異世界ライフは前途洋々

くるくる

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143.10年熟成の愛の実は極甘でした。

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 翌日のお昼、私たちはテラスでランチをしていた。

 ライラがチキンを切り分けてランドさんの口元へ持っていく。俗に言う『あ~ん』というやつです。

「はい、ランド。これも食べてみて?キラに教わってわたしが作ったの」
「おう!…ん、美味い!」

 口を大きく開けて食い付いたランドさんは満面の笑みで答えた。

「良かった」
「やっぱりライラのメシは美味いな。おれは幸せもんだ…」
「ランド…」

 見つめ合う2人。今にもキスしそうな雰囲気です。昨夜泣いていた彼女の事を考えれば、幸せそうで良かったと思えるけれど…マル君は若干ゲンナリしてます。まあそれも仕方のない事。だって、私の夫たちまで対抗意識を燃やしたように甘々なんですから。挟まれた独り身の彼はたまったもんじゃないでしょう。こちらは寸前どころかキスしちゃってますし。

 …あれ?いつもと同じか。



 昨夜、ライラとランドさんは互いに気持ちを告白しあって婚約した。ライラがランドさん付きのメイドになってから10年、その10年間の想いがやっと実を結んだのだ。本来ならもっと早くこうなっても良かった気がするけど“終わりよければすべてよし”と言うしね。

 ちなみに私とライラは話すうちに自然と敬語ではなくなりました。彼女はランドさんにも敬語を使うのをやめたようです。レオンとエヴァがマルキーズ君をマル、と呼び始めたので私もマル君に変更しましたよ。




「僕、仕事に行きます。兄さん、義姉さん、婚姻の誓いするならバリリアでしてくださいね」

 食後、マル君は笑顔でそう言って回復屋の仕事に戻っていった。

「教会あるんだ?」

 婚姻の誓いという言葉にデレデレしているランドさんにエヴァが聞く。

「…あ?ああ、ある。結構デカイ建物だぞ?バリリアのギルマスは信心深い人でな」
「…なるほどな」
「納得だね」
「ん?ギルマスに会ったのか?」
「ああ、ダンジョンの件でな」
「そういえばドラゴンダンジョンがあるんだっけな…もう行ってきたのか?まだなら是非攻略してくれ。お前達なら出来る!相手がドラゴンじゃおれたちは力になれねえが――ん?」

 彼は話の途中で待ったをかけられて首を傾げる。

「もう攻略済みだ。ダンジョンも崩壊した」
「!!そうか、良かった!さすがだな!」
「で?教会にはいつ行くの?」
「…アッサリしてんなー、ドラゴンダンジョン制覇したってのに。まあいいか…教会はもちろん今日行く。すぐ行く」

 ランドさんはそう答えてライラの方を向く。

「良いよな?ライラ…」
「ランド…ええ、もちろんよ。嬉しい…」
「ラ、ライラ…」

 一気に2人の世界です。どうだろう、ランドさんのあのデレっぷり。私達の存在、忘れてないよね?いや、ラブラブなのは良いんだけど。




 その後、ひと休みしてから揃って教会へ行くことに。何故なら南大陸に来てからまだお祈りしていないことに気が付いたから。それにドラゴンダンジョン攻略で得られる称号があるらしいんです。

 スノウ達も連れた大所帯で街に入るとゴルドさんが門の方へ来るのが見えた。

「ちょうど良かった。今コテージに行くところだったんだ」
「なんか用か?」
「今日ギルドの酒場で祝いやら慰労やら兼ねて飲もうってことになってよ、それで誘いに来たわけだ。攻略したのだってレックスだし、それにお前ら昇級したんだろ?これが祝わずにいられるかよ!」

 なぜかガッツポーズしながら宣言するゴルドさん。

「…声がデケエよ」

 レオンがそう言って息を吐いた時、後ろにいたランドさんが話に入ってくる。

「昇級?もしかしてお前たちSランクになったのか?凄いじゃねえか!」
「おう、凄えだろ!って…ランド!来てたのか、久しぶりだな!」
「久しぶりだな、ゴルド。昨日着いたんだ」
「そうか。ライラちゃんも元気そうで良かった」

 挨拶を交わす3人。そういえばライラたちは何度かバリリアに来たことがあるって言ってたし、知り合いでも不思議はない。ランドさんとゴルドさんって似たタイプで気が合いそうだしね。

「ランドはレックスと知り合いだったんだな」
「ゴレで知り合ったんだ」
「そうか。じゃあランドたちも来いよ」
「お、良いのか?」
「当然だろ。な?」

 同意を求められ、エヴァが答える。

「もちろんだよ。寧ろ2人が主役じゃない?」
「主役?」
「ああ、主役だな」
「なんかめでたい事でもあったのか…?」

 腕を組んで考えていたゴルドさんがポンッ!と手を打つ。

「…分かった!やっと結婚する気になったんだな!?」
「!?な、なんで分かった!?」
「はぁ?普通分かるだろ。ランド達が主役の祝い事で他に何があるんだよ。ってか、やっとくっついたかお前ら。見てる方が焦ったかったぞ」
「「…」」

 はっきり言われ、顔を赤くしながら黙ってしまうライラとランドさん。やっぱり周囲にはバレバレでしたよ。

「良かったな!いやぁ~めでたい!今日は派手に騒ごうぜ!じゃあ用事が済んだら来いよな!」
「ああ」
「分かったよ」

 ゴルドさんは笑顔で去っていく。するとサックスの頭上にいたスノウが飛んで来た。

(けっこんってかぞくのこと?スノウたちとおなじ?)

 話を聞いてたようです。

「うん、そうだよ」
(…ちゅぅしないの?)
「え?」
(きらたちはいっつもちゅぅしてるの)
「…え~と…」

 そんなにしてるかな?と思いつつ答えに困っていると夫たちが答えてくれる。

「スノウ、そういうのは人それぞれなんだよ」
「ああ。心配しなくても2人きりになったら嫌というほどするさ」

 …そりゃそうだろうけど、よく本人たちの目の前で…あぁ、ほら。ますます赤くなっちゃった。

 チラッと見ると、会話から内容を察した2人は真っ赤になりながらも手を繋ぐ。すごくラブラブなのに初々しくて、なんだかほっこりします。

(ふーん?よくわからないの。でもあるじがうれしいとけいやくじゅーもうれしいからかぞくになってよかったの)
「…そっか、スノウはジルたちを心配したんだね」

 スノウの頭の中では“キス=仲が良い”という図式が出来上がっているらしい。

(うん。だってスノウはじねよりおっきいの)
「主の幸せは契約獣の幸せか」
「フフ…なるほどね。偉い偉い」
(スノウえらい?えっへんなの!)
「ふふ…」

 私達は褒められて自慢気に胸を張るスノウをくりくりと撫でた後、まだ顔の赤い2人を促して教会へと向かった。

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