上 下
132 / 649
ダンジョン&アリスベル修行編

《シルフィン:いえ、別に》

しおりを挟む
「ねぇねぇハーちゃん?」

「どったの?」

「うんとね?さっきの話に出て来たムツクラ ショウって・・・」

「うん。多分・・・・・黒ちゃん。じゃ無くて姉さんの友達だったあの人だと思う。ムツクラ何て名前滅多に無いし」

「やっぱりムー君なのかな?でも何で今まで忘れてたんでしょう?」

「それは多分、ショウが此方に残る決心したから、元の世界で支障が無い様に記憶が消えてたんだと思う。で、私達はこっちで名前聞いたから思い出せたんだよ」

「そうなんですか?」

「うん」

 ムツクラ ショウ恐らくは、六倉 翔と書くこの初代勇者となった人物は、私達の知り合いだった。正確に言えば私の姉の友人。私達も何度か遊んで貰った記憶が在るが、その度に姉にボコられていたのが、とても印象に残っている。
 この六倉 翔がどんな人物かと言えば、一言で言うと正に主人公の様な人間。成績優秀、運動神経抜群、人当たりも良く、悪事を見逃せない、強気を挫き弱気を助ける。それが六倉 翔と言う人物で、姉が私達以外で唯一気を許している人間だった。

 今にして思えば、姉とはどんな関係だったのだろうか?恋人?いや、無いな。どちらかと言うと観察対象って感じか?それに、翔なら勇者として世界の一つ位救っていても納得だった。子供の頃はただ凄いとしか思わなかったが。今にして思えばあの運動能力は異常だったしね。

「でも、それじゃあムー君って・・・・」

「とっくに昔に土の下・・・・だね」

「・・・・・少し悲しいです」「・・・まあ、ね」

 しかし、瑠璃に翔、結衣ちゃんとその他の勇者。これだけ私の周りの人間が呼ばれるのはおかしく無いか?あの駄女神まだ何か隠してる?

 そんな話をしながらギルドに行き、それぞれで良い依頼が無いか探していると、ギルドの職員に、ギルド長が呼んでいるので執務室まで来て欲しい。と、呼び出しを食らう。

 私ギルド長に呼び出し受けすぎじゃね?全く私ほど品行方正な人間を呼び出す何て!

《シルフィン:品行方正とは、心や行いが正しく立派なさま。「品行」は行い・振る舞い・行状のこと。「方正」は心や行いが、正しくきちんとしているさま》

 何かな?

《シルフィン:いえ、別に》

 駄女神とそんなやり取りをしつつ、執務室に入ると、ギルド長が椅子に腰掛け書類を読んでいた。

 良かった。あのハゲ手前居なかった。居ると面倒だしね。

「急に呼び出して済まない。掛けてくれ。君達を呼び出したのは、アリスベルとフレイスの決定を伝える為だ」

「「「決定?」」」

 そこからギルド長が語ったのは、前に話した西の魔族はウィルドでは無かったが、低位の魔族だったらしい。そして、騎士国と共同で、各支部のギルドに情報を回し調べた所、ガダルらしき魔族がリクレス領付近で目撃され、調査の結果グロスやカーチスカを含めた、複数体の魔族と強力なモンスターが居たらしい。
 アリスベルとフレイスはこれを受けて、共同で討伐する事に決めたらしい。
 決行は二週間後、小型のモンスターもかなりの数目撃されている為、なるべく全員参加が望ましい。と、言うことだ。
 とは言え、総力戦になるだろうからほとんど強制だろう。

