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ここで来ちゃうの龍の里編
まだまだ余裕ですの?
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いきなり名指しされたレリウスに全員の視線が集まり、顔に嫌な汗が伝うのを自覚しながら言葉の意味を考える。
確かに自分も少しだがなにか違和感のようなものを感じた。だがそれがなんなのかは分からず、特に深くは考えず映像を観ていた。
回答を待つかのように自分に集まる視線を感じながら、必死に記憶の糸を手繰り寄せ違和感の元を探す。しかしその焦りがレリウスの思考を妨げる。
「まあ、レリウスが分からなくてもしょうがないっすよ。正直、私も未だに信じらんないっすから」
「確かにそうなの。ムーもそうじゃないとおかしいとは思うけど、ハクアがあまりにも自然過ぎて違和感がないの」
「まあ、違和感がないのが既におかしいのじゃがな」
ミコトの締めくくりの言葉に全員が頷く。
そこでようやくレリウスもそれが何を指すのかを理解する。
そう、答えはずっと映っていた。
映像がハクアに近付く度にハクアはウザったそうに払い、離れている時はこちらを挑発するかのように行動していた。
だが、それはどう考えてもおかしいのだ。
ハクアとは別、小休憩を挟んでいる試練参加者も映されているが誰も反応していないのだ。
それもそうだ。何故ならこの映像は龍神の力によって映し出され、龍神が隠蔽まで施しているのだ。
そのアングルは横からや後ろからでは無い、誰も彼もが一度は正面から映り、今だって勝手な行動を取る一部の参加者に、厳しい言葉を浴びせている映像が正面から映し出されている。
その映像は、地球でドラマを観ていたテア達からすれば、中々わかっている良いアングルだ。などと評価しそうになるほどに良い絵が撮れている。
龍神恐るべし。
「因みに、私達龍王であってもアレを見付ける事は不可能でしょうね」
「───っ!?」
水龍王が放ったその一言はレリウスだけではなく、その場の全員に衝撃を与えた。
シーナ達も自分達には無理だが、少なくとも龍王達ならば可能だろう。そう考えていたからだ。
だが事実、龍王達は揃って頷くばかり、それが紛れもない事実なのだと理解するには十分だ。
少し前、自分が初めてハクアと会った時、ダンジョンを攻略するハクアは、今回と同じように見られていたが全く気が付く事はなかった。
それをこの短い期間で龍王ではなく、龍神の隠蔽まで見破る成長速度に、レリウスはゾクリとしたものを感じた。
映像の中でこちらを見る少女の姿をしたナニカ。
竜の中では若い自分の年端もいかないその少女の姿をしたナニカに、レリウスは明確な恐怖を抱いた。
それほどまでにハクアの行った事は本来有り得ないものなのだ。
そしてレリウスが気が付いたのはもう一つ。
ゆったりとしているハクアとユエ、小休憩を挟んでいる攻略者達、だがこれもおかしいのだ。
レリウスは自分がこのダンジョンを攻略した時の事を思い出す。
お世辞にも上手く出来ていたかと言えばそんな事はないが、だがしかしレリウス達の攻略時は今のメンバーよりも少ない人数だった事もあり、少なくとも映像に映る攻略隊より殲滅速度は上だった。
そんなレリウス達でも小休憩を挟む余裕など少しもなかったのだ。いや、むしろ一時も休まず駆け抜けて戦闘した記憶しかない。
しかし現に彼等は先程から小休憩を何度か取っている。
しかもこうして思い返せば、彼等は横穴や前方の索敵はしても後方には全くの無警戒だった。
最初こそ油断なく行っていたそれは、先に進むに連れ次第に無くなっていた。それは後ろからは敵が来ないという油断からだろう。
だがそんな訳がない。
このダンジョンの敵の復活速度は通常のものに比べて格段に早い。それは完全に殲滅したルートからも復活し、襲ってくる程だ。
それなのに何故、彼等は後方の警戒をしなくても良いと思ったのか、そんなものは決まっている。
彼等が気が付く前に、何者かによって全ての敵が駆逐されていたからだ。
レリウスの思考を読んだかのように、ハクアを映していた映像が切り替わる。
事実それは読んだのかもしれない。
龍神は里の中の事を全て把握してる。そんな噂を思い出しながらレリウスは切り替わった映像に意識を向ける。
「なんだ?」
ざわつき、何処からか疑問の声が上がる。
突然切り替わった映像には誰の姿も映し出されていない。
そこは誰もいないダンジョンの通路の一つだ。
突然何故?
