異世界ライフは前途洋々

くるくる

文字の大きさ
上 下
16 / 213

13.褒賞金

しおりを挟む

 翌日、私は部屋でステータス画面の設定変更に没頭していた。

  実は知らないうちに生活魔法(F)スキルが増えていたのだが、いつ何処で芽生えたのか全く分からなかったのだ。そういえばレベルが上がっても剣技を獲得しても特に知らせはなかったと思い出し、何とかならないものか考えた。そして設定変更でも出来ればと思ってダメ元で色々イジってみた所、期待通りのものが見つかったのだ。

  まずは通知設定。全てOFFになっていたのをスキルに関してはONに変更。

  次はインベントリ。新たに冷蔵や冷凍のカテゴリーを増設。時間経過は無いが冷える、という優れものだ。家電的魔道具がお高いこの世界では、飲み物なども常温で売られている方が多いようだったので思い付いた。

  最後に称号の“転移人”と、念のため固有スキルの“複製”も非表示とした。これで万が一誰かにステータスを見られても大丈夫だろう。スキルはある程度増えたらまた設定しよう。




  それにしても生活魔法かぁ、良いのが取れたな。

  ヘルプによると生活魔法は日常生活に使う技を得られる魔法。周囲を綺麗にする清掃、火を灯す種火、洗濯や洗い物をする洗浄、物を乾かす乾燥、服を作る縫製などその用途は多岐にわたる。

  私の生活水準が格段にアップすること請け合いだ。早速タライを出し、その中で自分の洗浄を試みると一瞬で全身ずぶ濡れに。

  冷たッ!直ちに乾燥!

  乾燥すると爽快感が身体を包む。服を着たままで出来るから野営の時には活躍しそうだ。冷たいのが難点だけど。

  街を出なければ良いのだから買い物に行こうとドアへ向かった時、ノック音がしてギルマスからお呼びがかかった。











「失礼します」

  部屋にはギルマスとプラフさん。促されてソファーへ腰掛けるとギルマスが切り出した。

 「検証は終わった。キラの話通り魔素溜まり跡が見つかった。だな?プラフ」
 「はい、確かに。魔物の数や強さ、その他様々な事柄から規模を調査し、褒賞額を決定しました。しかしながら…不思議な点があります。魔素溜まり跡の周囲は大概酷いものですが、今回の現場には僅かな血痕と倒れた木があるだけで他は全く荒れていませんでした。40体近い魔物を討伐した筈なのに、です」

  冷静だったプラフさんは話すうちに段々興奮し、テーブルに身を乗り出して私を凝視する。

 「…それが何か問題ですか?」
 「問題も何も、キラさん。あなたはどうやって魔素溜まりを消滅させたんです?どうやったら魔物が魔石だけになるんです?」

  あぁ、やっぱり聞かれたか。でも、わざわざ自分の手の内を晒す冒険者が何処にいるというのだ。

 「お答えする必要はないと思いますが」
 「話せないような手段なのですか?」
 「止せプラフ」
 「どうなんです!?」

  ギルマスが止めに入るも全く効果なし。それどころかますますヒートアップして語気が強まり、何だか尋問でもされている気になる。

 「それについてお話しする気はありません」
 「キラさん、君は…!」
 「いい加減にしろプラフ!サッサと褒賞金を渡せ!」
 「ですが僕は…」

  まだ言う?面倒な人だな…もういいや。

 「ギルドマスター、プラフさん、褒賞金は辞退します」

  元々お金目的で報告した訳でもないし、これ以上押し問答したくない。

 「失礼しました」

  私は立ち上がって礼をし、呆気に取られている2人を尻目に部屋を出た。




  このまま買い物へ行こうとギルドの扉近くまで来た時。

 「待てキラ!」

  呼び止める声に振り向くとギルマスが追いついてきた。

 「そういうわけにはいかないんだ。あいつは黙らせるから、戻ってくれ」

  今にも手を合わせて拝み出しそうな表情をしている。人の少ない時間帯だが、なんだなんだとギャラリーが出来始めた。

 「……分かりました」




  部屋へ戻るとシュンとしたプラフさんがソファーの後ろに立っていたが、ギルマスは見向きもせずに手続きを進めた。

  褒賞金の額は20万ギル。大金に驚く私に、今回は規模が比較的小さかったので魔素溜まりの褒賞金としては安いほうだ教えてくれた。受け取り書にサインすると、今度は冒険者ランクのアップが知らされた。それもFからDに飛び級である。

  中級は下級より危険に晒される機会は増えるが、その分依頼の数も報酬も多い。これは素直にありがたいです。

  諸々の手続きが終了すると、今度はすんなり解放された。その間プラフさんは一言も発さず、終始俯いていた。冷たいかもしれないが私に言わせて貰えば自業自得である。

  私は今度こそ買い物に出かけた。











 買い物後ギルドに戻って宿の食堂で夕食を食べていると、1人の青年がいきなり私に謝った。

  どうやら昨日無断欠勤したウエイターが彼らしい。急に体調を崩して友人に代理を頼んでいたのだが、誰も来なかった上私がウエイトレスをしたと聞いて血の気が引いたとか。何度も頭を下げる彼に笑って話しかけると漸くホッとしたようだった。




  食後お湯をもらって行水を済ませ、やっと物が増えてきたインベントリのリストを眺めるとちょっとニヤニヤしてしまう。

  新たに増えたのはミルクやタマゴなどの乳製品と小麦粉、パン、お茶といった食料類。それにヤカンやティーポットなどの足りなかった食器と調理道具に、布や裁縫道具。あとやっとアイテムバッグを買えた。

  現在の所持金、202,750ギル。無駄遣いせずに貯めておかなきゃ。

  今日の複製はミルク、タマゴ、バター。チーズは明日にしよう。直接触れていなければ出来ないので他人からスキルを複製するのは困難、だから主に食料や日用品を複製していた。

  終えた時『ピンポン』と電子音。もしかしてこれがお知らせ音かと思いステータスオープン。するとメッセージ。

 《複製スキルがランクアップしました》

  おぉ、Eランクだ。

  回数も2/5になっていて2回残っていた。早速明日に回したチーズと、取っておいたゴブリンメイジの回復魔法(E)を複製。


 【ステータス】

 【名前】キラ
【年令】20才
 【職業】冒険者

【レベル】29
【体力】146
【魔力】4891/4920
【攻撃力】58
【防御力】70
【素早さ】109

【スキル】剣術(S)・火魔法(F)・風魔法(F)・土魔法(F)・回復魔法(E)・解析(S)・危機察知(F)・生活魔法(F)

【固有スキル】複製(E)0/5

【称号】なし



 ふふふ…スキルもいい感じに増えてきたなぁ。

  固有スキルを非表示に戻してステータスチェックを終え、縫製に取り掛かる。サイズが微妙に合わないので服や下着も早く作りたいが、まずはローブだ。最初からあるマントは背面だけのタイプなので、すっぽり身体が隠れるフード付きが欲しい。人の視線は粗方気にならなくなったが、無用なトラブルを避ける為にも必要だ。

 黒い布を手に取り作業を始める。生活魔法の縫製は今のところ技などは無く、ただ作り方が自然と頭に浮かぶといった感じ。Fランクなので難しい事は出来ないが、ローブや下着、簡単な服は作れる。

 私は作業に没頭した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...