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本編
幕間4 ダイヤの婚約指輪
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事故の翌日、美幸はCTを撮ってもらって異常なしとの診断を受けた。ただ、頭を打ったことは確かなので、何か異常を感じたらすぐに受診するようにと言われた。
その後、同じ病院に入院中の和臣を見舞いに行った。和臣は面会謝絶になっていたが、美幸は婚約者ということで見舞いが許される。
美幸は和臣の病室の前に立つと、首にかけているペンダントのサファイアをぎゅっと握りしめた。和臣が去年の誕生日にプレゼントしてくれて以来、美幸はこの誕生石のペンダントをデートの時にほとんどいつもつけていた。
美幸が病室に入ると、様々な管に繋がれた和臣が目に入った。でも彼の姿はどんどん滲んでいく。美幸は病室にいた和臣の母からハンカチを渡されて初めて自分が滂沱の涙を流していることに気付いた。
「おば様…ありがとうございます。あの、和臣さんの意識が戻る可能性は?!」
「…その可能性は…かなり低いらしいわ…」
「そんなっ!」
「でも望みは捨ててないわよ。あのね、現場にこれが落ちていたの。あの日、和臣は美幸ちゃんにこれをあげてプロポーズするつもりだったんだと思う…中身見ちゃってごめんなさい。受け取ってくれる?」
彼の母は、泥で汚れて皺が寄った小さな紙袋を美幸に渡した。中には有名ジュエリーブランドのロゴ入りの濃紺色の小箱が入っていた。その箱は事故の衝撃で紙袋から飛び出したのか、泥が付いた痕が微かに見え、角が潰れていた。
小箱を開けると、真ん中からパカッと両開きになる指輪ケースが出てきた。中を開くと大きなダイヤの婚約指輪が鎮座していた。メレダイヤがリングにぐるりとあしらわれ、センターにはラウンドブリリアンカットの大きなダイヤがこれまたメレダイヤに囲まれて付いている。美幸が和臣に憧れていると話したことのあった指輪だ。指輪ケースを開けたまま、美幸は涙を流した。
麻衣はそれを剣呑な様子で見ながら、継母に進言した。
「お母さん、今は指輪どころじゃないでしょ。お兄ちゃんが意識を取り戻したら、自分からプレゼントしたいって思うはずだから、今はうちで預かっていたら?」
「いいのよ。和臣はいつ目覚めるかわからないでしょ。どうせ和臣は美幸ちゃんにあげるつもりだったんだから、持っててもらいましょう。もし和臣の意識が戻ったら、もう1個指輪を用意してプロポーズしてもらえばいいのよ」
「そうだよ。兄貴ならもう1個ぐらいブランドの指輪を買うぐらい、何ともないんだからさ」
和臣の母は涙を拭いながら継娘をたしなめた。それに麻衣の実兄の駆も同意し、麻衣は兄を睨みつけた。
その後、同じ病院に入院中の和臣を見舞いに行った。和臣は面会謝絶になっていたが、美幸は婚約者ということで見舞いが許される。
美幸は和臣の病室の前に立つと、首にかけているペンダントのサファイアをぎゅっと握りしめた。和臣が去年の誕生日にプレゼントしてくれて以来、美幸はこの誕生石のペンダントをデートの時にほとんどいつもつけていた。
美幸が病室に入ると、様々な管に繋がれた和臣が目に入った。でも彼の姿はどんどん滲んでいく。美幸は病室にいた和臣の母からハンカチを渡されて初めて自分が滂沱の涙を流していることに気付いた。
「おば様…ありがとうございます。あの、和臣さんの意識が戻る可能性は?!」
「…その可能性は…かなり低いらしいわ…」
「そんなっ!」
「でも望みは捨ててないわよ。あのね、現場にこれが落ちていたの。あの日、和臣は美幸ちゃんにこれをあげてプロポーズするつもりだったんだと思う…中身見ちゃってごめんなさい。受け取ってくれる?」
彼の母は、泥で汚れて皺が寄った小さな紙袋を美幸に渡した。中には有名ジュエリーブランドのロゴ入りの濃紺色の小箱が入っていた。その箱は事故の衝撃で紙袋から飛び出したのか、泥が付いた痕が微かに見え、角が潰れていた。
小箱を開けると、真ん中からパカッと両開きになる指輪ケースが出てきた。中を開くと大きなダイヤの婚約指輪が鎮座していた。メレダイヤがリングにぐるりとあしらわれ、センターにはラウンドブリリアンカットの大きなダイヤがこれまたメレダイヤに囲まれて付いている。美幸が和臣に憧れていると話したことのあった指輪だ。指輪ケースを開けたまま、美幸は涙を流した。
麻衣はそれを剣呑な様子で見ながら、継母に進言した。
「お母さん、今は指輪どころじゃないでしょ。お兄ちゃんが意識を取り戻したら、自分からプレゼントしたいって思うはずだから、今はうちで預かっていたら?」
「いいのよ。和臣はいつ目覚めるかわからないでしょ。どうせ和臣は美幸ちゃんにあげるつもりだったんだから、持っててもらいましょう。もし和臣の意識が戻ったら、もう1個指輪を用意してプロポーズしてもらえばいいのよ」
「そうだよ。兄貴ならもう1個ぐらいブランドの指輪を買うぐらい、何ともないんだからさ」
和臣の母は涙を拭いながら継娘をたしなめた。それに麻衣の実兄の駆も同意し、麻衣は兄を睨みつけた。
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