても人間でいうと三十代後半くらいにしか見えない、とてもきれいで優しそうな女性のダークエルフだった。さっちゃん家のママだって必死に若作りをしているが、ここまで神々しく美しいとは決して思わない。
 この人に運命をゆだねるのならもうどうなっても構わないとさえ思った。
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