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本編
12.剣技大会準々決勝
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カールの次の試合である準々決勝は、3回戦と同じ日の午後に行われた。怪我の療養で体力の落ちているカールには厳しい日程だ。公爵家の権力でも、国王が主催する剣技大会の試合日程を自家の騎士に有利に捻じ曲げることは流石にできない。
準々決勝のカールの対戦相手は筋肉隆々の偉丈夫で、入賞の常連のプライドよりも実利を優先するらしく、カールの弱点を突くのに躊躇は見えない。ひたすら左脚に防御の負担がかかりそうな技を繰り出し、カールの出す手をのらりくらりと躱す。試合を引き延ばしてカールの体力と左脚に限界が来るのを待っているようだ。
カキィーンと剣のぶつかり合う音がことさら大きく響き、観客がどよめいた。対戦相手は勝負に出て今まで以上の勢いで剣を繰り出してきた。それをカールが正面から剣で受け止めたのだ。
対戦相手は引かずに剣に力を込めてますますにじり寄ってきた。相手の剣を抑える剣を持つカールの腕は細かく震えている。彼の腕力は療養が響いて相手の剣を弾き飛ばせず、少しずつ後ろに下がっていく。左脚に負担がかかって痛みも出てきた様子で、カールは苦悩の表情を見せた。
「ああっ、カール!」
マリオンは手汗でびっしょりになった両手を胸の前に合わせて思わず中腰になったが、クラウスは彼女の手首を掴んで座席に引き下ろした。
「おい、後ろの観客に迷惑だ。座れ」
「後ろの観客に迷惑なら、私は貴方の2倍ぐらい大きくないといけないわね!」
高位貴族の見学場所は、王族専用のボックス席同様、他の観客席と離れているので、例え立ち上がっても他の観客に迷惑になることはない。それがわかっているマリオンはムッとした表情を隠せなかった。一触即発な様子にルチアも試合から目を離して2人をとりなそうとした。
マリオンとクラウスが言い争っている間に、カールの左脚と腕がとうとう耐えられなくなって彼の剣が振り払われた。カールは、対戦相手の潰してある刃を右肩にまともに喰らって倒れた。
その瞬間、ああーっと悲鳴にも似た観客の叫び声が響いた。大半の観客は、主のお嬢様を守って大怪我を負った健気なカールに同情的だった。
「カール!」
「お兄様!」
マリオンとルチアは悲痛な叫び声をあげ、観客席から身を乗り出して試合の場に降りて行きそうな勢いだったが、クラウスが不機嫌そうに引き留めた。
「おい、観客は席に留まる決まりだぞ」
「よくもそんなに冷静でいられるわね!」
「刃は潰してあるからせいぜい打ち身だ」
「でも頭を打ったのかも。起き上がらないわ!」
「4年連続優勝した騎士だぞ?これぐらいで気絶したままなんて無様過ぎて公爵家の恥晒しだ」
「何言ってるの?!私の命を救ってつい3ヶ月前に大怪我したのよ?!」
「だから身の程をわきまえて出場しなければよかったんだ。そうまでしてあいつはお前の騎士でいたかったのか?お前もそうまでしてあいつを傍にとどめたかったのか?そこにお互い、邪な思いはなかったのか?」
「何が言いたいの?!カールを侮辱しないで!」
あまりの言い様にマリオンだけでなく、ルチアもクラウスを睨んだ。
「おい、お前の侍女は何だ?!公爵家次期当主に対して失礼じゃないか。躾をきちんとしておけよ」
「貴方は本当に冷血漢ね!」
マリオンとクラウスが口論している間に救援班が到着してカールは担架で運ばれていった。
準々決勝のカールの対戦相手は筋肉隆々の偉丈夫で、入賞の常連のプライドよりも実利を優先するらしく、カールの弱点を突くのに躊躇は見えない。ひたすら左脚に防御の負担がかかりそうな技を繰り出し、カールの出す手をのらりくらりと躱す。試合を引き延ばしてカールの体力と左脚に限界が来るのを待っているようだ。
カキィーンと剣のぶつかり合う音がことさら大きく響き、観客がどよめいた。対戦相手は勝負に出て今まで以上の勢いで剣を繰り出してきた。それをカールが正面から剣で受け止めたのだ。
対戦相手は引かずに剣に力を込めてますますにじり寄ってきた。相手の剣を抑える剣を持つカールの腕は細かく震えている。彼の腕力は療養が響いて相手の剣を弾き飛ばせず、少しずつ後ろに下がっていく。左脚に負担がかかって痛みも出てきた様子で、カールは苦悩の表情を見せた。
「ああっ、カール!」
マリオンは手汗でびっしょりになった両手を胸の前に合わせて思わず中腰になったが、クラウスは彼女の手首を掴んで座席に引き下ろした。
「おい、後ろの観客に迷惑だ。座れ」
「後ろの観客に迷惑なら、私は貴方の2倍ぐらい大きくないといけないわね!」
高位貴族の見学場所は、王族専用のボックス席同様、他の観客席と離れているので、例え立ち上がっても他の観客に迷惑になることはない。それがわかっているマリオンはムッとした表情を隠せなかった。一触即発な様子にルチアも試合から目を離して2人をとりなそうとした。
マリオンとクラウスが言い争っている間に、カールの左脚と腕がとうとう耐えられなくなって彼の剣が振り払われた。カールは、対戦相手の潰してある刃を右肩にまともに喰らって倒れた。
その瞬間、ああーっと悲鳴にも似た観客の叫び声が響いた。大半の観客は、主のお嬢様を守って大怪我を負った健気なカールに同情的だった。
「カール!」
「お兄様!」
マリオンとルチアは悲痛な叫び声をあげ、観客席から身を乗り出して試合の場に降りて行きそうな勢いだったが、クラウスが不機嫌そうに引き留めた。
「おい、観客は席に留まる決まりだぞ」
「よくもそんなに冷静でいられるわね!」
「刃は潰してあるからせいぜい打ち身だ」
「でも頭を打ったのかも。起き上がらないわ!」
「4年連続優勝した騎士だぞ?これぐらいで気絶したままなんて無様過ぎて公爵家の恥晒しだ」
「何言ってるの?!私の命を救ってつい3ヶ月前に大怪我したのよ?!」
「だから身の程をわきまえて出場しなければよかったんだ。そうまでしてあいつはお前の騎士でいたかったのか?お前もそうまでしてあいつを傍にとどめたかったのか?そこにお互い、邪な思いはなかったのか?」
「何が言いたいの?!カールを侮辱しないで!」
あまりの言い様にマリオンだけでなく、ルチアもクラウスを睨んだ。
「おい、お前の侍女は何だ?!公爵家次期当主に対して失礼じゃないか。躾をきちんとしておけよ」
「貴方は本当に冷血漢ね!」
マリオンとクラウスが口論している間に救援班が到着してカールは担架で運ばれていった。
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