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ここで来ちゃうの龍の里編
これ無理かも!?
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「やべえな。やってやれねぇ事はねぇが、底が見えねえから倒し切れる感じがしねえ」
「ああ、まるで実態の伴わない敵と戦っているようだ」
全員がハクア達の元に集まり、ベルフェゴールが身体を再生させる姿を注意深く観察しながら話し掛けてくる。
ここまでの戦闘で、どうやら普通に戦っていてもこちらが消耗するだけだと判断したようだ。
「ふむ、まあ冗談はここまでにして、シーナ達は向こうのユエ達の方手伝ってくれる?」
「それは……私らじゃ役に立たないって事っすか」
戦闘中とは思えかった今までの和やかな空気に、ハクアの指示で亀裂でも入ったかのように、空気がピリッと緊張感を帯びる。
当然だ。
ここに居るのは龍族の中でもひと握りの強者に入る者達。
いくらハクアの強さを知り、ミコトを敬っていてもそれでも割り切れない強さへのプライドというものがある。
「いやいや、何凄ん出るのか知らんが、マジで適材適所だからね。言っとくけどあっちも私からしたら十分死ねるレベルなんだよ。そしてむしろ適材適所が適用されてるの私の方だし」
ハクアは強い。
確かにそれはここに居る全員が認めている事だが、実際ステータス的に見れば本人の言っている通りだ。
ハクアはミコト達と戦うよりも、ユエ達のようにサポートに回るのが普通だろう。
ハクアからすればどっちも簡単に死ねるレベルの敵なのだ。
それでも相性的に少しマシというのが邪神の相手だと言うだけ、しかもその少しマシというのも、皆に比べればデバフを喰らわずに済むというだけなので、結局は大して変わらないくらいに依然ピンチなのだ。
「そういえばそうなの。ハクアだからすっかり忘れていたの」
「何その私だからって!?」
「いや……うん。ハクアだからしょうがないよ」
「ミコトは何言ってんの? なんで皆も無言で頷いてんの? 納得出来る要素1ミリもないからね? って、そんな事言ってるほど時間はないんだよ流石に!?」
ベルフェゴールがミコトに付けられた傷はもう既にほとんど修復されている。
あちらが動かないのはこちらの動きを警戒しているだけで、傷が完全に治ればそれも関係なく動いてくるだろう。
「んで、私達が向こうを片してくれば良いんっすか?」
「クソう。自分達だけスッキリ切り替えやがって私まだ納得出来てないんだが!?」
「まあ落ち着くの」
「ド畜生。はぁ……うん。それでお願い。私とミコトで抑えてる間にちょっぱやで片付けて戻ってきて、それまではまあ……頑張る?」
「そこは言い切って欲しいっす」
「あはは、今回私も言いきれないかな」
「むー、ミコト様が言うならしょうがないの。全員でさっさと片付けるの」
「あれー、ミコトだと信じて私だとツッコミが入るの何故なの?」
「「「日頃の行い?」」」
「ド畜生!? さっさと行きやがれい! 何笑ってんだよ?」
「うんん。別に」
ハクアに追い払われユエ達の方に向かう仲間を見ながら、何故か楽しそうに笑うミコト。
そんなミコトにガルルと唸りながらハクアは溜息を吐く。
「ミコト。当然わかってると思うけど」
「うん。ここが正念場……だよね」
「ああ、皆が来るまでは二人だけでしのがなきゃいけないからね。 ここで私達が負けたら里の運命───いや、それどころかこの世界そのものが終わる可能性があるね」
「えぇ……ごめん。そこまでだとは思ってなかったからちょっと怖くなってきたかも」
「いやいや、ここでビビんなや。まあ、ビビったところでもうこの状況全く変わらんのだが」
「だよねぇ。それじゃあ頑張りましょうか!」
「お……う? あれ、あれー?」
ミコトの言葉に勇ましく応えようとしたハクア。
だが、その言葉を吐き出し切る前に、まるでエンストを起こした車のようにプスンと音を立てて力の放出が止まってしまった。
「いやいやいやいや。あれー? とか、言ってる場合じゃないよ!? なんでこれからって時に陰陽両義も【超神速】も雷装も切れてるわけ!?」
「いやまあ……その。時間切れ? みたいな」
「いくら話してたからって、本来もうちょっと続くはずだよね!?」
「そのはずだったんだけどねー。ほら、想定外とか誰にでもあるじゃん?」
「その一言で済ませていい事じゃないんだけど!?」
「ハクアさん失敗」
テヘッと舌を出しながら完璧なテヘペロを披露するハクアに、若干の殺意を抱くミコト。
しかしこれに関しては実はハクアが悪い訳ではない。
はっきりと言ってしまえば、この短期間に龍の力に鬼の力、神の力を使えるようになり、遂に万象力まで手に入れたハクア。
