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英雄育成計画
うん。やけくそなんだよ?
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「いやー、遅くなったけど何とか着いたね」
あの後、魔境の森を脱出し昼飯を食べた私達は、日が沈みかけた頃に辺境の名も無き村まで何とか辿り着いた。
「いや、遅くなったのはお前が熊鍋の後に物足りないとか言って、ステーキ焼き始めたせいだからな。しかもその後に〆の雑炊とか。それとここは名も無き村じゃなくて名前あるからな」
辺境の名も無き村は、辺境の名前の有る村に進化した。名前は知らない。
そして確かに熊鍋の後にステーキも食べた。蜂蜜もドロップしたからハニートーストも作って食べた。美味しかったです。
「いやいや、でも皆だって食べてたよね? お代わりもちゃんとよそった記憶があるんだよ。なのに何故私だけが責められるのか。遺憾の意を示す」
うん。全員が顔を背けやがった。この野郎。
因みにその時の食事の最中に、追求されていたベルゼブブに付いても話をした。
実はこれ、私自身もいつから覚えていたのか分からないのだ。
それと言うのも数日前、買い食いをしていた私は不覚にも食べていた串焼きを落としてしまったのだ。
で……だ。落とした。落としたんだよ。自分の影に落ちる様に落としちゃったんだけどね。文字通り自分の影の中に落ちたんだよ。
その時の私の衝撃よ。
影魔法も使ってないのに勝手に影の中に物が落ちるとか怖いでしょ。
しかも、影の中にストンと落ちた串焼きは、入った途端ナニカが競い合うようにバリボリと食べ始めた。
分厚い肉だったから串が鉄製だったんだけど、見事なまでに噛み砕かれた音がしたんだよ。
分かる!? この怖さたるや、自分の影の中にナニカが居て、鉄製の物を噛み砕いてるんだよ! しかもそれが大量に居るっぽいって言うね。
そしたらその後に、やれやれしょうがねぇな。と、言う感じでシステムさんからベルゼブブの事を伝えられたんだよ。
実は今回、私が自分のステータスに本格的に疑念を抱いた最大の理由がこれのせいだったりする。
しかも本当にカマかけたら【智慧】さんが出て来たしね。
この世界、私の事を根本からおちょくってる気がする……。
そして本題のベルゼブブなのだが、蝿の王とはなっているがデフォルトの形が蝿なだけなのだ。
本質は影の物質化。
影に擬似的な生命を与えて使役する事がこのスキルの本質だ。
なので私の影魔法もベルゼブブのスキル【暴喰獣】に統合されている。
しかし……蝿の王のスキルの癖に【暴喰獣】とはこれ如何に……獣じゃ無くて蟲じゃね? まあ、結局獣と書いてある癖にデフォルトが蟲と言うか蝿なんだが……カッコ良さ重視だったのかな?
そんな訳で今回私が使用した黒犬も【暴喰獣】により作り出したものだった。
さっきも言ったがデフォルトの形は蝿だ。
その蝿は普通に一体作るのに最低五百のMPが必要だ。
そうして出来上がる蝿のステータスはオール15。
一般的なゴブリンよりも少し強い程度で、大きさはテニスボール程の大きさだ。
更にMPを込めれば各種ステータスを伸ばす事も出来るが、その分MPの消費量も大きくなる。
加えて蝿の大きさは強さとイコールになっている為、ステータスが伸びればその分大きくなる。
何とか頑張って小さくしようと努力したが、ステータスが一定値を超えると相応の大きさが必要になる様だ。
そして今の私のMPを全て注ぎ込んでもオール700程の個体しか作れなかった。
因みに大きさはバスケットボール位の大きさだった。
特化型も作れない事は無いが、極振りは出来ず、攻撃力特化にしても一定値を超えると、他のステータスもある程度必要で、更にMP消費量も跳ね上がるから効率が悪い事この上無い。
その上【暴喰獣】で消費したMPは自然回復が出来ず、MP回復薬か、食事をする事でしか回復出来ない事が分かった。
更に調査の結果、どんなに頑張っても五百以下の蝿は作ることが出来ず、テニスボールよりも小さな個体も作る事は出来なかった。無念。
