咎の伝記

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第6章 鬼の血と神の暴力

#81 燃え盛る犠牲

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『燃え盛る犠牲』



《ステリア地方【北】》

“大和都の里”

<百草広場>
椛「…さてと」
ザッザッザッ
椛「少しだけ失礼して…っと」
ヒョイッ
カルラ「…………」
スッ
椛「お2人強かったのに…ここまでやられるなんて残念どすなぁ」
――――
ケイパン「なんだあれ…緑の玉?」
ポン「綺麗…宝石みたい」
ジョーカー「…………どっかで見た覚えあんなぁ」
――――
椛「…」
グッ
パリンッ
ポワワワワワ
カルラ「う……んん…っ」
淋鬼「……ぁ」
椛「目覚めはってくれて何よりですわ~」
カルラ「え…っ!?」
淋鬼「あれ…どっかで会った気が」
椛「嫌やわ…もう忘れはったん」
真槌「げほっ……げほっげほっ」
ググッ
真槌「待て…鬼の女…!!」
椛「?」
真槌「なんでお前が…廻傷の玉を持ってる…!?」
椛「これ…拾ったでありんす」
ニコッ
真槌「そんなわけあるか!!!…げほっげほっ」
椛「傷も深い。喋りすぎても命を削るだけ」
真槌「……ッ」
真槌(どういう事だ…なんであいつが廻傷の玉を持っている…あれは小嵐しか持ってねぇはず。まさか小嵐がもうやられて…!?)
ダッダッダッ
紗近「全員無事か!?」
――――
ジョーカー「じぃじ!!」
タナカ「良かった…紗近さんも無事で」
――――
紗近「カルラ!淋鬼も!無事で何より―」
椛「……」
ニコッ
ヒラヒラ
紗近「椛!?お前さん……どうしてここに」
椛「帰ってきたでありんす」
紗近「帰っ……いやそれは嬉しいがしかし…なん…っ……お」
――――
ジョーカー「じぃじ……めっちゃテンパってるぜ」
――――
真槌「~~~……っそ…!!!!」
ググッ
紗近「!!」
スッ
椛「構える必要はないどす」
紗近「…だが油断は―」
椛「動くだけで精一杯でありんすね…お兄さん」
真槌「うる……せぇ…っ」
ヨロッ
真槌(俺はまだ…負けてねぇんだ)
淋鬼「まだやるっすか」
カルラ「……無理はしないほうがよろしいかと」
椛「そうそう。無理に動いて二度と身体が動かないんじゃ本末転倒でっしゃろ?」
ザッザッザッ
ポン
小嵐「駄目だよ真槌。たった1人で捲れる状況じゃないでしょ」
紗近「お前さんは…!!」
――――
ポン「!!!」
ドクンッ
ヨロッ
ケイパン「うぉっ…ポン!?」
ガシッ
ポン「…っは…っは」
ポン(あの…人は……っ)
――――
真槌「丁度良かった…小嵐…っ」
ガシッ
小嵐「!」
真槌「廻傷の玉だ!!あれを出せ!!俺とお前なら…全員殺れる!!」
小嵐「真槌…」
真槌「早くしろ!!!」
ボタボタ
小嵐「……分かったよ」
スッ
パリンッ
ポワワワワワ
真槌「っはは…はははは……!!!!」
淋鬼「ちっ…厄介な事を」
カルラ「あんな代物が…まだ残って」
椛「お2人も同じものを使われたんでありんす」
紗近「……小嵐…お前さん」
ジリッ
小嵐「…ごめんね」
真槌「っははは!!謝る必要はねぇだろ小嵐!俺達ァ敵同士なんだ!!」
ゴォッ
真槌「さァ行くぞお前ら!!第2戦の開幕だ―」
ポン
小嵐「今謝ったのは…君にだよ真槌」
真槌「?」
ドムッッッ
真槌「か――ッ!!」
全員「!?」
――――
ケイパン「殴っ――!?」
ジョーカー「あいつ…味方を…!!」
タナカ「僕達を…見逃すのか……?」
ポン「なん…で」
――――
真槌「小嵐…なん……で」
ガクッ
小嵐「負けは負けだよ。潔く認めよう真槌」
紗近「小嵐…」
小嵐「紗近さん。私の事は見逃してくれるんだよね」
紗近「!」
小嵐「この子も連れ帰っていいかな?他の子達はもう撤退させたんだ」
紗近「…あぁ分かった。見逃そう」
淋鬼「へぇ…随分と寛容なんすね」
カルラ「戦わずに済むのなら…それに越した事はありませんが」
小嵐「…」
チラッ
――――
ポン「!!」
――――
小嵐「…それじゃあね。大和都の皆さんお邪魔しました」
パチンッ
ヒュッ
椛「…消えはったねぇ」
カルラ「あの方…戦うとなったら少し骨が折れたでしょうね」
淋鬼「っすねぇ」
紗近「……あぁ。戦わないならそれが最善な道だ」
ザッザッザッ
源一「お前達!!」
紗近「源一!」
源一「良かった…全員無事だったんだな」
淋鬼「あぁやっと来た。早速ですがアレ解いてやって欲しいっす」
源一「!」
スッ
源一「良かった…こいつァ壊れちゃいなかったんだな」
ジョーカー「皆!!!」
タッタッタッ
ジョーカー「芹さんは!七宝剣客は!?」
ケイパン「守ってもらってありがとう源一さん」