いくらテア達が考案した、万象力を効率よく扱う陰陽両義を脳に直接叩き込まれたとは言え、それをこの短期間でここまで使いこなしている方が異常なのだ。
しかも今回ハクアはベルフェゴールの一撃を受け止め、シーナを助ける為にスキルも組み合わせて発動している。
今のハクアの練度でそこまでの無茶をすれば、普通ならば力を発動した瞬間に弾け飛んでもおかしくない行為なのだ。
それを今まで発動出来ていただけでも奇跡に近い。
それがたまたま戦闘の直前に切れるというタイミングが、ハクアらしいと言えばハクアらしいのだが、それを責めるのは酷というものだろう。
「なんかもう、本当にハクアはハクアだよね」
「その諦め方は良くないよ!?」
「だってハクアなんだもん」
「だってじゃなくて理由になってないからね!?」
「はいはい。さっさと用意しようね」
「なにかなその子供に言い聞かせる感じ!? ハクアさんは遺憾の意を表明しますよ!?」
「来るよ」
「ええい! どいつもこいつも、なんでこのタイミング!? 絶対後で話しするからね! 納得まだしてないんだからね!」
動き出したベルフェゴールの攻撃を避けながら、真っ直ぐミコトを見つつ抗議を続けるハクアに、余裕あるなぁと思いながら避ける。
そんな自分も少し前なら戦闘中、しかもこんな強敵相手にそんな事を考える余裕も、そもそも戦闘中に余計なことなど考える事などなかった事を忘れ、すっかりハクアに毒されているミコトである。
それが良い事か、悪い事かは分からないが、今この場に於いては無駄な力が入っていない、自然な形で戦えていると言えるだろう。
「それでハクアどうするの?」
「まずはあの新しく生えた腕をすり抜けて潜り込む、ミコト私を乗せてくれ!」
ハクアの言う通り、傷の治療を終えたベルフェゴールは最も警戒するべき敵と定めたハクアを捉える為に、ミコトの身体を操っていた時のような、黒い闇で出来た腕を先程より更に増やしハクア達を狙う。
龍族であれば捕えられても抜け出せるだろうが、ハクアが捕まれば抜け出すのは難しい。
それをわかっているからこその一手だろう。
「わかった」
ハクアの言葉に素早く応えたミコトが、人化を解き龍の姿へ戻りハクアを乗せて飛び上がる。
「うわっ!?」
しかしそんな二人を嘲笑うように、更にその数を増やした腕が二人を襲う。
「これ無理かも!?」
「ちっ、ミコト! 今から私の思考をリンクする。一気に情報が行くけど、最短ルートを割り出すからその通りに動いて!」
「わかんないけどわかった!」
「グット。それじゃあ行くぞ!」
ハクアがミコトの頭に手を添える。
その瞬間、ミコトの頭の中にナニカが流れ込み世界が一変した。
「ああ、まるで実態の伴わない敵と戦っているようだ」
全員がハクア達の元に集まり、ベルフェゴールが身体を再生させる姿を注意深く観察しながら話し掛けてくる。
ここまでの戦闘で、どうやら普通に戦っていてもこちらが消耗するだけだと判断したようだ。
「ふむ、まあ冗談はここまでにして、シーナ達は向こうのユエ達の方手伝ってくれる?」
「それは……私らじゃ役に立たないって事っすか」
戦闘中とは思えかった今までの和やかな空気に、ハクアの指示で亀裂でも入ったかのように、空気がピリッと緊張感を帯びる。
当然だ。
ここに居るのは龍族の中でもひと握りの強者に入る者達。
いくらハクアの強さを知り、ミコトを敬っていてもそれでも割り切れない強さへのプライドというものがある。
「いやいや、何凄ん出るのか知らんが、マジで適材適所だからね。言っとくけどあっちも私からしたら十分死ねるレベルなんだよ。そしてむしろ適材適所が適用されてるの私の方だし」
ハクアは強い。
確かにそれはここに居る全員が認めている事だが、実際ステータス的に見れば本人の言っている通りだ。
ハクアはミコト達と戦うよりも、ユエ達のようにサポートに回るのが普通だろう。
ハクアからすればどっちも簡単に死ねるレベルの敵なのだ。
それでも相性的に少しマシというのが邪神の相手だと言うだけ、しかもその少しマシというのも、皆に比べればデバフを喰らわずに済むというだけなので、結局は大して変わらないくらいに依然ピンチなのだ。
「そういえばそうなの。ハクアだからすっかり忘れていたの」
「何その私だからって!?」
「いや……うん。ハクアだからしょうがないよ」
「ミコトは何言ってんの? なんで皆も無言で頷いてんの? 納得出来る要素1ミリもないからね? って、そんな事言ってるほど時間はないんだよ流石に!?」
ベルフェゴールがミコトに付けられた傷はもう既にほとんど修復されている。
あちらが動かないのはこちらの動きを警戒しているだけで、傷が完全に治ればそれも関係なく動いてくるだろう。
「んで、私達が向こうを片してくれば良いんっすか?」
「クソう。自分達だけスッキリ切り替えやがって私まだ納得出来てないんだが!?」
「まあ落ち着くの」