そして黒犬なのだがコレ、と言うか蝿以外の生物を作るのはまた面倒な作業なのだ。
蝿を作るのはわりと簡単に出来る癖に、それ以外を作ろうとすると、一旦蝿を作りその蝿を消費しないと、他の形の生物は作れないのだ。
なんと言う蝿優遇の蝿ファースト。
作り出したい生物の形を正確に思い浮かべると、蝿何体分消費して作成みたいな感じで出来る。
感覚的に言えば融合や合体と言う感じで、レゴブロックで物を作る感覚に近いかもしれない。ただしブロックは蝿だけど……。
メリットとしては、さっきの様に倒されたとしても、ダメージ分の個体が殺られるだけで、分離して活動を続ける事。
一体一体が弱い蝿が固まる事で、一定値以上の力を持った個体として運用出来る事、更に召喚した個体は敵を食べる事で、自身の強化や分裂する事もできる。
ダメージ分の個体と言うのは、蝿一体のHPは同じく15。それが×百体分の生物を作るとHPは1500になる。
あっ、因みにHPとMP、気力は蝿の消費分加算されるが、ステータスは半分のしか反映されない。つまり百体だとHPとMP、気力は1500。ステータスは750になる。閑話休題。
そしてダメージが750だったとすると、半分の五十体が分裂して敵を襲うのだ。
デメリットは作るまでのMP消費がひたすら激しい事、強化個体、特化個体はパーツにならない事。
そして全体的に言える事だが、最初に召喚した時に命じた簡単な行動しか出来ない事。
今回はアベル達を襲うモンスターの撃破を命令した。口頭による命令の変更も出来るがそれにもMPが消費され、これもまた効率が悪い。
細かな命令や、五感の共有なんて事も出来るのだが、どちらも随時MPが消費されるのであまりやりたくない。
ここまで話してお分かり頂けただろうか?
1、蝿の作成には大量のMPが必要。
2、強い個体には更に必要になる。
3、簡単な命令しか出来ず、細かな運用には更にMPが必要。
4、基本的に雑魚専用。
5、それでも弱い。
簡単に纏めるとこう言う事である。
まあ群がって纏わり付けば、多大な犠牲を払って敵を食う事も出来るが、それも効率が悪いと言えば悪い。
結局今回、黒犬一体に付き二百の蝿を消費した。
それを四体出しブレードマンティスを食わせたが、殺られたのと差し引いて百体プラスで増えたくらいだ。
相手が強い程増えやすいが、その分多くの蝿が殺られる。まさにイタチごっこなのだ。
だが、そんな蝿達だが実はコイツらの使い方は戦闘では無かったのだ!
と、言うのも一度作った蝿は解体する事で作成時に消費したMPが戻ってくる。
流石に召喚して殺られた分までは帰って来ないが、ストック分を召喚しなければ大丈夫なのだ。
しかも、ストックは制限無しと来ている。
つまり……蝿の王 暴食のベルゼブブの権能とは──、蝿型の予備バッテリー機能だったのだ! だー! だー……。
うん。やけくそなんだよ? それが何か?
澪達にも斬新過ぎるだろ。とか言われたが、それは私の方こそ言いたいんだよ。邪神倒してゲットしたスキルが予備バッテリーとか……。
しかも私ほとんどが小技専門であんまりMP使い切る事無いんだよね。アリシアみたいな大規模魔法も無いし。
うーん。私に不向きよのー。
まあ、別の使い方も出来るけどそれはそれで効率が悪いんだよなー。
そんな事を思い出し、精神的に重くなった身体を引き摺って歩いていると、それを察した瑠璃が慰める様に話し掛けてくる。
「まあまあハーちゃん。そんな事よりも早く宿を確保しましょう」
慰める?
てか、そんな事て。
これ以上追求しても何故か多勢に無勢で負ける気しかしなかった私は、しぶしぶ言いたい事を飲み込んで宿屋を探す事にする。
「んっ?」
「どうした?」
「あー、いや。なんか変な気配を感じた気がしたんだけど……」
「……何処からだ」
「いや、良いよ。詮索するとイベント発生しそうだしここでお終い!」
どうよこの見事な回避スキル。私も成長しているんだよ。
「……なんか、逆にフラグ建った気がするな」
「そうですね。まあ、なる様にしかなりませんしね」
本当に失敬だなコイツら!?
しかし、この規模の村に宿屋など存在するのかどうか?
