上 下
230 / 649
エルマン渓谷攻防戦

ならば皆。よろしく頼む

しおりを挟む
 巨大怪獣襲来!

「残念。世界観が違うからお帰り頂いて・・・」

「何を言っているんだお前は」

「ご、ご主人様落ち着いて下さい。きっと夢です」

「あぁ、良い天気だななぁ~」

「落ち着くのはアリシアかな?現実見ようよ。エレオノは現実から逃避しないで欲しいかな」

 コロさんの存在が有り難いね。ちゃんと突っ込みに入ってくれるから。アリシアはアクシデントに弱いし。エレオノは何気に私と同類だからね。突っ込みがいない事にはボケるのもままならない。うん。わたしは何を語っているのだろう?

「終わったら起こして欲しい・・・ゴブ」

「アクア、流石にここで寝るのは死ぬと思うのじゃが?踏み潰されるぞ?」

 アクア様少し考え込んで。

「寝たまま逝けるのならば本望・・・ゴブ」

「本望ではありませんよアクア。はぁ、マスターの悪い影響が」

 何気にアクアを可愛がっている保護者ヘルさんはその言葉にため息を付く。

 すいません。何でもかんでも私の影響と言うのはどうかと思います!いくら私でもこの状況この場所では寝ませんよ?だから私の影響じゃない!多分、恐らく、だと良いな?

「それで、どうしようかハーちゃん?」

「ど、どうやって倒せば良いんですか白亜先輩!」

 瑠璃と結衣ちゃんの言葉に全員が一斉に私を見る。

 ふむ。どう・・・ねぇ?

「放置一択で!」

「「「「「はっ?」」」」」

 私の言葉に全員が何を言っているんだ?見たいな顔になる。

 だってあんなんと戦ってらんないし。こんな序盤でレイドボス仕込んだ運営が悪い。

『シルフィン:運営でもなければ仕込んだつもりもありませんよ?』

 じゃあ、こんな世界が悪い。

『シルフィン:滅茶苦茶ですね!?』

 ほら!女神!こういう時こそ『貴女に今回限り特別な力を授けます』的な女神らしさを見せる場面だぞ!

『シルフィン:いや、やりませんよ!?』

 チッ!

『シルフィン:舌打ちされた!?』

 宛にならんな仕方ない。

「皆驚いてるけど悪くは無いと思うよ?そもそもあんなデカいのとやり合えばこっちの被害がデカ過ぎる。それに見て思ったけど、本来はあんなサイズになるような物じゃ無いんじゃ無いかな?明らかに理性飛ばしてるし、何よりも体が伸縮して所々膨張もしてる。恐らく急激なパワーアップかそれに類する物で、暴走状態に在るか制御仕切れて無いんじゃ無い?多分肉体の破壊と再生が高いレベルで共存してるんだよ。その証拠に膨張部分の一部が剥がれたりもしてるし苦しそうだ。放って置けば上手くすれば自滅、最悪でも弱体化はするんじゃ無いかな?と、言うのが私の意見の骨子何だけどどうかな?」

 私がレイドボスから視線を外し、後ろに居る皆に意見を聞く為に振り返る。すると・・・。

「お前・・・どうした?」

「ご、ご主人様がボケもせずまともな意見を・・・」

「ハクア大丈夫?頭打った?」

「は、ハーちゃんお熱ですか?!は、早く休まないと!」

「お、落ち着くかな皆!」

「我、寒気が・・・」

「大丈夫ですよクー?たまにはマスターもまともな事言いますよ・・・・多分」

 お前ら・・・人が真面目に答えたのに。

 私がその皆のリアクションに口元をヒクつかせて居ると、アクアが私の腰に抱き付いて来た。何かと思い見下ろすと・・・・・・盛大に目元を潤ませ今にも泣きそうな顔で見上げて居た。

 うん。何か・・・もういいや。

 私、色んな意味で諦めました。

「ハクア様の考察は素晴らしです。意見を聞いて私としてもその解答は、恐らく近い結果になると思うのですが一つ問題が・・・」

 私の意見を聞いてちゃんとした答えを返してくれたフーリィーが言いにくそうに意見する。

 うん。反論でも何でも良いよ!