「ド畜生。はぁ……うん。それでお願い。私とミコトで抑えてる間にちょっぱやで片付けて戻ってきて、それまではまあ……頑張る?」
「そこは言い切って欲しいっす」
「あはは、今回私も言いきれないかな」
「むー、ミコト様が言うならしょうがないの。全員でさっさと片付けるの」
「あれー、ミコトだと信じて私だとツッコミが入るの何故なの?」
「「「日頃の行い?」」」
「ド畜生!? さっさと行きやがれい! 何笑ってんだよ?」
「うんん。別に」
ハクアに追い払われユエ達の方に向かう仲間を見ながら、何故か楽しそうに笑うミコト。
そんなミコトにガルルと唸りながらハクアは溜息を吐く。
「ミコト。当然わかってると思うけど」
「うん。ここが正念場……だよね」
「ああ、皆が来るまでは二人だけでしのがなきゃいけないからね。 ここで私達が負けたら里の運命───いや、それどころかこの世界そのものが終わる可能性があるね」
「えぇ……ごめん。そこまでだとは思ってなかったからちょっと怖くなってきたかも」
「いやいや、ここでビビんなや。まあ、ビビったところでもうこの状況全く変わらんのだが」
「だよねぇ。それじゃあ頑張りましょうか!」
「お……う? あれ、あれー?」
ミコトの言葉に勇ましく応えようとしたハクア。
だが、その言葉を吐き出し切る前に、まるでエンストを起こした車のようにプスンと音を立てて力の放出が止まってしまった。
「いやいやいやいや。あれー? とか、言ってる場合じゃないよ!? なんでこれからって時に陰陽両義も【超神速】も雷装も切れてるわけ!?」
「いやまあ……その。時間切れ? みたいな」
「いくら話してたからって、本来もうちょっと続くはずだよね!?」
「そのはずだったんだけどねー。ほら、想定外とか誰にでもあるじゃん?」
「その一言で済ませていい事じゃないんだけど!?」
「ハクアさん失敗」
テヘッと舌を出しながら完璧なテヘペロを披露するハクアに、若干の殺意を抱くミコト。
しかしこれに関しては実はハクアが悪い訳ではない。
はっきりと言ってしまえば、この短期間に龍の力に鬼の力、神の力を使えるようになり、遂に万象力まで手に入れたハクア。
いくらテア達が考案した、万象力を効率よく扱う陰陽両義を脳に直接叩き込まれたとは言え、それをこの短期間でここまで使いこなしている方が異常なのだ。
しかも今回ハクアはベルフェゴールの一撃を受け止め、シーナを助ける為にスキルも組み合わせて発動している。
今のハクアの練度でそこまでの無茶をすれば、普通ならば力を発動した瞬間に弾け飛んでもおかしくない行為なのだ。
それを今まで発動出来ていただけでも奇跡に近い。
それがたまたま戦闘の直前に切れるというタイミングが、ハクアらしいと言えばハクアらしいのだが、それを責めるのは酷というものだろう。
「なんかもう、本当にハクアはハクアだよね」
「その諦め方は良くないよ!?」
「だってハクアなんだもん」
「だってじゃなくて理由になってないからね!?」
「はいはい。さっさと用意しようね」
「なにかなその子供に言い聞かせる感じ!? ハクアさんは遺憾の意を表明しますよ!?」
「来るよ」
「ええい! どいつもこいつも、なんでこのタイミング!? 絶対後で話しするからね! 納得まだしてないんだからね!」
動き出したベルフェゴールの攻撃を避けながら、真っ直ぐミコトを見つつ抗議を続けるハクアに、余裕あるなぁと思いながら避ける。
そんな自分も少し前なら戦闘中、しかもこんな強敵相手にそんな事を考える余裕も、そもそも戦闘中に余計なことなど考える事などなかった事を忘れ、すっかりハクアに毒されているミコトである。
それが良い事か、悪い事かは分からないが、今この場に於いては無駄な力が入っていない、自然な形で戦えていると言えるだろう。
「それでハクアどうするの?」
「まずはあの新しく生えた腕をすり抜けて潜り込む、ミコト私を乗せてくれ!」
ハクアの言う通り、傷の治療を終えたベルフェゴールは最も警戒するべき敵と定めたハクアを捉える為に、ミコトの身体を操っていた時のような、黒い闇で出来た腕を先程より更に増やしハクア達を狙う。
龍族であれば捕えられても抜け出せるだろうが、ハクアが捕まれば抜け出すのは難しい。
それをわかっているからこその一手だろう。
「わかった」
ハクアの言葉に素早く応えたミコトが、人化を解き龍の姿へ戻りハクアを乗せて飛び上がる。
「うわっ!?」
しかしそんな二人を嘲笑うように、更にその数を増やした腕が二人を襲う。
「これ無理かも!?」
「ちっ、ミコト! 今から私の思考をリンクする。一気に情報が行くけど、最短ルートを割り出すからその通りに動いて!」
「わかんないけどわかった!」
「グット。それじゃあ行くぞ!」
ハクアがミコトの頭に手を添える。
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