そんな心配を他所に以外にも宿屋はあっさりと見付かり、宿を無事確保した私達だった。
あの後、魔境の森を脱出し昼飯を食べた私達は、日が沈みかけた頃に辺境の名も無き村まで何とか辿り着いた。
「いや、遅くなったのはお前が熊鍋の後に物足りないとか言って、ステーキ焼き始めたせいだからな。しかもその後に〆の雑炊とか。それとここは名も無き村じゃなくて名前あるからな」
辺境の名も無き村は、辺境の名前の有る村に進化した。名前は知らない。
そして確かに熊鍋の後にステーキも食べた。蜂蜜もドロップしたからハニートーストも作って食べた。美味しかったです。
「いやいや、でも皆だって食べてたよね? お代わりもちゃんとよそった記憶があるんだよ。なのに何故私だけが責められるのか。遺憾の意を示す」
うん。全員が顔を背けやがった。この野郎。
因みにその時の食事の最中に、追求されていたベルゼブブに付いても話をした。
実はこれ、私自身もいつから覚えていたのか分からないのだ。
それと言うのも数日前、買い食いをしていた私は不覚にも食べていた串焼きを落としてしまったのだ。
で……だ。落とした。落としたんだよ。自分の影に落ちる様に落としちゃったんだけどね。文字通り自分の影の中に落ちたんだよ。
その時の私の衝撃よ。
影魔法も使ってないのに勝手に影の中に物が落ちるとか怖いでしょ。
しかも、影の中にストンと落ちた串焼きは、入った途端ナニカが競い合うようにバリボリと食べ始めた。
分厚い肉だったから串が鉄製だったんだけど、見事なまでに噛み砕かれた音がしたんだよ。
分かる!? この怖さたるや、自分の影の中にナニカが居て、鉄製の物を噛み砕いてるんだよ! しかもそれが大量に居るっぽいって言うね。
そしたらその後に、やれやれしょうがねぇな。と、言う感じでシステムさんからベルゼブブの事を伝えられたんだよ。
実は今回、私が自分のステータスに本格的に疑念を抱いた最大の理由がこれのせいだったりする。
しかも本当にカマかけたら【智慧】さんが出て来たしね。
この世界、私の事を根本からおちょくってる気がする……。
そして本題のベルゼブブなのだが、蝿の王とはなっているがデフォルトの形が蝿なだけなのだ。
本質は影の物質化。
影に擬似的な生命を与えて使役する事がこのスキルの本質だ。
なので私の影魔法もベルゼブブのスキル【暴喰獣】に統合されている。
しかし……蝿の王のスキルの癖に【暴喰獣】とはこれ如何に……獣じゃ無くて蟲じゃね? まあ、結局獣と書いてある癖にデフォルトが蟲と言うか蝿なんだが……カッコ良さ重視だったのかな?
そんな訳で今回私が使用した黒犬も【暴喰獣】により作り出したものだった。
さっきも言ったがデフォルトの形は蝿だ。
その蝿は普通に一体作るのに最低五百のMPが必要だ。
そうして出来上がる蝿のステータスはオール15。
一般的なゴブリンよりも少し強い程度で、大きさはテニスボール程の大きさだ。
更にMPを込めれば各種ステータスを伸ばす事も出来るが、その分MPの消費量も大きくなる。
加えて蝿の大きさは強さとイコールになっている為、ステータスが伸びればその分大きくなる。
何とか頑張って小さくしようと努力したが、ステータスが一定値を超えると相応の大きさが必要になる様だ。
そして今の私のMPを全て注ぎ込んでもオール700程の個体しか作れなかった。
因みに大きさはバスケットボール位の大きさだった。
特化型も作れない事は無いが、極振りは出来ず、攻撃力特化にしても一定値を超えると、他のステータスもある程度必要で、更にMP消費量も跳ね上がるから効率が悪い事この上無い。
その上【暴喰獣】で消費したMPは自然回復が出来ず、MP回復薬か、食事をする事でしか回復出来ない事が分かった。
更に調査の結果、どんなに頑張っても五百以下の蝿は作ることが出来ず、テニスボールよりも小さな個体も作る事は出来なかった。無念。
そして黒犬なのだがコレ、と言うか蝿以外の生物を作るのはまた面倒な作業なのだ。
蝿を作るのはわりと簡単に出来る癖に、それ以外を作ろうとすると、一旦蝿を作りその蝿を消費しないと、他の形の生物は作れないのだ。
