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ANDEAD

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#25 《夜の帳》

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『夜の帳』
――大和都への旅路

ザッザッザッ
アンデッド「じゃあ鬼姫は名前の通り鬼族の姫さんなのか」
鬼姫「うむ!」
ケイパン「他にも王族っていんの?」
鬼姫「妾の父上は鬼族の王じゃよ」
キノコ「鬼王…大きそう」
ポイズン「おーい止まれ止まれ」
鬼姫「?」
ポイズン「ここらで休憩。飯にしよう」
霞「いいですね!」
キノコ「わーい!ポイズンの夜ご飯!!」
ケイパン「確かに俺腹減ったぁ~」
アンデッド「鬼姫も食べるだろ?」
鬼姫「うむ!ご馳走になる!」
ポイズン「しばらく待っててくれ…簡単なものなら」
霞「なにかお手伝いしますよ」
ポイズン「お!助かる!」
グツグツ
霞「お上手ですね…」
ポイズン「シチューくらいなら何度も作ってきたからな」
クンクン
グイッ
ポイズン「ん?」
?①「…おいしそう」
グーギュルルル
霞「どちらさまですか?」
ポイズン「いや…知らねぇぞこの子」
ケイパン「え!隠し子!?」
ポイズン「そんなわけあるか!!」
キノコ「女の子!可愛い~!!」
鬼姫「めんこいのう~どこから来たの~!」
?①「うぅ…」
タッタッタッ
鬼姫「あっ!」
アンデッド「もう1人来たな」
ザッザッザッ
?②「急にごめんよ~この子今お腹が減っててさ」
アンデッド「あんたは?」

翡翠「私は翡翠でこの子は玉津遊!軽い旅人みたいなものでさ」
――【旅人】翡翠

玉津遊「翡翠…あれ美味しそう」
――【旅人】玉津遊

翡翠「うーん…美味しそうだけどアレはあの人たちのものだから食べちゃめっ!だぞ」
玉津遊「ごめんなさい…」
シュン
ポイズン「いやいや気にしないでくれ」
キノコ「そう!皆で食べた方が美味しいって!」
翡翠「…いいのかな?」
霞「是非ご一緒に」
翡翠「それじゃあ少しだけ言葉に甘えちゃおうかな~行こ?」
ギュッ
玉津遊「…」
コクン
全員「いっただっきまーーーす!」
キノコ「ん~…おいしい!!!」
ポイズン「霞も加わってくれたからな」
鬼姫「初めて食べた!!しちうー!!」
霞「シチューですよ」
アンデッド「なんか…俺の黒くね…?」
ケイパン「最後でいいよ~とか言うからポイズンが」
ポイズン「俺のせいかよ!」
鬼姫「よそったのは妾じゃ!下にこびりついた火傷炭ごと抉ってしまったようじゃな!すまん!!」
アンデッド「ぶふーーっ!!阿呆がいますここにぃ!!!」
ケイパン「まぁまぁ…」
翡翠「あっはは…賑やかだなぁ…美味しいね玉津遊」
ナデナデ
玉津遊「ん…!!」
フンスフンスッ
翡翠「具材喉詰まっちゃうぞ~」
ザッザッザッ
霞「お口に合いましたか?」
翡翠「あ、うん!ばっちぐー!」
ビシッ
霞「それなら良かったです」
玉津遊「…」
サササッ
翡翠「おっとっと」
霞「玉津遊ちゃん…人見知りなんですか?」
翡翠「かなりね」
ナデナデ
翡翠「この子にも色々あってさ」
霞「…そうなんですか」
鬼姫「ほ~れほれ!ツノじゃよ~珍しいじゃろ~」
玉津遊「嫌」
鬼姫「…!!」
ズーーーン
キノコ「ありゃ…鬼姫さん落ち込んじゃった」
アンデッド「天罰だろ―ゲホッ!ゴホッ!!ゴホッ!」
ポイズン「無理して食べるなよ新しいの作ってやるから」
ケイパン「炭しか食べてねぇぞアンディさっきから」
翡翠「やっぱり思ってたけどあなた鬼族なのか?」
鬼姫「ん?あぁそうじゃよ!妾は鬼族の姫で鬼姫!」
翡翠「すご…ん?」
グイグイ
玉津遊「翡翠…ねむい」
カクンッカクンッ
翡翠「ゆっくり寝ていいぞ~」
ポンポンッ
玉津遊「…ん」
スヤァ
鬼姫「ひゃあああ…めんこいのう…!!」
翡翠「鬼姫さんは骨抜きだな~」
ポイズン「2人は姉妹とかか?」
翡翠「あぁ違うよ!玉津遊が4歳の頃に私が拾ったんだ」
ナデナデ
ケイパン「え…」
翡翠「この子も私も親が居なくてね」
アンデッド「そうだったのか」
翡翠「この子は小さい頃に親を無くしてさ…それからずっと1人で生きてきたんだ」
キノコ「こんなに小さな子が…」
玉津遊「…zzZ」
鬼姫「…お主は―」
翡翠「って!辛気臭い話しちゃったな!ごめんごめん!」
ポイズン「いや、俺達はいいんだけど」
霞「もうすっかり辺りも暗くなってきましたね…」
アンデッド「今日は俺達もここで野宿するか」
キノコ「賛成!!」
霞「起こすのも悪いですからお2人もご一緒に」
翡翠「そうだね。そうさせてもらおうかな」
キノコ「私玉津遊ちゃんと寝たいー!」
ケイパン「人見知りだってさっき話したろー?俺が寝たいー!」
アンデッド&ポイズン「事案だろ」
ケイパン「失礼すぎるだろっ!!!」
鬼姫「じゃが野宿をする以上は交代制で見張りをせねば」
翡翠「いいよ~私が最初見張っておくから」
ポイズン「悪いな…次は変わるよ」
翡翠「うん」
――
ザッザッザッ
鬼姫「…zzZ」
カチャッ
鬼姫「!」
ガシッ
ググッ
鬼姫「お主…妾の刀に何か用かの…!?」
ダダッ
ババッ
鬼姫「待て!!」
ドンッ
ーーーーーー
ザザッ
鬼姫「止まれ!!!」
「…流石は鬼族」
鬼姫「どういうつもりじゃ翡翠!!!」
バサァッ
翡翠「よく私だって分かったね…鬼姫さん」
鬼姫「近くに居たものの気配は間違えぬ」
翡翠「そっか、珍獣みたいに鼻が利くのかと思ったよ」
鬼姫「お主は…妾の刀を」
翡翠「盗ろうとしたさ…私は盗人だからね」
鬼姫「盗人…!?」
翡翠「実際に見てもらった方が早い」
ストッ
翡翠「私の生き方を」

