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エルマン渓谷攻防戦
「そ、そそそ、そんな事無いんだからね!」
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「ふう、厳しい戦いだった」
現在私は、長く続いた作戦会議と言う名の戦いに何とか耐えきり、ヘルさんと共に皆の元に帰る途中だった。
危ない所だったぜ!
「・・・・マスター寝ていましたよね?」
「いやいや、まさかそんな事・・・・バレてた?」
「始まって五分もしない内に寝ましたよね?と、言うよりは初めから寝るつもりだから私を連れて来たんですよね?」
おふっ!バレてーら。
「そ、そそそ、そんな事無いんだからね!」
「また盛大に分かりやすく・・・・先ほど寝ていた時の様に分からない様にすれば、まだ分かりにくいものを・・・」
「な、何の事かな~?」
「座りながら足を組んで、姿勢を正したまま、顔を真っ直ぐ前に向け、あたかも真面目に話しを聞いているかの様にしていましたからね。正直隣で無ければ分からなかったかも知れません」
「ふふ、私の数少ない特技の一つだからね!って、あぁ、そんな呆れた目で見ないで!」
「呆れて等いませんから大丈夫です。どちらかと言えば、ここらで一度軽蔑するべきかと悩んでいるだけです」
状況はもっと悪かった。
「え~と、何と申しますか・・・すいません!見捨てないで下さい!?」
「まあ、常談なので別に良いのですが、マスターは何を考えているんです?」
その聞き方だと正気を疑われてる様なんだけど?
「いえ、この手の作戦会議はマスターならちゃんと聞くと思っていたので」
「おっさんの声はどうも眠気を誘う」
「マスター」
「すいません冗談です・・・・・・う~ん、本音を言うと私個人は、この作戦失敗すると思うんだよね?」
「っ!何故です?」
「一つはこの世界の騎士が殆んど貴族だと言う事、そして騎士も冒険者も互いに良い印象が無い事、かな?」
「確かにそうですが、それでも作戦が失敗するほどとは」
「まあね。だからこれは私とヘルさんが心に留めて置けば良い」
「そうですね。ですが、詳しく聞いても良いですか?」
「別に良いけど、殆んど憶測だよ。まず貴族の出身者が多いと、どうしても平民出身の多い冒険者は下に見がちに為る。それは多分騎士国なら尚更ね。まあ、中にはそう思わないのも居るだろうけど、大多数の中なら埋没する意見だろうしね」
「確かにそうですね」
「しかもそのせいで冒険者との衝突も多いそうだからね。お互いに出し抜こうと考えていてもおかしくない。騎士なら全体的に、冒険者は個の群れだから尚更ね」
「確かに、そう考えればその可能性は低くは無いですね」
流石ヘルさん。そう、低くは無いんだよね。ある訳でも、無い訳でも無い。警戒しすぎれば反応が後れ、警戒してなければ痛烈な一撃を食らう、そんな面倒な物だからこそ私はヘルさんにだけ話している。
そもそも私がそう考えたのは、コルクルの件でアリスベルの城に行った時、騎士の反応を見たからだ。
そこにあったのは明らかな嘲笑と、差別の目、そして国王と一緒に甘い汁を吸っていたのだろう、余計な事をしてくれたな、と言う視線だった。恐らく前者の二つは、プライドと出自から来る物だろう事は、少し調べればすぐに分かった。
だからこそ私は今回の作戦が決まってから、騎士と冒険者の確執に付いてもいろいろ調べたら、出るわ出るわで大した手間にもならなかったからね。
それに今回は勇者も絡んでるみたいだからね。あいつらはどう動くのか予測が立てにくくて困る。
「では、それが起こるとして警戒すべきはモンスターの襲来ですか」
「だね」
有り得るのは、モンスターをこちらに押し付け自分達で、最上級の手柄である魔族を討ち取ること。とは言えそれはこちら側にも言える。まあ、警戒に越した事は無いって事だね。それよりも・・・。
「私としては、アレクトラの所に居た勇者の動きが気になる」
「勇者ですか?」
「うん。私なら合流する前の少ない状態か、もしくは」
「合流直後のこのタイミングですね」
「うん。急激に人が増えて多少なりとも浮き足立ってるからね。私ならこのタイミングが一番嫌かな?」
「索敵範囲はなるべく広めに取っておきます」
「うん。頼りにしてます」
「はい。お任せを」
そして私達は自分達の陣に戻るのだった。
現在私は、長く続いた作戦会議と言う名の戦いに何とか耐えきり、ヘルさんと共に皆の元に帰る途中だった。
危ない所だったぜ!