なんと言う蝿優遇の蝿ファースト。
作り出したい生物の形を正確に思い浮かべると、蝿何体分消費して作成みたいな感じで出来る。
感覚的に言えば融合や合体と言う感じで、レゴブロックで物を作る感覚に近いかもしれない。ただしブロックは蝿だけど……。
メリットとしては、さっきの様に倒されたとしても、ダメージ分の個体が殺られるだけで、分離して活動を続ける事。
一体一体が弱い蝿が固まる事で、一定値以上の力を持った個体として運用出来る事、更に召喚した個体は敵を食べる事で、自身の強化や分裂する事もできる。
ダメージ分の個体と言うのは、蝿一体のHPは同じく15。それが×百体分の生物を作るとHPは1500になる。
あっ、因みにHPとMP、気力は蝿の消費分加算されるが、ステータスは半分のしか反映されない。つまり百体だとHPとMP、気力は1500。ステータスは750になる。閑話休題。
そしてダメージが750だったとすると、半分の五十体が分裂して敵を襲うのだ。
デメリットは作るまでのMP消費がひたすら激しい事、強化個体、特化個体はパーツにならない事。
そして全体的に言える事だが、最初に召喚した時に命じた簡単な行動しか出来ない事。
今回はアベル達を襲うモンスターの撃破を命令した。口頭による命令の変更も出来るがそれにもMPが消費され、これもまた効率が悪い。
細かな命令や、五感の共有なんて事も出来るのだが、どちらも随時MPが消費されるのであまりやりたくない。
ここまで話してお分かり頂けただろうか?
1、蝿の作成には大量のMPが必要。
2、強い個体には更に必要になる。
3、簡単な命令しか出来ず、細かな運用には更にMPが必要。
4、基本的に雑魚専用。
5、それでも弱い。
簡単に纏めるとこう言う事である。
まあ群がって纏わり付けば、多大な犠牲を払って敵を食う事も出来るが、それも効率が悪いと言えば悪い。
結局今回、黒犬一体に付き二百の蝿を消費した。
それを四体出しブレードマンティスを食わせたが、殺られたのと差し引いて百体プラスで増えたくらいだ。
相手が強い程増えやすいが、その分多くの蝿が殺られる。まさにイタチごっこなのだ。
だが、そんな蝿達だが実はコイツらの使い方は戦闘では無かったのだ!
と、言うのも一度作った蝿は解体する事で作成時に消費したMPが戻ってくる。
流石に召喚して殺られた分までは帰って来ないが、ストック分を召喚しなければ大丈夫なのだ。
しかも、ストックは制限無しと来ている。
つまり……蝿の王 暴食のベルゼブブの権能とは──、蝿型の予備バッテリー機能だったのだ! だー! だー……。
うん。やけくそなんだよ? それが何か?
澪達にも斬新過ぎるだろ。とか言われたが、それは私の方こそ言いたいんだよ。邪神倒してゲットしたスキルが予備バッテリーとか……。
しかも私ほとんどが小技専門であんまりMP使い切る事無いんだよね。アリシアみたいな大規模魔法も無いし。
うーん。私に不向きよのー。
まあ、別の使い方も出来るけどそれはそれで効率が悪いんだよなー。
そんな事を思い出し、精神的に重くなった身体を引き摺って歩いていると、それを察した瑠璃が慰める様に話し掛けてくる。
「まあまあハーちゃん。そんな事よりも早く宿を確保しましょう」
慰める?
てか、そんな事て。
これ以上追求しても何故か多勢に無勢で負ける気しかしなかった私は、しぶしぶ言いたい事を飲み込んで宿屋を探す事にする。
「んっ?」
「どうした?」
「あー、いや。なんか変な気配を感じた気がしたんだけど……」
「……何処からだ」
「いや、良いよ。詮索するとイベント発生しそうだしここでお終い!」
どうよこの見事な回避スキル。私も成長しているんだよ。
「……なんか、逆にフラグ建った気がするな」
「そうですね。まあ、なる様にしかなりませんしね」
本当に失敬だなコイツら!?
しかし、この規模の村に宿屋など存在するのかどうか?
そんな心配を他所に以外にも宿屋はあっさりと見付かり、宿を無事確保した私達だった。
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