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エルマン渓谷攻防戦

コレ、私とネタ被ってね?!

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 安形 澪、聖嶺高校二年の生徒会長。
 ハクアと瑠璃のもう一人の幼馴染みにして親友兼悪友の一人。
 黒髪のポニーテールに、キリッとした切れ長の目、十人中十人が美女と言うような、見た目大和撫子を体現した様な存在だったが、ハクアの知るその姿は印象が変わっていた。
 ハクアに取って、澪の最大のトレードマークだと思っていた髪は、今は何故か水色に変わり、トレードマークになっていたポニーテールは卸していた。
 それだけでも印象はかなり変わるが、澪は更にこの世界の服を着ていたので、どう見てもこの世界の人間にしか見えなくなっていた。

(髪と服であそこまで印象が変わるか。つか、良くあの格好が似合うな。見た目が良い奴は何でも着こなすな)

 突然の登場にハクア以外の面々は、それぞれに困惑を露にする。
 刻炎、暁のメンバーは、ハクアに向い親しみの籠った言葉を投げ掛ける、澪とハクアそれぞれに疑惑の目を向け。
 ハクアの仲間は元々澪の存在は聞いていた。しかし、その人物が本当にこの世界に居る事、そしてその人物がハクアや、瑠璃の敵として現れるとは思っても見ず、反応する事が出来なかった。
 特に結衣は、元から澪の事やハクア達との関係を知っていた事から、信じられない物を見ている様だった。
 しかしそれもハクアからすれば大した問題では無かった。それよりもーーー。

「やはり分かるか嬉しいぞ親友♪」

「みーちゃん・・・・・」

「澪、お前・・・・何で同じセリフ二回言ったんだ?」

「ふっ。愚問だな白亜!今のはどう見ても引きの場面だから、分かりやすく編集点作ったに決まってるだろ?」

 そしてこれは知るものは少ないが、澪はかなりのレベルのアニオタだった。

『シルフィン:ありがたい事です』

(ウルセェよ駄女神!?つーか、相変わらずコイツ割りとガチ何だよな)

「それに何だその格好!メッチャエロいな!」

(最近のソシャゲのヴァルキリーとかみたいだし!けしからん!けしからんぞ!)

 ハクアの言う通り澪の格好は青を基調にした、肩と背中が剥き出しのホルターネック、しかも胸の中央がバックリ開いた、ヘソ上までしか長さのないキャミソールタイプ。
 下はミニスカートに、足の付け根部分までスリットが入り、ガーターベルトが覗いていた。そして金属製の鎧を手足と腰当てで付け、胸の下を支えるコルセットの様な物が鎧として着いていた。

「ふっ、そうだろう。この世界の女性用防具は、こんなんで防御力有るからふざけているな。全くけしからん!私も割りと気に入っているが、良い世界だ!」

「うむ、ハゲ同だよ!」

「みーちゃんが、みーちゃんが私の知らない間に不良に・・・!?髪を染めてます!?」

「ちょっ!ハクアもルリも何言ってるの!?」

「そ、そうですよ!前の世界からの友達が、今目の前に敵として現れてるんですよ!」

「まさかみーちゃん、こっちの世界で悪い人に騙され・・・・」

「それは無いから。瑠璃はあれより悪人何てそうそう居ると思うのか?」

「・・・そうですね。それは無いですよね」

「オイコラ親友共!何だその言い方!もうちょっと無いのか!感動が!!」

「無い!!」

「・・・・・泣くぞオイ!はぁ、この髪はこっちに来た時に変わってたんだよ。それよりも抵抗のひとつもしなくて良いのか?」

「おいおい、冗談言うなよ。こんな囲まれた状況で抵抗しても皆死ぬだけだろ?」

「えっ?囲まれてって?」

 ハクアの言葉に辺りを見回すと、澪の登場に気を取られ気が付けずに居たが、既に周りはハクアの言う通り方位されて居た。
 前後は勿論の事、ハクア達がモンスターを倒した崖上にも、弓を構えた兵が既に布陣を敷き、澪の後方とハクア達の後ろの隊には、既に大形魔法の発動準備を終えた魔法使いが待機している。合図があれば、ここに居る人間の殆んどが死ぬ事は、誰もが簡単に想像出来る程完璧に、ハクア達は包囲をされていた。

「それにしても、驚いたぞ白亜。こんなお粗末な行動を許すとはな?」

「それについてはお前のせいだろ!?コイツが先走ったんだよ!」

 そう言いながらハクアは、澪が登場してから一言も発っさず黙り混むゲイルの、首根っこを掴み前に押し出す。

「な・・・何故・・・・君が・・・?」

「お久しぶりですゲイル様。また御逢い出来てうれしいですわ」

 ゲイルが漸く絞り出した言葉に澪はそう返し、とても良い笑顔で笑いかけた。

(あれ?デジャビュ?コレ、私とネタ被ってね?!)
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