「・・・・マスター寝ていましたよね?」
「いやいや、まさかそんな事・・・・バレてた?」
「始まって五分もしない内に寝ましたよね?と、言うよりは初めから寝るつもりだから私を連れて来たんですよね?」
おふっ!バレてーら。
「そ、そそそ、そんな事無いんだからね!」
「また盛大に分かりやすく・・・・先ほど寝ていた時の様に分からない様にすれば、まだ分かりにくいものを・・・」
「な、何の事かな~?」
「座りながら足を組んで、姿勢を正したまま、顔を真っ直ぐ前に向け、あたかも真面目に話しを聞いているかの様にしていましたからね。正直隣で無ければ分からなかったかも知れません」
「ふふ、私の数少ない特技の一つだからね!って、あぁ、そんな呆れた目で見ないで!」
「呆れて等いませんから大丈夫です。どちらかと言えば、ここらで一度軽蔑するべきかと悩んでいるだけです」
状況はもっと悪かった。
「え~と、何と申しますか・・・すいません!見捨てないで下さい!?」
「まあ、常談なので別に良いのですが、マスターは何を考えているんです?」
その聞き方だと正気を疑われてる様なんだけど?
「いえ、この手の作戦会議はマスターならちゃんと聞くと思っていたので」
「おっさんの声はどうも眠気を誘う」
「マスター」
「すいません冗談です・・・・・・う~ん、本音を言うと私個人は、この作戦失敗すると思うんだよね?」
「っ!何故です?」
「一つはこの世界の騎士が殆んど貴族だと言う事、そして騎士も冒険者も互いに良い印象が無い事、かな?」
「確かにそうですが、それでも作戦が失敗するほどとは」
「まあね。だからこれは私とヘルさんが心に留めて置けば良い」
「そうですね。ですが、詳しく聞いても良いですか?」
「別に良いけど、殆んど憶測だよ。まず貴族の出身者が多いと、どうしても平民出身の多い冒険者は下に見がちに為る。それは多分騎士国なら尚更ね。まあ、中にはそう思わないのも居るだろうけど、大多数の中なら埋没する意見だろうしね」
「確かにそうですね」
「しかもそのせいで冒険者との衝突も多いそうだからね。お互いに出し抜こうと考えていてもおかしくない。騎士なら全体的に、冒険者は個の群れだから尚更ね」
「確かに、そう考えればその可能性は低くは無いですね」
流石ヘルさん。そう、低くは無いんだよね。ある訳でも、無い訳でも無い。警戒しすぎれば反応が後れ、警戒してなければ痛烈な一撃を食らう、そんな面倒な物だからこそ私はヘルさんにだけ話している。
そもそも私がそう考えたのは、コルクルの件でアリスベルの城に行った時、騎士の反応を見たからだ。
そこにあったのは明らかな嘲笑と、差別の目、そして国王と一緒に甘い汁を吸っていたのだろう、余計な事をしてくれたな、と言う視線だった。恐らく前者の二つは、プライドと出自から来る物だろう事は、少し調べればすぐに分かった。
だからこそ私は今回の作戦が決まってから、騎士と冒険者の確執に付いてもいろいろ調べたら、出るわ出るわで大した手間にもならなかったからね。
それに今回は勇者も絡んでるみたいだからね。あいつらはどう動くのか予測が立てにくくて困る。
「では、それが起こるとして警戒すべきはモンスターの襲来ですか」
「だね」
有り得るのは、モンスターをこちらに押し付け自分達で、最上級の手柄である魔族を討ち取ること。とは言えそれはこちら側にも言える。まあ、警戒に越した事は無いって事だね。それよりも・・・。
「私としては、アレクトラの所に居た勇者の動きが気になる」
「勇者ですか?」
「うん。私なら合流する前の少ない状態か、もしくは」
「合流直後のこのタイミングですね」
「うん。急激に人が増えて多少なりとも浮き足立ってるからね。私ならこのタイミングが一番嫌かな?」
「索敵範囲はなるべく広めに取っておきます」
「うん。頼りにしてます」
「はい。お任せを」
そして私達は自分達の陣に戻るのだった。
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