素直になればよかった

田鶴

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番外編2 ツンデレな彼女が気になって仕方ない

9.失敗デートのデジャヴ

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 失敗に終わった週末の映画館デートの翌週から、俺は大学で真理に話しかけようとしていたが、ことごとく無視されてしまった。でもめげずに声をかけて何十回。これ以上やったらストーカーの域に達するかという頃――いや、もうストーカーだろと外野の声がするけど、無視、無視――彼女の変化に気付いた。それも、気付かないだろう、ほんの僅かな変化。

 前は俺が声をかけても、正に氷のごとく、全くもって無反応だった。いや、すぐに俺の反対方向に行っちゃうから無反応じゃないか。

 でも、その日は何だか違った。いつもなら俺が声をかけたら、さっさとどこかへ行っちゃうのに、その場でくるりとそっぽを向いた。よく見れば、彼女の頬がほんのりと赤くなっている。

 俺はすかさず真理に話しかけた。

「真理ちゃん、本当にごめんなさい。許して? かわいくて大好きでついチュウしちゃったんだ……」
「……軽いのよ」

 真理は真っ赤になりながら、口を尖らせてそう言った。俺はツンデレな彼女がかわいくてニンマリした。

「俺の愛は重いよ」
「な、何言ってるのよ?!」

 顔が赤いまま、真理は走って行ってしまった。

 それからすこーしずつ、本当にミリメートルずつって言っていいくらい少しずつ再接近してあの失敗デートから3ヶ月後、ようやく再デートの約束を取り付けた。で、もう1度あのシネコンに行こうって提案したら、すごく嫌な顔をされた。

「え?! また映画?! まさかまたあんな事、するつもりないでしょうね?!」
「まさか! あの失態を一から挽回するために初デートをやり直したいだけだよ」
「だからって同じ場所にしなくても……」
「今度は違う映画だからさぁ。ねえ、お願い!」

 本当は同じ場所で同じ映画を見て初デートを再現してあの失敗をやり直そうって思ったんだけど、残念ながら同じ映画はもう上映していなかった。

 今度も30分前にシネコン前に着いて真理を待つ。前回と同じく、もうチケットは買ってある。真理も前のデートと同じように10分前に来た。

 俺がチケット売り場に行かないでまっすぐ上映会場に入ろうとしたので、真理は怪訝な顔をした。

「チケット、もう買ってあるんだ」
「え?! 何の映画?」
「いいから、いいから。来て!」

 ほんとは手を繋いで上映会場に入ろうと思ったけど、前の失態があるから、真理の少し前を歩いて『シアター2』に入ろうとした。

「え?! これ見るの?!」

 真理の目は、シアター2の前に掲示されている上映映画のポスター『ガンバレ! 正義の編隊じゃーズ』に釘付けになっていた。心なしか怒ってる? 『性技の変態じゃーズ』に脳内変換して怒ってるの?!

 俺は後で気付いたんだが、ポスターの端っこにR18+のマークが付いていた。そんな事とは露知らず(ほんとだよ!)、その時上映している1番くだらなくて笑えそうなB級映画を検索して適当に決めた映画だった。

「あ、あのさ、面白い、かも、しれないから、チケットももう買ってあるし、入ってみようよ」

 俺がおずおずとお願いすると、真理は頷いてくれた。

 映画の内容は……あまりにもくだらな過ぎた。ヒーローにこれほどかというくらいラッキースケベが何度も起きる。仕舞いにはラッキースケベ技で敵を倒しちゃうのだ。

 上映中、俺は笑いが止まらなくなって必死に口を押えてた。ちらりと隣の真理を見たら、彼女の肩も震えてる。笑いを我慢してる証拠だ!

 エンドロールが始まってすぐに真理は何も言わずに出て行ってしまった。あれ?! おかしいなぁ……機嫌損ねたのか? なんか失敗デートのデジャヴが……

 慌てて追いかけたら、シネコンの入口で真理に追いつけた。だけどバッチーンと特大平手を喰らってしまった。

「い、痛い! 真理ちゃん……酷いよ……あああ、耳がキーンってする! 鼓膜敗れたかも?!」
「アホ! 何度も同じ手使うな!」

 真理は蹲った俺をおいてさっさと帰ってしまった。周りの人達の目が痛かった……

------

 性技の変態じゃーズにはもちろん、元ネタはないというか、しいて言うと……大人なコミックにそんな感じのちょっと変態な漫画があったなと……題名は全く違いますが。いや、買ってないですよ? ムーンライトノベルズの小説読んでたら、その漫画の広告が出てきて、ついクリックしてちょ、ちょっと試読しちゃっただけで……(しどろもどろ……汗)
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