源一「タッハッハ!!無事なら何よりさ!」
紗近「さっき攻め込んで来た奴らの親玉をこの目で見逃した」
源一「!」
紗近「奴が言うには…仲間を全員大和都から撤退させたようだ」
源一「お前を疑っちゃいないが…そいつァ信じられんのか?」
紗近「…あぁ。嘘をつくような者には見えんかった」
ポン「はい」
ザッザッザッ
ケイパン「ポン…」
ポン「私も信じたくは無いですが彼女に一切の敵意はありませんでした」
源一「ん…そうかい。それなら分かった――っておい!!!」
ガシッ
椛「!」
源一「な、なななな…なんでここに戻ってきてんだい!?」
椛「里帰りでありんす」
ニコッ
源一「いやっ…里帰りったって――お前その…え…?」
淋鬼「里帰りなんてよく言うっすよ。散々ここに来るの嫌がったくせに」
椛「堪忍なぁお兄さん」
ザッザッザッ
芹「貴方がここへ戻ってきたのも何かしらの因果と言えよう」
ジョーカー「芹さん!!」
芹「大和都へ戻ってきてくれたこと…誠に感謝しようぞ椛殿」
椛「久しぶりやねぇ…でもその喋り方はこそばゆいどすなぁ」
クスクス
ケイパン(椛……何者なんだマジで)
芹「それに全員が無事で良かった」
ジョーカー「…っしし、皆が戦ってくれたおかげだぜ!!」
芹「…じゃが何も犠牲が無かったわけではない」
ジョーカー「え……?」
紗近「おい芹…どういう事だ」
芹「私も先程桔梗から聞いたんじゃ。未だ受け入れることは出来んが…この事実はお主達全員に知る権利があろう。どうか共に神立柳へ」
ジョーカー「犠牲……って」
<神立柳>
ケイパン「これは……!!!」
ポン「なんて焦げ跡…」
椛「…ここで何が?」
芹「連れてきたぞ桔梗。お主の口から話すと良い」
シュバッ
桔梗「…承知致しました」
紗近「桔梗。芹から取り敢えずの概要は聞いた…この場で何があった」
タナカ(確か七宝剣客は全員…神立柳で万事屋と戦って―)
桔梗「結論から申し上げます。七宝剣客の長である梅殿が……万事屋から俺達を守り殉職致しました」
全員「!!!」
紗近「なん……と…言った今」
ジョーカー「梅さんが…死…!?」
桔梗「梅殿は…俺達を引き離し万事屋との1対1を希望し…了承した俺達は目の前で炎に包まれる万事屋と梅殿を見ているだけでした。なので―」
ザッザッザッ
ガッ
紗近「了承しただと!!!何を考えている貴様ァ!!!」
ゴォッ
桔梗「…っ」
ジョーカー「じぃ…じ」
源一「…離れてろいお前達」
紗近「芹が七宝剣客を向かわせたのは…誰かが犠牲になるのを防ぐため!それが分からないお前さん達ではなかろうが!!何故1人で戦わせる様な真似を―」
芹「良さぬか紗近!!!」
紗近「!!」
芹「…桔梗がそんな事を認める様な真似をするはずも無かろう。私も未だ受け入れてはおけぬが今知るべきはそこで無い。梅は最初から自分と万事屋の2人だけの空間を作る事を望んでいたと考えようが…」
ザッザッザッ
芹「偽りなく答えよ桔梗」
桔梗「……」
芹「梅が1人で戦うことを…了承したのは誰じゃ」
桔梗「………それは」
芹「もう一度言うぞ」
ギロッ
芹「偽りなく答えよ。私とてお主達を信頼しているんじゃ」
桔梗「…葵殿です」
紗近「!!」
源一「葵……」
芹「…ッ」
グシャッ
芹「彼奴……!!!!」
桔梗「芹殿。梅殿は―」
芹「良い」
桔梗「!」
芹「この事は私からお嬢へと伝えておく。心傷の中すまぬがお主は即刻…鬼龍殿へ葵を連れて参れ。聞くべきことが山程ある」
桔梗「……承知致しました」
シュバッ
紗近「葵…なぜお前さんは」
源一「……」
ジョーカー「梅さん…そんな」
芹「全員ここで起きたことは内密に頼む」
ケイパン「!」
芹「どんな状況であろうと…受け入れるには時間が要るからの」
ケイパン「…うん、分かった」
芹「紗近。源一。お主達は共に鬼龍殿へ」
紗近「あぁ」
源一「勿論だ」
ジョーカー「…待って芹さん!!アタシ達も―」
芹「気持ちはわかるがジョーカー。私達とてまだ受け入れられぬ。状況を整理する時間が欲しいのだ。きちんと整理が着いた頃ジョーカー…そしてお客人のお主達にも全てを話そう。今しばらく待っていてくれぬか」
ジョーカー「でも…!!」
ポン
椛「勿論でありんす。時間ならたっぷりあるでっしゃろ」
ジョーカー「!!」
芹「椛殿…貴方も久しぶりに帰ってきてくれたのにすまぬ」
椛「ふふっ…謝られるのは堪忍どすなぁ」
紗近「すまん椛…ジョーカー達を儂の家に送ってやってはくれんか」
椛「えぇ勿論」
スッ
椛「ほら皆さん。こっちどす」
ジョーカー「じぃじ…」
紗近「ジョーカー…すまんが」
ジョーカー「大丈夫。アタシは…大丈夫だから」
紗近「!」
ジョーカー「全部整理がついたあと…アタシ待ってるから」
ザッザッザッ
紗近「…あぁ」
紗近(時期も時期……もう隠すべきでは無いか)



