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英雄育成計画

ふへへ。悲しい……

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「うーむ……」
「ハ、ハーちゃんが朝ごはんに手をつけないで悩んでる!?」
「おい、どうした!?」
「ご主人様まさか熱でも!?」
「いえ、マスターなら起き上がれる程度の熱なら食べてます」
「確かにハクちゃんならそうだね」
「と、言う事は……ハクアまたなんかやらかすの?」
「ちょっと待って今のは聞き捨てならないわよエレオノ! ハクア今の内に何を考えているのか吐きなさい。お願いだから先に何するか教えて!? これ以上胃薬の量を増やしたくないの!」
「ア、アイギス様落ち着いて下さい」
「アイギス。今度私も飲んでるよく効く薬を用意しよう」
「流石ですねハクア様。直接手を下す事すらなく王族に害をなすとは……」

 うん。なんでこいつら人がちょっと飯の時間に悩んでるだけでこうなるかな?
 そしてアイギスは、人のせいで胃薬を飲んでるみたいな言い方はやめて欲しい。
 きっと胃薬を飲んでるのは、王族として馬鹿な貴族の相手をしないといけないからに違いない。
 後ね……後、エルザはなんでそんな事で私を褒めるのかな? 普通ならそれ褒める事じゃないからね? って言うかダメージ与えようとなんてしてないからね!?

「で、何悩んでるんだ? お前が飯も食わないなんて相当だろ?」
「うん。とりあえず喧嘩売られてる気がするけどスルーしとくよ。んで、私が悩んでるって言うか考えてるのはこれなんよ」

 そう言って私は自分のステータスを皆に見せる。

 名前:ハクア
 進化:5
 レベル:21/40→25/40
 性別:女
 種族:禍津鬼
 強化値:1000→0
 HP:17000→20000
 MP:8100→8700
 気力:8200→8840
 物攻:6100→6500
 物防:3900→4000★
 魔攻:5300→5600
 魔防:4970→5000★
 敏捷:9040→9700
 知恵:4950→5150
 器用:7110→7510
 運 :130

「ん? なんだこれ?」
「知らん! 久しぶりにレベル上がったと思ったらこうなってたんでい。あれか? クラスアップとかか?」
「いや、ステータスのクラスアップってなんだよ」
「だからそれがわからんと言っておろうが!」
「私も知りませんね。エレオノは知っていますか?」
「ごめんアリシア。私も見た事ないなや」
「アイギスさんは知ってますか?」
「頼ってくれて嬉しいけど私も知らないわね。瑠璃こそ冒険者ギルドで見た事……いえ、冒険者ギルドではステータスの報告義務は無いわね」
「そうなんですよね。じゃあテアさん教えて下さい。テアさん?」

 私達だけでは埒が明かず瑠璃がテアに答えを求める。
 だが、問われた本人であるテアは、心達他の元女神と一緒に私のステータスを見て固まっている。

 えー、嫌な予感しかしないんですけど……。

「おい、どうした」
「っ!? ああ、すみません澪、お嬢様。予想外の出来事に少し戸惑ってしまいました」
「テアさん達が予想外の事態で思考停止するなんて……これってなんなんですか」

 瑠璃の疑問に全員がうんうん頷き答えを待つ。

 するとテア達は顔を見合わせ、意を決した顔で私に近付くとこう言い放った。

「それは成長限界のマークです」
「「「はぁ?」」」
 ▼▼▼▼▼▼▼
 衝撃の一言からの説明は、なんともまあ私らしいと自分自身で思ってしまうものだった。

 今回私のステータスに付いた星は成長限界。つまりはもうこれ以上どうやってもステータスが上がらない状態らしい。

 なんでも永らく修行をしたドラゴンやエルフ。長寿な種族が稀にこうなるらしく、私ほど早くこんな事になるというのは滅多に無いのだとか。

 しかもどうやら平均からしてもかなり下の方らしく、これ程低い数値で限界を迎えるのは非常に稀だと言われてしまった。

 ふへへ。悲しい……。

 それでもこれ以上となると、装備やスキルでの底上げ、または特殊な方法を用いる事でしかこれは解除出来ないのだそうだ。
 因みに強化ポイントも振れないし進化でもダメらしい。

 詰んだね。

 そして今回こんな事になった根本の原因は私の魂に問題があるらしい。
 更にそれだけで無く問題は複数あるようで、一つは私の急激な進化に体と魂が馴染んでいない。
【暴喰】系統のスキルで獲得したスキル。それらについての考察は前にしたが、それが大体あっており、幾つもの因子を取り込んだせいで不具合が起こったとも言っていた。
 その他にもまだ理由はありそうだったが、テア達が言わなかった所を見ると、私にはまだ教えられない情報か、もしくは教えたらいけない情報なのだろう。

 まっ、教えて貰えないならどうでも良いや。聞いたって変わんないし。

 個人的には私の魂がアクアと別れたのも原因の一端だと思うんだけどね。まっ、アクアが居るのにそんな事言わないけど。

 と、そんな訳で今回で私のステータスの内、防御系統だけが限界をそうそうに迎えたのだそうだ。

 しかしまさか、防御の上がりが悪かったのがこんな所で伏線回収されるとは恐るべし異世界。
 しかも物理防御が4000で魔法防御が5000とか、ちょっとしたBランク程度で限界とか酷くないかね?

 と、こんな事をぼーっと考えているのだが目の前は割と大変である。
 今も深刻な顔で、私についての処遇をご飯も食べずに皆で話し合っている程だ。

 何せこの程度で限界を迎えた防御力は、皆にとってはほぼ通過点と言ってもいいレベル。
 新米から一人前になった位のステータスなのだから、当然と言えば当然の反応だろう。

 しかしだからと言って、なんで監禁とか拘束とかいう言葉が出てくるのかな?
 護衛とかはまだ良いけど保護者は意味が違くないかな?
 ほら、誰も止めないからリード着けようとか言い始めてる。
 誰か止めて! そしてエルザさんは煽るの止めてくれません!? リコリスとか瑠璃、アリシアを初めとした数人はなんでリードの話が出た辺りでこっちを熱の籠った目で見てるの!? 

 自分の事なのにちょっと発言したら、猿轡を装着され椅子に括り付けられた私は、白熱する議論をただただ眺めるしか無かったのだった。

 そして何故かアクアさんは私の隣で何故か私の頭を撫でているのだった。ぐすん。

 しかしその日の事件はそれだけでは終わらなかった。

 私の事なのに私抜きで進む議論の真っ只中、バンッと開いた扉から食堂に駆け込んで来たサキュバスメイドの一人が、巫 千景が目覚めた事を私達に告げたのだった。
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