素直になればよかった

田鶴

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番外編2 ツンデレな彼女が気になって仕方ない

15.卒業

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 早いもので俺達も今日で大学卒業になる。俺は大手商社に就職が決まっていて、真理は大手事務機器メーカーに就職する。

 俺が大手商社に内定したと噂が広まった頃から、俺に付きまとう女が増えた。元から俺はモテるんだが、それに輪をかけて酷くなった。やっと真理と恋人になれたのに、俺の周りに群がる女が真理の目に入ると彼女の機嫌が急降下したり、卑屈になったりして雰囲気最悪になってしまう。

 今日の卒業式では、俺は首席として卒業生を代表して挨拶をした。だからか、卒業式が終わってすぐにまた女どもが湧いて出てきた。

「野村君! 付き合い悪いと思ったら、勉強してたんだね! じゃあ、これからは遊べるね」

 アホか。チャラ男のままで大手商社に内定する訳ないだろ――そう呆れているうちに卒業生(袴を履いてるから卒業生のはず――相手は俺を知ってるみたいだが)の女の1人に俺は腕を掴まれ、別の女ももう一方の腕を取った。

「ちょっと止めなさいよ! 野村君は私とこれから飲みに行くんだから!」
「冗談じゃないわよ! 私と一緒に行くわよね、野村君?」
「その花束、私にくれるんだよね? 早く行こうよ!」
「止めろよ! この花束はお前達のために持って来たんじゃない! 俺は謝恩会に行くよ」

 俺はもう我慢できずに叫んでその場から走り去った。するとすぐに袴姿の真理が見えた。彼女のいた所からは、運の悪い事に俺が女達に囲まれた場面が見えたみたいだ。こりゃ、素直になってもらうのはまたお預けかな。

 袴姿の真理は、一瞬見とれてしまったぐらい本当に美しかった。俺は我に返って真理に花束を渡した。

「真理ちゃん、卒業おめでとう」
「ありがとう。野村君こそ、首席卒業、おめでとう」
「これで俺は君にふさわしい男って証明できたかな?」
「でっ……でも佐藤さんの方がやっぱりいいって思ったりしない?」
「真理ちゃんへの俺の気持ち、まだ信じてくれてなかったの? 俺達、恋人なのに? 佐藤さんにはずっと前に振られてもう吹っ切れてるよ。人の気持ちって変わるものでしょ」
「でも私……佐藤さんにあんな事をしようとしたのよ。田中君が止めてくれなかったら犯罪者だわ。野村君がこんな私を好きでいれるはずがないよ……」
「真理ちゃんは、あの計画が卑劣な事だったって反省して佐藤さん達に謝罪した。それに田中君の説得をきいて実行しなかったのは、自分でもいけない事だって自覚したからでしょ? もし真理ちゃんが今でも反省していないようなら、俺は好きじゃなかったよ。でも違うよね?」
「うん……」
「真理ちゃんの外見も中身も全部好きだよ」
「あっ、あっ、あ……ありがとう……」
 真理は真っ赤になってやっと感謝の言葉をひねり出した。
「真理ちゃん、好きだよ。真理ちゃんは俺の事、好き?」
「す、す……」
「『す』って好きの『す』?」
「ち、違……じゃなくて……こ、恋人なんだから、いちいち言わなくたっていいよね?」
「うーん、残念。恋人同士だからこそ素直な気持ちを伝え合いたいんだけどな。でも俺はそんなツンデレな君もかわいいと思うよ」
「なっ…か、かわいい?! わ、私はミス甲北の才媛、美女よ」
「うん。わかってる。だから努力した。ツンをもうちょっと少なくして素直に気持ちを伝え合おうよ」
「じゃ、じゃあ、いっ、一緒に……謝恩会に行って……あげてもいいわよ!」
「うん……まあ、今日はそれで我慢しておくか。素直になってくれるまで俺は離れないからね」

 うん、自分で『才媛』とか『美女』とか照れながら言いきっちゃう所がかわいい。

 真理は顔を真っ赤にしてズンズン歩いて行ってしまったので、俺はその後ろを追いかけていった。

 それから俺達は、予定通り俺の研修期間中、同棲した。彼女は相変わらずツンデレだったけど、ちょっとずつ態度が軟化していった。その様子を見るだけで俺はクる。

 でも悲劇はやって来た。俺の勤務地が大阪になった。どれだけ会えるか分からないけど、遠距離恋愛を成就させる覚悟はある。俺達の未来は明るい……ハズだ。

------

 思ったよりも番外編2は長くなってしまいましたが、これで完結です! 萌の親友リコの恋バナも(孝之とかぶるのでリコの彼氏の名前を和人に変えました)番外編にしようと思えばできない事もないでしょうが、これ以上ひねり出せないので、この物語はこれで終わりとします。本編と番外編2編まで読んでくださった方々、ありがとうございました。
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