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番外編2 ツンデレな彼女が気になって仕方ない
7.キスは万能薬
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俺はそろそろ真理に接触しようと思った。でもただ話しかけるだけじゃ芸がない。俺はいい機会をじっくりと待った。
ある日、真理が図書館に入って行くのを見かけ、俺はこっそり彼女を追った。彼女は本棚に貼られた分類番号を見ながら進んで行く。何か特定の本を探しているようだ。
真理が目的の本棚の間に入って行く。俺はその手前の本棚の隙間から彼女の後姿を伺った。彼女はつま先立ちになって一番上の棚の本に手を伸ばしていたが、本の下に手が届くか届かないか微妙な感じだった。もっと背伸びをしようとして彼女の脚がプルプル震えていた。
俺は忍び足で彼女の背後に立ち、目的の本を易々と手に取った。彼女は目の前から獲物が盗られたような感覚に陥ったようだった。
「えっ?! ちょ、ちょっと、それ私が……」
「はい、どうぞ。真理ちゃん」
真理は振り返り、本を取ったのが俺だと分かって目を丸くした。
「え?! の、野村君?!」
「すぐ僕って分かってくれなくて悲しいな」
「な、何言ってるの! 大体、貴方としばらく話すらしてなかったのに気付くはずないでしょ!」
「寂しかったんだね。ごめんね、真理ちゃん」
俺が真理を抱きしめて頬にキスを落とし、唇を軽く重ねると、彼女の顔は耳まで真っ赤になった。
「な、何するのよ!」
彼女の叫び声と共にバチンと目の前に火花が散った。左頬がジンジンして手で押さえた。
「いってぇ……」
「あ、ご、ごめんなさい! 力入れすぎちゃった」
「え? 謝るとこ、そこ?」
「だって! 野村君と付き合ってる訳でもないのにキスなんて! 酷い!」
真理がもう1度腕を振り上げたので、すかさず掴んだ。また平手打ちされてはたまらない。彼女は意外と狂暴なようだ。軽く謝っておこう。
「ごめん、ごめん。次は真理ちゃんに聞いてからキスするよ」
「き、聞いたらキスさせる訳ないでしょ!」
「そう? ああ、まだ痛い……なんか耳がキーンってする。鼓膜破れたかも……」
「えっ?! ど、どうしよう?! 早くお医者さんに行かなきゃ……」
「ねえ、ここにキスして。そしたら耳がキーンってしなくなるかも」
「そんな訳ないでしょ」
「でもさ、痛いの痛いの飛んでけみたいな効果があるかも」
「じゃあ、痛いの、痛いの飛んでけ!」
「うーん、まだキーンは飛んでかないよ。やっぱりここにキスして。お願い。ああ、何だか耳が痛くなってきた」
俺は蹲って下を向いた。真理は明らかに狼狽えて俺の横で膝を曲げて中腰になった。チョロい真理に口角が上がってしまって仕方ない。
「ごめんね。野村君……」
彼女は蹲っている俺の額にちゅっとキスをした。
「これでお医者さんに行ける?」
「何か元気が出てきた。もう耳もキーンってしないよ。真理ちゃんのキスの効果ってすごい!」
「な、何言ってるのよ?!」
そこにゴロゴロとワゴンを押す音が聞こえてきた。
「すみません、静かにしていただけますか?」
図書館員が本棚に戻す本をワゴンで運んできていた。よりによって今かよと俺は心の中で舌打ちした。
ある日、真理が図書館に入って行くのを見かけ、俺はこっそり彼女を追った。彼女は本棚に貼られた分類番号を見ながら進んで行く。何か特定の本を探しているようだ。
真理が目的の本棚の間に入って行く。俺はその手前の本棚の隙間から彼女の後姿を伺った。彼女はつま先立ちになって一番上の棚の本に手を伸ばしていたが、本の下に手が届くか届かないか微妙な感じだった。もっと背伸びをしようとして彼女の脚がプルプル震えていた。
俺は忍び足で彼女の背後に立ち、目的の本を易々と手に取った。彼女は目の前から獲物が盗られたような感覚に陥ったようだった。
「えっ?! ちょ、ちょっと、それ私が……」
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真理は振り返り、本を取ったのが俺だと分かって目を丸くした。
「え?! の、野村君?!」
「すぐ僕って分かってくれなくて悲しいな」
「な、何言ってるの! 大体、貴方としばらく話すらしてなかったのに気付くはずないでしょ!」
「寂しかったんだね。ごめんね、真理ちゃん」
俺が真理を抱きしめて頬にキスを落とし、唇を軽く重ねると、彼女の顔は耳まで真っ赤になった。
「な、何するのよ!」
彼女の叫び声と共にバチンと目の前に火花が散った。左頬がジンジンして手で押さえた。
「いってぇ……」
「あ、ご、ごめんなさい! 力入れすぎちゃった」
「え? 謝るとこ、そこ?」
「だって! 野村君と付き合ってる訳でもないのにキスなんて! 酷い!」
真理がもう1度腕を振り上げたので、すかさず掴んだ。また平手打ちされてはたまらない。彼女は意外と狂暴なようだ。軽く謝っておこう。
「ごめん、ごめん。次は真理ちゃんに聞いてからキスするよ」
「き、聞いたらキスさせる訳ないでしょ!」
「そう? ああ、まだ痛い……なんか耳がキーンってする。鼓膜破れたかも……」
「えっ?! ど、どうしよう?! 早くお医者さんに行かなきゃ……」
「ねえ、ここにキスして。そしたら耳がキーンってしなくなるかも」
「そんな訳ないでしょ」
「でもさ、痛いの痛いの飛んでけみたいな効果があるかも」
「じゃあ、痛いの、痛いの飛んでけ!」
「うーん、まだキーンは飛んでかないよ。やっぱりここにキスして。お願い。ああ、何だか耳が痛くなってきた」
俺は蹲って下を向いた。真理は明らかに狼狽えて俺の横で膝を曲げて中腰になった。チョロい真理に口角が上がってしまって仕方ない。
「ごめんね。野村君……」
彼女は蹲っている俺の額にちゅっとキスをした。
「これでお医者さんに行ける?」
「何か元気が出てきた。もう耳もキーンってしないよ。真理ちゃんのキスの効果ってすごい!」
「な、何言ってるのよ?!」
そこにゴロゴロとワゴンを押す音が聞こえてきた。
「すみません、静かにしていただけますか?」
図書館員が本棚に戻す本をワゴンで運んできていた。よりによって今かよと俺は心の中で舌打ちした。
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