【魔界】

《エヴラール地方【東】――アレクシア王国》

“アレクシア城”

<4階――王の間>
小嵐「以上が私が見た大和都の今の状況だよ」
銀朱「……なるほど」
小嵐「雇った冒険者の2人は責任持ってステリア王国の近くまで送った。あの子達は闇ギルドじゃなかったしこれ以上不要な責任を負わせることも申し訳ないと思ったからね」
スッ
小嵐「これは使った分を引いた廻傷の玉。結構使っちゃったかな」
銀朱「小嵐」
小嵐「?」
銀朱「貴方は…戦いましたか?」
小嵐「…いや、私は見てただけだよ」
銀朱「そうですか」
小嵐「戦った方が良かったかな?」
銀朱「今回の統率者は貴方です。あなたの判断に全て委ねます」
小嵐「そう言われると思ったよ」
銀朱「他に報告すべき事は?」
小嵐「私が着いた頃には真槌は地面に伏せってたよ。廻傷の前に傷を見ても刀で一撃を決められただけだった。戦い好きとは言っても油断するような子じゃないからね…相当な手練にやられたんだと思う」
銀朱「…分かりました。そろそろ大和都には災厄が降りかかる」
小嵐「災厄…ねぇ」
銀朱「貴方はしばらく自由の身になることを許可します」
小嵐「もう私の任務はないんだ…ということは」
銀朱「はい。大和都へは――私が直接赴きましょう」

#81『燃え盛る犠牲』“~完~”
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