17 / 55
本編
17.グループ発表
しおりを挟む
とある選択科目――萌とリコ、悠、そして真理もとっている――の科目の担当教員は、テストの代わりにレポートのテーマをいくつか出して学生に選ばせ、そのテーマについてグループ発表をさせる。
グループの人数は授業の参加人数次第だが、3人から5人ぐらいまで。教員はグループのメンバー構成には口を出さず、学生の自主性に任せている。
今回は1グループ4人か5人ということになった。萌はもちろんリコと同じグループを組む。教室の中を見ると、皆それぞれグループを作りつつある。でも悠はポツンと1人で手持無沙汰にしていた。
「リコ、園田君を誘ってもいい?」
「いいよ」
萌が近づくと、悠は顔を上げて何か言いたげな表情をした。
「園田君、私達と一緒のグループにならない?」
「……いいの?」
「もちろん」
「ありがと……頼もうかと思ってたんだ」
萌がにっこり微笑むと、悠は小声でぶつぶつとお礼を言った。
「あと1人どうしようか」
萌がちらちらと視線を感じる方へ目を向けると、真理が険悪な目つきで萌を見ているのが見えた。真理の周りには親衛隊の男の子達が群がっている。誰が真理と一緒のグループになるか少し揉めているようだ。
「あそこからあぶれた人は問題外だね」
リコはうんうんとうなずいた。
「佐藤さん、私達2人なんだけど、一緒に組まない?」
2人組の女の子が寄ってきて萌にそう提案した。萌達3人も異存なく、5人組のグループができた。
グループができた後は、それぞれが調べる担当範囲を決めて、1週間後にその結果を5人で突き合わせようということになった。
授業の後、空き時間のある学生は、図書館に参考になりそうな本を探しに行ったようだった。萌やリコ、悠、真理、真理の親衛隊の男子学生達もそうだった。
悠が本棚の間で本を探していると、後ろから肩を叩かれた。悠は振り向かなくてもきつい香水の匂いで真理だとわかり、前を向いたまま冷たい声で応答した。
「何?」
「な、何って……えっと、うちのグループに来たければ来てもいいよ」
「『来たければ』?」
「そう」
「今のグループ、何人なの?」
「5人だよ」
真理は、悠が自分のグループに来たいと言うのだとてっきり思って嬉々として答えた。
「じゃあ、俺のために1人グループから抜けさせるってこと? その人はそれでどうするの?」
「佐藤さん達のグループに入れてもらえばいいでしょ?」
「その人の意思も佐藤さん達の意思も関係なしに?」
「え?」
「そういう考え、やめた方がいいと思うよ。じゃあね」
「え? え? え?」
悠が去って行った後、真理はしばらくの間、呆然とその場に立ち尽くしていた。
その頃、萌も図書館で本を探していた。めぼしい本が目に入って手にとろうとしたら、他の人の手が萌の手に触れた。
「あっ! すみませ……え? 園田君?!」
同じ本に手を延ばそうとしていたのは悠だった。それがわかった瞬間、萌は悠の触れた手の甲から全身に熱が広がっていくのを感じた。
「あっ、佐藤さん! ごめん」
「そ、園田君もこの本必要なの?」
「ううん、まだわかんない。タイトルから言って発表に必要な本かなって思ったから、中身見ようと思って。でも、この本、先に見てもいいよ。俺、その間、別の本読んでる」
「そんな、悪いよ」
「いいよ」
「でも……」
「じゃあ、俺が隣に座って佐藤さんが見終わったらすぐに見せてもらうってことでいい?」
「えっ?!」
「だめ?」
決してイケメンではないが茶目っ気のある悠にそう聞かれると、萌はダメだなんて言えなかった。
萌は、なんだか胸がドキドキして本の内容が頭に入らず、早々にその本を悠に渡して別の本を見ることにした。
2人はそれぞれいっぱいいっぱいで自分達をじっと見つめる視線――しかも好意的ではない――に気付いていなかった。萌は自分の高鳴る胸のやり場に困ってそれに気付くどころじゃなかったし、悠は悠で調べものに没頭していたからだった。
グループの人数は授業の参加人数次第だが、3人から5人ぐらいまで。教員はグループのメンバー構成には口を出さず、学生の自主性に任せている。
今回は1グループ4人か5人ということになった。萌はもちろんリコと同じグループを組む。教室の中を見ると、皆それぞれグループを作りつつある。でも悠はポツンと1人で手持無沙汰にしていた。
「リコ、園田君を誘ってもいい?」
「いいよ」
萌が近づくと、悠は顔を上げて何か言いたげな表情をした。
「園田君、私達と一緒のグループにならない?」
「……いいの?」
「もちろん」
「ありがと……頼もうかと思ってたんだ」
萌がにっこり微笑むと、悠は小声でぶつぶつとお礼を言った。
「あと1人どうしようか」
萌がちらちらと視線を感じる方へ目を向けると、真理が険悪な目つきで萌を見ているのが見えた。真理の周りには親衛隊の男の子達が群がっている。誰が真理と一緒のグループになるか少し揉めているようだ。
「あそこからあぶれた人は問題外だね」
リコはうんうんとうなずいた。
「佐藤さん、私達2人なんだけど、一緒に組まない?」