「それで、君達はどうするかね?」

「何で、わざわざ呼び出したの?それ、全員に伝える事だよね?」

「君達は因縁がありそうだったからね。それにこれは君達の功績でも有る。早期に発見出来たのは、間違いなく君達のお陰だ」

「そうか・・・・」

「私達はご主人様に従います」

「アリシア・・・・じゃあ、参加で」

「良いのかい?」

「うん。と、言うより戦力は少しでも多い方が良いでしょ」

「確かにな」

「でも、簡単に見付かり過ぎてる気がする。魔族だけならともかく、モンスターまで集めればどうしても目立つ。陽動の可能性も有るから出来れば、防衛戦力は残すべき」

「確かに、私もその可能性は有ると思うが、確証は無いだろう?それに敵の拠点は、結界で姿を隠していた様だ。だからこその行動であるとも取れる」

「まあね」

「わかった。では、この件に付いては良しとしよう」

「他にも何か?」

「この紙は、君がカラバス氏に技術提供したらしいね」

「そうだけど」

「その事で他の十商が、君の事を快く思っていないらしい」

 ほう。あんだけ毎日の様に書簡で、会って話がしたいとか、いろいろと言ってるくせに。

「そして、その中の一人が君の事を狙っているらしいんだよ」

「そこまで分かってて何も出来ないの?」

「ああ、ギルドとしても何とかしたいのだが・・・・ハッキリと言うと、君を狙う十商は、後ろに王が居るんだ」

「なるほど」

 アリスベルは商業都市と呼ばれているが、実はちゃんと王が居る。実質この国を取り仕切るのは十商だが、この国の商人は王に上納金を払い商売をしている為、王に販売許可を止められれば、如何に十商と言えど商売出来なくなる。そしてそれはギルドも同じ事だ。
 今回の件で、ギルドが手を出せば確実に、バックに居る王が取り潰しに来る。それでも何とかしたければ、取り返しが付かないレベルの証拠と共に、一気に方を着けなければ、証拠もろとも消される事になるだろう。

 う~ん。政治の匂い。超面倒。

「分かった。それはこっちで何とかする。もしもの時は協力して」

「分かった。約束しよう」

 こうして私達は執務室を後にし、ダンジョン内の採取クエストを幾つかの受けて、ギルドを出る。

「ご主人様。やっぱり参加なさるんですね」

「まあ、私達そんな強く無いけどね。それに、此方に来られても困るし、何より今回ので仕止められてくれれば、苦労しなくて済むしね」

 私のマイホーム壊れたらどうしてくれる。

「それもだけど十商の方が問題じゃない?カーラさんに相談してみようか?」

「一応するけど多分無理かな?」

「何でなのじゃ?」

「バックに王が居るって事は、カーラよりも多分上の位だからね」

 カーラ曰く十商は数字が若い程発言力あるらしい。

「話し難しいゴブ」

「私も何が何だか」

 アクアと結衣ちゃんは、ギブアップな様だ。

「取り合えず考えは有るから大丈夫だよ」

「まあ、ハクアが言うなら大丈夫かな?」

 そして私達は、その足でダンジョンへと向かうのだった。

 く~。久しぶり!頑張ろう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

凡人領主は優秀な弟妹に爵位を譲りたい〜勘違いと深読みで、何故か崇拝されるんですが、胃が痛いので勘弁してください

黄舞
ファンタジー
クライエ子爵家の長男として生まれたアークは、行方不明になった両親に代わり、新領主となった。 自分になんの才能もないことを自覚しているアークは、優秀すぎる双子の弟妹に爵位を譲りたいと思っているのだが、なぜか二人は兄を崇め奉る始末。 崇拝するものも侮るものも皆、アークの無自覚に引き起こすゴタゴタに巻き込まれ、彼の凄さ(凄くない)を思い知らされていく。 勘違い系コメディです。 主人公は初めからずっと強くならない予定です。

ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~

ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。 ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!! ※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件

後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。 転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。 それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。 これから零はどうなってしまうのか........。 お気に入り・感想等よろしくお願いします!!

この世界をNPCが(引っ掻き)廻してる

やもと
ファンタジー
舞台は、人気が今一つ伸びないVRMMORPGの世界。 自我に目覚め始めたNPCたちによって、ゲーム内は大混乱。 問題解決のため、奔走する運営スタッフたち。 運営×NPC×プレイヤーが織りなすコメディ。 ////////////////////////////////////////////////////// やもと、と申します。宜しくお願い致します。 誤字脱字などありました際は、ご連絡いただけますと幸いです。 週1、2回更新の予定です。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの
ファンタジー
毎日更新! 葛西鷗外(かさい おうがい)20歳。 職業 : 引きこもりニート。 親友に彼女を寝取られ、絶賛死に場所探し中の彼は突然深い森の中で目覚める。 異常な状況過ぎて、なんだ夢かと意気揚々とサバイバルを満喫する主人公。 しかもそこは魔法のある異世界で、更に大興奮で魔法を使いまくる。 だが、段々と本当に異世界に来てしまった事を自覚し青ざめる。 そんな時、突然全裸エルフの美少女と出会い―― 果たして死にたがりの彼は救われるのか。森に転移してしまったのは彼だけなのか。 サバイバル、魔法無双、復讐、甘々のヒロインと、要素だけはてんこ盛りの作品です。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

処理中です...