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第3章 亡霊達の花束
#20『巡る魂』
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『巡る魂』
《デルカダール地方――アディ村》
<正門>
デューイ「5人とか意味わかんないし」
スッ
デューイ『串刺し』
ズッ…
リリ「!」
デューイ「ほら、どこから来るかすら予想出来ない」
リリ「…」
デューイ「そんなお前のどこに勝てる未来があるんだよ!!」
リリ「確かに私はお前の放つ針の姿が見えないが」
ダダッ
デューイ「!」
リリ「せいっ!!!」
ドゴッッ
デューイ「――っは…!!」
ガク
リリ「仇討ちなんて所詮は汚れた血塗れの衝動だよ。好きなだけ刺してみろ。その程度では私は屈しはしない」
デューイ「げほっ…ぇほっ……っは…!!」
ググッ
リリ「苦しそうだなデューイ。見下されるのが嫌か?憎い目をしてる」
デューイ「…ッ」
リリ「だがな…だが……ッ」
ギリッ
リリ「お前が殺したあの村の人々は…恨みなど遥かに……!!!」
ケイパン(リリさん…)
デューイ「…っはは」
パチンッ
ドスススス
リリ「!」
ボタボタ
ポン「右腕が…!!」
デューイ「そうだな…俺は確かにあの村の人間を殺した」
コキッ
デューイ「でもおかげで俺はもっと強くなれるんだ」
ニヤッ
リリ「なに…?」
バアロ「強くなりたいから村の人を…?」
バアロ(行動原理が…何故……?)
デューイ「生まれ持った強さってのはさ…変わらないんだよ」
ヨロッ
リリ「…」
デューイ「強い力を持ったやつは最初から最強で…強いから弱い奴らの気持ちが分からなくて…だから強者は弱者を侮蔑する」
スッ
デューイ「俺は弱くない!!強くなれるならなんだってやるさ!!!」
リリ「…だからこの村の罪なき人達を殺したのか」
デューイ「俺の強さの糧になったんだ!!」
リリ「…ッ」
デューイ「ここにいる全員も殺してやる!殺すさ!!俺が強くなる!!」
ケイパン「あいつ…」
バアロ「…」
リリ「黙れ!!!」
ボグッ
デューイ「ッ!!」
リリ「何が強さだ…何が最強だ……お前の野望など知ったことか!!!」
ゴォッ
リリ「自分の野望のために罪なき人を犠牲にして…お前は何故笑える」
ギリッ
デューイ「…っはは、誰に理解されなかろうと知ったことかよ」
ググッ
ーーー
「使えん。血筋汚しだ」
バシャッ
デューイ「――ッ」
「とっとと失せろ。二度と里の門を通過することを許さん」
デューイ「俺…は…ッ」
「早く失せないか!!!失敗作が!!!!!」
ーーー
デューイ「強くなることが…俺の象徴なんだよ……ッ!!」
リリ「お前…ッ」
スッ
ガシッ
ケイパン「待ってリリさん!!」
リリ「!?」
ルルカ「お兄さん…!!」
リリ「何をするんだ!離してくれ!!」
ケイパン「気持ちは分かるけど…頼む!!」
リリ「気持ちなど分かるものか!!大切な存在が居ない日々の気持ちなど誰彼全員が分かるものじゃない!!!」
ケイパン「…ッ!!」
バアロ「…いいんじゃないですかね」
ケイパン「え…」
バアロ「何故止めるのですか?ケイさん」
ザッザッザッ
ケイパン「バアロ…?」
バアロ「彼は村の人達を殺した。それは事実のはずです」
リリ「…!!」
バアロ「私は庇い立てする理由が見つかりません」
ケイパン「でも…」
バアロ「あぁ、責めてはいませんよ勿論!」
スッ
バアロ「ただ教えて欲しいんです…復讐の気持ちを何に変えろと……?」
ニコッ
ズズズ
ケイパン「それ…は…!!」
ポン「……」
リリ「…見たくないならここから離れていいよ」
バッ
ケイパン「!」
リリ「私の気持ちは変わらない」
ザッザッザッ
ギリッ
ケイパン「……ッ!!」
ズズッ
バクゥゥゥゥゥゥゥンッッ
リリ「!?」
ポン「何あれ…蛇…!?」
ケイパン「――!!」
バアロ「……」
デューイ「…!!」
ザッザッザッ
?①「やはり真実を隠すのは愚策さ。デューイ」
ケイパン「だ、誰…?」
デューイ「な、なんで来たんだよ…約束と違うだろ!!」
?①「なんでって…決まってるじゃないか」
デューイ「!」
?①「死ぬことまでは約束に含めていないからね」
ミルディ「私の傍から離れることは許可しないよ、相棒」
☆150歳#女
:魔王の闇に染まり遇者に堕ちた魔族。
デューイと行動を共にしている。
強力な魔力の割に起こした悪行は少ない。
ザッザッザッ
ミルディ「君達も戦い一旦終わりだね」
ポン(この人…なんて闇の圧……!!!)
