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134.パーティー"ガーディアン"
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セーフティーゾーンに着いてまず行ったのは気絶した男性の回復。
移動しながら聞いた話によると、彼は魔力が切れて体力も尽きかけという危ない状態だった。回復魔法は移動前に掛けたので今するのは魔力回復。魔力切れになると暫く目を覚まさない。時間が経てば数値が戻ってきて自然に目覚めるが、それではきちんと動けるようになるまで結構な時間を要する。なので数人がかりで魔力回復薬を口に流し込み、少量ではあるが何とか飲み込ませた。後は目覚めるのを待つのだが、他のメンバーにも休息が必要な状況なので丁度良い。
処置を終えると時刻は19時を回っていた。私たちはガラ空きのセーフティーゾーンにコテージを出し、彼らと共に食事を摂ることに。外も悪くないけどやはりコテージ内は落ち着くんです。
またもやポカン、としているガーディアンの面々に洗浄・乾燥を掛けてからテラスに案内する。
私はローブを脱ぎたかったのだけど、夫たちに止められました。今日はビキニアーマーなの忘れてましたよ。 まあとにかく食事です。インベントリから力が付きそうな料理を選び、たくさん並べて薦める。
「…な、なんで…」
「良いからまずはメシ食え。俺らも腹減ってんだよ」
(めしー!)
スノウが羽を広げて叫び、お肉に突撃してすごい勢いでかぶりつく。
ここを攻略すると決めた当初はワンフロアを1日掛けて周るつもりだった。しかしバリリアに着いてから予定が変わったので出来るだけ急いで階下を目指した。だから当然昼食など摂る暇はなかったのだ。ダンジョンでは昼抜きになる事も結構あるが、今日は体力・魔力共に消費量が多くいつも以上に空腹、という訳だ。
「食料は充分準備してきたから遠慮は要らないよ」
「ドンドン食べて下さい」
「あ、ああ…ありがとう…」
エヴァと私も声を掛けるとリーダーらしき男性は戸惑いながら答えてメンバーを見る。
「ここは甘えよう」
そうして食べ始めればはもう止まらず、夢中になって料理を平らげていた。
食後に詳しい話をしようかとも思ったが、疲労も溜まっているし全員揃ってからの方が良いという事で互いに簡単な自己紹介だけ済ませた。ガーディアンはさすがにコテージで眠るのを遠慮し、表に自分たちのテントを建てていました。
テントとコテージに別れた後、私たちは話し合いをしていた。スノウは既に眠っている。
「…だから緊急措置を取ろうと思うんだが…どうだ?」
「う~ん…キラの魔除け香を焚きながら上を目指す手もあるけど…確実に助けるならそっちの方が良いね。ただオレたちの戦いをあまり人には話さないで欲しいよね」
「ああ、そうだな。ベラベラ喋んな、ってのはキッチリ言って釘を刺しておく必要がある」
「そうだね。キラはどう思う?」
エヴァに問われた私は少し考えてから答える。
「魔除け香は全ランクに効くなんて言っても信じるかどうか分からないし、緊急措置の方が良いと思う。それに…ギルマスや管理人さんの話を考えると、彼らはバリリアに必要なパーティーだって感じたの」
出回っている普通の魔除け香は、最高品質の物でも効き目はAランクの魔物まで。私のは全ランクに効く"?"マークがつくような代物だ。信じられないと言われるのは目に見えている。それならさっき内容を教えてもらった緊急措置の方が確実だ。
「バリリアに必要だ、ってのは同感だ。小さい街には上級パーティーが居ねえ所も多い。その上ここは砂漠のド真ん中で魔物も強力だ」
「それはオレも同じ事を感じたよ」
「よし。なら決定で良いな?」
