異世界ライフは前途洋々

くるくる

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124.エスプレッソ

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 仕分けが済んでライラさんたちと別れた後、選別を行なった。そのまま残すもの、売るもの、解体を頼んで素材を戻すもの。70近い…正確には67体の約半数、35体を分けるのだが、スパイダーダンジョンの時はこれより多かったのでそれほど時間は掛からなかった。

 午後はギルドへ解体と査定を頼みに。コテージへ戻る際、前にゴレを見て回った時には閉まっていた店が開いていたので寄ってみた。佇まいや店名からしてリカーショップかと思っていたけど、コーヒー豆やハーブティーの葉なども置いていた。それぞれが実に種類豊富で見たことのない物もあり、たくさん新しい物を仕入れる事が出来ました。どの街に行っても珍しいお酒や食材、コーヒー豆を探していたエヴァは嬉しそうだった。私も新しい豆はとても楽しみです。





 新しい豆でコーヒーブレイクしようと、エヴァと私はコテージへ帰って早々キッチンに立った。

 手に入れたのは深煎り豆。エヴァから聞いた話によるとエスプレッソはあまり飲まれていないらしく、ヴェスタに居た頃でさえ見かけるのは稀だったという。もちろん旅に出てから手に入れたのは初めて。豆自体が違うわけでは無い筈だが、その辺りは需要の有無と店側の匙加減が関係しているのだろう。

「エスプレッソも美味しいんだけどな。豆の種類は豊富なのに勿体ない」
「そうだね。オレも店で出せるくらい仕入れられれば出してみたかったんだ。結局諦めたけどね。さて、思い出しながら淹れてみるよ」
「私も合うお菓子用意するね」
「頼むね」
「うん」

 私たちはちゅっ、と軽くキスしてから準備を始めた。




「久々に淹れた割には上手くいったと思うんだけど。どうかな?」
「…これは美味いな。味がハッキリしてて俺好みだ」
「うん、とっても美味しい。それに久しぶりにエスプレッソが飲めて嬉しい」

 酸味と苦味、コクがしっかりしている。前世で言うとマンデリンに似ているかも。用意したお菓子はチーズケーキとアイスクリーム。アイスはコーヒーをかけて食べるのです。

「良かった。チーズケーキも美味しいよ、濃いコーヒーに合う」
「ああ、やっぱり俺はケーキならこれが良い」
「それに…アイスにコーヒーをかけるなんて初めてだったけど、これ良いね」
「ふふ、ありがとう。今度ビスコッティも焼いておこうかな」

 その時、両方のお菓子を少しずつ貰って食べていたスノウがふと顔を上げる。そしてコーヒーのかかったアイスをジッと見てから言った。

「…あいすににがにが…あまい?にがにが?」

 私たちは基本的にブラックなので、スノウにとってのコーヒーは“にがにが”で苦手なもの。自分の好きな甘い物と苦手なものの組み合わせが気になっているらしい。表情は例の苦い顔です。

「食べてみる?」
「…ちょっとたべてみたいの」

 スノウは少々悩んでから答える。私はコーヒーの掛かった部分をチョットだけスプーンで掬ってあげてみた。

 くちばしでちょん、とつついて舐める。すると何とも微妙な顔をして首を傾げている。

「…あまくてにがにがなの。…よくわかんないの」
「くくっ…チビにはまだ早い味、ってことだ」
「む!チビちがうもん!じねよりおっきいんだもん!」
「似たようなもんだろ」
「ちがうもん!」
「へいへい」
「むぅ~!」
「フフ…アイスが解けるよ、スノウ」

 威嚇ポーズでレオンと対峙していたスノウにエヴァが声を掛けると、瞬時におやつへと標的が切り替わった。




 夕食後は定例会議。

 明日はレオンとエヴァが例の恐ろしい武器制作、私はもう1つ敷布団を作る事になった。それは実際に使ったのは昨夜が初めてだった布団を2人が気に入ってくれたからだ。だから大きなサイズで作り、今度野営するときはテント内で使おうというという案が出たんです。確かに気持ち良さそうだけど、なんだかミスマッチな気がする…なんて思ったのは私だけのようでした。

 そしてその夜…3日ぶりに旦那様たちの熱く激しい愛を受け止めた私は、幸せに浸りながらも明日体がきちんと動くが若干心配になったのでした。











 翌朝。

 眼はいつもの時間に覚めたものの、案の定身体が怠くて起き上がるのが億劫だった。でも起きられないほどでもない。普段よりもスローモーな動きで身支度に取り掛かろうとするとエヴァが目を覚ました。

「キラ、大丈夫?やっぱり怠い?」
「ん、ちょっとだけ。でもこれくらいならすぐに治るから大丈夫」

 何度も経験しているうちに、怠さの度合いでおおよその回復時間が分かるようになりました。私にとっては必要なスキルなのですよ。

「…そう?でも朝の仕度ならオレに任せて、まだ休んでて?」
「んっ…」

 彼は柔らかな声色でそう言って私の頬を撫で、小さくキスする。するともそもそ動いていたレオンが起き上がった。

「キラ…布団ならいつでも良いからゆっくりしてろ」
「ん…ありがとう」

 彼も私を引き寄せて優しくキスしてくれた。



 この日、結局朝食はベッドで食べて…いや、食べさせてもらい、午前中いっぱいまったりと過ごししました。そして午後から布団作りを開始。のんびりと進めたので完成には至らず、残りは持ち越し。武器の方もまだ完成はしていないとのこと。そのため明日ギルドで魔素溜まりの件を済ませた後も数日間ここに滞在することになりました。

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