「澪、私フーリィー欲しい。天使が居る」

「これは私のだ。お前には沢山居るだろ」

「チッ!それで問題って?」

「あ~、そのだな。言いにくいのだがアレがマハドルだ・・・」

「・・・・・澪、お前の事は忘れないよ!」

「言うと思ったわ!」

「何だよそれ~。くっそ!誰か光の国から巨人呼んでこいよ!僕らの為にやって来るんだろ?」

「ハーちゃん落ち着いて下さい。三分で倒せる未来が見えません」

「・・・奴ら三分以上戦ってるしな。しかし、そうは言っても流石にアレはな?諦めるか」

「チッ!うるさい黙れ。今考えてる!」

 行けるか?いや、澪のタイムリミットは日没前後だ。まだ時間が在るとはいえ、本当に私が言った通りになるとも限らない。やる以外の選択肢は無い。問題は・・・・・駄女神?少し聞いて良いか?

『シルフィン:答えられる範囲までならば』

 ありがとう。アレは暴走状態に在るのは間違いないか?

『シルフィン:ええ。想定とは違う事態で暴走状態にあります』

 想定とは?

『シルフィン:それは言えません。私から言えるのは貴女の推測は正しいと言う事。そして、日没には間に合わないだろうと言う事です』

 ・・・・・わかった。理性を取り戻す可能性は?

『シルフィン:それはありません。完全に呑まれています。このまま最後まで本能のままに破壊の限りを尽くすでしょう』

 理性は無く本能で動く・・・・か、多分正解は諦める事だろうな。でも・・・。

 私は澪の事を見る。多分コイツは私が諦めると言えば諦めるのだろう。コイツ自身、アレと戦う事で出る被害者の数はどれ程になるか分からないと知っている。それは、下手をすればここに居る人間も・・・。

「はぁ、めんどくさい。さっさと大型ボス倒して帰るか、暫くは働かなくても良いよね?」

「はい。私はご主人様に従います!」

「私もみーちゃんの為に頑張るよ!」

「私も空飛べるようになったし良い所見せるよ」

「うん。頑張ろう。皆一緒なら大丈夫かな」

「ん・・やるゴブ」

「やれやれ、主様に付き合うのは大変なのじゃ」

「私の仕事はマスターの補佐です。何なりと」

「わ、私も頑張ります」

「皆さんの事は私が必ずこの盾で守り抜きます」

「及ばずながら私も澪さまの為に協力させて頂きます」

「良いのか?」

 その澪の一言はきっと色々な意味が在るのだろう。だけど、面倒な事に私はその全てを背負う覚悟をしてしまった。

「何とかなるだろ?私とお前が居て皆が手伝ってくれるんだ」

「そうか、ならば皆。よろしく頼む」

「「「「「「はい!」」」」」」

 さあ、気合い入れてレイドボスに挑むかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの
ファンタジー
毎日更新! 葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。 職業 : 引きこもりニート。 親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。 異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。 しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。 だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。 そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い―― 果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。 サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

やがて王になりし転生ゴブリン〜何度転生してもゴブリンだけど次のゴブ生こそ魔王を倒してみせる〜

犬型大
ファンタジー
何度も死んだ。 他の者に殺されたり、時には同族と争ったり、餓死することもあった。 それでも何度も生き返った。 正確には転生した。 何度も、何度も。 望んでいないのに何度も転生させられて、そして死んだ。 人に転生できたならまだやりようがあったかもしれない。 けれど何度転生しても、どんな死を迎えてどんなに期待をしても、なぜなのか転生してしまうのだ。 “ゴブリン”に。 次の生こそは生き延びる。 次こそは転生などしないで死んでやる。 そう思っていた。 しかしドゥゼアは思い出す。 なぜゴブリンに転生するのかを。 なぜ何回もゴブリンになるのかを。 魔王を倒す。 それが最弱の魔物ゴブリンに課せられた使命なのだった。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

処理中です...