「うん」
「良いよ」
こうして話し合いを終え、私たちも眠りについた。
■
翌朝。
気絶していた男性も無事に目覚め、揃ってお礼を言われた。その後皆で一緒に朝食を摂ってから話し合う。まずは私たちがここに来る事になった経緯などを話し、それから彼らの事を聞いた。
ガーディアンは4人の男性パーティー。
1人目、リーダー・ゴルドは38才で攻撃の要。典型的なマッチョで黒っぽい髪は角刈り、厳つい顔つきで見た目はかなりヤクザっぽい。
2人目、リーダーの片腕であるアイシクルは同じ38才。剣と魔法の両使いで体は細マッチョといったところ。パーティー内の位置的には参謀で、インテりな雰囲気。色素の薄い髪は長く、後ろで束ねている。
3人目、ドラジェは34才で盾役。その役に相応しい巨体は屈強そのもの。頭は丸刈りなのか薄いのか分からない感じだ。
4人目、ネルソンは一番若く32才。魔法の扱いに長けていて危機察知や回復は勿論、攻撃も熟せるパーティーの命綱。
彼らは一向に攻略者が現れないドラゴンダンジョンを制覇するべく時間を掛けて準備を進め、万全の状態で挑んだ。交代で休息し、時には隠れながら数体のドラゴンを討伐して何とかセーフティーゾーンに辿り着いた。疲労はあったが後はボスを残すのみ、覚悟を決めて最下層に突入。
だが―――歯が立たなかった。
命からがら逃げ出しては来たものの、全員が怪我を負ってしまった。ネルソンの魔法や薬で回復し、とにかく生きて帰ろうと今度は上を目指すが、ドラゴンに見つからずに進む事は出来なくて地下4階でまた戦うことに。そこでは辛くも勝利したが、回復の要であるネルソンが魔力切れになって再びすぐ下のセーフティーゾーンに戻った。その時手元に残っていたのは僅かな保存食と水だけ、盾役のドラジェも怪我をし、全員が疲弊し切っていた。
それでもこのままただ死を待つよりはと、再度上へ行ったところで私たちに出会ったのだった。
「情けないがおれたちには出来なかった。だがあの短時間でレッドドラゴンを倒しお前たちなら…奴を倒せるかもしれない。得た情報は全て話す、どうか、このダンジョンを攻略してくれ。でないとバリリアは…頼む!」
ガーディアンのリーダー、ゴルドさんはそう言ってガバッと頭を下げた。
「…ああ、あんたらの気持ちは分かった。で、これから上を目指すのか?」
「もちろんだ」
私たちは一度3人で視線を交わした。そしてレオンが提案を告げる。
「それなんだが、俺らから提案がある。…緊急措置を取らねえか?」
「「「「!!」」」」
その言葉を聞いたガーディアンの面々は驚きに目を見開いた。
移動しながら聞いた話によると、彼は魔力が切れて体力も尽きかけという危ない状態だった。回復魔法は移動前に掛けたので今するのは魔力回復。魔力切れになると暫く目を覚まさない。時間が経てば数値が戻ってきて自然に目覚めるが、それではきちんと動けるようになるまで結構な時間を要する。なので数人がかりで魔力回復薬を口に流し込み、少量ではあるが何とか飲み込ませた。後は目覚めるのを待つのだが、他のメンバーにも休息が必要な状況なので丁度良い。
処置を終えると時刻は19時を回っていた。私たちはガラ空きのセーフティーゾーンにコテージを出し、彼らと共に食事を摂ることに。外も悪くないけどやはりコテージ内は落ち着くんです。
またもやポカン、としているガーディアンの面々に洗浄・乾燥を掛けてからテラスに案内する。
私はローブを脱ぎたかったのだけど、夫たちに止められました。今日はビキニアーマーなの忘れてましたよ。 まあとにかく食事です。インベントリから力が付きそうな料理を選び、たくさん並べて薦める。
「…な、なんで…」
「良いからまずはメシ食え。俺らも腹減ってんだよ」
(めしー!)