○翡翠能力―【脱却争奪】
=対象を自在に盗み出す。

翡翠「貰うよそれ」
ダダッ
鬼姫「!」
タッチ
翡翠『強奪スナッチ
グゥンッ
鬼姫「な!?」
翡翠「…いい刀だね。いくらになるんだろう」
鬼姫「返せ!!」
タタンッ
翡翠「…」
鬼姫「何故こんなことをするんじゃ!この事をあの子が…玉津遊が見たらどんな気持ちになるか」
翡翠「知ってるよ」
鬼姫「!?」
翡翠「あの子は私の正体を知ってる。覚えてるかい?あの子は幼い頃に親を無くしてから1人で生きてきたって…私は玉津遊に盗む技術を教えた」
鬼姫「なぜ…!!」
翡翠「1人で無事に生きていけるようにさ…」
鬼姫「そんなことは間違っておる!!」
翡翠「聞き飽きたんだその諭す言葉も…私ってば薄っぺらい正義を掲げてる奴ら大嫌いなんだよね」
鬼姫「なに…!?」
翡翠「言っておくと別に玉津遊は人見知りじゃないよ。ただあの態度はあの子の本音」
鬼姫「どういう事じゃ」
翡翠「嫌悪してるんだよ…恵まれた環境のあなた達を」
鬼姫「!」
翡翠「それはそう。自分はあんな不幸を味わってるのにどうしてこの人達は笑っているの…今のあの子にはその疑問を怒りに変える以外の逃げ道を知らないんだ」
ザッザッザッ
翡翠「国なんて皆同じ…廃れたらそこに住む人間の心根も腐る」

ーーー
「お母さん!お父さん!どうして…なんで私を売るの…」

「なんで…笑ってるの…!!」
ーーー

翡翠「全員同じだね…自分が恵まれてさえ居れば周りの不幸には一切気がつかない…!!」
ググッ
鬼姫「翡翠…よーく分かった」
ザッザッザッ
翡翠「!」
鬼姫「とりあえずその刀は返してもらう。妾の大切な宝物じゃ」
翡翠「…やってごらんよ」
鬼姫「それと全てを聞いた上で今一度言おう。お主は間違っている」
翡翠「…ッ!!」
鬼姫「ふぅーーーー…」
コォォォォォォ
鬼姫「2割ほど能力を開ける…説教はそこからじゃ翡翠」
翡翠「…!!」

夜の帳 ~完~
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