ミルディ「!」
ニコッ
ポン「え…っ」
ミルディ「全く!こんなに怪我して…私がどれだけ心配して見てたか!」
デューイ「やめ…ろっ!!」
バシッ
ミルディ「!」
デューイ「なんで来たんだ!?手を出すつもりか!?」
ミルディ「…そんなわけじゃ」
リリ「待て」
スッ
リリ「お前も遇者か?何の目的でここへ来た」
ミルディ「私は彼に死んで欲しく無いんだよ。だからここに来たんだ」
リリ「邪魔するなら容赦はしないよ」
ミルディ「…そうだね」
ザッザッザッ
ミルディ「それじゃあ真実を話すよ。納得したら手を出さないで欲しい」
リリ「何…?」
デューイ「待て…勝手な事するなよミルディ!!!」
ミルディ「私の気持ちも少しくらい分かってくれてもいいじゃないか」
デューイ「!」
ミルディ「君に死んで欲しくない。そう思うのは悪いことなの?」
デューイ「…ッ」
ケイパン「待ってくれ…真実ってなんの…?」
ミルディ「その村の事だよ」
リリ「!!」
ミルディ「話していいかな?デューイ」
デューイ「…ちっ」
ミルディ「ありがとう!」
ポンポン
デューイ「やめろ!!」
バシッ
ミルディ「いたた…じゃあ話すよ」
リリ「…」
ミルディ「デューイの目的はあくまで強者との邂逅。戦う中で自分の糧になる強さを探してるんだ…彼は無駄な殺戮を好まないんだよ」
リリ「…ッ」
ギリッ
ミルディ「だからこの村の事を見かけて私に提案してくれた。その村を廃村に似通る姿へ変えたら、復讐心を燃やした強者と戦えるかもしれない」
ケイパン「それってつまり…」
ミルディ「人は私達魔族とは違ってすぐ死んじゃうよね…でもだからこそ魂は循環するし早く輪廻の機会は訪れない」
バアロ「!!」
ゾクッ
ギュッ
ルルカ「先輩さまさま…?」
バアロ「い、いえ…」
ミルディ「君も何か重い過去を背負っているんだね」
バアロ「…っはは、探るおつもりですか」
ミルディ「まさか!そんな愚はしないつもりだよ」
スッ
ミルディ「話を戻すね?さっき言った通り人から霊への輪廻がそう早くも完成するわけないんだ」
ミルディ《清らかな魂を巡る者》
ブブッ
ルルカ「ふ、ふよふよが…いっぱい……!!」
ミルディ「あれこの状態が見えるの!?幼いのに君凄いんだね…」
デューイ「そのおチビちゃんは具現する前の針も見れたからな」
ミルディ「教えてくれてありがとう!デューイ!」
ニコッ
デューイ「微笑むな!」
リリ「ま、待ってくれ…それ……じゃあつまり」
ミルディ「…うん」
フヨフヨ
ミルディ「乱雑な事はした事に変わりは無い。村人全員の魂を肉体と分離させて留まらせた。霊への輪廻を無理やり私の魔力で起こしてね」
ポン「それは…死んだって事じゃ……?」
ミルディ「ううん。完全な魂の輪廻とは違うから身体に移せば元通り」
リリ「…!!!」
ミルディ「デューイは誰も殺してないよ」
リリ「メリア…生きて…」
ミルディ「やったのは私だし村をその惨状に変えたのも私。デューイに私を強制させる材料は無かったし例えあっても彼はそんな事しない。強さに対して過剰なだけでとてもいい子なんだ」
ペコッ
ミルディ「魂は返還する。それでも気が済まなかったら好きなだけ私を殴っていいし殺したって構わない。だからデューイには何もしないでくれ」
デューイ「!」
グイッ
デューイ「何言ってんだミルディ―」
リリ「…分かった」
ミルディ「!」
リリ「魂を戻してくれればそれでいい…やってくれるか」
ミルディ「…それでいいの?」
リリ「人には人の…個人の事情がある。デューイの過去は知らないが悪意を持ってやったことが無いのはよく分かった」
デューイ「…信じんのかよ」
リリ「あぁ」
ミルディ「それじゃあ還すよ」
フワッ
ミルディ『廻生』
パァァァァァァァァァァァァァァァ
リリ「!」
バアロ「これが村の人達全員…」
ミルディ「終わったよ」
ケイパン「もう!?」
ミルディ「あははっ!自分の魔力だからね」
デューイ「…お前は特別だろ」
ミルディ「それって褒めてくれてる!?」
デューイ「鬱陶しい!!」
ミルディ「む…釣れないな」
ワイワイガヤガヤ
リリ「……ッ!!」
ガクッ
ルルカ「リリお姉さん…!!」
タッタッタッ
リリ「声が…声が聞こえる…!!」
ミルディ「…嘘とはいえ申し訳ないことをしたね。本当にごめん」
ケイパン「な、なぁ」
ミルディ「?」
ケイパン「ミルディもその…遇者なんだろ?魔王の手先の」
ミルディ「うん」
ケイパン「なんか…悪いやつに見えなくて」
ミルディ「そうかな?ありがとう!」
ポン「…」
ミルディ「でも遇者でも悪い人ばかりじゃないからさ」
ニコッ
ポン「!」
ポン(この人…やっぱり)
ミルディ「さて、それじゃあそろそろ行こうかデューイ」
デューイ「……」
ザッザッザッ
バアロ「少しお待ちください」
ミルディ「ん?」
バアロ「オッドアイの遇者を知りませんか」
ミルディ「オッド…アイ……いや、分からないや」
バアロ「そうですか」
ミルディ「力になってあげられなくてごめんよ」
バアロ「いえ、お気になさらず!」
ミルディ「それじゃあまたどこかで会えたらね」
ザッザッザッ
ケイパン「行っちゃったな…」
バアロ「ですね」
ポン「あの…っ…バアロくん!」
バアロ「?」
ポン「えっと…話したいことがあって―」
ルルカ「リリお姉さん!あれ!」
ケイパン「?」
リリ「…!!」
?②「っは…っは…!!」
リリ「あぁ……あぁぁ…ッ」
メリア「リリさん…いえ、ララよね…!!」
☆28歳#女
:ララが研究で長く帰れない事を承知して
ずっと帰りを待ち続けていた。
夫譲りもあってか知識は常人より豊富。
リリ「メリア…ッ」
ダダッ
ギュッ
メリア「良かった…何が起こったのか私…!!」
リリ「あぁ…ごめんよ…今ララに」
メリア「いいの」
リリ「!」
メリア「貴方も大切な人…ずっと待ってた……会いたかった…!!」
リリ「…ッ」
バアロ「…良かったですね」
ニコッ
――その日の夜
<民家>
モグモグ
ルルカ「はふっ…はむはむ…んぐ…っ」
バアロ「こ、こら!あまり一気に食べると詰まらせますよ!」
メリア「ふふっ!沢山あるからゆっくり食べていいのよ!」
ララ「ケイもポルンも遠慮せず食べてくれ。この村が戻ったのはお前達の力があったからこそだ」
ケイパン「そんな…俺達は何も」
ララ「遠慮する必要などない。助かったのは事実だ」
メリア「本当にありがとうございました」
ポン「それじゃあ…ありがたく頂いちゃおうか」
ケイパン「…だな」
モグッ
ルルカ「~~!!」
バアロ「す、すいません!お水頂けますかメリアさん!!」
メリア「はい!」
ケイパン「そうだ…気になったんだララさん!」
ララ「ん?」
ケイパン「その…ミルディの言葉さ」
ララ「あぁ」
ケイパン「なんで信じたんだ?俺はともかく…遇者恨んでたんだろ」
ララ「簡単な話だ…彼女が嘘をつく必要がなかったからだよ」
ケイパン「え…?」
ララ「その気になれば私達は為す術なく殺られていた。そうだろう?」
ポン「…気づいてたんですね」
ララ「恐らくバアロも気づいていたさ」
ケイパン「え、え?気づいてなかったの俺だけ!?」
ポン「あとルルカちゃんね」
ララ「ハッキリ言って戦うとなれば…絶望を感じる程の圧だった」
ケイパン「……いい人でよかった~~…!!!」
《デルカダール地方――東》
ミルディ「今日のご飯は何にしよっか?デューイ」
デューイ「……」
ミルディ「もう!さっきから元気ないぞ!」
デューイ「…なんで助けたんだよ」
ミルディ「え?」
デューイ「お前…他の遇者からなんて呼ばれてるか知ってるのか」
ミルディ「私が…?なんて呼ばれてるんだい…?」
デューイ「変わり者だよ…ッ!!」
ミルディ「!」
デューイ「お前は超強いのに!!俺みたいな弱ぇ奴と一緒に居るから!!お前変わり者って馬鹿にされてんだぞ!!!」
ミルディ「…デューイ」
ムニッ
デューイ「ッ!?」
ミルディ「周りは勝手だけど…君が自分を下げるのは違うだろ!!」
デューイ「…だって」
ガクッ
デューイ「強くなりたくて…魔王様から力を貰ったのに……!!!」
ミルディ「誰だって最初から強いわけないじゃないか」
ポンポン
ミルディ「弱くたっていいんだよ、泣いたっていい!男の子だもんな!」
ナデナデ
ミルディ「ただ最後まで強くなることを諦めないで?私は強さを目指す君の姿が大好きなんだ」
ニコッ
デューイ「う…っ」
ミルディ「うん!よく頑張った!!偉いぞ~デューイ!!」
デューイ「やめ…ろよ…っ!!」
バシッ
ミルディ「あははっ!痛い痛い!」
スッ
ミルディ「少し待っててねデューイ」
デューイ「…?どこ行くんだ…?」
ミルディ「近くに食べ物がないか探してくる!」
タッタッタッ
――――
ミルディ「…さて、この辺りでいいかな」
スッ
ミルディ『蛇魂』
バグゥゥゥゥゥゥゥン
ババッ
?③「あら…気づいてたの?」
ミルディ「デューイがお腹空かせてるんだ…早く帰ってくれるかな」
グシャグシャ
?③「髪を触るのは苛立ちの現れ…だったかしら?」
ミルディ「……」
ギロッ
クレア「ふふっ…そう睨まなくたっていいじゃない」
160歳#女
:魔王の闇に染まり遇者に堕ちた魔族。
魔力を使い沢山の部下を率いているが
同族としては扱っていない。
クレア「ね?変わり者」
ミルディ「…やっぱ違うね。デューイに言われたら全然嫌じゃないのに」
クレア「どうしてそこまで彼にこだわるの?」
ミルディ「好きだからだよ」
クレア「変わった男の趣味ね」
ミルディ「あははっ!なんとでも言えよ」
スッ
ズズズ
クレア「!!」
ミルディ「悪口を聞き逃してやる優しさは無いけどね」
ミルディ《愚なる魂を弄ぶ者》
クレア「本気…!?」
ミルディ「勝てない事が分かってるなら向かってくるなよ」
クイッ
ミルディ『魔魂』
ッドォォォォォォォォォォォン
シュゥゥゥ
魔族「――」
ミルディ「!」
ミルディ(偽者…どこまでも道具扱いか)
スッ
ミルディ「死んでる…か。なぁ、この子越しに聞こえてるんだろ?」
魔族「――」
ミルディ「次似たような事をしてきたら分かるよな。直接君を殺すぞ」
タッタッタッ
デューイ「おーい!ミルディ!!」
ミルディ「!!」
ギクッ
ミルディ「あ、あわわっ…えと…どうし…たの!?デューイ!!」
デューイ「なんだ慌てて……ってお前!」
ミルディ「う…っ」
デューイ「死体…漁り……?」
ミルディ「ち、違うよ!そんな事する人に見えるのかい君は!!」
クワッ
デューイ「わ、悪かったって…泣かないでよ」
ミルディ「…うん、お墓を作ってあげようデューイ」
デューイ「!?」
ミルディ「景色のいい所にさ」
デューイ「…なんで俺が見ず知らずの遇者のために」
ミルディ「まぁまぁ!いい事は巡り巡って帰ってくるよ!輪廻輪廻!」
グイグイ
デューイ「押すなよ!」
【魔界】
《エヴラール地方――東》
<シラズの入江>
クレア「…ふふっ、少しのちょっかいであんなに熱くなるなんてね」
スッ
クレア「《清らかな魂を巡る者》と《愚なる魂を弄ぶ者》…か。2つの魔力を持っているというのに」
チャプッ
クレア「…本当に変わり者」
#20『巡る魂』“~完~”
《デルカダール地方――アディ村》
<正門>
デューイ「5人とか意味わかんないし」
スッ
デューイ『串刺し』
ズッ…
リリ「!」
デューイ「ほら、どこから来るかすら予想出来ない」
リリ「…」
デューイ「そんなお前のどこに勝てる未来があるんだよ!!」
リリ「確かに私はお前の放つ針の姿が見えないが」
ダダッ
デューイ「!」
リリ「せいっ!!!」
ドゴッッ
デューイ「――っは…!!」
ガク
リリ「仇討ちなんて所詮は汚れた血塗れの衝動だよ。好きなだけ刺してみろ。その程度では私は屈しはしない」
デューイ「げほっ…ぇほっ……っは…!!」
ググッ
リリ「苦しそうだなデューイ。見下されるのが嫌か?憎い目をしてる」
デューイ「…ッ」
リリ「だがな…だが……ッ」
ギリッ
リリ「お前が殺したあの村の人々は…恨みなど遥かに……!!!」
ケイパン(リリさん…)
デューイ「…っはは」
パチンッ
ドスススス
リリ「!」
ボタボタ
ポン「右腕が…!!」
デューイ「そうだな…俺は確かにあの村の人間を殺した」
コキッ
デューイ「でもおかげで俺はもっと強くなれるんだ」
ニヤッ
リリ「なに…?」
バアロ「強くなりたいから村の人を…?」
バアロ(行動原理が…何故……?)
デューイ「生まれ持った強さってのはさ…変わらないんだよ」
ヨロッ
リリ「…」
デューイ「強い力を持ったやつは最初から最強で…強いから弱い奴らの気持ちが分からなくて…だから強者は弱者を侮蔑する」
スッ
デューイ「俺は弱くない!!強くなれるならなんだってやるさ!!!」
リリ「…だからこの村の罪なき人達を殺したのか」
デューイ「俺の強さの糧になったんだ!!」
リリ「…ッ」
デューイ「ここにいる全員も殺してやる!殺すさ!!俺が強くなる!!」
ケイパン「あいつ…」
バアロ「…」
リリ「黙れ!!!」
ボグッ
デューイ「ッ!!」
リリ「何が強さだ…何が最強だ……お前の野望など知ったことか!!!」
ゴォッ
リリ「自分の野望のために罪なき人を犠牲にして…お前は何故笑える」
ギリッ
デューイ「…っはは、誰に理解されなかろうと知ったことかよ」
ググッ
ーーー
「使えん。血筋汚しだ」
バシャッ
デューイ「――ッ」
「とっとと失せろ。二度と里の門を通過することを許さん」
デューイ「俺…は…ッ」
「早く失せないか!!!失敗作が!!!!!」
ーーー
デューイ「強くなることが…俺の象徴なんだよ……ッ!!」
リリ「お前…ッ」
スッ
ガシッ
ケイパン「待ってリリさん!!」
リリ「!?」
ルルカ「お兄さん…!!」
リリ「何をするんだ!離してくれ!!」
ケイパン「気持ちは分かるけど…頼む!!」
リリ「気持ちなど分かるものか!!大切な存在が居ない日々の気持ちなど誰彼全員が分かるものじゃない!!!」
ケイパン「…ッ!!」
バアロ「…いいんじゃないですかね」
ケイパン「え…」
バアロ「何故止めるのですか?ケイさん」
ザッザッザッ
ケイパン「バアロ…?」
バアロ「彼は村の人達を殺した。それは事実のはずです」
リリ「…!!」
バアロ「私は庇い立てする理由が見つかりません」
ケイパン「でも…」
バアロ「あぁ、責めてはいませんよ勿論!」
スッ
バアロ「ただ教えて欲しいんです…復讐の気持ちを何に変えろと……?」
ニコッ
ズズズ
ケイパン「それ…は…!!」
ポン「……」
リリ「…見たくないならここから離れていいよ」
バッ
ケイパン「!」
リリ「私の気持ちは変わらない」
ザッザッザッ
ギリッ
ケイパン「……ッ!!」
ズズッ
バクゥゥゥゥゥゥゥンッッ
リリ「!?」
ポン「何あれ…蛇…!?」
ケイパン「――!!」
バアロ「……」
デューイ「…!!」
ザッザッザッ
?①「やはり真実を隠すのは愚策さ。デューイ」
ケイパン「だ、誰…?」
デューイ「な、なんで来たんだよ…約束と違うだろ!!」
?①「なんでって…決まってるじゃないか」
デューイ「!」
?①「死ぬことまでは約束に含めていないからね」
ミルディ「私の傍から離れることは許可しないよ、相棒」
☆150歳#女
:魔王の闇に染まり遇者に堕ちた魔族。
デューイと行動を共にしている。
強力な魔力の割に起こした悪行は少ない。
ザッザッザッ
ミルディ「君達も戦い一旦終わりだね」
ポン(この人…なんて闇の圧……!!!)
ミルディ「!」
ニコッ
ポン「え…っ」
ミルディ「全く!こんなに怪我して…私がどれだけ心配して見てたか!」
デューイ「やめ…ろっ!!」
バシッ
ミルディ「!」
デューイ「なんで来たんだ!?手を出すつもりか!?」
ミルディ「…そんなわけじゃ」
リリ「待て」
スッ
リリ「お前も遇者か?何の目的でここへ来た」
ミルディ「私は彼に死んで欲しく無いんだよ。だからここに来たんだ」
リリ「邪魔するなら容赦はしないよ」
ミルディ「…そうだね」
ザッザッザッ
ミルディ「それじゃあ真実を話すよ。納得したら手を出さないで欲しい」
リリ「何…?」
デューイ「待て…勝手な事するなよミルディ!!!」
ミルディ「私の気持ちも少しくらい分かってくれてもいいじゃないか」
デューイ「!」
ミルディ「君に死んで欲しくない。そう思うのは悪いことなの?」
デューイ「…ッ」
ケイパン「待ってくれ…真実ってなんの…?」
ミルディ「その村の事だよ」
リリ「!!」
ミルディ「話していいかな?デューイ」
デューイ「…ちっ」
ミルディ「ありがとう!」
ポンポン
デューイ「やめろ!!」
バシッ
ミルディ「いたた…じゃあ話すよ」
リリ「…」
ミルディ「デューイの目的はあくまで強者との邂逅。戦う中で自分の糧になる強さを探してるんだ…彼は無駄な殺戮を好まないんだよ」
リリ「…ッ」
ギリッ
ミルディ「だからこの村の事を見かけて私に提案してくれた。その村を廃村に似通る姿へ変えたら、復讐心を燃やした強者と戦えるかもしれない」
ケイパン「それってつまり…」
ミルディ「人は私達魔族とは違ってすぐ死んじゃうよね…でもだからこそ魂は循環するし早く輪廻の機会は訪れない」
バアロ「!!」
ゾクッ
ギュッ
ルルカ「先輩さまさま…?」
バアロ「い、いえ…」
ミルディ「君も何か重い過去を背負っているんだね」
バアロ「…っはは、探るおつもりですか」
ミルディ「まさか!そんな愚はしないつもりだよ」
スッ
ミルディ「話を戻すね?さっき言った通り人から霊への輪廻がそう早くも完成するわけないんだ」
ミルディ《清らかな魂を巡る者》
ブブッ
ルルカ「ふ、ふよふよが…いっぱい……!!」
ミルディ「あれこの状態が見えるの!?幼いのに君凄いんだね…」
デューイ「そのおチビちゃんは具現する前の針も見れたからな」
ミルディ「教えてくれてありがとう!デューイ!」
ニコッ
デューイ「微笑むな!」
リリ「ま、待ってくれ…それ……じゃあつまり」
ミルディ「…うん」
フヨフヨ
ミルディ「乱雑な事はした事に変わりは無い。村人全員の魂を肉体と分離させて留まらせた。霊への輪廻を無理やり私の魔力で起こしてね」
ポン「それは…死んだって事じゃ……?」
ミルディ「ううん。完全な魂の輪廻とは違うから身体に移せば元通り」
リリ「…!!!」
ミルディ「デューイは誰も殺してないよ」
リリ「メリア…生きて…」
ミルディ「やったのは私だし村をその惨状に変えたのも私。デューイに私を強制させる材料は無かったし例えあっても彼はそんな事しない。強さに対して過剰なだけでとてもいい子なんだ」
ペコッ
ミルディ「魂は返還する。それでも気が済まなかったら好きなだけ私を殴っていいし殺したって構わない。だからデューイには何もしないでくれ」
デューイ「!」
グイッ
デューイ「何言ってんだミルディ―」
リリ「…分かった」
ミルディ「!」
リリ「魂を戻してくれればそれでいい…やってくれるか」
ミルディ「…それでいいの?」
リリ「人には人の…個人の事情がある。デューイの過去は知らないが悪意を持ってやったことが無いのはよく分かった」
デューイ「…信じんのかよ」
リリ「あぁ」
ミルディ「それじゃあ還すよ」
フワッ
ミルディ『廻生』
パァァァァァァァァァァァァァァァ
リリ「!」
バアロ「これが村の人達全員…」
ミルディ「終わったよ」
ケイパン「もう!?」
ミルディ「あははっ!自分の魔力だからね」
デューイ「…お前は特別だろ」
ミルディ「それって褒めてくれてる!?」
デューイ「鬱陶しい!!」
ミルディ「む…釣れないな」
ワイワイガヤガヤ
リリ「……ッ!!」
ガクッ
ルルカ「リリお姉さん…!!」
タッタッタッ
リリ「声が…声が聞こえる…!!」
ミルディ「…嘘とはいえ申し訳ないことをしたね。本当にごめん」
ケイパン「な、なぁ」
ミルディ「?」
ケイパン「ミルディもその…遇者なんだろ?魔王の手先の」
ミルディ「うん」
ケイパン「なんか…悪いやつに見えなくて」
ミルディ「そうかな?ありがとう!」
ポン「…」
ミルディ「でも遇者でも悪い人ばかりじゃないからさ」
ニコッ
ポン「!」
ポン(この人…やっぱり)
ミルディ「さて、それじゃあそろそろ行こうかデューイ」
デューイ「……」
ザッザッザッ
バアロ「少しお待ちください」
ミルディ「ん?」
バアロ「オッドアイの遇者を知りませんか」
ミルディ「オッド…アイ……いや、分からないや」
バアロ「そうですか」
ミルディ「力になってあげられなくてごめんよ」
バアロ「いえ、お気になさらず!」
ミルディ「それじゃあまたどこかで会えたらね」
ザッザッザッ
ケイパン「行っちゃったな…」
バアロ「ですね」
ポン「あの…っ…バアロくん!」
バアロ「?」
ポン「えっと…話したいことがあって―」
ルルカ「リリお姉さん!あれ!」
ケイパン「?」
リリ「…!!」
?②「っは…っは…!!」
リリ「あぁ……あぁぁ…ッ」
メリア「リリさん…いえ、ララよね…!!」
☆28歳#女
:ララが研究で長く帰れない事を承知して
ずっと帰りを待ち続けていた。
夫譲りもあってか知識は常人より豊富。
リリ「メリア…ッ」
ダダッ
ギュッ
メリア「良かった…何が起こったのか私…!!」
リリ「あぁ…ごめんよ…今ララに」
メリア「いいの」
リリ「!」
メリア「貴方も大切な人…ずっと待ってた……会いたかった…!!」
リリ「…ッ」
バアロ「…良かったですね」
ニコッ
――その日の夜
<民家>
モグモグ
ルルカ「はふっ…はむはむ…んぐ…っ」
バアロ「こ、こら!あまり一気に食べると詰まらせますよ!」
メリア「ふふっ!沢山あるからゆっくり食べていいのよ!」
ララ「ケイもポルンも遠慮せず食べてくれ。この村が戻ったのはお前達の力があったからこそだ」
ケイパン「そんな…俺達は何も」
ララ「遠慮する必要などない。助かったのは事実だ」
メリア「本当にありがとうございました」
ポン「それじゃあ…ありがたく頂いちゃおうか」
ケイパン「…だな」
モグッ
ルルカ「~~!!」
バアロ「す、すいません!お水頂けますかメリアさん!!」
メリア「はい!」
ケイパン「そうだ…気になったんだララさん!」
ララ「ん?」
ケイパン「その…ミルディの言葉さ」
ララ「あぁ」
ケイパン「なんで信じたんだ?俺はともかく…遇者恨んでたんだろ」
ララ「簡単な話だ…彼女が嘘をつく必要がなかったからだよ」
ケイパン「え…?」
ララ「その気になれば私達は為す術なく殺られていた。そうだろう?」
ポン「…気づいてたんですね」
ララ「恐らくバアロも気づいていたさ」
ケイパン「え、え?気づいてなかったの俺だけ!?」
ポン「あとルルカちゃんね」
ララ「ハッキリ言って戦うとなれば…絶望を感じる程の圧だった」
ケイパン「……いい人でよかった~~…!!!」
《デルカダール地方――東》
ミルディ「今日のご飯は何にしよっか?デューイ」
デューイ「……」
ミルディ「もう!さっきから元気ないぞ!」
デューイ「…なんで助けたんだよ」
ミルディ「え?」
デューイ「お前…他の遇者からなんて呼ばれてるか知ってるのか」
ミルディ「私が…?なんて呼ばれてるんだい…?」
デューイ「変わり者だよ…ッ!!」
ミルディ「!」
デューイ「お前は超強いのに!!俺みたいな弱ぇ奴と一緒に居るから!!お前変わり者って馬鹿にされてんだぞ!!!」
ミルディ「…デューイ」
ムニッ
デューイ「ッ!?」
ミルディ「周りは勝手だけど…君が自分を下げるのは違うだろ!!」
デューイ「…だって」
ガクッ
デューイ「強くなりたくて…魔王様から力を貰ったのに……!!!」
ミルディ「誰だって最初から強いわけないじゃないか」
ポンポン
ミルディ「弱くたっていいんだよ、泣いたっていい!男の子だもんな!」
ナデナデ
ミルディ「ただ最後まで強くなることを諦めないで?私は強さを目指す君の姿が大好きなんだ」
ニコッ
デューイ「う…っ」
ミルディ「うん!よく頑張った!!偉いぞ~デューイ!!」
デューイ「やめ…ろよ…っ!!」
バシッ
ミルディ「あははっ!痛い痛い!」
スッ
ミルディ「少し待っててねデューイ」
デューイ「…?どこ行くんだ…?」
ミルディ「近くに食べ物がないか探してくる!」
タッタッタッ
――――
ミルディ「…さて、この辺りでいいかな」
スッ
ミルディ『蛇魂』
バグゥゥゥゥゥゥゥン
ババッ
?③「あら…気づいてたの?」
ミルディ「デューイがお腹空かせてるんだ…早く帰ってくれるかな」
グシャグシャ
?③「髪を触るのは苛立ちの現れ…だったかしら?」
ミルディ「……」
ギロッ
クレア「ふふっ…そう睨まなくたっていいじゃない」
160歳#女
:魔王の闇に染まり遇者に堕ちた魔族。
魔力を使い沢山の部下を率いているが
同族としては扱っていない。
クレア「ね?変わり者」
ミルディ「…やっぱ違うね。デューイに言われたら全然嫌じゃないのに」
クレア「どうしてそこまで彼にこだわるの?」
ミルディ「好きだからだよ」
クレア「変わった男の趣味ね」
ミルディ「あははっ!なんとでも言えよ」
スッ
ズズズ
クレア「!!」
ミルディ「悪口を聞き逃してやる優しさは無いけどね」
ミルディ《愚なる魂を弄ぶ者》
クレア「本気…!?」
ミルディ「勝てない事が分かってるなら向かってくるなよ」
クイッ
ミルディ『魔魂』
ッドォォォォォォォォォォォン
シュゥゥゥ
魔族「――」
ミルディ「!」
ミルディ(偽者…どこまでも道具扱いか)
スッ
ミルディ「死んでる…か。なぁ、この子越しに聞こえてるんだろ?」
魔族「――」
ミルディ「次似たような事をしてきたら分かるよな。直接君を殺すぞ」
タッタッタッ
デューイ「おーい!ミルディ!!」
ミルディ「!!」
ギクッ
ミルディ「あ、あわわっ…えと…どうし…たの!?デューイ!!」
デューイ「なんだ慌てて……ってお前!」
ミルディ「う…っ」
デューイ「死体…漁り……?」
ミルディ「ち、違うよ!そんな事する人に見えるのかい君は!!」
クワッ
デューイ「わ、悪かったって…泣かないでよ」
ミルディ「…うん、お墓を作ってあげようデューイ」
デューイ「!?」
ミルディ「景色のいい所にさ」
デューイ「…なんで俺が見ず知らずの遇者のために」
ミルディ「まぁまぁ!いい事は巡り巡って帰ってくるよ!輪廻輪廻!」
グイグイ
デューイ「押すなよ!」
【魔界】
《エヴラール地方――東》
<シラズの入江>
クレア「…ふふっ、少しのちょっかいであんなに熱くなるなんてね」
スッ
クレア「《清らかな魂を巡る者》と《愚なる魂を弄ぶ者》…か。2つの魔力を持っているというのに」
チャプッ
クレア「…本当に変わり者」
#20『巡る魂』“~完~”
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