スノウが羽を広げて叫び、お肉に突撃してすごい勢いでかぶりつく。
ここを攻略すると決めた当初はワンフロアを1日掛けて周るつもりだった。しかしバリリアに着いてから予定が変わったので出来るだけ急いで階下を目指した。だから当然昼食など摂る暇はなかったのだ。ダンジョンでは昼抜きになる事も結構あるが、今日は体力・魔力共に消費量が多くいつも以上に空腹、という訳だ。
「食料は充分準備してきたから遠慮は要らないよ」
「ドンドン食べて下さい」
「あ、ああ…ありがとう…」
エヴァと私も声を掛けるとリーダーらしき男性は戸惑いながら答えてメンバーを見る。
「ここは甘えよう」
そうして食べ始めればはもう止まらず、夢中になって料理を平らげていた。
食後に詳しい話をしようかとも思ったが、疲労も溜まっているし全員揃ってからの方が良いという事で互いに簡単な自己紹介だけ済ませた。ガーディアンはさすがにコテージで眠るのを遠慮し、表に自分たちのテントを建てていました。
テントとコテージに別れた後、私たちは話し合いをしていた。スノウは既に眠っている。
「…だから緊急措置を取ろうと思うんだが…どうだ?」
「う~ん…キラの魔除け香を焚きながら上を目指す手もあるけど…確実に助けるならそっちの方が良いね。ただオレたちの戦いをあまり人には話さないで欲しいよね」
「ああ、そうだな。ベラベラ喋んな、ってのはキッチリ言って釘を刺しておく必要がある」
「そうだね。キラはどう思う?」
エヴァに問われた私は少し考えてから答える。
「魔除け香は全ランクに効くなんて言っても信じるかどうか分からないし、緊急措置の方が良いと思う。それに…ギルマスや管理人さんの話を考えると、彼らはバリリアに必要なパーティーだって感じたの」
出回っている普通の魔除け香は、最高品質の物でも効き目はAランクの魔物まで。私のは全ランクに効く"?"マークがつくような代物だ。信じられないと言われるのは目に見えている。それならさっき内容を教えてもらった緊急措置の方が確実だ。
「バリリアに必要だ、ってのは同感だ。小さい街には上級パーティーが居ねえ所も多い。その上ここは砂漠のド真ん中で魔物も強力だ」
「それはオレも同じ事を感じたよ」
「よし。なら決定で良いな?」
「うん」
「良いよ」
こうして話し合いを終え、私たちも眠りについた。
■
翌朝。
気絶していた男性も無事に目覚め、揃ってお礼を言われた。その後皆で一緒に朝食を摂ってから話し合う。まずは私たちがここに来る事になった経緯などを話し、それから彼らの事を聞いた。
ガーディアンは4人の男性パーティー。
1人目、リーダー・ゴルドは38才で攻撃の要。典型的なマッチョで黒っぽい髪は角刈り、厳つい顔つきで見た目はかなりヤクザっぽい。
2人目、リーダーの片腕であるアイシクルは同じ38才。剣と魔法の両使いで体は細マッチョといったところ。パーティー内の位置的には参謀で、インテりな雰囲気。色素の薄い髪は長く、後ろで束ねている。
3人目、ドラジェは34才で盾役。その役に相応しい巨体は屈強そのもの。頭は丸刈りなのか薄いのか分からない感じだ。
4人目、ネルソンは一番若く32才。魔法の扱いに長けていて危機察知や回復は勿論、攻撃も熟せるパーティーの命綱。
彼らは一向に攻略者が現れないドラゴンダンジョンを制覇するべく時間を掛けて準備を進め、万全の状態で挑んだ。交代で休息し、時には隠れながら数体のドラゴンを討伐して何とかセーフティーゾーンに辿り着いた。疲労はあったが後はボスを残すのみ、覚悟を決めて最下層に突入。
だが―――歯が立たなかった。
命からがら逃げ出しては来たものの、全員が怪我を負ってしまった。ネルソンの魔法や薬で回復し、とにかく生きて帰ろうと今度は上を目指すが、ドラゴンに見つからずに進む事は出来なくて地下4階でまた戦うことに。そこでは辛くも勝利したが、回復の要であるネルソンが魔力切れになって再びすぐ下のセーフティーゾーンに戻った。その時手元に残っていたのは僅かな保存食と水だけ、盾役のドラジェも怪我をし、全員が疲弊し切っていた。
それでもこのままただ死を待つよりはと、再度上へ行ったところで私たちに出会ったのだった。
「情けないがおれたちには出来なかった。だがあの短時間でレッドドラゴンを倒しお前たちなら…奴を倒せるかもしれない。得た情報は全て話す、どうか、このダンジョンを攻略してくれ。でないとバリリアは…頼む!」
ガーディアンのリーダー、ゴルドさんはそう言ってガバッと頭を下げた。
「…ああ、あんたらの気持ちは分かった。で、これから上を目指すのか?」
「もちろんだ」
私たちは一度3人で視線を交わした。そしてレオンが提案を告げる。
「それなんだが、俺らから提案がある。…緊急措置を取らねえか?」
「「「「!!」」」」
その言葉を聞いたガーディアンの面々は驚きに目を見開いた。
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