2人組の女の子が寄ってきて萌にそう提案した。萌達3人も異存なく、5人組のグループができた。
グループができた後は、それぞれが調べる担当範囲を決めて、1週間後にその結果を5人で突き合わせようということになった。
授業の後、空き時間のある学生は、図書館に参考になりそうな本を探しに行ったようだった。萌やリコ、悠、真理、真理の親衛隊の男子学生達もそうだった。
悠が本棚の間で本を探していると、後ろから肩を叩かれた。悠は振り向かなくてもきつい香水の匂いで真理だとわかり、前を向いたまま冷たい声で応答した。
「何?」
「な、何って……えっと、うちのグループに来たければ来てもいいよ」
「『来たければ』?」
「そう」
「今のグループ、何人なの?」
「5人だよ」
真理は、悠が自分のグループに来たいと言うのだとてっきり思って嬉々として答えた。
「じゃあ、俺のために1人グループから抜けさせるってこと? その人はそれでどうするの?」
「佐藤さん達のグループに入れてもらえばいいでしょ?」
「その人の意思も佐藤さん達の意思も関係なしに?」
「え?」
「そういう考え、やめた方がいいと思うよ。じゃあね」
「え? え? え?」
悠が去って行った後、真理はしばらくの間、呆然とその場に立ち尽くしていた。
その頃、萌も図書館で本を探していた。めぼしい本が目に入って手にとろうとしたら、他の人の手が萌の手に触れた。
「あっ! すみませ……え? 園田君?!」
同じ本に手を延ばそうとしていたのは悠だった。それがわかった瞬間、萌は悠の触れた手の甲から全身に熱が広がっていくのを感じた。
「あっ、佐藤さん! ごめん」
「そ、園田君もこの本必要なの?」
「ううん、まだわかんない。タイトルから言って発表に必要な本かなって思ったから、中身見ようと思って。でも、この本、先に見てもいいよ。俺、その間、別の本読んでる」
「そんな、悪いよ」
「いいよ」
「でも……」
「じゃあ、俺が隣に座って佐藤さんが見終わったらすぐに見せてもらうってことでいい?」
「えっ?!」
「だめ?」
決してイケメンではないが茶目っ気のある悠にそう聞かれると、萌はダメだなんて言えなかった。
萌は、なんだか胸がドキドキして本の内容が頭に入らず、早々にその本を悠に渡して別の本を見ることにした。
2人はそれぞれいっぱいいっぱいで自分達をじっと見つめる視線――しかも好意的ではない――に気付いていなかった。萌は自分の高鳴る胸のやり場に困ってそれに気付くどころじゃなかったし、悠は悠で調べものに没頭していたからだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合漫画を買いに行ったら陽キャと仲良くなっていく話
たるたるたーる
恋愛
陰キャである河合睦月〈かわい むつき〉は愛読している百合漫画を買いに行く。
そこで見つけた最後の一冊。
それを手に取ろうとしたのだが、同じく買いに来た人と手が重なってしまう。
その相手はまさかの同じクラスの陽キャである百瀬愛華〈ももせ あいか〉であった。
これは一冊の本から始まる、陰キャと陽キャの物語。
※このお話は他サイト様にも投稿させていただいております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
『恋愛戦国』~陰キャオタクの俺が学園の美少女達にモテだしたのには何か理由があるはずだ~
NOV
恋愛
俺の名前は竹中颯(たけなかはやて)
髪はボサボサで瓶底メガネをしている訳アリ陰キャオタクだ。
そんな中等部から友達が一人もいない様な俺が『仙石(せんごく)学園高等部』に進級した途端に各学年の美少女達から次々と告白されてしまう。
何が起こったんだ!? これは一体どういう事だ!?
俺なんかがモテる要素など何一つ無いはずなのに……
素直に喜べるはずもないし、逆に恐怖すら感じてしまう。
きっと、こんな状況になったのには何か理由があるはずだ。
でもいくら考えても理由なんて浮かびはしない。
いずれにしても俺としては静かな学園生活をおくりたいのにこの状況は非常に迷惑だ。
なんとかしなくては……
ん? なるほどな。中等部には無かったが高等部にはこういう制度があったのか。
もしかしたらその制度が原因かも……いやでも待てよ。
本当にこの制度のせいで俺はモテているのか?
うーん、まだ他に理由がある様な気がするんだが……
学園トップクラスの美少女達が颯を彼氏にする為に必死にアプローチを始めると同時にライバル達との激しい駆け引きが巻き起こる
『竹中颯争奪戦』まさに学園内は恋愛戦国時代となった!!
果たして颯の彼女になる事ができたのは!?
笑いあり、お色気あり、そして涙あり、たくさんの謎にも包まれた陰キャ男子と美少女達との恋の駆け引きをどうぞ楽しんでください。そしてあなたは感動のラストを体験することになるでしょう!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる