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148.スライムダンジョン
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翌朝、早速ダンジョンへ。管理人の男性はレオンが示したSランクのパーティーカードを見て目を見開いていた。スライム系は上級パーティーすら滅多に来ないらしいので驚くのも仕方ながないかもしれない。
入口の傍に移動し、穴の中を見るとレオンが呟く。
「…この縄梯子は使いたくねえな」
「飛び降りる?」
「ああ、そうしようぜ」
…まあ、そうなる予感はしてました。
「キラ、来い」
「…うん」
飛び降りるのはちょっと怖いのでしがみついておこう…。差し出された手を取るとレオンが私を抱える。
「行くぞ」
彼の合図で全員が飛び降りた。
中には大量のスライムがいた。赤、青、緑、茶、色とりどりの半球体が地面を這い回っている。しかし私たちが歩くと、スライムたちは道を開けるように避けて逃げていく。何だか一々全てを倒す気にもなれなくて、適当に倒しながら階下を目指した。だってサニーとサックスが踏ん付けるだけで消えるんだもん。
小さな魔石やゼリーを拾いつつサクサク進むと、地下3階から違うタイプが出てきた。ツノがあったり、少し大きかったり、逆に小さかったり。逃げていくのは変わらなかったが、ドロップ品にはツノや粘土のような物もあった。スノウは気が向くとピンポイントに火を噴いてみたり、足で掴んだまま飛んでみたりしている。昨夜はつまらなさそうだと言っていたけどちょっと楽しそうだ。
私のテンションが上がったのは地下6階でメタルスライムに遭遇した時。レベル上げに便利な某RPGとは反対の性質で、逃げずに向かってくる。防御力は他のスライムに比べれば高いようだが難なく倒せた。それに経験値がめっちゃ高いという事も無かった。でもドロップ品は質の良さそうな鉱石だったので、それを考えると遭遇したいスライムかもしれない。
13時半、地下9階のセーフティーゾーンに到着した。ここまで見かけた冒険者はたったの4組、そしてセーフティーゾーンには誰も居ない。
私たちは遅めの昼食を摂った。
「キラ、コーヒーのおかわりは?」
「あ、欲しいな」
エヴァが私のカップが空なのを見て声をかけてくれる。
「…はい、どうぞ」
「ありがとう」
今日はガッツリ食べたいというリクエストに答えてカツカレーを出した。カレーは既にウチの定番メニューで、シーフードやバターチキン、夏野菜など様々なパターンを試したが1番人気はこのカツカレー。特にレオンはこれがお気に入りで、現在3杯目が終わろうとしている。エヴァと私は食後のコーヒーの最中だ。スノウはとっくに食べ終わって2頭と遊んでいた。
「ふぅ…ごちそうさん。…やっぱカツカレーは美味い」
満足そうに息を吐いて感想を漏らし、コーヒーを一口飲む。
「さて、一応ボス戦の策を決める?」
「そうだな。おい、スノウ!サニーとサックスもこっち来い!」
レオンがスノウたちを呼び寄せ、話を始めた。
情報によるとボスはポイズンキングスライム。
キングスライムはたくさんのスライムの集合体で、別種と混ざる事もあるが大抵は同種で集まる。数は30~50。防御力そこそこだが打撃に弱く、各魔法も効き目アリだ。攻撃は大量の毒液散布や体当たり、分裂しての囲み攻撃などがある。
「特徴はこんなもんだな。毒液散布は結構範囲が広いが注意点はそこだけだ」
「現れたらスノウたちの風魔法で一斉攻撃だね」
「ああ。もし打ち漏らしがあっても、念の為に踏み付けと蹴りはやめた方が良い。魔法で確実に、だ。いいな?」
(はいなの!)
レオンの言葉にスノウは元気に返事をし、サニーとサックスもブルルッと頷く。
「よし。行くか」
私たちはテーブルやイスを片付けて最下層に降りた。
⬛︎
ダンジョンを出た私たちは管理小屋へ向かう。
ボス戦はアッサリ方が付いた。毒々しい黒紫…ではなく、綺麗な紫色のポイズンキングスライム(王冠は被っていません)は、スノウたちの風魔法で微動だにしないうちに消滅したんです。
魔石を確認してもらい、証明書を貰うと管理人が笑いながら言う。
「あんたらには簡単すぎただろう?」
「まあな。それより、今朝まであった露店は引き上げたのか?」
そういえば見当たらない。冒険者のテントは幾つかあるが一つだけだった露店は無くなっている。
「ああ、そうなんだよ。最低限の物しか扱ってなかったがその分安かったしよ、無くなると下級の奴らが困るんだよな。まあ、また通りかかった商人にでも頼んでみるが…望み薄だな」
そう愚痴って顔を顰める管理人。管理小屋にはギルドから定期的に保存食などが届けられるらしいので、彼自身は困っていない筈。それでもこうして若い冒険者のために露店を置こうとしているのだから良い人なのだろう。
3人で顔を見合わせた後、エヴァが商業ギルドのカードを提示して話す。
「ちょうど良かった、オレたち旅商人でもあるんだ。攻略が済んだらここで店を開けるつもりだったんだけど、良いかな?」
「…え…旅商人?…Sランクパーティーが…?」
「商人は副業だけどね」
「そりゃそうだろ…」
予想外の申し出に惚ける男性。
その後私たちは店を出す許可をもらってからコテージを出し、明日の朝から開店出来るよう準備を整えた。
入口の傍に移動し、穴の中を見るとレオンが呟く。
「…この縄梯子は使いたくねえな」
「飛び降りる?」
「ああ、そうしようぜ」
…まあ、そうなる予感はしてました。
「キラ、来い」
「…うん」
飛び降りるのはちょっと怖いのでしがみついておこう…。差し出された手を取るとレオンが私を抱える。
「行くぞ」
彼の合図で全員が飛び降りた。
中には大量のスライムがいた。赤、青、緑、茶、色とりどりの半球体が地面を這い回っている。しかし私たちが歩くと、スライムたちは道を開けるように避けて逃げていく。何だか一々全てを倒す気にもなれなくて、適当に倒しながら階下を目指した。だってサニーとサックスが踏ん付けるだけで消えるんだもん。
小さな魔石やゼリーを拾いつつサクサク進むと、地下3階から違うタイプが出てきた。ツノがあったり、少し大きかったり、逆に小さかったり。逃げていくのは変わらなかったが、ドロップ品にはツノや粘土のような物もあった。スノウは気が向くとピンポイントに火を噴いてみたり、足で掴んだまま飛んでみたりしている。昨夜はつまらなさそうだと言っていたけどちょっと楽しそうだ。
私のテンションが上がったのは地下6階でメタルスライムに遭遇した時。レベル上げに便利な某RPGとは反対の性質で、逃げずに向かってくる。防御力は他のスライムに比べれば高いようだが難なく倒せた。それに経験値がめっちゃ高いという事も無かった。でもドロップ品は質の良さそうな鉱石だったので、それを考えると遭遇したいスライムかもしれない。
13時半、地下9階のセーフティーゾーンに到着した。ここまで見かけた冒険者はたったの4組、そしてセーフティーゾーンには誰も居ない。
私たちは遅めの昼食を摂った。
「キラ、コーヒーのおかわりは?」
「あ、欲しいな」
エヴァが私のカップが空なのを見て声をかけてくれる。
「…はい、どうぞ」
「ありがとう」
今日はガッツリ食べたいというリクエストに答えてカツカレーを出した。カレーは既にウチの定番メニューで、シーフードやバターチキン、夏野菜など様々なパターンを試したが1番人気はこのカツカレー。特にレオンはこれがお気に入りで、現在3杯目が終わろうとしている。エヴァと私は食後のコーヒーの最中だ。スノウはとっくに食べ終わって2頭と遊んでいた。
「ふぅ…ごちそうさん。…やっぱカツカレーは美味い」
満足そうに息を吐いて感想を漏らし、コーヒーを一口飲む。
「さて、一応ボス戦の策を決める?」
「そうだな。おい、スノウ!サニーとサックスもこっち来い!」
レオンがスノウたちを呼び寄せ、話を始めた。
情報によるとボスはポイズンキングスライム。
キングスライムはたくさんのスライムの集合体で、別種と混ざる事もあるが大抵は同種で集まる。数は30~50。防御力そこそこだが打撃に弱く、各魔法も効き目アリだ。攻撃は大量の毒液散布や体当たり、分裂しての囲み攻撃などがある。
「特徴はこんなもんだな。毒液散布は結構範囲が広いが注意点はそこだけだ」
「現れたらスノウたちの風魔法で一斉攻撃だね」
「ああ。もし打ち漏らしがあっても、念の為に踏み付けと蹴りはやめた方が良い。魔法で確実に、だ。いいな?」
(はいなの!)
レオンの言葉にスノウは元気に返事をし、サニーとサックスもブルルッと頷く。
「よし。行くか」
私たちはテーブルやイスを片付けて最下層に降りた。
⬛︎
ダンジョンを出た私たちは管理小屋へ向かう。
ボス戦はアッサリ方が付いた。毒々しい黒紫…ではなく、綺麗な紫色のポイズンキングスライム(王冠は被っていません)は、スノウたちの風魔法で微動だにしないうちに消滅したんです。
魔石を確認してもらい、証明書を貰うと管理人が笑いながら言う。
「あんたらには簡単すぎただろう?」
「まあな。それより、今朝まであった露店は引き上げたのか?」
そういえば見当たらない。冒険者のテントは幾つかあるが一つだけだった露店は無くなっている。
「ああ、そうなんだよ。最低限の物しか扱ってなかったがその分安かったしよ、無くなると下級の奴らが困るんだよな。まあ、また通りかかった商人にでも頼んでみるが…望み薄だな」
そう愚痴って顔を顰める管理人。管理小屋にはギルドから定期的に保存食などが届けられるらしいので、彼自身は困っていない筈。それでもこうして若い冒険者のために露店を置こうとしているのだから良い人なのだろう。
3人で顔を見合わせた後、エヴァが商業ギルドのカードを提示して話す。
「ちょうど良かった、オレたち旅商人でもあるんだ。攻略が済んだらここで店を開けるつもりだったんだけど、良いかな?」
「…え…旅商人?…Sランクパーティーが…?」
「商人は副業だけどね」
「そりゃそうだろ…」
予想外の申し出に惚ける男性。
その後私たちは店を出す許可をもらってからコテージを出し、明日の朝から開店出来るよう準備を整えた。
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