その思いが会場中の観客に満ちる中、変化が起こった。
何もない通路の地面から、天井から、横壁から、あらゆる場所から魔物が次々に生み出され、一つの方向を目指して突き進む。
だが、その魔物が獲物の姿を見付ける事はなかった。
突き進む魔物、その魔物の下から突如として先の尖ったトゲのようなものが地面が突き出され、魔物を串刺しにしていく。
しかもそれは地面からだけではなく、魔物が生み出された時を再現するかのように、壁からも天井からも次々に現れ、突き進む後続の魔物も次々に貫かれていく。
運良く生き残った魔物も、勢いのままにトゲや仲間の死体にぶつかり絶命していく。
相手は魔物、同情の余地などありはしない。
しかし次々に生まれては、死んでいくその光景は地獄絵図のようではないか。
その光景にしばし言葉を失う観客、そんな観客を嘲笑うように一匹の小さい黒いドラゴンが現た。
なんだ?
そう思う観客の目の前でドラゴンの身体が縦に割れる
そこにあったのは凶悪な口だ。
そしてそのドラゴンは、自分よりも大きな死体を次々に一口で呑み込み咀嚼し、全ての死体を平らげ飛び去っていく。
次も
その次も
そのまた次も
映像は次々に切り替わり、同じ光景が繰り返されていく。
観客はただ声を出す事すら忘れて見守るしかない。
そしてそれは試練を受けている攻略組の小休憩が終わるまで続いた。
この時にはもう龍王達だけではなく、観客もこれが誰がもたらしたものなのかを理解していた。
『おかえりノクス。腹はいっぱいになった?』
『クルゥウ♪』
『えっ、まだまだ余裕ですの?』
『クッルゥ』
『主、ノクスどこ行ってた?』
『ちょっと食事にね。ああ、じゃあまた後ろ行ってな。いくらでも湧くから』
『クルゥー!』
そしてそれが正解だと言わんばかりにそんなやり取りが映し出された。
静まる観客。
「やっとここの観客も理解出来たみたいですね」
「ええ、そうですね。やっと」
観客を変わらず冷めた目で見下ろし、テアと聡子が吐き捨てる。
「本当に恥じ入るばかりですわ」
「こりゃ、近々気合い入れ直すしかねぇな」
「ああ、流石にレベルが低すぎる」
「そうですね」
ほとんどの観客がハクアの力に気が付かなかった。
その事実を重く受け止めた龍王達による、里の竜を鍛え直す事が決定した瞬間だった。
確かに自分も少しだがなにか違和感のようなものを感じた。だがそれがなんなのかは分からず、特に深くは考えず映像を観ていた。
回答を待つかのように自分に集まる視線を感じながら、必死に記憶の糸を手繰り寄せ違和感の元を探す。しかしその焦りがレリウスの思考を妨げる。
「まあ、レリウスが分からなくてもしょうがないっすよ。正直、私も未だに信じらんないっすから」
「確かにそうなの。ムーもそうじゃないとおかしいとは思うけど、ハクアがあまりにも自然過ぎて違和感がないの」
「まあ、違和感がないのが既におかしいのじゃがな」
ミコトの締めくくりの言葉に全員が頷く。
そこでようやくレリウスもそれが何を指すのかを理解する。
そう、答えはずっと映っていた。
映像がハクアに近付く度にハクアはウザったそうに払い、離れている時はこちらを挑発するかのように行動していた。
だが、それはどう考えてもおかしいのだ。
ハクアとは別、小休憩を挟んでいる試練参加者も映されているが誰も反応していないのだ。
それもそうだ。何故ならこの映像は龍神の力によって映し出され、龍神が隠蔽まで施しているのだ。
そのアングルは横からや後ろからでは無い、誰も彼もが一度は正面から映り、今だって勝手な行動を取る一部の参加者に、厳しい言葉を浴びせている映像が正面から映し出されている。
その映像は、地球でドラマを観ていたテア達からすれば、中々わかっている良いアングルだ。などと評価しそうになるほどに良い絵が撮れている。
龍神恐るべし。
「因みに、私達龍王であってもアレを見付ける事は不可能でしょうね」
「───っ!?」
水龍王が放ったその一言はレリウスだけではなく、その場の全員に衝撃を与えた。
シーナ達も自分達には無理だが、少なくとも龍王達ならば可能だろう。そう考えていたからだ。
だが事実、龍王達は揃って頷くばかり、それが紛れもない事実なのだと理解するには十分だ。
少し前、自分が初めてハクアと会った時、ダンジョンを攻略するハクアは、今回と同じように見られていたが全く気が付く事はなかった。
それをこの短い期間で龍王ではなく、龍神の隠蔽まで見破る成長速度に、レリウスはゾクリとしたものを感じた。
映像の中でこちらを見る少女の姿をしたナニカ。
竜の中では若い自分の年端もいかないその少女の姿をしたナニカに、レリウスは明確な恐怖を抱いた。
それほどまでにハクアの行った事は本来有り得ないものなのだ。
そしてレリウスが気が付いたのはもう一つ。
ゆったりとしているハクアとユエ、小休憩を挟んでいる攻略者達、だがこれもおかしいのだ。
レリウスは自分がこのダンジョンを攻略した時の事を思い出す。
お世辞にも上手く出来ていたかと言えばそんな事はないが、だがしかしレリウス達の攻略時は今のメンバーよりも少ない人数だった事もあり、少なくとも映像に映る攻略隊より殲滅速度は上だった。
そんなレリウス達でも小休憩を挟む余裕など少しもなかったのだ。いや、むしろ一時も休まず駆け抜けて戦闘した記憶しかない。
しかし現に彼等は先程から小休憩を何度か取っている。
しかもこうして思い返せば、彼等は横穴や前方の索敵はしても後方には全くの無警戒だった。
最初こそ油断なく行っていたそれは、先に進むに連れ次第に無くなっていた。それは後ろからは敵が来ないという油断からだろう。
だがそんな訳がない。
このダンジョンの敵の復活速度は通常のものに比べて格段に早い。それは完全に殲滅したルートからも復活し、襲ってくる程だ。
それなのに何故、彼等は後方の警戒をしなくても良いと思ったのか、そんなものは決まっている。
彼等が気が付く前に、何者かによって全ての敵が駆逐されていたからだ。
レリウスの思考を読んだかのように、ハクアを映していた映像が切り替わる。
事実それは読んだのかもしれない。
龍神は里の中の事を全て把握してる。そんな噂を思い出しながらレリウスは切り替わった映像に意識を向ける。
「なんだ?」
ざわつき、何処からか疑問の声が上がる。
突然切り替わった映像には誰の姿も映し出されていない。
そこは誰もいないダンジョンの通路の一つだ。
突然何故?
その思いが会場中の観客に満ちる中、変化が起こった。
何もない通路の地面から、天井から、横壁から、あらゆる場所から魔物が次々に生み出され、一つの方向を目指して突き進む。
だが、その魔物が獲物の姿を見付ける事はなかった。
突き進む魔物、その魔物の下から突如として先の尖ったトゲのようなものが地面が突き出され、魔物を串刺しにしていく。
しかもそれは地面からだけではなく、魔物が生み出された時を再現するかのように、壁からも天井からも次々に現れ、突き進む後続の魔物も次々に貫かれていく。
運良く生き残った魔物も、勢いのままにトゲや仲間の死体にぶつかり絶命していく。
相手は魔物、同情の余地などありはしない。
しかし次々に生まれては、死んでいくその光景は地獄絵図のようではないか。
その光景にしばし言葉を失う観客、そんな観客を嘲笑うように一匹の小さい黒いドラゴンが現た。
なんだ?
そう思う観客の目の前でドラゴンの身体が縦に割れる
そこにあったのは凶悪な口だ。
そしてそのドラゴンは、自分よりも大きな死体を次々に一口で呑み込み咀嚼し、全ての死体を平らげ飛び去っていく。
次も
その次も
そのまた次も
映像は次々に切り替わり、同じ光景が繰り返されていく。
観客はただ声を出す事すら忘れて見守るしかない。
そしてそれは試練を受けている攻略組の小休憩が終わるまで続いた。
この時にはもう龍王達だけではなく、観客もこれが誰がもたらしたものなのかを理解していた。
『おかえりノクス。腹はいっぱいになった?』
『クルゥウ♪』
『えっ、まだまだ余裕ですの?』
『クッルゥ』
『主、ノクスどこ行ってた?』
『ちょっと食事にね。ああ、じゃあまた後ろ行ってな。いくらでも湧くから』
『クルゥー!』
そしてそれが正解だと言わんばかりにそんなやり取りが映し出された。
静まる観客。
「やっとここの観客も理解出来たみたいですね」
「ええ、そうですね。やっと」
観客を変わらず冷めた目で見下ろし、テアと聡子が吐き捨てる。
「本当に恥じ入るばかりですわ」
「こりゃ、近々気合い入れ直すしかねぇな」
「ああ、流石にレベルが低すぎる」
「そうですね」
ほとんどの観客がハクアの力に気が付かなかった。
その事実を重く受け止めた龍王達による、里の竜を鍛え直す事が決定した瞬間だった。
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